有事3法案の衆院可決を糾弾する!
○抗議する!国会審議を愚弄する民主党の裏切りを。
○許せない!米の対北朝鮮先制攻撃戦争への支持・同調を。


T


(1)民主党の裏切りが突き崩した戦争勢力と平和勢力の「力の均衡」。
 5月15日午後、衆院本会議で有事3法案が可決されました。与野党あわせて9割という圧倒的多数が賛成しました。何というデタラメ、何という恥知らずの茶番劇。空洞化し腐臭ふんぷんたる議会制民主主義にトドメを刺すような反民主主義行為、違憲行為を野党第一党が政府与党と談合・結託してごり押ししたのです。私たちは断固これに抗議します。

 昨年2回にわたって継続審議になったこの有事法案が、なぜこうも易々と成立したのか。言うまでもなく民主党の裏切りです。自民党や戦争好きの首相や「平和」の仮面をかなぐり捨てたもう一つの「与党」は「戦争党」と決まっています。問題は民主党若手ネオコン(新保守主義者)と党分裂の危機感を持った同党執行部が、裏で自民党執行部や防衛族と手を組み、軍国主義化・反動化推進で合意したことなのです。昨年軍国主義勢力と平和主義勢力との間の正面対決から生まれたある種の「均衡」が、民主党の裏切りで一気に崩れたことが背景にあります。

 自民党・民主党のたった2人が戦争への道、違憲立法を和気あいあいとした“談合”“ボス交”で決める異常さ、両党「修正案」が特別委員会で審議されたのはたった2時間半という異常さ、地方公聴会も開かれない異常さ、「修正案」審議が徹底的に無視される異常さ。−−与野党がこぞって国会審議を無視し「議会制民主主義」を破壊しつつあるのです。

 軍国主義法、憲法違反の悪法が野党第一党の賛成によって採択されたのはもちろん戦後初めてのことです。社会党が野党第一党であった1990年の国連平和協力法、同じく92年のPKO法、民主党が野党第一党となった99年の周辺事態法、同じく2001年のテロ対策特措法、これらの法案に対して野党第一党はことごとく反対しました。それによって政府与党の戦争への暴走に歯止めをかけ、戦前のような「翼賛体制」が復活することだけはとりあえず回避してきたのです。ところが、今回はその野党第一党が諸手をあげて賛成しました。


(2)まだまだ不安定な“戦争翼賛体制”。反戦世論の巻き返しで切り崩そう。
 今国会は“戦争翼賛体制”という異常事態に陥っています。これまで幾度も幾度も起こった金権腐敗と政官財の癒着構造で、政府と国会と国会議員は腐りきってしまいました。今回は国家と国民の平和と民主主義を覆す戦争と軍国主義への暴走という重大問題で腐っていることを示したのです。

 確かに造反者が一人も出なかったことは、民主党の軍国主義化・右傾化のひどさを物語っています。しかしその“翼賛体制”は自民・民主一部タカ派のごり押しで一夜漬けででっち上げられた「出来立てのホヤホヤ」です。社民党や共産党は反対、廃案です。あっという間の泥縄、民主党執行部のごく一部の若手タカ派とフラフラの執行部が主導し可決させたにすぎません。党内分裂にふたをした民主党内執行部とネオコンによる国会乗っ取りとでもいえる異常な決まり方は、いくら採決で造反が出なかったとは言え、今後数々の矛盾を噴出させるでしょう。まだまだ不安定極まりないものです。定着しないうちに、戦争の恐ろしさも悲惨さも何も知らないこの与野党の一部指導者たちの暴走に一撃を加え、突き崩すことが決定的に重要です。


(3)国会外の大衆的な反戦市民運動の出番。
 民主党の軍国主義化、反動化への傾斜を今すぐストップしなければなりません。平和憲法を擁護する護憲の市民運動、反戦平和の市民運動の奮起・奮闘が今こそ必要とされています。実際、裏切ったのはまだ民主党の“議員”だけです。執行部と一部タカ派が根回しもなく突っ走っているのが現状です。民主党の支持基盤である全国各地の旧社会党系・旧総評系の労働組合運動の中にもまだまだ反戦・非戦の大衆的な雰囲気・意識が健在です。そしてその周辺にも様々な市民運動が残っています。

 今からでも遅くはありません。今危険なのは“流れ解散”“闘争態勢の解除”です。あくまでも廃案を要求し巻き返しを図ること、下からの反戦世論を盛り上げることです。参院段階で、どこまで押し戻すことができるか、それが肝心です。一つ一つの行動、一人一人の声を国会包囲の場に結集しましょう。様々な反戦運動や労組が連続行動を呼びかけています。私たちも来る5月23日、24日の国会包囲行動・東京行動を行い、あくまで廃案を目指していきたいと思います。


U


(1)ウソとでっち上げで侵略できる時代の恐ろしさ。国際法違反の首相をとがめもしない民主党。
 いつからウソやデタラメで侵略戦争がでっち上げられるようになったのか。ナチス・ヒトラーや天皇制軍国主義の戦前・戦中の時代ならいざ知らず、人類は2つの世界大戦で学んだはずです。でも今回のイラク戦争のデタラメなこと、絶対私たちは追及をやめません。大量破壊兵器の問題は一体どこへ行ったのか。この問題が戦争の理由ではなかったのか。国連安保理や世界中を騒がしたのではなかったのか。「イラク国民の解放」など嘘っぱち。イラクの民衆は米英軍など歓迎していません。戦争の「大義名分」についてブッシュもパウエルも未だにシラを切っているのです。

 小泉首相もバグダッド陥落直後、なかなか出てこない大量破壊兵器にこう応えました。「いずれ、出てくるでしょ」。イラク侵略支持表明の原理原則は「大量破壊兵器」だったはず。すでにバグダッド陥落後1ヶ月が経ちました。民主党は、なぜこの小泉首相の開き直りを国会で追及しないのか!彼ら与野党の“翼賛政治”の連中は、憲法を愚弄するだけではありません。国際法をも愚弄してはばからないのです。

 イラクというれっきとした一つの独立主権国家が壊滅させられたのです。何の「大義名分」もなく正当性も何もなく、ただ石油略奪をしたいだけ、中東の覇権を確立したいだけの野望でもって彼らブッシュ政権はやったのです。そんな無法行為と非人道行為、戦争犯罪を許して良いのか。政府与党も野党第一党もまるで支持容認。今や5000人に達しようとしている罪なき一般市民の犠牲、数万人と言われる兵士や義勇兵の犠牲、そして伝染病の蔓延や飢えなどの人道的危機・・・こうした国際法に反する重大な犯罪行為をしたブッシュ政権に国際的非難が集中しない事態も異常なら、それを支持した小泉政権が何のとがめもなく国会で平然とやり過ごせる事態もまた異常ではないでしょうか。


(2)国民は本当のことは何も知らされていない。小泉政権のウソとごまかしを暴露すること、それが反戦運動の責務。
 小泉政権はウソとデタラメを有事法制でやろうとしています。政府は、有事法制が「日本が攻められたとき」の「日本防衛」のための法律であるかのようにごまかしています。小泉首相は「備えあれば憂いなし」という抽象的な議論で問題をはぐらかし、国民の目から有事法制の危険な本質を覆い隠しています。しかしそれはウソです。

 一方マス・メディアは「拉致問題」「核開発疑惑」を騒ぎ立て、ありもしない「北朝鮮の脅威」を煽り、まるで今にも北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が核兵器をミサイルで撃ち込んでくるかのようなデマゴギーを流布しています。

 世界最大最強の圧倒的なハイテク航空戦力と第七艦隊・空母機動部隊をもって制空権・制海権を掌握し、核戦力で核の脅迫もやりながら、イラクへの先制攻撃戦争で実際に軍事脅迫を行い、北朝鮮を政治的軍事的経済的に包囲し、東アジアと朝鮮半島で「戦争の脅威」を振りまいているのはアメリカです。日本の政府やメディアの歪曲と誇張からなる「戦争プロパガンダ」にごまかされてはなりません。これら連中の言うことと実態とは全く逆なのです。「脅威」の源泉は北朝鮮ではなくアメリカと米日韓軍事同盟の方なのです。


(3)それが米大統領の命令一下北朝鮮を攻める法律とは誰も聞かされていない。−−アメリカの対北朝鮮先制攻撃戦争への参戦こそが有事法制の本質。
 有事法制は、そんな圧倒的なアメリカの極東軍事力の対北朝鮮先制攻撃戦争を実際に促進し加速する戦争法なのです。
 まず(1)アメリカの対北朝鮮戦争には出撃拠点、司令部、兵站基地になる体制が不可欠です。なぜなら韓国は戦場になるからです。
 (2)自衛隊の海外での直接的な武力行使を可能にする極めて侵略的な法律です。「攻められること」を前提にあらゆる攻撃を可能にできるようにすり替えているのです。憲法の「交戦権の否定」という原則などここで一気に打破しようと言うのです。
 (3)戦争を「公共の福祉」と位置付け、憲法の基本的人権の抑制や停止を目論む非常に弾圧的な法律です。人権侵害を“合法化”“正当化”する人権蹂躙法なのです。
 (4)それだけではありません。強制的な「国家総動員法」なのです。それは「国防の義務」「戦争協力の義務」という風に、侵略戦争への国・自治体・民間企業・諸個人の協力を「義務化」する非常に強制的な本質を持つ「戦争義務法」です。もちろん協力を拒否したり異議を唱えれば“罰則”が課せられる弾圧法です。

民主党の「対案」、自民党との「修正案」は、こうした有事法制の危険性を根底から暴露し、国民に広くその本質を明らかにするのではなく、その侵略的本質のすべてを認めた上で、戦争協力の手続きの変更や基本的人権の侵害の口先での緩和を求めたにすぎません。法案全体をオブラートに包み、戦争が起こっても国民が権利を侵害されずに快適に生活が出来るかのような幻想を振りまき、有事法制がもつ凶暴性を覆い隠す犯罪的な役割を果たしたのです。


V


(1)党利党略、党分裂回避のために国民と憲法を裏切った民主党。
 民主党は、左右分裂の党内事情、自由党との野党合流問題に揺れる民主党の崩壊をくい止めるために、与党自民党と政策的に手を結ぶことを選択しました。修正協議は最初から腰が引けていました。そして、アメリカの戦争政策を支持し「民主党の政権担当能力」を示すことによって民主党のアメリカにとっての存在価値を高めようとしたのです。

 有事法制の持つ危険性を集約しているのは「予測事態」という概念です。ブッシュが対イラク戦争を開始するに当たって「疑惑」をでっち上げたように、「予測事態」と認定するだけで、日本は戦争準備態勢に入ることが出来るようになります。民主党は、昨年の審議段階では「専守防衛に反する」としてこの点を批判していました。ところがコロッと変わったのです。イラク戦争で実際に先制攻撃戦争が行われた途端に一切問題にしなくなりました。

 「自民党以上に右」と言われる民主党「次の内閣」安全保障担当前原誠司氏は、自衛隊の海上警備活動や治安出動時の武器使用基準の緩和にまで言及し、「戦時」「準戦時」下での、武力を使った国民弾圧と統制の意図をあからさまにしています。自衛隊による「対敵地攻撃能力の保有」を求める石破茂防衛庁長官、改憲を口にしてはばからない安倍晋三官房副長官ら自民党のタカ派、改憲派とつながることの危険性ははかり知れません。

 実はこうした日本型ネオコンとの闘い、それが有事法制との闘いの重要な意義なのです。彼ら「ちびっ子戦争屋」こそが、将来の日本の平和を危うくする根源なのです。集団自衛権行使を好き放題できる体制作り、明文改憲を視野に入れた彼らの野望との闘いの前哨戦、それが有事法制反対の闘いなのです。


(2)平和憲法と有事立法は根本的に矛盾する。私たち自身の闘いを長期戦と位置付け、反戦・護憲運動を更に強化しよう。
 政府与党もマス・メディアも、もはや有事法制は過去の問題のように仕立てようとしています。言語道断、そんなことを絶対許してはなりません。次は個人情報保護法案だ、「国民保護法制」「米軍の行動円滑法」だとふざけたことを言い放っています。私たちは参院段階で精一杯奮闘する決意です。

 しかし同時に、この有事法制はもっと中長期の闘いの中で位置付けて闘わねばならない課題であることを強調したいと思います。衆院で成立したことで終わりではないし、参院で可決されたとしても終わりではありません。むしろ長い長い闘いの、まだまだ初発段階に過ぎないのです。
 なぜなら、有事法制という違憲立法自体が日本国憲法そのものと、また「平和主義」「国民主権」「基本的人権の尊重」という3つの基本原理と根本的な矛盾を持つものだからです。仮に与野党の野合と談合でこの法律が今国会で成立したとしても、「侵略戦争準備の下位法」(有事立法)と「交戦権放棄の上位法」(日本国憲法)が併存する状態が生まれることになります。平和憲法と有事立法は対立しながら併存する時代が続きます。つまり「戦争」と「平和」、「国民主権」と「主権制約」、「基本的人権の尊重」と「蹂躙」のあいだで激しい対立が続くことになります。少なくとも軍国主義・反動勢力が明文改憲を成し遂げるまでその根本矛盾と闘いは続くのです。これは、有事法制の根本的な弱点です

  こうした長期の闘いをやり遂げるためにも、今参院段階でどこまで押し返せるかが決定的に重要です。反戦平和、護憲を掲げた市民運動だけが、その大衆的な力関係だけが、同時に国会での力関係の巻き返しにつながり、有事法制今国会成立の動きを押し返すことが出来ます。国会外の大衆行動と反戦世論作りこそが、日本の軍国主義化・反動化を阻む長期的な闘いにつなげることが出来るのです。国会会期末6月18日まで、参院での有事法制成立を阻止し廃案を要求する闘いを作り上げましょう。

2003年5月17日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




関連記事

憲法と有事法制 【シリーズその3・最終回】 憲法機能を停止し改憲への道を開く有事法制

イラク戦争後、3ヶ国協議後の米朝関係、朝鮮半島情勢と有事法制の危険