チェチェン総合情報

この件についての解説記事は: http://chechennews.org/chn/0506.htm

アムネスティ発表国際ニュース(2005年2月24日)

アムネスティ日本

チェチェン共和国の6事件に関するヨーロッパ人権裁判所の判決

AI Index: EUR 46/006/2005

 アムネスティ・インターナショナルは、本日発表されたチェチェン共和国の6つ の事件に関するヨーロッパ人権裁判所の判決を歓迎する。同裁判所は、これ らの事件で、ロシア連邦が、チェチェンの武力紛争下において民間人の生命 に対する基本的権利を侵害したと判決した。

 同裁判所は、生命に対する権利、拷問の禁止、また効果的救済や平和的に 財産を享受する権利の侵害があったと判断した(人権及び基本的自由の保護 に関するヨーロッパ条約の2条、3条および13条と同第一議定書の第1条)。

 ヨーロッパ人権裁判所は、ロシア政府の責任を問うカシエフ事件およびアカエ ヴァ事件について、ロシア兵士によって殺害された申立て人の親族の死は国 家に責任があるとし、生命権の侵害に等しいと判決を下した(第2条)。またイ サエヴァ事件、ユスポヴァ事件、バザエヴァ事件に関する判決、さらに6番目 の事件であるもう一つのイサエヴァ事件の判決で、ヨーロッパ裁判所は、軍 事作戦の計画と実行においてロシア当局が申立て人とその親族らの生命に 対する権利を保護しなかったと判断した。裁判所は、6つの事件全てについ て、申立て人に賠償金を支払うよう命じた。

 「ヨーロッパ裁判所は6つの事件全てにおいて、ロシア政府が効果的な調査を 実施しなかったことは、生命に対する権利および効果的救済(第13条)の侵 害にあたると判断した。このことは、ロシア政府が一貫して、武力紛争下にお ける人権の保護ができていないだけでなく、効果的な調査や加害者の起訴 を通して被害者のために正義をもたらすことを保証できていないことを示して いる」。

 「これらの判決は、チェチェンにおける人権侵害の免責に終止符を打つ重要 な一歩である。なぜなら判決は、深刻な人権侵害がチェチェンで起きており、 ロシア連邦政府はその責任を負わなければならないと認めているからだ」と、 アムネスティ・インターナショナルは述べた。

 ストラスブールで今回審判の結果が出た事件を含め、ヨーロッパ人権裁判所 に提訴した多くの人びとは、報復の対象となっている。脅迫を受けている人 や、法執行官から何度も嫌がらせをされたり、中には殺害されたり「失踪」し てしまった人たちもいる。拷問や虐待を受けた人びと、「失踪」してしまった人 びと、また民間人に対する無差別攻撃で財産を破壊された人びとの家族たち は、自身の身の安全や家族の安全に深刻な危険があるにも関わらず、自ら の沈黙を許さず、正義を追求し続けている。

 アムネスティ・インターナショナルはロシア連邦政府に対し、以下のことを要求 する。

 - 遅滞なくヨーロッパ人権裁判所の判決を履行すること。
- チェチェンにおける武力紛争でのさらなる人権侵害を即時終結するよう対策 を講じること。
- 人権侵害に関する全ての申し立てを調査し、加害者を司法の場において裁 くこと。
- ヨーロッパ人権裁判所に救済を訴えるすべての人に対するさらなる報復を 防ぐために効果的な措置を講じること。
- このような報復に関するすべての申し立てが迅速、完全、かつ独立して調 査され、これらの犯罪に責任あるものを裁くことを保証すること。

背景情報

 チェチェンで現在も進行している武力紛争下、アムネスティ・インターナショナ ルは、ロシア連邦とチェチェン共和国の双方に対し、超法規的処刑、「失踪」、 強かんや拘禁中の虐待を含む拷問、また一般市民に対する無差別攻撃など の重大な人権侵害を犯した者を裁判にかけるよう、求め続けている。

 ヨーロッパ人権擁護センターがメモリアル人権センターと共同で提訴した6つ の事件は以下の通りである。

 - 1999年10月、グロズヌイから脱出する難民を輸送する民間車両に対する、 ロシア軍の空爆(イサエヴァ事件(No57947)、ユスポヴァ事件(No57984)、 バザエヴァ事件(No57949))。この事件は申立て人の2人の子どもと義理の娘 の殺害を含む。

 - 2000年1月にグロズヌイで起きた「失踪」と、その後発見された5遺体。これ らの遺体には拷問と虐待の痕跡が見られた(カシエフ事件(No57942)、アカエ ヴァ事件(No 57945))。

 - 申立て人の息子と3人の姪の殺害した、2000年2月4日のカチ・ユルトの村 に対する空爆と砲撃(イサエヴァ事件(No 57950))

 判決全文は、下記のサイトで閲覧可能。
http://www.coe.int/


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