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FAQ

ダゲスタン事件はチェチェンに非があるのではないか?(追加質問)

A.M wrote:

 ご丁寧なお返事ありがとうございます。 またサイトに私の質問と回答を掲載していただいてありがとうございました。

 >> チェチェン人たちのあいだでは、ダゲスタン事件は、ロシア側による挑発に、 バサーエフが乗ってしまったという見方が一般的です。ただし、それを裏付け る確実な証拠は残されていません。

 なるほど。このあたりの事情は、少し大げさに言えば、歴史上の謎と言うところでしょ うね。 もしかしたらロシア側に相当な挑発行為があったのかも知れません。 普通から考えれば、挑発行為とは発砲事件となるんでしょうけど。ただ...。

 シャミーリ・バサーエフに関して私は、戦争屋という印象を強くします。もしかし て...。 彼は、1997年1月チェチェン大統領選挙に立候補し、穏健独立派のアスラン・マ スハドフに敗れ、落選。この時期にロシアの政商ベレゾフスキーと手を結び、資金援 助を受ける。(つまり、この金で軍備を増強したと言う事でしょう) そして軍国派の復権をかけて戦争を起こしたとしたら(歴史上に良くあるパターンで すが)、このあとのチェチェン人の惨状を見ると目も当てられません。

 >> まず、この事件に、当時のチェチェン政府は関与していないということ。 つぎに、チェチェンの政府が関与していない以上、事件は犯罪として追求され るべきだったこと。

 この論旨には、少々、首を傾げます。シャミーリ・バサーエフが軍を率いて侵攻した となると、政府が直接関与しようがしていまいが、チェチェン政府が戦争を起こした と見るべきだと思います。なぜなら、戦闘行為の防止を出来なかった政府の監督責任 が問われると思うからです。

 今、日本人の多くが、中国人のデモが暴徒化して日本の建物が破壊されていることに 対し怒り、中国政府の謝罪を求めています。デモをしている民衆は政府官僚という訳 でもありませんし、政府の命令で建物を壊している訳ではないはずです。つまり日本 政府は中国政府に対して暴徒の取り締まりの監督責任を求めていると言う事です。 そのことから考えても、侵略が暴徒以下の行為でない以上、政府に監督責任がないと は言えないでしょう。

 少し極端な例ですが、もしも中国軍の司令官が、日本との騒動で腹を立てて発狂し、 核ミサイルを広島に向けて発射したとします。百万人が死にました。 この行為が中国共産党のあずかり知らぬ事だとしても、その司令官だけを刑事罰にす れば良い、という論理が通るとは思えません。 攻撃を受けた日本は中国の侵略戦争だと主張して、米国に日米同盟の発動を求めるで しょうし、それを批判する日本国民はいないのと同じ理屈だと思います。

 >> 最大の問題は、人命の犠牲は20万人にもおよびます。

 本当にひどい話です。亡くなられた人のご冥福を祈ります。 チェチェンの独立と平和を願っていますが、正直なところ、解決は難しそうですね。

 >> 私としては、ダゲスタン事件は、戦争を始めるための挑発だったのだと考えて います。

 私は、ダゲスタン事件がロシア政府の一方的な挑発行為とは思えません(もっと資料 が集まれば判断が変わる可能性もありますが、今のところそうした資料は持ってませ んので)。 この時期は、ロシア政府内部でも権力闘争が起こったようですし、相当な偶然性が重 なった結果、そこにバサーエフという名の戦争屋の俳優を得て、悲劇が起こったよう に感じられます。 なぜなら、ロシアは第一次チェチェン紛争で勝利を収める事が出来なかったのに、ロ シアの政商ベレゾフスキーから軍司令官のバサーエフへ資金が流れている事。多分、 バサーエフは兵力の増強をしたと思います。 もしロシアが最初からチェチェン侵攻を歴史の経過通りに考えていたならば、資金を 渡す事は難敵に塩を送った事になります。矛盾です。 そしてプーチンは今でもチェチェン問題を処理できずに、苦しんでいる事実。私には ロシアの軍部がそれほど滑稽な行動を取るとは思えません。

 私は気楽な立場なので、証拠もなく推理しますが、もしかしたら、ロシアはマスハド フ大統領と隙の出来たバサーエフに金を渡し、チェチェンでクーデターを起こさせよ うとしたのではないでしょうか? ところがバサーエフは、チェチェンを裏切らなかった。しかも、行動を起こした。 イスラム教徒を解放し、名声と権力を獲得するために。 この辺で身勝手な推理は止めておきます。

 >> バサーエフの逮捕などをふくめて、合法的な解決の道を閉ざしてし まったからです。

 バサーエフの逮捕については、戦死させてしまえば、口を封じる事が出来ます。だか らロシアの挑発説は、これだけの証拠では苦しいと思います。

 また合法的な解決の道というのは、もしもロシア政府が求めていたとしても実現は難 しいのじゃないでしょうか。 第一次チェチェン紛争から日も浅いですし、チェチェン政府には恨み辛みもある。ダ ゲスタン事件を見逃せば、他の民族も独立を求める可能性があるから、容認できない。 しかも事件を見逃せば、宗主国としてのロシアの威信が下がる。 これだけ条件がそろえば、プーチンにとっては戦争より他に道がなかったのかも知れ ません。何となく彼は冷徹そうな人ですしね。

 >> この事件があったために、国際社会にチェチェンを助けようという意思が芽生 えたとしても、それは留保つきのものにならざるをえません。

 私も非常に残念に思います。この事件がなければ、民族自決の原則から言っても 各国の同情票を相当に得られたと思います。

 長文失礼しました。 私はチェチェン問題については本当に無知で2〜3のサイトを拝見しただけで、専門 の方に反論するのも気が引けたのですが、他の人に批判して貰ったりした方が、私自 身の知識にもなるかなと思って書きました。 暇なときにでも返事を貰えたら幸いです。