チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.03 No.16 2003.04.09

発行部数: 920部

■欧州評議会、チェチェン戦争犯罪法廷設置を勧告へ

4月2日、欧州評議会議員総会(COE-PACE)は、チェチェン問題について、今 後も問題が解決せず、人権被害が続く場合、旧ユーゴ国際戦犯法廷と類似の組 織、チェチェン戦犯法廷を設けるべく行動するとの決議を採択した。激しいロ シア側の抵抗にもかかわらず、賛成97対反対27で採択された。

決議案はドイツのルドルフ・ビンディグ議員が起草し、ロシアおよびチェチェン 側双方の人権侵害に対して批判する内容となっている。ロシア議員団のドミト リー・ロゴージン議員は、「チェチェンにPACEなど必要ないし、戦争犯罪法廷 も要らない。PACEのメンバーなど誰もチェチェンに入らせない。われわれはこ の投票をかぎりに、PACEが二度とチェチェン問題を扱えないようにするつもり だ」と、ストラスブルグでテレビのインタビューに答え、怒りをあらわにした。

ビンディグ議員が問題視しているのは、ロシア検察庁から送られてきたドキュメ ントの内容である。それによると、1999年からの、チェチェン市民に対す るさまざまな人権侵害のうち、事案化されているのが162件、うち法廷で訴 追されているものはわずか57件に留まることである。「しかも、ほとんどの 事件は判決が下されておらず、犯人は不明のままでおわっています」と、同議 員は話している。

ロシア側はビンディグ議員に対して、「チェチェンの分離主義者のシンパだ」と して厳しい非難をあびせているが、議員は昨年10月のモスクワでの劇場占拠 事件や、親ロシアのチェチェン人に対する独立派の攻撃に対しても批判する立 場をとっている。

今回採択された決議は、もし今のままロシアが戦争犯罪人の訴追に失敗した場 合、PACEは「国際社会に対してチェチェン戦争犯罪法廷の設置を勧告する」と いうもの。

ビンディグ議員は去る3月23日のチェチェンでの国民投票について、「戦争の 続いている地域で、最終的に96%もの投票率になることなど考えられない」 とした上で、ロシア側人権団体からも、国民投票への批判があることを取り上 げ、「ロシア兵や、その家族まで投票に参加したらしい。戦争犯罪への訴追も なく、この国民投票の結果としてチェチェンが正常化するなどというのは、幻 想に過ぎない」とロシア側を強く批判した。

http://www.themoscowtimes.com/stories/2003/04/03/003.html

■「チェチェン戦争はあと2年は続く」マスハードフ大統領発言

4月4日、チェチェンのマスハードフ大統領は、AFPに送付した録音テープによる メッセージの中で、もしロシア側が和平交渉に乗り出さない限り、現在のチェ チェン戦争は少なくともあと2年は続くとの見込みを示し、「(3月23日の) 国民投票を行ったことで、ロシアの指導者たちは、今の戦争の終結を2年先延 ばししたようなものだ」との見解を語った。

「戦争はまだ続く。あの国民投票は書き割りのスペクタクルだ。チェチェンに 平和をもたらしはしない。もし戦争を終えたいのならば、プーチンにとって道 は一つしかない。交渉のテーブルにつくことだ。だが彼は戦争を選んだ。(交 渉の可能性を)黙殺することは、彼のカフカスでの利権を弱めるだけでなく、 ロシア全体を崩壊させることにもかかわらず」

ロシアのプーチン大統領は、99年の戦争勃発以来、チェチェンで民主的に選 出されたマスハードフ大統領との交渉を拒否し続けている。

http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf/UNID/D55D2854F5DA01FCC1256D010039DA8B

■チェチェン人の虐待遺体多数、発見される/チェチェン内相辞任

4月7日のAPによれば、チェチェン親ロシア政権の内務省は、ここ24時間の 間に4箇所の大量遺体遺棄現場が発見されたと発表した。うち3箇所は、北部 のナドレチェナヤ地区で、比較的戦闘の少ない地域である。遺体は腕や頭部が 切り離された状態で土に埋められており、総数は判明していない。また、グロ ズヌイ郊外のソリオナヤ・バルカ村でもビニールのケースに入れられた2体の 遺体が発見された。それぞれ歯が折られるなど、遺体は激しく損傷していた。

警察および検察によると、遺体が民間人のものであるかゲリラのものであるか はにわかに判別できないが、捜査は開始されたという。また、6日には警察の警 察官2名がイスティ・ツ村で遺体になって発見された。

チェチェンでは、4月4日に親ロシア政権のカディロフ行政長官は、ルスラン ・ツカーエフ内相が辞任したことを明らかにしたばかりである。ツカーエフ内 相は、昨年12月にロシアのプーチン大統領から任命され、チェチェンにおけ る警察権力を、現行のロシア軍から臨時行政府側に引き継ぐ役割を期待されて いた。4日の辞任発表は、グロズヌイ市内でのバス爆破事件のわずか1日後だっ た。

http://www.themoscowtimes.com/stories/2003/04/07/011.html

■「イングーシはトルコではない」人権活動家の家族への迫害

4月4日23時、チェチェンのウルス・マルタン地区のゲヒ村で、覆面をした ロシア軍と親ロシア行政府の合同部隊が、チェチェン人人権活動家ルスラン・ バダーロフの家族が住む家に侵入した。家にはヌルディ・バダーロフ(71) と、彼の妻のバダーロワ・ハヤータ(66)と、娘、ヤヒータ(29)がいた。

ヌルディ・バダーロフは、チェチェンの人権活動家で地域社会運動「チェチェ ン国民救済委員会=ChKNS」指導者、ルスラン・バダーロフの父親である。ヌル ディの8人の息子は、チェチェン、イングーシそして国際試合で数々の勝利を 収めたフリースタイル・レスリングの選手、チャンピオンたちとして知られて いる。覆面の軍人たちは訪問の目的を説明せず、身分証明書も呈示せず、全て の家財道具をひっくり返すような乱暴な捜索を行った。また汚い言辞を吐いて 戸主を侮辱した。

軍人たちは、「アルハッドの居場所はどこだ?」とヌルディに聞いた。アルハッ ドは、フリースタイル・レスリングの世界チャンピオンで、戦争の初期、99 年秋に国外に出ている。戸主が、自分の息子はスポーツマンであり、不法行為 には一切無関係であると話したが、軍人の一人は、「彼らが何をやっているか を、われわれは知っている」と言い放った。

家中を探し回った後、アルハッドとベスラン・バダーロフの写真を押収して軍 人たちが中庭に出た時、家の前を村人4人が乗った軽自動車が通りかかった。 軍人たちは車を止め、運転手と同乗者全員を路上に引きずり出し、全員を顔を 地面に向けて地べたに腹ばいにさせると、獣のように足蹴にし、自動小銃の台 尻でめった打ちにした。半殺しになった男たちを転がしたまま、軍人たちは去っ ていった。

このバダーロフ家への夜襲と、ルスラン・バダーロフの人権活動は無関係では ない。ルスラン・バダーロフを含むチェチェンの人権活動家には、再三にわたっ て脅迫が行われている。その中には占領行政機構の責任者、カディロフ自身が 2002年春に発した言葉もある。新聞「グローズヌイ報知」14号(2002年3月 25日)のインタビューでカディロフは、「隣のイングーシに逃げていったバダー ロフは、イングーシがクレムリンの手の届かない、トルコやフランスのように 思い違いをしている」

バダーロフ一家は、「チェチェン共和国における人権遵守の側面での顕著な進 展」と、ロシア連邦大統領人権担当特別代表A-Kh.スルトゥイゴフが先週、スト ラスブールの欧州評議会議員総会で語った言葉の意味するところを、この夜の 悪夢として体感したのである。 ロシア軍当局とカディロフは脅し文句を実行 に移したというものだ。ルスラン・バダーロフの留守宅への襲撃は、ロシア軍 当局とカディロフ一味の、彼らにとって好ましくない人物への今後を予想させ る。これはおそらく始まりにすぎない。

http://www.chechen.org/modules.php?name=News&file=article&sid=2525

■チェチェンイベント情報:
 講演会『チェチェンからの叫び〜紛争がもたらした悲劇〜』

 日時:4月12日(土)13:30〜14:30
 会場:日本教育会館 第二会議室
 主催:アムネスティ・インターナショナル日本
 くわしくはこちら:
 http://homepage3.nifty.com/aigroup1/cupdate/2003/event.htm
 内容:ジャーナリストの常岡浩介氏と、チェチェンニュースの大富亮がチェ  チェン情勢について語ります。

■ボランティア募集!

チェチェンの子どもを支援する会では、ニュースレター「あるふずーる」第一 号の発送作業を手伝ってくださる方を募集しています。毎回ではなく、できる ときだけで結構です。お気軽にご参加ください。第一回は次の予定です。

 日時:4月12日(土)16:00〜時より18:00まで
 場所:東京ボランティア・市民活動センター/ロビー
 所在:飯田橋駅セントラルプラザ10階 03-3235-1171
 交通:飯田橋駅下車2分
     JR中央総武線地下鉄南北線、東西線、有楽町線 B2b出口
 備考:ご参加いただける方は、事前にメールにてご連絡ください。

 連絡先: チェチェンの子どもを支援する会(代表:鍋元トミヨ)
 Webサイト: http://www7.plala.or.jp/deti-chechni
 メール: chechne@gray.plala.or.jp