チェチェン総合情報

チェチェンニュース
Vol.02 No.38 2002.11.01

■ザカーエフ副首相、デンマークで拘留される

10月30日、モスクワの人権情報サイト「プリマニュース」は、デンマークの同紙通信員の連絡として、コペンハーゲンで開催された全世界チェチェン民族会議の組織者の一人で、チェチェン共和国(イチケリア)副首相、アフメド・ザカーエフ氏が30日朝までに滞在先のホテルからデンマーク警察に拘留されたと伝えた。

デンマーク政府による拘留は、ロシア内務省が、氏をモスクワ劇場占拠人質事件に関係している国際犯罪者として告発したためであると言う。 しかしカフカスセンターによると、モスクワのデンマーク大使は、条約による取り決めがないため、ザカーエフ氏をロシア側に引き渡すことは不可能であると明言している。

カフカスセンターは、社主で、チェチェン国家防衛評議会対外宣伝部のモフラディ・ウドゥゴフ氏のコメントとして、デンマーク当局の動きは、ロシアの圧力を弱めようという姑息な動きだと指摘した。なお、APが30日に伝えたところによると、デンマークの裁判所の決定として、拘留は11月12日までとなる予定。(渡辺千明)

アフメド・ザカーエフ副首相についての詳しい情報はこちら:
http://www9.ocn.ne.jp/~kafkas/biograph.htm#Zakaev

ザカーエフ副首相のインタビュー(日本語):
http://groups.msn.com/ChechenWatch/page12.msnw

関連報道:
http://www.prima-news.ru/news/news/2002/10/30/21304.html
http://www.kavkazcenter.com/russ/article.php?id=2305
http://www.kavkazcenter.com/russ/article.php?id=2306

■全世界チェチェン民族会議/チェチェンプレスから

10月28から29日にかけて、デンマークの首都コペンハーゲンで全世界チェチェン民族会議が開催された。ロシア側の強烈な政治的圧力にも関わらず、デンマーク政府は同国憲法は非政府組織の事業に干渉すること許さないと宣言し、このフォーラムの開催を許した。

ロシア政府の反応は極めて悪いものであった。プーチン大統領のデンマーク訪問は取り止め、デンマーク女王のロシア答礼訪問も同じ運命をたどった。同地で開催予定であったEUロシア首脳会談は、ロシア側の要求でブラッセルへと開催地変更となった。

この会議は、ロシア側のさまざまな誹謗にもかかわらず、ヨーロッパ社会の大きな関心を呼んだ。会議は全世界の150の報道機関の取材を受けた。チェチェン共和国(イチケリア)副首相アフメド・ザカーエフ、ルスラン・ハズブラートフ教授といったチェチェンの政治家や社会活動家だけでなく、外国の政治家、ジャーナリスト、人権活動家が代表団と来賓に向かって発言をした。

会議ではロシア兵士母の会の共同議長エレナ・ビレンスカヤとエッラ・ポリャコワ、ロシアの団体グラスノスチ財団の指導者、セルゲイ・グリゴリアンツ、オスカー受賞の名女優で「チェチェン人権と平和国際運動」の創設者であるバネッサ・レッドグレイブ、リトアニアの国際法学者ダニウス・ザリマス教授その他の人々が積極的に活動した。

参加者に対する歓迎の辞は、デンマーク国会の議員が行った。代表団と来賓には、バネッサ・レッドグレイブの映画「子どもたちの歴史:チェチェン」が公開された。討論を通して参加者が一致して認めたことは、チェチェン共和国における戦争は終結させなければならないということ、交戦双方は交渉の席に着かねばならないということである。

この見解は、会議で採択された「全チェチェン民族への呼びかけ」 に反映された。
М.マメードフ 国営通信社チェチェンプレス2002年10月30日

http://64.106.174.95/

■アラ・ドゥダエワ女史、クレムリンに交渉を呼びかける

10月28日、モスクワの人権ニュースセンター「プリマ・ニュース」は、同紙アゼルバイジャン特派員(Kavkaz-vestnik編集長マイルベク・タマロフ)からの連絡として、二つの記事を相次いで載せた。モスクワ人質事件の後を受けた、かなり重要なニュースである。

チェチェン初代大統領ジョハル・ドゥダーエフの未亡人で、現アスラン・マスハードフ大統領の特命大使を務めるアラ・ドゥダエワ女史は、最近のモスクワでの事件について 「絶望感に駆られたチェチェンの青年男女の行為」と表現し、「ただ一人の人質も彼らの手で死んだものはいなかった事を称えたい」と、決死隊員たちの自制を指摘した。

10月28日、バクーでの記者会見の席上、アラ・ドゥダーエワ女史は、モスクワ文化センター占拠事件で、人質はチェチェン人の銃弾で倒れたものではなく、特殊部隊がホールに突入する前に使用したガスによる中毒で殺されたことを指摘し、さらにその犠牲者数は、ロシア軍によるチェチェン戦争で犠牲となった人の数と比べれば比較にならないとも述べた。

「モスクワで倒れた人々はロシア自身の手で殺された。119名の犠牲者—けれど、チェチェンでは軍事侵攻の犠牲者数が数万にも及ぶことを考えてみましょう。クレムリン当局者は、チェチェン問題は、平和的な交渉でなければ絶対に解決不可能だと言うことを理解しなくてはなりません」と述べ、今後の交渉について「昨日ロシア公共放送ORTのニュース番組<ブレーミャ>の中で<バクーで円卓会議の形で開催すること>という提案がありましたが、このイニシアティブを全面的に支持します。これはほとんど唯一の解決の糸口です」と語った。

バクーでなくてはならぬ理由として、「そういう会談の場がモスクワで設定された場合、チェチェン人がそこへ行くことはあり得ないから」とした上、最後に「アゼルバイジャン政府とガイダル・アリーエフ大統領が<円卓会議>実現にイニシアティブをとっていただきたい」と結論づけた。

http://www.prima-news.ru/news/news/2002/10/28/21266.html

■バクーでチェチェン代表部閉鎖命令

10月28日のプリマ・ニュースによると、アゼルバイジャン共和国のガイダル・アリエフ大統領は、モスクワでの人質占拠事件を受けて、バクーにあるチェチェン共和国(イチケリア)アゼルバイジャン駐在代表部閉鎖を命令した。

代表のアリ・アサーエフ氏はこの命令に対し、代表部は非合法に活動を続けることになるので閉鎖は賢明でないとした。また、チェチェン人権センター代表、マイルベク・タマロフ氏は、代表部閉鎖の無配慮を次のように指摘した。同氏によるとバクーのチェチェン代表部は、モスクワの文化センターで人質となったアゼルバイジャン人4名の救出に重要な役割を果たした。

「アゼルバイジャン駐在代表部が、モフサル・バラーエフと直接電話交渉できたからこそ、アゼルバイジャン人人質解放が実現したのだ。クレムリンがチェチェン人との和平交渉に乗り出さなければ、今回のような事件がまた起きないと言う保証は、誰もできない」と語った。

http://www.prima-news.ru/news/news/2002/10/28/21267.html