チェチェン総合情報

05 Nov 2008
チェチェンニュース Vol.08 No.13(#268) 2008.11.05
発行部数:1652部
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 こんばんは、チェチェンニュースです。
 4月に来日したチェチェンの外科医ハッサン・バイエフ医師が、
 ふたたび来日し、東京で講演会を催すことが決定しました。
 滞在費やチェチェンに持ち帰る機器のための募金を募っています。
 どうかご協力をおねがいいたします。

 今回のニュースでは、他に、3月に亡くなったチェチェンの難民のこと、
 そして最近のチェチェン・イングーシの情勢についてまとめています。

 新聞で報道されましたが、
 10月末に、イングーシ共和国のジャジコフ大統領が更迭されました。
 チェチェン以上に不安定な状況が続くイングーシのことも、
 取り上げていきたいと考えています。
 情報がありましたら、お知らせください。

 (大富亮/チェチェンニュース)

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INDEX

 * ハッサン・バイエフ医師の招聘に、ご協力をお願いします
 * イベント情報

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■ハッサン・バイエフ医師の招聘に、ご協力をお願いします

 今年4月、みなさまにご支援をお願いしましたハッサン・バイエフ医師の招
聘は、いわき、仙台、東京、水戸、札幌、京都、大阪、山口の講演会場で、計
600 人におよぶ方々が来場され、多くの人にチェチェンを知ってもらうという
目的を果たすことができました。ご協力に感謝を申し上げます。

 また、2ヶ月間の滞在中、埼玉医科大学総合医療センターと東京・信濃町の
大城クリニックの好意により、無償で先端医療技術を学ぶことができました。
このことは、外科医として手術台の前に復帰することを目指すバイエフ医師へ
の大きな支援となりました。

 バイエフ医師は、口唇口蓋裂という病気の治療に力を入れています。これ
は、生まれつき唇の形が大きく歪むという病気です。妊娠中の母体がストレス
を受けると発症するもので、これまでチェチェンでは、ほとんど見られません
でした。因果関係ははっきりしないものの、戦争の時期を通じて急激に増えた
とのことです。

 ところで、幸運なことに、学術団体の日本レーザー医学会が、この11月に再
びバイエフ医師を招聘する運びになりました。そこで、ハッサン・バイエフを
呼ぶ会が中心になって、市民を対象とした講演会が11月12日水曜日に開催され
ます。これについては、下記の情報をご覧の上、ぜひ足をお運びください。

    http://chechenchildren.jpn.org/1112meeting.pdf

 なお、チェチェン連絡会議とハッサン・バイエフを呼ぶ会はこれまでも連携
して活動をしてきましたが、ハッサン・バイエフ呼ぶ会は「チェチェンの子ど
も日本委員会」と改称し、独自に活動する方向を模索しており、チェチェン連
絡会議は同会を通じてバイエフ医師への支援を行ないます。

 11月の招聘は、航空運賃をレーザー医学会が負担しますが、それ以外の経費
の多くは市民の皆さまのカンパに頼る形となります。

 また、バイエフ医師がチェチェンでの医療活動に加えたいと考えている低出
力レーザー治療器(本来は患者の痛みを和らげるものですが、戦争の結果であ
る火傷痕、手術痕などの除去に使用します)の購入費を含め、数十万円程度の
募金を、皆さまにお願いいたします。小額でも結構です。ぜひ、募金をお願い
いたします。

 ●郵便振替加入者名:チェチェン連絡会議 口座番号:00180-6-261048
  ※お手数ですが通信欄に「バイエフ」とご明記ください。


  ●戦争被害の子どもたちを救おう
    〜チェチェンでの小児医療への取り組み〜
    チェチェン人外科医ハッサン・バイエフ講演会

    11月12日(水) 18:30-21:00 文京区民センター 3階C 会議室(定員60名)
    地下鉄:東京メトロ「後楽園」駅4出口徒歩5分・
    都営地下鉄三田線「春日」駅A2出口すぐ 参加費1,000円


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■日本で生活するチェチェン難民について

 今年、もう一つの事件がありました。今年3月、チェチェンから日本に来て
いた難民のRさんが、病院で死亡しました。彼は2年前に来日し、難民認定を申
請したあと、日本語を学び、千葉県で働きながら、認定結果が出るのを待って
いました。

 しかし昨年10月ごろ、体のあちらこちらが痒いと訴えはじめ、12月下旬に病
院に行ったところ即日入院を勧められました。肝機能障害によって体中に黄疸
が出ていました。ボランティアの一人が通院につきそい、病状を見守り、さま
ざまな資料を調べ、少しでも回復するように医師とも話し合いを続けたのです
が、症状は悪化の一途をたどり、多臓器不全により、3月21日に死亡しまし
た。原因は最後までわかりませんでした。

 私たち日本人にも多少そういうところがありますが、チェチェンの人々は、
遺体を生まれた土地に還すことを強く願います。そこで彼の死後、主にメール
などで告知して募金(計172万円)を集め、無事に、遺体をチェチェンの親族
のもとに届けることができました。遺体の搬送費を別にした残金は、葬儀のた
めに遺族に送金されました。これについては、個別に募金をしてくださった皆
様をはじめ、イスラム教徒のコミュニティーや、千葉県での支援者の方々の協
力がなければできませんでした。この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。

 さて、難民の問題について、もう少し説明をいたします。

 この知らせを読んで、日本にチェチェンの難民が来ていたことに驚かれた方
も多いかと思います。難民問題には微妙な部分があり、たとえばその人の名前
や年齢につながる情報を、本人の同意なく広めることは、基本的にできませ
ん。もし難民認定が下りず、やむを得ず国に帰った場合に迫害を受ける可能性
が高まるからです。

 したがって、難民の医療や、弁護士費用などのために募金を募る場合は、往
々にして突然、しかも限定された情報しか公開できません。

 今回のケースが最後の段階まで皆さまにお知らせできなかったことには、こ
ういった背景があります。このような形で皆さまにご支援を求めることには私
たちとしても心苦しく、他の方法はないものかといつも思います。

 しかしこの問題の根本には、チェチェン戦争による難民の流出が今も続いて
いることがあります。また、難民申請から2年もの間、申請者を放置してきた
法務省・入管当局の態度にも、問題があると言わざるを得ません(チェチェン
だけでなく、他の地域からの難民申請者に対しても、同様の扱いがされていま
す)。

 いずれにしても、これからもチェチェンからの難民が日本に着くことが予想
されます。その場合のために、チェチェン連絡会議としては、一般寄付金とし
て皆さまからの募金をお受けしてまいります。どうぞご協力をお願いします。


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■チェチェンに関連する映画

 来年1月に、東京でアムネスティ・フィルムフェスティバルが開かれ、人権
問題に関連する9本の映画が公開されますが、うちひとつは、2年前に暗殺され
たジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤに関するもので、「アンナへの
手紙」(エリック・バークラウト監督)という作品です。プーチン政権のチェ
チェン侵攻を激しく批判していた彼女へのオマージュで、とても素直なつくり
の映画です。

    http://www.amnesty.or.jp/?aff09

 また、同時期に東京・渋谷区のユーロスペースでは、「チェチェンへ−アレ
クサンドラの旅」(アレクサンドル・ソクーロフ監督)という映画も公開され
ます。くわしい上映情報は、ユーロスペース(03-3461-0211)までお問い合わ
せください。
    http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=177

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■最近のチェチェンの状況

 11月12日に開かれるバイエフ医師の講演会では、医療活動への取り組みや、
現在のチェチェンの状況が語られる予定ですので、具体的な事柄はそちらに譲
りますが、全般的にチェチェンでの戦闘は縮小する傾向にあり、外国からのア
クセスも比較的自由になりつつあるようです。

 「メモリアル」をはじめとするロシアの人権NGOも、首都グローズヌイに事
務所を置いて活動するようになっており、人権状況の改善が期待されます。バ
イエフ医師も親ロシア派の政府当局とも一定の連絡をとりつつ活動していると
のことです。

 しかし、その一方で、チェチェンに隣接するイングーシ共和国(人口46万
人)では、現地の人権活動家が「すでに内戦が始まっている」というほどの混
乱が起こっています。

 プーチン大統領(当時)によって任命されたイングーシのジアジコフ政権
(10月30日辞任、後継未定)は、人権活動家の逮捕や、監獄での処刑などを行
なっており、腐敗の横行ともあいまって、人々の不満が高まっています。

 また、ロシア軍はこの地域での掃討作戦を強化していることから、アムネス
ティ・インターナショナルは、「イングーシをチェチェンの二の舞にするな」
という声明を発表しています。

 イングーシでは2004年以降、市民に一定の支持を得た武装抵抗勢力が育って
おり、チェチェン独立派の一部も合流して、政府やロシア軍部隊に対してたび
たび奇襲攻撃をかけるなど、騒然とした状況です。

 一方、ヨーロッパに逃亡している、およそ10万人のチェチェン難民の帰還の
めどはたっていません。チェチェンから新たに逃亡しようとする人々の多くは
ヨーロッパを目指すのですが、ビザが出なかった場合、日本のビザを申請し、
難民認定を求めることになります。難民の流出は今も続いています。

 こういった情報を総合すると、チェチェンを含む北コーカサス地域はいまだ
に不安定な要素を抱えており、比較的平穏と見られるチェチェンでも、見えな
いところで抑圧が続いている可能性があります。また、イングーシでチェチェ
ンと同じような戦争が始まる可能性も、排除できません。

 もう一度、皆さまのご協力に心から感謝を申し上げます。ひきつづき、チェ
チェンにご注目くだされば幸甚です。


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■イベント情報

 ●11/12 春日:チェチェン人外科医ハッサン・バイエフ講演会
    戦争被害の子どもたちを救おう〜チェチェンでの小児医療への取り組み〜

  戦災復興が進められるチェチェンの首都グローズヌイ。
  子どもたちへの医療を中心に活動するハッサン・バイエフ医師が来日し、
  東京で講演する。

  http://chechenchildren.jpn.org/1112meeting.pdf


 ●1/17,18 新橋:アムネスティ・フィルム・フェスティバル
                     (『アンナへの手紙』上映あり)
  今日、映画を観る自由があった。
  私たちが当たり前に思っていることさえかなわない人々がいる。
  その人々のことを知ろう。

    http://www.amnesty.or.jp?aff09


 ●11/8 白金台:シンポジウム
   『アジアの先住民族・マイノリティ女性たちからの提言
                                 差別と暴力をなくすために』

   バングラデシュ、チッタゴン丘陵地帯と日本をつなぐ共通の課題は何か?
   アイヌ、沖縄も視野に入れ、多彩なゲストが語る。

   http://daily.jummanet.org/?eid=873026


 ●12/13 御茶ノ水:「終焉に向かう原子力」(第7回)

    なぜ、六ヶ所再処理工場の運転を阻止しなければならないのか。
    密かに進む日本の核武装計画を決して許してはならない。
    研究者と気鋭のライター、作家が語る。

    http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20081016/1224110381


 ●12/1 荻窪:杉並・憲法の夕べ

    変転する政治環境、いまこそ憲法問題の本質を。
    辻井喬さんの講演、市原悦子さんの朗読。

    http://www.kateryna-music.com/main/images/flyer07.jpg


 ●12/13 大阪:アフガニスタン・レポート 混迷の大地で

    混迷を深めるアフガニスタン情勢。
    米軍、ISAFの爆撃は続き、タリバンの反撃もあって犠牲者は増加している。
    現地で取材を続ける白川徹さんの講演。

    http://rawaren.blog36.fc2.com/


 ●12/18 蒲田:カテリーナ・グジー クリスマス☆コンサート

    ウクライナの歌姫、カテリーナ・グジーさんの民族楽器による演奏と歌。

    http://www.kateryna-music.com/main/index.html


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■映画・写真展など


 ●11/21-12/7 下北沢:燐光群公演『戦争と市民』

    戦争は、まだ終わっていなかったんだね…。
    防空壕跡に居ついた女性が目覚め、世界を変えようとする。
   「街」、「市民」の概念を洗いなおす。

    http://www.alles.or.jp/%7Erinkogun/sensoutoshimin.html


 ●『ビリン・闘いの村』

    パレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のビリン村。
    若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。

    http:/www.hamsafilms.com/bilin/


 ●『おいしいコーヒーの真実』

    世界第三位のコーヒー消費国日本。
    あなたがスターバックスで支払ったコーヒー代はどこに行く?
    コーヒー好きの誰もが見るべき映画です

    http:/www.uplink.co.jp/oishiicoffee/


 ●『光州5.18』

    韓国現代史や民主化運動に関心を持つきっかけに。
    1980年、韓国で起きた<光州の悲劇>を完全映画化

    http:/may18.jp/


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