チェチェン総合情報


チェチェンニュース Vol.03 No.14 2003.03.26

発行部数: 904部

■チェチェン国民投票*、「投票率89%」と発表

3月23日、「チェチェン共和国憲法」改定などについての国民投票が行われ た。26日のタス通信によると、親ロシア政権のアブドゥルカリム・アルサハ ノフ投票管理委員長は、「新憲法への賛成票は95.97%に達した。投票率 は89.48%だった」との最終結果を発表した。

チェチェンの総人口は、昨年10月にロシア政府が行った国勢調査では、10 8万人とされている。そして、発表された有権者数はほぼ半分の53万人。

この憲法案がチェチェン独立を事実上否定する内容であることから、ロシアのプー チン大統領は、24日の閣議の場で、「われわれは領土にまつわる深刻な問題 を解決し、チェチェン人たちは民主的な方法でこれを選んだ」として、満足を 表明した。

また、同大統領は「チェチェン人たちはロシアとともに平和と開発を続ける道 を選んだ。いまだに降伏せずにいる者たちは間違っているだけでなく、彼らの 民衆自体に対して戦っていることを知るべきだ」と語った。

今回の圧倒的多数の「合意」はプーチン大統領の発言通り、予想の範囲内だが、 いくつかの報道を拾ってみると、89%もの高い投票率を疑わせるものもある。 (2003.03.26 大富亮/チェチェンニュース編集兼発行人 協力:渡辺千明)

■85パーセントの投票率は本当か?

3月24日、親ロシア政権のカディロフ行政長官は、80パーセントを超える投票率について、「これはわれわれの最も楽観的な予測さえ上回る数字だ」と記者に語った。

一方、ロシアの人権団体メモリアルのメンバー、リダ・ユスポーヴァは、この高い投票率には疑問があるという。「われわれはテレビで、グロズヌイ第七学校の投票所に、有権者が行列している映像を見た。そこで現地に行ったのだが、5人しか人がいなかったの」と話す。別のメモリアルの担当者は、グロズヌイのカタヤマ地区の警察署に置かれた投票所でも、たった7人しか投票者がいない光景を目撃し、証言している。

http://www.themoscowtimes.com/stories/2003/03/24/003.html

■イングーシで有権者のうち190%が投票?

3月24日のイタル・タス通信によると、イングーシ共和国に開設された投票所では、名簿に記載された有権者数を投票総数が大きく上回った。有権者数2900に対し、投票総数は5500と、190%。これは、連邦選挙監視員、ゲンナディー・シニュコフが同通信社記者に語ったもの。こうした投票規定違反は、国民投票開票集計において是正されるべきだが、その形跡はない。

http://www.chechenpress.com/news/03_2003/2_24_03.shtml

■ロシア側人権団体、投票率に疑問を表明

3月23日のロシア人権ニュース prima-news.ru によれば、投票所では国内パスポートの呈示がなくとも投票が許され、思いつきの住所と氏名を記入するだけでも、投票用紙を渡された。いくつかの投票所では、一人の有権者も投票に現れないところもあった。グロズヌイでは、23日当日も、銃声と爆発音が随所で響き、その夜には、投票所の一つである第49中等学校付近でも交戦があった。

首都中心部では22、23両日にわたって、国民投票反対の街頭集会があり、およそ30名の参加者が、劇場付近に集まって、「われわれの息子たちを返して!」、「われわれには自由が必要!」といったプラカードを握りしめていた。第7中等学校に開設された投票所にやってきたのは、終日で7名。しかもその中には、投票を取材しようとやってきた報道関係者も含まれる。伝聞では、スタルイ・アタギ村では、住民は投票所にまったく現れなかった。

http://www.prima-news.ru/news/news/2003/3/24/23717.html

■「 <国民投票>は占領体制のでっち上げ」/独立派スポークスマン

3月23日のカフカスセンターに掲載された、チェチェン独立派のスポークスマンの一人、モフラディ・ウドゥゴフのコメントの一部。

「私は、23日の間に各地からもたらされた確実な情報を元に、次のように考えている。あらかじめ報道陣と、いわゆる「監視員」のために組織されたいくつかの投票場を除いては、実際には多くのチェチェンの集落において投票は、一切行われなかった。

74の町村で、投票所が完全に打ち壊され、いかなる投票も行われなかった。その中には、スタルイ・アタギ、チリ-ユルト、アルハン-カラ、サマシキ、ザカン-ユルトナドなどのような多人口町村も含まれる。われわれはそのようなデータから、いわゆる「国民投票」に参加したものが、占領区域在住の10から12%の住民に過ぎないと考えている。 「国民投票」は完全に占領体制がでっち上げたものである。チェチェン国民はこの恥ずべき猿芝居に参加することを拒否して、ふたたびみずからの高い政治的自覚と意思を証明した」

http://www.kavkazcenter.com/russ/article.php?id=5182

*前号まで「住民投票」と表記していましたが、報道機関、ロシア側リリースなども「国民投票」と表記していることを考慮し、後者に改めます。