シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その19
楽しみながらイラク市民を無差別に乱射するイギリスの民間軍事請負会社
−−“記念品”として社員が持ち帰ったビデオがイギリスで調査対象に−−


 イラクで米軍に雇われた民間軍事請負会社の社員が、自分の車から、市民の車を銃撃する恐るべきビデオが明らかになった。問題のビデオは、イギリスの民間軍事請負会社イージス・デフェンス・システム社(Aegis Defence Services、ADS)に非公式にリンクされたサイトに最初に公開された。このADSの社員が無差別殺戮の「記念品」として持ち帰ったものだという。「トロフィー・ビデオ」と言われている。この会社は、イギリス軍の前スコットランド守備隊の将校Lt Colティム・スパイサーが2002年に設立した、イギリス軍と密接不可分の典型的な民間軍事請負会社だ。

 この事件は、11月27日のイギリス『デイリー・テレグラフ』紙によってすっぱ抜かれた。記事は『「記念品」ビデオは、イラクのドライバーを銃撃する民間軍事請負会社を暴露する』というもので、それによれば、ADS社は社員がかかわっているのかどうか内部調査を始め、外務省も同社の関わりについて調べているという。
※「'Trophy' video exposes private security contractors shooting up Iraqi drivers」(『「記念品」ビデオは、イラクのドライバーを銃撃する民間軍事請負会社を暴露する』) "news.telegraph 27/11/2005"http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2005/11/27/wirq27.xml

 最初にビデオが公表されたサイトはイージス・イラクというアドレスで、同社のものではないが、同社の中心的な社員のものだと述べていた。ビデオは最初のサイトでは削除されたが、現在は他のサイトで見ることができる。
※現在見ることのできるビデオのアドレス:「Contractors In Iraq Fire On Civilians」http://www.flurl.com/uploaded/Bareknucklepoliticscom_EXCLUSIVE_10122.html

 このビデオは、「ルートアイリッシュ」というバグダッド空港からバグダッド市内に向かう道路で撮影されたと見られている。銃撃された車は、蜂の巣になって路傍に止まり、追突された車からは、大慌てで人々が逃げ出してくる。これらの車は特別な行動をした訳ではない。民間軍事請負会社の車に知らずに近づいてきただけだ。それを自動小銃で突然乱射しているのだ。彼らが銃撃する4つのシーンがビデオには入っているが、最後のものでは運転席がねらい打ちされ、銃弾で車体の破片やガラスが飛び散るのが見える。ビデオでは社員たちがわざわざ自分たちの車のスピードを落として、相手をわざと近づけさせているようにも見える。

 ビデオの背景にはエルビスプレスリーの軽快な音楽が流れる。民間軍事請負会社の社員たちはまさしく民間人の車への射撃を楽しんでいるのだ。正真正銘の殺人者である彼らはイラクでもイギリスでも法によって裁かれることも、罰せられることもない。イラク戦争の最大の特徴の一つである「戦争の民営化」(民間軍事請負会社への外注)によって、今もイラクではとんでもない無法がまかり通っているのだ。
 彼らのこの残忍な戦争犯罪行為は、米軍がやっているのとまさに同じ行為なのだ。このビデオは、数多くのイラク人が民間軍事請負会社によって殺された可能性を示唆している。イラクの人々がなぜ米軍だけでなく民間軍事請負会社の社員を心から憎んでいるのか。2004年3月になぜブラックウォーター社の社員がファルージャで殺され、遺体が焼かれつるされたのか。その理由はこのビデオをみれば明らかである。


◆民営軍事請負会社(PMF)については下記を参照◆
イラク戦争と「民営軍事請負会社」(1)「イラクに群がる“新しい死の商人”=民営軍事請負会社(PMF)」
イラク戦争と「民営軍事請負会社」(2)[書評]『戦争請負会社』
イラク戦争と「民営軍事請負会社」(3)「寄生と腐朽の極みとしての民営軍事請負会社」

2005年11月30日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局