チェチェン総合情報

チェチェンニュース
Vol.02 No.28 2002.08.22

■独立派、ロシア軍大型輸送ヘリを撃墜、ロシア兵114人が死亡

8月19日夕刻、チェチェンにおけるロシア軍最大の基地ハンカラの付近を飛行中のヘリコプターMi-26型機が墜落した。ロシア側、チェチェン側双方の報道は、これがチェチェン独立派の攻撃によるものであると一致している。20日にハンカラ入りしたイワノフロシア国防相が認めたところでは、この機体には乗員と移動中の部隊を合わせ147人が搭乗しており、負傷者として収容された33人を除いて、114人が死亡したと報道されている。

今回の事故は99年からの第二次チェチェン戦争のなかで、1度に発生した人的被害としては最大のものと見られ、厭戦に傾くロシア世論の方向性を決定づける可能性が極めて高い。折から行われているチェチェン−ロシア間の非公式の折衝をどのように扱うかも合わせ、ロシアのプーチン大統領は難題を背負った。

ロシア側の発表によると、19日16時55分、モズドクからハンカラに向かっていたロシア連邦軍の交代要員を載せたMi-26大型輸送ヘリコプターがハンカラ基地到着を目前(基地まで2Km)にして地上からのPZRK(携帯式対空ミサイルシステム=アメリカ製スティンガーミサイル、ロシア製イグラなどを指す)により撃墜された。

http://kavkaz.strana.ru/news/155818.html

一方、チェチェン独立派は、ヘリコプターを計画的に撃墜したものと認めた。チェチェン軍対空部隊のメンバーたちは、ロシア軍の人員輸送飛行経路を検討し、敵に対し大きな人的被害を出させてるべく、この攻撃を実行したと声明している。チェチェン独立派政府系サイト、チェチェンプレスは、アルサヌカエフ軍事委員会作戦本部代表との電話連絡として、輸送ヘリ撃墜について伝えた。これによると、使用されたPZRKの種類をロシア製のstrela(矢)というタイプであり、乗員たちがGRU=ロシア軍参謀本部諜報局の特殊部隊員で、チェチェン側はそれを事前に知り狙い撃ちした。発射地点は首都ジョハル(グロズヌイ)オクチャブリ地区からとしている。

http://www.kavkaz.org/russ/article.php?id=4736

http://www.chechenpress.com/news/08_2002/13_19_08.shtml

■バサーエフ・ショートインタビュー

8月14日、チェチェンのシャミル・バサーエフ軍事委員会代表は、カフカスセンターのインタビューを受けた。ここでは要旨のみをご紹介する。(渡辺千明)

1)戦況現在の戦況は非常に緊張している。ロシア側が戦争の主導権を取り戻そうと様々な手を打ってくるからだ。非武装住民に対するあらゆるタイプの攻撃、挑発が行われている。民間の乗り合いバスの爆破、家屋への放火、示威的な略奪、抵抗できないものへの夜間の捜索などなど。人質の拘束と夜間の住宅地への爆撃も日常茶飯事だ。

2)指揮系統の統一についてしかし、独立派の抵抗を妨げることはできない。マスハードフ大統領自ら主宰した最近の司令官会議の結果、独立派軍の統制は飛躍的に強化され、これまで、自らの判断で行動していた武装組織の多くが、われわれの指揮下に入りまた、今もって自律的に行動している集団も、われわれの作戦に同調するようになっている。

この1ヶ月間にわが軍は10以上の作戦を遂行し、ロシア軍に戦死者6−700人を出させた。負傷者についてはあまりに多すぎて数える暇もないほどだ。1日最低15−25人の戦死者を敵に強いていることになるが、一方、われわれの側の被害は最低限で済んでいる。この事態は昨年の今頃とは対照的で、イチケリヤ南部の主要部分は、実質的にわれわれの支配下にある。われわれは策定された作戦計画に基づいて戦闘を進めるが、十分に大規模戦闘を実施できる力量を蓄えた。

3)平和的解決の可能性ロシア側の条件が整っていないというのが自分の見解だ。過去の平和合意から、ロシアとの平和的解決に何が必要かと言うことを、われわれは学んでいる。

4)パンキシ問題についてこの問題は、ロシア指導部と、グルジアのそれに同調する分子の作り出した問題だ。このことはシュワルナゼが何回も言明している通りだ。ロシアがグルジアを支配するために声高に叫んでいるのだ。彼等は自分たちが、アブハジア、南オセチア、アジャリヤなどでやってきたことを、グルジアでも、やりたいということだ。それらの地域にはロシアの軍隊が入り、トビリシは影響力を行使できない状況になっている。

パンキシの状況は、グルジアの法が執行され、権力機構も維持されているが、軍事力が存在しなかった。われわれは、グルジア当局に地元のキシ人(グルジア国籍の伝統的なチェチェン系住民)に武器を与えて自衛組織をグルジア軍の統制のもとに置くことを提案してきた。現在グルジアはパンキシ渓谷に自軍を入れようとしているが、これにわれわれは異論はない。ただ、グルジアはロシアの挑発に直接対峙する事になるだろう。ロシアの挑発には賢く立ち向かうのが肝要だ。国境で拘束されたチェチェン武装兵のロシアへの引き渡し問題は、グルジアの名誉と先見性が問われる問題となっていると思う。

http://www.kavkaz.org/russ/article.php?id=4659

■大型ヘリ撃墜/ロシアでの簡易世論調査結果

ヘリコプター撃墜事件を受けてモスクワ市民はどう感じているか動向を占う興味深い調査が行われた。ラジオ局「モスクワのこだま」が、20日次の設問したもの。電話による調査とインターネット上の投票の二通りが行われているらしく、その結果がほぼ同じなのが興味深い。明らかに民意は冷静であり、イワノフ国防相のように激昂してはいない。

(問い): チェチェンにおけるヘリコプター事故で死者が100人を越す中でロシア政府が採るべき道は、次のどちらでしょうか?

1) 軍事行動を強化する2) 平和交渉を開始する3) 答えられない

放送で直ちにカウントしたもの   1) 42%  2) 52% 3) 6%インターネットで回答してきたもの 1) 42%  2) 58% 3) なし

http://www.echo.msk.ru/voting/index