チェチェン総合情報

アムネスティ発表国際ニュース AI INDEX: EUR 46/009/2003 2003年1月27日

アムネスティ日本

・チェチェン:人権団体が欧州評議会に対し、チェチェン共和国における
       人権問題に言明するよう要請

 先日、ヒューマン・ライツ・ウォッチからチェチェン避難民に関する報告書
が発表されました。拷問廃止キャンペーンアップデート58号(2002年
12月11日発行)で取り上げたアムネスティ国際発表ニュースは、イングー
シ共和国アキ・ユルト村にある難民キャンプ閉鎖を憂慮するという旨のもので
したが、実際にはその後、イマン難民キャンプが閉鎖されています。そこに住
んでいた約1700人は治安が悪いため、チェチェンに帰還することができず、
イングーシ共和国内に代わりの住まいも得られないといった状況に置かれてい
ます。そして当局側からの圧力を受け、帰還せざるを得なかった避難民はイマ
ンキャンプの住民だけではありません。
 前述の報告書には、ロシア政府、欧州評議会、国連などに対する勧告も提言
されています。また、アムネスティのニュースレター2・3月号ではチェチェ
ン特集としてフリージャーナリスト常岡浩介さんの記事を取り上げています。
この中で常岡さんは、チェチェン問題で一番問題なのは「関心の低さ」である
と書いています。
 遠い国のことだからとして片づけてしまうのではなく、同じ人間の身の上に
起きている現実問題として常に監視を続けていきたいものです。

◆HRWの報告書の原文(英語)は下記サイトでご覧いただけます。
 http://hrw.org/reports/2003/russia0103/

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アムネスティ発表国際ニュース 
チェチェン:人権団体が欧州評議会に対し、チェチェン共和国における
      人権問題に言明するよう要請
AI INDEX: EUR 46/009/2003 
2003年1月27日
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 アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、人権
のための国際ヘルシンキ連盟は、欧州評議会(*1)の議員総会(*2)に対し
2003年1月27日から31日までストラスブールで開催されている本会議
において、チェチェン共和国における人権問題について言明するよう要請した。
議会に対する共同声明の中で3団体は、チェチェン共和国の人権に関して、以
下の5つを特に懸念すべき事項として決議案に盛り込むよう訴えた。

1.国内避難民をチェチェンに帰還させようとする圧力とキャンプ閉鎖が、国
内避難民を事実上強制送還させることになっている点。とりわけ2002年末
という真冬の時期に、ロシア政府がイングーシ共和国にあるアキ・ユルト・キャ
ンプの閉鎖の決定したことが懸念される。強制退去させられた人びとのほとん
どは他に住める場所がなかった。

2.紛争に関わっている両勢力が共に民間人を標的としている点。これは国際
人道法違反である。2002年12月に起きたグロズヌイの政府庁舎爆破事件
により83人が死亡した。2002年11月中旬以降、反体制派勢力は公務員
7人を国際人道法に反して殺害し、9人を誘拐したとされている。ロシア軍も、
無数の国際人道法に違反する殺害行為、「失踪」を繰り返し起こしている。

3.チェチェン反体制派勢力による親ロシア側の高官に対する脅迫と超法規的
殺害が増加していること。ロシア軍による国際人道法に違反して、親ロシアの
チェチェン人高官が殺害された。これは、ロシア軍による人権侵害について彼
女が声明を発表したことに対する報復であったと考えられる。2002年11
月29日、複数のロシア軍兵士が、前アルカン・カラ村地方行政部長で12月
1日に復職予定であったマリカ・ウマジェヴァを殺害した。過去2年間、マリ
カ・ウマジェヴァは人権団体がアルカン・カラ村での人権侵害について記録す
る仕事を手伝っていた。

4.ロシア軍による強制的「失踪」や国際人道法に違反する殺害が続いている。
紛争両当事者で人権侵害に関わった者を裁きにかけるという重要な説明責任を
果たしていない。数百もの人権侵害に対する調査のうち、訴訟に結びついたも
のはほとんどなく、最近発表された公式統計によると、3年間続いている紛争
中、民間人に対する人権侵害で起訴された軍関係者はわずか46人にすぎない。

5.国際的な監視組織がチェチェンに入国できずにおり、人権侵害に関する入
手可能な情報が透明性に欠けている点。とりわけ欧州拷問等防止委員会による
ロシア訪問の報告書を、ロシア政府が公表しないという問題があげられる。ロ
シアは人権状況監視をはじめとする新たな責務に合意せず、2002年12月
31日、欧州安全保障協力機構チェチェン支援団事務所を閉鎖した。さらに、
国連の拷問と超法規的処刑に関する特別報告者を招待することも怠った。

アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、人権の
ための国際ヘルシンキ連盟は、欧州評議会に対し、以下を要請する。

(1)国内避難民を事実上強制送還するに等しいキャンプの閉鎖は受け入れが
たい旨を、決議で明確に表明すること

(2)紛争により民間人が多数犠牲になっていることに懸念を表明し、紛争両
勢力に対し国際人道法を遵守するよう、決議で要請すること

(3)ロシア政府に対し、欧州議会議長と議会に、今日までにマリカ・ウマジェ
ヴァ殺害を調査するため講じた手段を示すよう、決議で要請すること

(4)ロシア政府が、2002年4月に提出することになっていた、チェチェ
ン紛争中に起きたロシア軍兵士による犯罪に関する詳細な調査リストを提出し
なかった事実を遺憾とし、2003年4月の次回総会までに提出するよう改め
て要請する決議を採択すること

(5)ロシア政府に対し、人権状況監視を含む欧州安全保障協力機構チェチェ
ン支援団の新たな責務に合意し、延期されている国連特別代表のチェチェン訪
問を促進するよう要請すること。

(6)ロシア政府に対し、欧州拷問等防止委員会によるロシアに関する全ての
報告書の発表を延滞なく許可するよう要請する決議を採択すること。

◆こちらの原文(英語)は下記サイトでご覧いただけます。
 http://web.amnesty.org/ai.nsf/recent/EUR460092003

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語注として外務省のサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ce/)から
下記を引用いたします。

*1 欧州評議会(Council of Europe、CE)
1949年、人権、民主主義、法の支配という価値観を共有する西欧10か国
が、その実現のための加盟国間の協調を拡大することを目的としてフランス・
ストラスブールに設置した国際機関。2002年4月にボスニア・ヘルツェゴ
ヴィナが加盟したことにより、加盟国は44か国となった。
 CEが対象とする分野は、司法、行政、政治、経済、社会、文化等多岐にわた
るが、既に西欧同盟(WEU)の前身である「ブラッセル条約機構(1948年
3月発足)」が存在していたこともあり、軍事・防衛は対象外。欧州評議会は、
閣僚委員会、議員会議及び欧州地方自治体会議によって構成され、事務局がこ
れらを補佐している。

*2 議員総会(Parliamentary Assembly)
(上記外務省のウェブサイトでは議員会議と訳されている。)
加盟各国の国会議員代表団によって構成される会議。定数306議席(議員お
よび予備議員各306名で、総議員数612名)で、各国の議席配分は人口・
GNP比に基づいて決められ、各国2〜18議席。議員会議は、年4回の本会議
のほか、9の一般委員会及びその他の委員会を通じて活動する。立法権は有さ
ないが、その勧告が閣僚委員会の決定に影響を与えている例は多い。
議員会議の採択するテキストは、勧告(その実施が加盟国政府の権限である閣
僚委員会に対する提案等)、決議(議員会議が権限を有する問題等に関する決
定)、意見(閣僚委員会より付託された事項に対する回答等、新規加盟国の承
認など)、指令(議員会議委員会に対する指示)の4種類。


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