チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.04 No.14 2004.05.01

発行部数:1063部

アムネスティ発表国際ニュース(2004年4月7日)
AI INDEX:EUR46/014/2004

チェチェンとイングーシの状況は悪化している。
失踪、強かん、拷問、超法規的処刑の新たな証拠

アムネスティ・インターナショナル、ヒューマンライツ・ウォッチ、拷問被害
者のケアのための医療基金、メモリアルによる共同声明

http://www.reliefweb.int/w/Rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/ec26a5ea2294a9f085256e70006cb1f6?OpenDocument
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 2003年10月におこなわれたチェチェン共和国大統領選挙を、ロシア政府はチェ
チェンが正常化へと向かう大きな変化であるとして歓迎した。しかし、同地域におけ
る暴力と虐待の連鎖は依然として断ち切れていない。ロシア連邦軍とチェチェン武
装勢力による、強制「失踪」、強かん、拷問、超法規的処刑は、チェチェンでは日常
茶飯事のことである。同じような人権侵害がイングーシでも増加している。さらに、
ロシア政府は、「正常化」へ進む過程の段階として、イングーシの避難民キャンプを
閉鎖し、弱い立場にある国内避難民をチェチェンに移動させるために、圧力をかけ
誘導している。

 「アムネスティ・インターナショナル」、「ヒューマンライツ・ウォッチ」、「拷問被害者
のケアのための医療基金」、「メモリアル」は、チェチェンとイングーシにおける人権
侵害を終わらせるために直ちに措置を講じるよう、ロシア連邦政府に対して要請す
る。我々は国際社会に対し、ロシア政府が国際人権基準の下でその義務を果たす
ように訴えることを求める。特に国連人権委員会は、チェチェンとイングーシにおけ
る状況に関し、そうした内容の強い決議を採択すべきである。重大で組織的な人権
侵害を明瞭に非難することに失敗すれば、同委員会の倫理的権威をおとしめ後退
させることになるであろう。

●チェチェン

 2004年初頭、ロシア軍とチェチェン武装勢力は、チェチェンにおける深刻な人権侵
害に関与し続けた。しかし、最近「カディロフツィ」(カディロフ一派)と呼ばれる新興
武装勢力が台頭してきており、多くの「失踪」事件を引き起こし、チェチェンの多くの
人々はロシア軍以上にこのカディロフツィを恐れていると語っている。このカディロフ
ツィは、親ロシア派のチェチェン大統領アフマド・カディロフの息子を中心に組織され
た武装勢力である。

 人権団体メモリアルは、チェチェン領の約3分の1の状況を組織的に監視してい
る。メモリアルによれば、2004年上四半期で78人がチェチェンで誘拐され、そのうち
の41人がその後「失踪」したとしている。また同時期に、少なくとも30人の民間人が
武力紛争によって死亡した。アムネスティ、ヒューマンライツ・ウォッチ、メモリアルが
記録している最近のいくつかの人権侵害事件は、以下のようなものである。

・2004年3月18日午前2時、迷彩服を着て覆面をかぶった男たちが、チェチェン北部
にあるナウルスカヤ村にあるハムブラトフ一家の自宅に押し入り、24歳のティムー
ル・ハムブラトフを拘束した。彼の親戚によると、侵入者たちは自らを連邦保安庁
(FSB)の者だと名乗り、ティムール・ハムブラトフを違法な武装集団に所属している
容疑で、地元警察署へ連行していくと述べた。同午前遅くに、ティムール・ハムブラ
トフは拘禁施設の中で死亡した。メモリアルが親戚から入手した、彼の死体を写し
た映像は、腕や脚が切断され、これまで寄せられている情報と一致する拷問の傷
痕が認められた。

・2004年3月27日午前2時頃、シャリ地方ドゥバ・ユルト村に、迷彩服に身を包んで
覆面をかぶった大勢の男たちを乗せた8台の軍用車が入ってきた。彼らは、19の民
家を襲撃し、28歳から44歳の11人の男性を拘束した。そのすぐ後、3人の男性が村
の近くで解放されたが、残りの8人は「失踪」した。ある情報筋が親類たちに伝えた
ところによれば、彼らはハンカラにあるロシア軍基地に拘束されているという。しか
し検察はそれを否定している。

 2004年4月15日火曜日、英国の公益団体「拷問被害者のケアのための医療基金」
は、チェチェンにおける武力紛争において強かんが行なわれているという、最初の
重要な信頼できる証拠を提供する報告書を発表する。報告書「チェチェン紛争にお
ける強かんとその他の拷問:英国にやってきた難民申請者から得られた証拠」
シャーロッテ・グランヴィル・チャップマン博士著、拷問被害者のケアのための医療
基金(英国ロンドン)発行(2004年4月)(なお、報告書は以下のウェブサイトからも
入手できる、http://www.torturecare.org.uk/、医療基金広報部−電話
+44-[0]20-7697-7792)。

 報告書は、ロンドンにある医療基金の治療センターに収
容されている、チェチェン紛争から逃れてきた35人の難民申請者−男性が16人、女
性が19人−を対象にした、医学的かつ心理学的な記録に基づいている。検査と治
療の間、16人の女性と1人の男性が、医療基金の臨床医に強かんされたと打ち明
けた。このうち13件がロシア兵によるもの、3件がロシアの警察官によるもの、1件
がチェチェンの反政府武装勢力によるものとされている。また17人の強かん被害者
のうち、10人がチェチェン人、5人がチェチェン人とロシア人の両親を持つ人であり
(その中に、チェチェン武装勢力により強かんされたという女性も含まれている)、2
人がロシア人であった。強かんの被害者からの聴き取りはすべて、強かん被害者
やその他の性的暴力の被害者からの聴き取りについて何年もの経験を持った専門
医によって行なわれた。彼らの証言は信頼できるものであり、他の強かん被害者の
証言とも一致していると、医療基金は結論している。

 人権団体は、これまで長らくチェチェンで性的暴力が蔓延していると考えていた。
しかし、事件そのものが恥辱として隠されてしまうため、そのような性的暴力に関す
る情報を収集することが困難であった。実際、強かんの被害者の半数以上は、事
件からはるかに時間を経た後でも、不名誉ないし恥辱だという傷痕を抱えている。
ある女性の被害者は、彼女が強かんされたことが明らかになったとき、同じ地域に
住む女性に侮辱され暴行されたと、医療基金に語っている。

 医療基金は、報告書の中で、何度も蹴られたり、殴られたり、あるいは焼かれたり
するなどの拷問や虐待についても報告している。基金の医師たちは、肩の不接合、
骨折、腎臓の損傷などを記録している。これらの報告は、チェチェンで行なわれてい
る拷問について、この声明に署名している他の団体が集めた情報と一致している。

●国内避難民の状況

 イングーシにある10の避難民キャンプには何千人もの国内避難民が生活してい
るが、彼らは、チェチェンの治安状況に対して十分根拠のある不安を抱いている。し
かし、ロシア政府は、彼らの不安を無視してチェチェンに戻るようにと圧力をかけ続
けている。多くの場合ロシア政府は、イングーシに住み続けたいと望む国内避難民
に、代替の居住施設を提供するという約束を果たしていない。また、多くの帰還者
が住まわされているロシア政府が運営するグロズヌイの居住施設は十分な状況に
はない。

 4月1日、ロシア政府はスプートニク国内避難民キャンプを閉鎖した。これは、イン
グーシでこの半年間で閉鎖された中で四番目に大きなキャンプである。キャンプに
いた避難民は、ロシアとチェチェン政府の役人たちが彼らをチェチェンに戻るよう「あ
めとむち」の手法を使ったと、アムネスティ、ヒューマンライツ・ウォッチ、メモリアル
に語った。避難民たちによると、役人たちは、もし彼らがチェチェンに戻れば、損失
財産に対する補償を約束するが、彼らが戻らない場合には人道支援を打ち切ると
警告した。さらに、法執行官は、もしチェチェンに戻らないなら、弾丸を撃ちこむか麻
薬づけにするぞと脅したという。アムネスティ、ヒューマンライツ・ウォッチ、メモリア
ルの調査員は、同じような「あめとむち」の方法がイングーシにある最後のキャンプ
のサツィタでも行なわれていることを確認した。

 多くの国内避難民は、キャンプから追い出されてチェチェンに戻され、いわゆる
「一時居住センター」(TAC)に滞在している。3月下旬にグロズヌイにある4つの一
時居住センターを訪れた際、アムネスティ、ヒューマンライツ・ウォッチ、メモリア
ルの調査団は、一時居住センターの環境は国際基準を満たしていないことを確認した。
それぞれの一時居住センターでは、6人用につくられた14平米の部屋に8人からそれ以
上が収容されていた。どの施設にも水道設備や下水設備はなく、人道支援の食糧
は不定期で不充分で、国内避難民は人道支援機関から何も受け取っていないと
語っていた。

 調査団はまた、ロシア政府が、チェチェンに戻った避難民に対してその損失財産を
補償するという約束を果たしていないことも確認した。グロズヌイにある一時居住セ
ンターにいる12人以上の国内避難民のうち、補償を受け取った人は誰もいなかっ
た。多くの人は、書類手続が取られていないとか、補償を受取者リストから奇妙に
も名前が消えていたりした。

●イングーシにおける状況

 長い間チェチェン紛争の特徴であった人権侵害は、イングーシへと急激に広がり
つつある。メモリアルは、2004年だけで多数の「失踪」の情報を受け取っている。人
権団体は、ここ数か月の間に行なわれた多くの即決処刑、民間人の死傷につなが
るような攻撃があったことを記録している。

イングーシにおける最近の調査で、アムネスティ、ヒューマンライツ・ウォッチ、メモリ
アルは以下のことを報告している。

・2004年3月11日、武装した人々が、ヴェルクニエ・アチャルキ村の近くでイングー
シの副検察官であるラシド・オズドエフの車を止め、彼を拘束した。目撃者が彼の親
戚に語ったところによると、彼は始めイングーシの首都であるマガスにある連邦保
安庁(FSB)の本部に連行され、その後チェチェンのハンカラにあるロシア軍基地に
移送され、別の名前で拘束された。イングーシ検察庁は、3月15日に彼の誘拐につ
いて刑事事件としての捜査を開始したが、今日まで彼の消息の公式な確認はなさ
れていない。ラシド・オズドエフの親戚によると、彼は連邦保安庁(FSB)による違法
な行為を調査していたとのことである。

・2004年3月15日、午後10時30分頃、ロシア軍のヘリコプターが、イングーシのスレ
プツォフカヤ村近くの川岸に停めてあった車を攻撃した、非武装の民間人に対する
故意の攻撃を行なったと思われる。車に乗っていた4人が車から出て逃げたとき、
ヘリコプターは彼らをロケット弾で攻撃した。4人のうちの1人である20歳のムサ・ハ
ムホエフは、その場で殺された。10代の2人は重傷を負い、地元の病院に収容され
た。そのうち1人、16歳のイブラヒム・ハシャグルゴフは、1週間後に怪我のために
死亡した。もう1人の若者も現在重体である。車に乗っていたもう1人がどうなった
のかは明らかではない。イングーシ検察庁は刑事事件として調査を行なっている。

・2004年3月2日、午後5時頃、51歳のイサ・ハズビエフと彼の妻と娘は、アルティ
エボ村近くを車で走行していた。家族は、3台の車にのった武装した男たちが他の車
を停めるのを目撃した。武装した男たちは、車に乗っていた人を引き連り出し、外へ
投げ出した。彼が逃げ出そうとしたところ、武装した男たちは彼を撃ち殺した。ハズ
ビエフは車を40メートルほど前で停め、進むべきか後退すべきか迷った。彼が車を
停めたとき、3人の武装した男が何の警告もなく彼の車に4回発砲した。ハズビエフ
は肩と脚に怪我を負った。彼の24歳の娘は首と頭に怪我を負い、3日後に病院で
死亡した。メモリアルは最近、それらの武装した男たちがイングーシの連邦保安庁
(FSB)に所属しているという証拠を発見した。


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