チェチェン総合情報

チェチェンニュース
Vol.01 No.16 2001.08.12

■ロシア当局、イギリス人エイドワーカーを逮捕/グラスノスチ財団(ロシア)8/6

RIAノーボスチによると、8月5日、イギリス国籍のグラハム・ブライアン氏(61歳)が、チェチェンの首都グロズヌイの南西の町ウルス-マルタンでロシア当局に逮捕された。同氏はチェチェンでの人道援助の可能性を調査するため、単独で行動していた。駐モスクワのイギリス大使館はブライアン氏からそのプランを知らされていたが、現地入りは思いとどまるよう説得していたという。同氏は近くロシアから国外退去を命じられる見通し。ブライアン氏は過去において、デンマーク難民評議会に所属して援助活動に従事していたことが確認されている。

■ハイジャックは事件は挑発か? グラスノスチ財団(ロシア)8/4

ロシア/チェチェン友好協会によると、8月1日にスタブロポリ地方で発生したハイジャック事件の犯人、スルタン・エディエフの両親は、射殺された遺体が息子のものであることを確認した。しかし両親は驚きを隠せなかった。もともと息子のエディエフは強盗の罪で労働収容所に送られていたはずだと思っていたのである。

北コーカサス検察庁のウラジミール・クラブチェンコ検察官によると、エディエフは強盗、殺人、違法武器所有の罪で有罪判決を受けていたという。

エディエフの両親は、彼がFSBにそそのかされて今回の犯行にいたったのではないかと疑っている。彼が釈放と引き替えに、みせかけのハイジャックの犯人役をもちかけられた可能性は高い。政府当局はロシア市民の間の反チェチェン感情を維持することに腐心しているからである。

これを裏付けるように、エディエフの射殺後、かれの非道な過去の罪状について、多数の司法機関のステートメントが、ロシアの記者たちを通して報道されている。

■「チェチェン独立派内で資金に関する内輪もめ」ロシア当局が指摘/グラスノスチ財団(ロシア)8/4

ロシア連邦保安局(FSB)のスポークスマン、イリヤ・シャバルキン氏は、ヨルダン出身のチェチェンの有力野戦司令官ハッターブが、「金銭の不正」のため、レジスタンス軍を罷免される見通しだと述べた。

くわしくは: http://www.glasnostmedia.ru/article.php?sid=282

■モスクワのアパート爆破事件の非公開裁判が進行中/ジェームズタウン財団(アメリカ)8/7

7月10日に、スタブロポリ地方の刑務所で、250人前後の犠牲者を出した、99年のモスクワのアパート爆破事件の容疑者の非公開法廷が開かれた。容疑者はカラチャイ・チェルケス自治共和国籍5人組であり、チェチェン人は含まれていない。アメリア・ジェントルマンは7月16日の『ガーディアン』紙で次のように指摘した。「事件後、ただちにチェチェンの独立派が犯人とされたことで、社会不安とパニックが発生した。そしてロシアのチェチェン侵攻が始まり、国民的な支持が集まった。ウラジーミル・プーチンの大統領就任は、チェチェンに対する強行策によって作られたのである」

「テロ的な喜劇」と題された、7月20日のノーヴァヤ・イズベスチアの記事によると、有力ジャーナリストのヴァレリィ・ヤコフは「この裁判は2年間、報道に対しても社会に対しても隠されてきた」と強調している。ヤコフはオクラホマの連邦ビル爆破で160人を殺害した犯人、ディモシー・マクベイのケースと比較して、「アメリカでは、捜査の成功が隠されたりしなかった。彼らはマクベイの罪を、信頼できる証拠に基づいて、法廷だけでなく社会にも訴えた。わが国とは、すべてが正反対なのだ」と記している。

スタブロポリ地方の地方紙、スタブロポリスカヤ・プラウダとヴェチャヌイ・スタブロポリによれば、いまのところとりあげられる見込みはないが、非公開裁判はロシア憲法、刑法、報道法に違反するという、最高裁に対する申し立ても行われているという。

■編集室より

本当のところはどうだったのか? モスクワでのアパート爆破事件についての発行人の感想はこの一言につきる。今回のチェチェン戦争を引き起こした顛末の、最も重要な鍵がこの事件にある。事件はプーチン政権のチェチェン政策の最深部だという気がしてならない。

これまでの報道を総合すると、北コーカサスのスタブロポリで、爆破事件の非公開の裁判が行われていることが7月10日に初めて報じられた。起訴された5名の容疑者は、なぜかチェチェン人ではなくチェルケス人である。彼らは爆弾の材料をチェルケスからモスクワに運んだという。

大勢の人々が命を失った事件として、徹底的な捜査が期待される。しかしこの裁判はなぜ非公開なのだろうか。(発行人)