チェチェン総合情報

【転送歓迎】チェチェンイベント情報 2007.05.08

http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/chn/0711event.htm (HTML版) 発行部数:1652部

チェチェン紛争の情報+αを発信するメルマガです。 購読は無料です。バックナンバーはこちら


INDEX

先日、自民党改憲案の問題点を考える勉強会に参加してきました。以前から関心を持っていたので、この機会にまとめてみましたが、「5分でわかる自民党改憲案」は、自分で読んだら7分かかることがわかりました。ともあれ、日本の時事問題もどうぞご覧ください。(邦枝律/チェチェンニュース)

■「美しい国」へ?—5分でわかる自民党改憲案—

あなたは憲法を変えることに賛成ですか?それとも反対ですか?

4月28、29日に毎日新聞が行った全国世論調査によると、憲法を「改める方がよい」が51%と半数以上(「改めない方がよい」が19%、「わからない」が22%)で、「改める方がよい」の8割は、現行憲法が「時代に合っていない」ことや「一度も改正されていない」ことをその理由に挙げているそうです。

[毎日新聞 5/2]
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070503k0000m010106000c.html

けれども、憲法は変わるとすれば、いったいどのようなものになるのでしょうか。もしも、あなたが憲法を変えたいと思っているとしても、憲法はあなたの望み通りに変えられるものなのでしょうか。

今、国会では、任期中の憲法改正を公約に掲げる安倍政権のもとで、改憲をするために必要なルールを定めた「国民投票法案」(改憲手続き法)が採決されようとしています。国民投票法案の問題点についてはここでは繰り返しませんが、この法案を通したくてたまらない人たちが作成した改憲案が、2005年にまとめられた自民党の新憲法草案です。

では、安倍総理が、「自民党新憲法草案を基本に国民的な議論をしていきたい。第2次案作成は全く考えていない」と言い切ってしまうほど、私たちに自信を持ってお勧めしてくれる改憲案は、いったいどのようなものなのでしょうか。今回のチェチェンイベント情報に概要をまとめてみました。

[毎日新聞 5/2]
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070503k0000m010126000c.html

国民投票法案(改憲手続き法)に反対の声を!
http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/chn/0705event.htm

●権利の国営化、義務の民営化

いきなり結論からで申し訳ありませんが、自民党の新憲法草案は憲法の体をなしていません。なぜなら、自民党の改憲案は、近代憲法の本質である「立憲主義」を根幹から否定するものだからです。立憲主義とは、個人の自由と権利を保障するために国家権力を制限した法(=憲法)にもとづいて政治を行うこと。つまり、憲法とは、国民が国家の権力を制限するための法なのです。

ところが、自民党の改憲案では、国民と国家の関係が180度逆転し、現行憲法の三原則である「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」が、ちょっとした独裁国家並に崩壊しています。国家の自由と権利を保障するために国家が国民を義務で縛りつける内容になっている自民党改憲案は、権利を国営化して義務を民営化する「偽装憲法」と言ってもよいと思います。そういえば北朝鮮は偽札も作っているようですが…。

●基本的人権のダイエット

日本国憲法は、「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」の三原則が相互に不可分な形で関連して形づくられています。「国民」が「すべての基本的人権の享有を妨げられない」(第11条)ためには、「主権が国民に存することを宣言し」(前文)なければならないし、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」(前文)なければならないということですね。

けれども、自民党の改憲案では、この基本的人権に対して、国家権力による露骨な制限が設けられています。

【現行法13条】「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

【改憲案13条】「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

一見どこが違うの?と思ってしまいそうな「公共の福祉」と「公益及び公の秩序」。しかし、実際には、人間とサルほどの違いがあります。

「公共の福祉」というのは、一言でいうと、人権と人権のぶつかり合いを調整するための原理。つまり、個人が最高の価値である以上、個人の人権を制限できるものは別の個人の人権でなければならない(個人の人権を制限する根拠は別の個人の人権保障にある)というのが「公共の福祉」です。例えば、ある人の表現の自由が、別の人のプライバシーと衝突するような場合に、それを調整することが「公共の福祉」に当たります。

ですから、「公共の福祉」とは、社会の秩序や公共的な価値のためには個人はわがままをいってはいけないとか、多数の人の利益になるときには少数の人は我慢するべきだというようなものではなく、むしろ個人を最大限に尊重するために必要不可欠な原理なのです。

一方、改憲案の「公益及び公の秩序」は、国家が認定した利益や秩序であるため、国家はその気になれば私たちに難癖をつけていくらでも人権を制限できることになります。

自民党の改憲案において、この13条の改変というのは、実は9条の改変よりも深刻な意味を持つのではないかと思います。なぜなら、新13条がある限り、「プライバシー権」や「環境権」といった新たな人権をいくら取ってつけたとしても、国家はそれを守らないこともできるのですから。

●戦争のできる「美しい国」へ

ここまでで、自民党の改憲案が、立憲主義を否定し、「基本的人権の尊重」と「国民主権」を解体するものであることが、ある程度見えてきたと思います。では、最後の「平和主義」は一体どうなってしまうのでしょうか。少し長いのですが、まずは条文を紹介します。

【現行法第9条】

(1) 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(2) 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

【改憲案第9条】

(1) 同上

(2)

1)我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。

2) 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

3) 自衛軍は、第1項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

4) 前2項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。

改憲案の第9条について、何が「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」であるかを決めるのはおそらく米国であり、何が「緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動」に当たるのかを決めるのは、おそらく日本政府なのでしょう。要するに、「自衛軍」という名の軍隊を、国の外では戦争のために用い、国の内では治安維持のために使うことを宣言したのが、この新9条だと思います。

すでに自衛隊がイラクで米軍の兵員や物資を輸送し、国際法的には軍事行動と解釈される行為に手を染めている以上、9条の改憲を止められれば日本が「戦争のできる国」にならずに済むとも思えませんが、新9条の創設によって、日本が戦争国家への道を邁進することは、ほぼ間違いないでしょう。この改憲案では、9条の第一項はそのまま残されていますが、ひとたび9条の第二項が改変されれば、十数年後、あるいは数年のうちにも、「やはり平和主義は時代の流れに合わなかった」とかいう理由で、さっくり消されてしまうかもしれません。

●これからできること

日本国憲法や、自民党新憲法草案、国民投票法案を知るためのサイトが以下にあります。

マガジン9条
http://magazine9.jp/index.html

自民党新憲法草案全文
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/jiminkaikenann.htm

憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報
http://www.news-pj.net/kenpoushingi/

自民党改憲案には、この他にも様々な問題がありますが、今回はここでひとまず終わりにします。このまま行くと、憲法は今から3〜4年後には「改正」されることになるかもしれませんが、おそらく多くの人たちはその後も戦争に対するリアリティを持たずに済むかもしれません。徴兵制を敷かなくても、貧しい人々にとっては軍隊に入ることが唯一の希望であるかのように映る米国型の格差社会が、日本でももうじき完成しようとしているのですから。

まずは、知ることから始めていきましょう。

■イベント情報

●5/20 長野: 『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070409/1176098336

●7/1 大阪: 『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070418/1176870879

●5/10 東京: みみの会:岡村淳さん講演
http://d.hatena.ne.jp/miminokai/20070418#1176908775

●5/12 神奈川: 改憲と国民投票法に反対するシンポジウム
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070508

●5/13 東京: 地球のなかま映画祭2007
http://momotomonet.seesaa.net/article/37121298.html

●5/13 東京: これでもか!?笑って読み解く大共謀集会
http://tochoho.jca.apc.org/evx/event20070513.html

●5/22 東京: とめようやめよう共謀罪Ⅱ
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070424

●6/22 各地: 動けば変わる! TEAM GOGO 2007
http://www.teamgogo.net/

■長期間のイベント情報

●12/1- 東京ほか: みえない雲
http://www.mienaikumo.jp/

●1/27- 東京ほか: グアンタナモ、僕達が見た真実
http://www.guantanamo.jp/

●3/10- 東京: パラダイス・ナウ
http://www.uplink.co.jp/paradisenow/

●5/26- 東京: 映画「ひめゆり」
http://www.himeyuri.info/

●5/29-11/10 東京ほか: DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 「地球の上に生きる2007」
http://www.daysjapan.net/news/news2007/news200703_01.html


▼ チェチェンニュース/チェチェンイベント情報は、ロシア南部で続くチェチェン戦争に反対し、平和的解決を求める立場から発行しているメルマガです。

▼ チェチェンニュースはみなさまの応援によって発行されています。
通信費、事務経費の寄付をおねがいします。いくらでも結構です。
<郵便振替口座番号 00130-8-742287 チェチェンニュース編集室>

▼ 転送・転載・引用は歓迎です。なお、印刷物への転載は事前にご相談ください。
▼ ウェブサイトはこちらです: http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/ (チェチェン総合情報)
▼ 新規購読/購読停止はこちらから: http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/chn/index.htm
▼ よろしければ ootomi@mist.ocn.ne.jp までメールください。
いただいたメールは、内容により、サイトでご紹介いたします。公開を希望されない方は、 その旨お書き添えください。
▼ 編集人:邦枝律 発行人:大富亮