チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.04 No.06 2004.03.07


INDEX
・モスクワ地下鉄事件に犯行声明?
・野戦司令官ゲラーエフの戦死
・ヤンダルビエフ暗殺とカタール・ロシア当局の応酬


■モスクワ地下鉄事件に犯行声明?
 (大富亮/チェチェンニュース)

 これは新しいパターンなのだろうか。3月2日に、‘Gazotan Murdash’なる
グループが、チェチェン強硬派のサイト、「カフカス・センター」にモスクワ
地下鉄爆破事件の犯行声明を送り、同サイトに掲載されたが、当のカフカスセ
ンターも、このグループが何者なのか把握していないようだ。

 ロム・アリ・チェチェンスキーと名乗る、同グループの代表者は、声明文に
次のように記した。「爆破は小規模なものだったが、成功だ。これはアルダ村
の復讐で、ほんの始まりに過ぎない。目には目を!傷には傷を!自由か、でな
ければ死を!」

 アメリカの人権NGO、ヒューマンライツ・ウォッチによれば、2000年2月
5日、グロズヌイ近郊のアルダ村で掃討作戦があり、50人前後のチェチェン
人がロシア軍に殺された。HRWの報告書の中に、ロム・アリ・イディゴフ(35
歳)という名前を見ることができる。

 最近の傾向としては、2002年12月のグロズヌイ政庁爆破事件から、昨
年12月のロシア下院ビル付近での自爆攻撃まで、事件が発生した後にはまず
チェチェンのマスハードフ大統領が関与を否定し、民間人への攻撃を非難する声
明を出すが、その後から同じくチェチェン側の野戦司令官のバサーエフが犯行
声明を出し、武装抵抗運動内の不一致が繰り返されていた。だが、今回犯行声
明を出したグループは、これまで名称さえ知られていなかったため、声明が真
正のものかどうかもわかっていない。また、ほかにも犯行声明を出している組
織があり、今後の展開が注目される。

Unknown group claims Moscow metro blast
http://www.gazeta.ru/2004/03/02/oa_113618.shtml

HRW: FEBRUARY 5: A DAY OF SLAUGHTER IN NOVYE ALDI
http://www.hrw.org/reports/2000/russia_chechnya3/Chech006-07.htm#P494_70752

モスクワ地下鉄爆破事件にチェチェン過激派の声明か?
http://groups.msn.com/ChechenWatch/general.msnw?action=get_message&mview=1&ID_Message=1269


■野戦司令官ゲラーエフの戦死

 94年からの第一次チェチェン戦争から抵抗活動を続けていた野戦司令官ル
スラン・ハムザート・ゲラーエフが、チェチェン・ダゲスタンの国境近くで、
ロシア軍に狙撃されて死亡した。ゲラーエフは1964年、コムソモーリスク
生まれ。1992年のアブハジア紛争(グルジア内の分離独立紛争地域)で、
アブハジア側につき、シャミーリ・バサーエフらを含む数百人のチェチェン人
部隊とともに戦闘に参加した。アブハジア以降はチェチェンの初代大統領ドゥ
ダーエフの特別部隊の指揮官となり、1996年に南西戦区の司令官。停戦後
の1997年の4月、マスハードフ政権の副首相の一人となり、98年には国防
大臣となった。この時期にメッカへ巡礼。

 1999年のロシア軍の再侵攻によりグロズヌイが陥落した後、ゲラーエフ
はコムソモーリスコエを経由して活動拠点をグルジアのパンキシ渓谷に移し、
2000年にはグルジア側からアブハジアを攻撃した。92年の、ちょうど反
対の行動を取ったことになる。理由はよくわからない。その後、パンキシ渓谷
の拠点はグルジアとロシアの非難合戦に発展した。ロシア側からの圧力をかわ
すため、グルジアの当時の大統領シュワルナゼは、2001年9月11日の同
時多発攻撃以降、米国が行っている「テロとの戦争」に賛意を示し、米軍のグ
ルジア進駐を受け入れた。2002年夏、ゲラーエフの部隊はパンキシ渓谷か
らチェチェンに越境し、イングーシ、チェチェン、ダゲスタンで、ロシア軍に
対する武装抵抗を続けていた。

Ruslan Gelayev Feared Chechen rebel-turned-bandit
http://news.independent.co.uk/people/obituaries/story.jsp?story=497568


■ヤンダルビエフ暗殺とカタール・ロシア当局の応酬

 カタールで2月13日に暗殺されたヤンダルビエフ・元チェチェン臨時大統
領の事件がややこしくなっているので、週末の新聞情報が少ない間に整理した。

 2月26日に、カタール当局はヤンダルビエフ暗殺に関与した容疑のあるロ
シア人特務機関員3名を拘束した。しかしその直後、モスクワのシェレメチボ
−2国際空港で、外貨の不正持込を理由に、カタール人のレスラーとコーチの
3名が逮捕された。コメルサント・デイリーが空港警察に質問したところ、
「ここにはいないよ。もうFSB(連邦保安局)さ」という返事があった。この日
のロシアとカタールの交渉の結果、ロシア人、カタール人のそれぞれ1名づつ
が釈放された。カタール当局は、拘束したロシア人特務機関員についての情報
を公表していない。

 ロシア側は、逮捕されたロシア人の即時引渡しをカタールに要求している。
ロシア外務省の当局者は「ロシアの特務機関はカタールには情報網を持ってい
ない」として、ヤンダルビエフの暗殺に関わったとする嫌疑を真っ向から否定
している。また、「事件の背景には、チェチェン、カシミールなどのイスラム
原理主義者のテロ活動資金の横領にからむ内輪もめがあるはずだ」と言うが、
カタール人逮捕の理由については明らかにしようとしない。その一方、ロシア
のドミトリー・ロゴージン下院議員は「カタールから二人を取り戻すために軍
を使うべきだ」と発言し、外務省があわててこの発言を「議員個人の意見」と
取り消す一幕もあった。

 テニスのカタール・オープンに出場しているロシアのアナスタシア・マスキ
ナ選手がカタールの官憲に拘束されたという報道がロシアで流れたことから、
マスキナ周辺への安否の問い合わせが殺到したが、これには彼女自身おどろい
てこう語っている。「そもそも政治とスポーツはまったく別の問題ですし、混
同しないほうがいいと思います。私はドーハで自由に行動しています。わたし
はカタールが好きですし、またここに来たいと思います」

 ヤンダルビエフ暗殺の問題について敏感になっているのはカタール、ロシア
両政府だけではない。2月29日には、湾岸諸国でつくる湾岸協力会議加盟国
外務大臣の共同声明として、ヤンダルビエフがモスクから出てきたばかりのと
ころを息子と一緒に爆殺されたことを、「宗教と人倫に対する冒涜であり、許
されない」との見解を明らかにした。また、共同声明は犯罪捜査と真相の究明
は最重要の事柄だとして、ロシア側の圧力をけん制している。

 いまのところ、話題はヤンダルビエフの死の真相から、カタールとロシア政
府の綱引きへとそれてしまっている感じがする。カタール人を逮捕したロシア
の措置はあまりに迅速で、カタールの動きを事前に察知し、逮捕可能なカター
ル人をマークしていたのではないかという疑いが残る。いずれにしても国際社
会が注目している中でロシア人特務機関員に対する尋問が行われるならば、そ
の結果は非常に気にかかる。モスクワで逮捕された2名については逮捕理由も
明らかにされず、報復的な感じ強い。とばっちりが致命的な事件に発展しない
ことを祈るばかりだ。拘束されたカタール人のナッサー・アルムベキのいとこ、
モハメッドは、「ヤンダルビエフの暗殺も、カタールのスポーツ使節の逮捕も
許せない。これが大国のすることなのか。無実の人々に対して、なんて野蛮な
しうちをするんだ」と、地元紙に対して怒りを語った。

Qatar Interrogates Russians in Chechen Rebel Murder
http://mn.ezone.ru/english/issue.php?2004-8-14

Ekho Moskvy, 04 March 2004 [BBC Monitoring]
Detained Qatari nationals unaccounted for in Russia

Kin confident of detained Qatari's safe return
http://www.thepeninsulaqatar.com/Display_news.asp?section=local_news&month=march2004&file=local_news2004030383028.xml

Gulf allies back Qatar; FM defends trial of Russians
http://www.thepeninsulaqatar.com/Display_news.asp?section=world_news&month=march2004&file=world_news20040301738.xml


チェチェンイベント情報 2004.03.10

Webサイト: http://chechennews.org/


■「チェチェンで何が起こっているのか」記者説明会のお知らせ

 高文研から今月下旬に発売される単行本「チェチェンで何が起こっているの
か」の出版にあわせ、外務省記者クラブにて記者説明会を行い、内容見本を配
布します。ロシア大統領選を目前にした現在の状況をどう考えるか、懇談でき
れば幸いです。また、クラブと関係のない方からの取材や情報交換には別途応
じますので、どうぞご連絡ください。

記者説明会:
日時:3月12日(金)午後2時より
場所:外務省記者クラブ(霞クラブ)
出席者:林克明(ジャーナリスト)/大富亮(チェチェンニュース)
連絡先: チェチェンニュース編集室
ootomi@chechennews.org 044-599-8398(Phone/Facsimile)
メールが確実です。


■フランス/国際NGOがチェチェン問題について記者会見

 ロシア大統領選挙の前日の3月13日、北コーサスで活動を続けている3つのN
GOが、イングーシに避難しているチェチェン人たちの悲惨な状況を訴えるた
めに記者会見<地獄に戻る>を行います。Action Contre la faim (飢餓に対し
ての行動)、MDM(メドゥサン・デュ・モンド/世界の医療団)、Handicap
International が共同開催し、 MDMは、現地で活動している医療チームの日
常的な証言を基に、会長のクロード・モンコルジェと副会長のジェゼフ・ダト
が会見を行います。
 うち、MDMは日本国内でも活動をしています。くわしくは次の記事を参照くだ
さい。

会場: ラジオフランス内・外国人記者クラブセンター(CAPE)
(パリ20区ケネディー大統領通り)
日時: 3月11日11時より
問い合わせ:
メドゥサン・デュ・モンド ジャポン
tel:03-3585-6436 fax:03-3585-1134 
E-mail:mdmjap2@gol.com


■チェチェン共和国「紛争下の市民の保護」
 メドゥサン・デュ・モンド(世界の医療団)写真展
 「Au-dela du soin 治療を超えて」人道医療援助の今

期間:3月13日(土)〜 3月31日(水)(日祝休)
時間:9:00 〜 20:00 (土曜日は17:00まで)
入場無料
会場:ひょうご国際プラザ 交流ギャラリー
神戸市中央区脇浜海岸通1−5−1 国際健康開発センター2F
主催:メドゥサン・デュ・モンド ジャポン
共催:(財)兵庫県国際交流協会
協力:富士写真フイルム株式会社ほか

 チェチェン共和国「紛争下の市民の保護」、アフリカ「コンゴ民主共和国と
コートジボワールのストリートチルドレン支援プロジェクト」、そしてアジア
[カンボジアの修復外科プログラムスマイル作戦]等を写真で紹介します。
メドゥサン・デュ・モンド(世界の医療団)活動報告会も同時開催。

問い合わせと参加申し込み:
メドゥサン・デュ・モンド ジャポン
tel:03-3585-6436 fax:03-3585-1134 
E-mail:mdmjap2@gol.com
(電話受付は 平日10 :00〜18 :00日・祝 休日)


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