チェチェン総合情報

ユーラシアからの手紙

南無妙法蓮華経

中央アジアキルギス国天山道場
二〇〇三年七月二日

合掌

しばらく連絡を怠りましたが、中東イラク戦争の動向が一段落をむか えた時点で中東を離れてからは、五月をウクライナの各地道場を巡錫し、六月 に入ってからは、当地キルギスの新たな草庵にこもり、大変な時代をむかえた が故にこそ、しばしの静かなご修行の一ヵ月を久しぶりにすごしました。

ウクライナの巡錫は一年ぶり、キルギスは丸二年ぶりの長期滞在となりまし た。ウクライナでは首都キエフ滞在中、明石康氏の日本紛争防止センター、ジ ャパン・タイムスが主催する中東パレスチナ、チェチェンの紛争平和解決をテ ーマとする電子国際シンポジウムのパネリストの中に唯一人の日本人として参 加しました。米英がついにはじめた第二次イラク戦争の直前までバクダッドに とどまり、戦争回避の道を心ある世界の人々につらなりながら運動した反省の 上に、ポスト冷戦の十二年間に多くの武力紛争解決がさらなる宗教、文明の対 立を世界中に拡大し、九・一一のニューヨーク、ワシントンの未曾有の同時多 発テロ以降、パレスチナ第二インティファーダ、反タリバーン・アフガニスタ ン戦争、印パ核戦争危機、イラク戦争とついに今日、世界同時宗教対立文明対 立の戦争の深刻なる可能性に直面するにいたりました。そのほとんどの紛争の 只中で今日まで平和解決の立正安国の祈りを修してきた者として、今こそ、国 家主権、民族解放運動の大義よりも、さらなる世界普遍至上律としてのすべて の人びと一人ひとりの平和生存権、自由権の樹立を提唱しました。これこそ広 島、長崎の核の惨禍から生まれた日本国憲法第九条の精神に他なりません。

また、国連機構が主権国家の上に成立し、現代の国家利害がますます宗教、 文明間の対立を軸とするグローバルパワーポリティクスの場となっている以上、 また、核保有常任理事国という不平等性が構造化されているかぎり、その新た な一人ひとりの個人の尊厳を基とする世界普遍律を実現することはできません。

地球生命そのもののサバィバル、人類共通の文化文明共存共栄の視点に立つ 地球市民の意識革命が、これからの流れを変えうるイニシャチブとなりましょ う。特に今、国家暴力と宗教的テロのもとに苦しむ各地紛争地の人びとのなか からこうした根源的な意識の目覚めが生まれなければなりません。Eシンポジ ウムの私の提唱の論点の核心に応ずる論客は、しかしながらほとんどありませ んでした。

ウクライナはキエフをはじめ、ハリコフ、ダネンツク、ヘルモマイスロエ、 その他東南地方の各地に御修行をつづける地元の仲間が生まれています。それ ぞれの土地に道場、御草庵ができ、同行の僧侶が困難をのりこえて育ちつつあ ります。特にハリコフは一時、地方行政の弾圧をこうむり、毎年の臘八接心な どには五十名八十名の人が修行するほどになりましたが、その法難を耐えて、 令法久住の誓願のもとに御修行がつづけられてきました。これらの人々の菩提 心から、次の道場湧現の佛事も近く開かれてゆく事と思います。

六月に入って、中央アジアのキルギスに入りました。二年前、当キルギス、 カザフ、中国の子弟たちの努力で、キルギス首都郊外に新たな御草庵が湧現し ました。今度、私もはじめてその御草庵に入堂し、一ヵ月をここに参籠する事 ができました。すばらしい天山のふもとの大自然のただなかで、受自法楽の日 々をすごしました。すぐ背後には標高四千メートルの万年雪をいただく天山山 脈がそびえ、そのふもとの丘々は今をさかりに色とりどりの草花がさきみだれ、 香り高い薬草の花のにおいが暑さを知らぬ草原の風にのってかおります。まっ たくの静寂のなかできこえるのは高原の風の音、天山から流れる早瀬の水の音、 何十種類の野鳥のさえずりばかり。毎朝四時半には後手の野草の咲きほこる丘 をふみわけて登る高台の頂から、すばらしい天山の山波をながめ、前方に広が るかつてのシルクロードの主要ルートのチュー盆地が眼前に広がります。かつ て玄奘三藏が泊まったというリューブ城の遺跡がその盆地に残ります。私たち が御来光を拝む丘には、前史時代の遊牧騎馬民族の古墳が残っています。紀元 前後はインド、パキスタン、アフガニスタン、中央アジア全域がクシャーナ王 朝大月氏国の圏内でした。仏法東漸の中心舞台でした。

ここに湧現した御草庵はまぎれもなく末法の閻諍拳固の二十一世紀のはじめ、 日本の仏法還帰の大運動を祈る道場であります。今回はウクライナ、ロシア、 カザフ、アルタイなどから同行の人が集まり、十名前後の人々が常住し、大自 然の自給生活をしながら御修行をはげみました。これからのユーラシア広宣流 布の法器が育つべき道場であらねばなりません。中国、アフガニスタン、パキ スタンへの足がかりでもあります。来る十年、この地域が人類の未来の決定す る重要な場所となります。二十一世紀の立正安国のかぎをにぎります。何より もその使命を自覚するその人が現れ育てられねばなりません。

さて、その静かに充実した天山道場での日々も去る七月七日に後にして、今、 コーリヤに入り、来る七月十四日までソウル東南の百済時代からの温泉郷オン ヨングという地方で宗教者会議に出席しています。中東イラク問題、朝鮮半島 問題が焦点となります。

私は十四日以降、できるかぎり早く日本に向かう予定です。空路、成田、小 松、大阪に出るか、あるいは海路、釜山から博多に着くか、ここ一両日中に決 定したいと思います。日本では二週間ほど滞在し、できれば八月一日頃には再 びコーリヤ経由、中央アジアにもどりたいと考えています。

合掌三拝
寺沢 潤世