アフガニスタンで劣化ウラン弾大量使用の重大疑惑!!

アフガニスタンにおける劣化ウラン戦争
―重大疑惑と検証―
このむごたらしい「新型核兵器」をイラクで使わせないために


 アメリカは2001年10月7日に開始し今なお続けている対アフガニスタン戦争で劣化ウラン弾(DU)を大量使用したし今も使用している。しかもそれはかつての湾岸戦争に匹敵するかそれを上回る使用量である。更に現地調査から大量使用の物的証拠と健康被害が出ている。−−このような重大な疑惑が明らかになってきました。
 いまなお続けられているアフガンでのDU使用を直ちに止めさせるために、イラクで再び劣化ウラン戦争を起こさせないために、アフガン戦争で劣化ウラン使用の重大疑惑を解明し、広くその事実を知らせることが重要であると考え、緊急にパンフレットにまとめることにしました。


表紙の写真(下)は、ジャーナリスト志葉玲さん http://give-peace-a-chance.jp/118/iraq.htmlより


 頒価 1部500円+送料

 お申し込み、お問い合わせは署名事務局まで。e-mail: stopuswar@jca.apc.org
      *パンフレットご希望の方は、宛て先と希望冊数をお知らせください。
         パンフレットと振り込み用紙をお送りします。代金は後払いで結構です。



  目 次  

第1部
はじめに
経緯と検証:硬化目標攻撃用誘導兵器の劣化ウラン疑惑について

第2部
アフガニスタンの劣化ウラン兵器−HELP 生物学的サンプルをテストする必要
UMRC アフガニスタンのウラニウム汚染 アフガニスタンの人々に代わっての緊急アピール
○アフガニスタン:核の悪夢が始まっている (デイヴィー・ガーランド)

第3部
○ヘロルド教授からの手紙
○ダイ・ウィリアムズ氏からの返信

第4部
○ウラニウム戦争:ペンタゴンは放射性弾薬の使用をさらに進める (マーク W.ヘロルド)
○解説 硬化目標攻撃用誘導兵器とは

第5部
○ウラニウム兵器2001-2002年 イラクに対して企てられる戦争でのウラニウム兵器の危険性(ダイ・ウィリアムズ)(一部分)
○氷山の一角?−−爆弾やミサイルシステムへの劣化ウラニウムの明白な使用(ダイ・ウィリアムズ)
  [要約]高貫通兵器システム コンセプト/計画 アメリカ空軍
○ダイ・ウィリアムズ編集によるウラニウム弾頭が疑われる兵器のアメリカの特許検索結果・要約

第6部
○The heavy metal logic bomb 重金属論理爆弾 (デービット・ハンブリング)
○BLU-116は鋼鉄製か、劣化ウラン製か―私たちの検証計算について―
○解説 劣化ウラン弾とはどのようなものか




はじめに


(1) 重大な疑惑−−アフガニスタンで米軍は劣化ウラン弾を大量使用した

 アメリカは2001年10月7日に開始し今なお続けている対アフガニスタン戦争で劣化ウラン弾(DU)を大量使用したし今も使用している。しかもそれはかつての湾岸戦争に匹敵するかそれを上回る使用量である。更に現地調査から大量使用の物的証拠と健康被害が出ている。−−このような重大な疑惑が明らかになってきました。もしこれが事実であれば極めて深刻なことです。このパンフレットは、この重大な疑惑を解明し検証しようとするものです。
 かつて12年前の湾岸戦争で初めて使用され多大な犠牲者と被害を生み出し、1999年の旧ユーゴに対する空爆でも大量に使用され、それぞれ湾岸シンドローム、バルカン・シンドロームとして現地で恐れられ大問題になった“放射能砲弾”です。
※劣化ウラン弾とは、Depleted Uranium Munition:略して”DU”と呼ばれ、一口で言えば放射能砲弾のことです。その構造・組成・役割などについては巻末に【解説】を載せましたので、そちらをご覧下さい。
※また劣化ウラン弾の被害の実態と人体への影響に関する詳細な研究については、「劣化ウラン弾−−被害の実態と人体影響」(発行: 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 2001年4月発行)をぜひご参照下さい。 http://www.jca.apc.org/mihama/pamphlet/pamph_d_uran.htm

(2) バルカン症候群以後、完全に封殺された劣化ウラン情報

 ちょうど2年前の2001年初頭、バルカン・シンドロームがヨーロッパ中を席巻しました。引き金は、イタリアの帰還兵士の間で白血病死の多発が明らかになったことでした。劣化ウラン弾という当時はまだ聞き慣れない砲弾が大量に投下され多数の兵士が被曝したことが発覚したのです。NATO諸国の各国の帰還兵士たちは以前から切実に被害を訴えてきたのですが、ずっと無視され続け、怒りが爆発したのです。被曝兵士たちはデモ行進を行い、新聞は連日この問題を取り上げました。

 イタリア兵士の白血病死の多発を発端にして、問題は爆発的な広がりを見せ、一つにつながりました。NATO各国のボスニア、コソボへの従軍兵士の白血病死・その他放射線障害の多発、これら兵士による告発と補償を求める運動、バルカン・シンドロームという放射能被害の存在の国際的な認知、ボスニア・コソボへの劣化ウラン弾の大量投下の事実の暴露、バルカン・シンドロームの湾岸戦争シンドロームへの連想の拡大、イラクで被曝した米軍兵士たちの運動の存在。劣化ウラン弾被害についての米軍兵士達の運動のNATO軍兵士達の運動への協力。等々。−−「劣化ウラン弾は自然放射能よりも安全」「こんなに早く、こんなに深刻な被害が出るはずがない」という米軍やNATO軍、更には国連の情報操作、世論操作が、ついにこの時、否定できない悲惨な真実の前に綻び始めたのです。

(3) 遂に“尻尾”をつかんだ執念の研究者たち

 しかしこの爆発的な劣化ウラン弾反対の運動の広がりが、米英政府、米英軍とNATO軍当局をして、一切の情報を封殺させたのです。それ以後、彼らは反対運動と兵士たちの動揺を恐れ、劣化ウラン弾について一切語らなくなりました。それまでは、その使用の事実を渋々と認めた上で「安全だ」「問題ない」と開き直ってきた態度が一変し、この問題に関する情報がことごとく封印されてしまったのです。

 私たちは、今回の対アフガン侵略に際しても、米英軍は必ず劣化ウラン弾を使用しているはずだと確信していましたが、このような情報封殺の中で、なかなかその確証を得ることができませんでした。

 ところが一昨年11月から現在にかけて、米英政府・軍による情報封殺に風穴を開ける研究・調査が、まだわずかですが明らかにされ始めました。後述するマーク・W・ヘロルド教授とダイ・ウィリアムズ氏、ドラコヴィッチ博士らの貴重な調査・研究です。彼らは遂に“尻尾”をつかんだのです。本パンフレットは、彼らの調査・研究をできるだけ忠実に、日本に紹介しようとするものです。劣化ウラン弾を告発し続けてきた人々、反戦平和を希求する、核戦争と核被害に反対する、とりわけアフガン戦争に反対し、来るイラクへの攻撃に反対する、一人でも多くの人々に、この重大な疑惑を理解し広めていただきたいと思います。

(4) アフガンでの現地調査で劣化ウラン使用の「物的証拠」が明らかに

 ダイ・ウィリアムズ氏らの結論は、米軍はアフガニスタンにおいて1000d(ウィリアムズ氏)、500〜600d(ヘロルド教授)もの大量の劣化ウラン弾を投下したという疑惑です。この数字は12年前の湾岸戦争で米軍が発表した使用量の2倍〜3倍という驚くべき量です。この数字の裏付けや根拠、私たちの検証については、このパンフレットの別論文「経緯と検証」にまとめたので、そちらをご覧下さい。

 私たちに年明け早々、もう一つ新しい情報が相次いで飛び込んできました。「ウラニウム医療研究センター」(The Uranium Medical Research Centre, UMRC)のアサフ・ドラコヴィッチ博士のチームが、実は昨年2回もアフガニスタン現地を訪問し実態調査を行ったところ現に住民の間に通常では考えられない健康被害が出ている、しかも住民の間には湾岸戦争復員兵の100〜400倍ものウラニウム同位体の蓄積が発見されたという事実です。
 パンフレット原稿脱稿の1月8日にはUMRCから緊急の資金援助の要請「アフガニスタンのウラニウム汚染−−アフガニスタンの人民のための緊急アピール」が舞い込んできました。更に大々的な現地調査を行うためのものです。非常に衝撃的かつ重要なことです。これを翻訳し紹介することとしました。

 それまで私たちが、ウィリアムズ氏やヘロルド教授の研究で把握したのは、疑惑の大きい兵器と弾頭の仕様・構造、あるいは米軍および米特許庁の文献資料から、劣化ウラン使用の事実を論証するという、いわば「状況証拠」でした。もちろん「状況証拠」といっても、ヤマのような膨大な資料や情報を収集し調査し吟味するという私たちには到底まねのできないことです。怒りと執念のなせる技と言えるでしょう。これに対してドラコヴィッチ博士の新しい調査結果は「物的証拠」です。これによって疑惑はますます高くなりました。

 ヘロルド教授の論文でもウィリアムズ氏の論文でも、現地の報道で一昨年10月に空爆が始まってすぐにアフガニスタンの住民の間に放射能か化学兵器の使用(あるいは重金属の中毒症状か)としか思われないような奇妙な病気の発生のことが紹介されています。国防総省の記者会見ではラムズフェルド国防長官が新聞記者に「放射能を検出した」ことを追及されて、放射能は確かに検出されたけれど、それはアル・カイダのものだと開き直っています。しかし、放射能の検出そのものは否定できませんでしたし、アル・カイダのものだという証拠も何も出せませんでした。爆撃によってかなり広範な劣化ウランによる汚染が進んだ可能性があります。

 ウィリアムズ氏も私たちへの手紙で触れていますが、カナダを拠点に活動するドラコヴィッチ博士の「ウラニウム医療研究センター」(UMRC)は昨年アフガニスタンに2回の調査を行っています。そして1回目の調査ではアフガニスタン南東部の爆撃集中地域の重症患者の尿から通常の100倍もの天然ウラニウムを検出したのです。これは全く異常なデータです。言うまでもなくこの地域には天然ウランの存在はアメリカ軍の爆撃以外にはあり得ません。ウラニウム使用の疑惑は深まるばかりです。そして劣化ウランではなくもっと放射能の強い天然ウランをアメリカ軍が使っている可能性まで示唆されているのです。

 ドラコヴィッチ博士は単に医者と言うだけではなく、放射線核医学の専門家です。彼は湾岸戦争後にアメリカの復員軍人省が作った核医学クリニックの責任者だった人物、つまり政府側が雇った学者でした。ところが湾岸戦争症候群を訴える元兵士らに放射線による健康障害を認め、さらに詳しい研究を政府に要請したために解雇され、クリニックを閉鎖されたのです。その後、ジョージタウン大学で放射線核医学の教授を勤め、現在はUMRCを取り仕切っています。その専門家中の専門家である彼のチームが直接現地に乗り込み、診察し、疑わしいと思われる患者から集めたサンプルから高濃度のウラニウムが検出されていることは信頼性が高く極めて重要な意味を持つと思います。

 ウィリアムズ氏は、WHO、UNICEFをはじめ国連機関、一部NGOにも、劣化ウランが使われている疑いが強いのでアフガニスタン現地での調査ではウランの調査項目を含めるようにという要請を送りましたが、これらの機関はこの警告をことごとく無視しています。このように国際機関などが米英の顔色を伺い一切口を閉ざしているもとでは、ドラコヴィッチ博士らの調査は非常に重要です。彼の2回目の、カブールを含む調査でのサンプルの分析は資金的な面で遅延を余儀なくされているようです。(※1) また、トラップロック平和センターへのウィリアムズ氏の投稿(※2)によれば、UMRCとも協力して劣化ウラン検出の仕事をしていたパット・ホラン氏(カナダでは貴重なテスト機関)が数ヶ月にわたる嫌がらせのためにその仕事をやめざるを得なくなったようです。劣化ウランによる汚染と健康被害を闇に葬り去るために不断の圧力がかけられていることに怒りを禁じ得ません。

(5) 劣化ウランの大量使用は第一級の戦争犯罪

 ブッシュ政権は答えるべきです。−−アフガニスタンで劣化ウランを使用したのか否か。もし使用したなら一体どのくらい使用したのか?一切使用していないとは言えないはずです。なぜなら少なくともA-10やアパッチ攻撃ヘリは、これまでの兵器と弾頭の軍事常識から見て劣化ウラン弾をばらまいたことは間違いないからです。そして後述するように、大量使用のカギを握る“硬化目標攻撃用誘導爆弾”や巡航ミサイルの劣化ウラン疑惑について真実を述べるべきです。

 私たちは厳しく弾劾します。ブッシュによる対アフガニスタン戦争そのものが、国際法と人道に反する侵略戦争であり、戦争犯罪であるということを。今もなお米軍はやりたい放題に、まるで軍事演習をするかのように全土で、あるいはパキスタン国境を越境してまで、爆撃と殺戮を繰り返しています。何の罪もない一般民衆の殺戮や被害が世界中のメディアから全く問題にされず無視され続けているのです。

 私たちは、昨年4月『アメリカはアフガニスタンで何人の人々を殺したか!?』というパンフレットを出しました。そこでは、無実の一般民衆の殺戮、捕虜虐待、飢餓と餓死、凍死、非人道兵器の使用等々、アフガニスタンにおけるアメリカによる個々の戦争犯罪を列挙し告発しました。今回の重大な疑惑の解明を通じて、もう一つ、劣化ウラン弾による被害という新しい、第一級の戦争犯罪を付け加えなければなりません。
※2年前、欧米の反戦平和運動、反劣化ウラン弾運動は、湾岸シンドローム、バルカン・シンドロームに対して、少なくとも以下のような要求を、米英政府、NATO加盟各国政府に対して突き付けた。これらの要求は、今回のアフガニスタンでの使用疑惑に際しても生き続けている。私たちはもう一度、反劣化ウラン弾で立ち上がり、ブッシュ政権と日本を含む同盟国政府に対して要求していく必要がある。
@ 何よりもまず、劣化ウラン弾は紛れもなく核兵器であり、その使用は核戦争であることを認めさせること。その上で即時無条件の使用中止、製造・貯蔵の中止、全面的な廃棄を実行すること。
A アフガニスタンは言うまでもなく、イラク、ボスニア・コソボなど旧ユーゴ全域について、米政府は劣化ウラン弾の製造・使用・人体と環境への影響など、一切の情報を全面的に公開すること。
B これら劣化ウラン弾を投下した全地域において、白血病やがんなど劣化ウラン弾被曝者を可能な限り広く認定し、発病者の治療と補償を行うこと。更には「原爆ブラブラ病」の症状を示している圧倒的多数の被害者に関する全面的な健康調査を実施すること。
C 劣化ウラン弾で汚染された地域の調査・確定と汚染物・汚染土の処分。
D 劣化ウラン弾の無差別大量投下が戦争犯罪であることを確認し、早急に国際裁判を実施すること。その上で米大統領と統合参謀本部議長、NATO司令官と事務局長を初め責任者全員を処罰すること。等々。
※劣化ウラン弾反対運動は、反戦平和運動と反原発運動とを結合する結節点である。核の平和利用と軍事利用の両方に反対するという一般的な意義だけではない。“低線量被曝の危険性”という重大な問題で共通するからだ。低線量被曝の危険性を過小評価し切り捨てる「国際放射線防護委員会」(ICRP)を中心とする従来基準を、原発事故や被曝労働、今回のような劣化ウラン弾被害という現実の被害に合わせて根本的に改め是正することが求められているのである。

(6) イラクでの大量使用こそが「本番」

 私たちがこのパンフレットの発行を急いだのは、ブッシュによる対イラク戦争が差し迫っているからです。元々、劣化ウラン弾を実戦で大量使用したのは、12年前の湾岸戦争が初めてでした。今回のアフガンでの大量使用のカギになるバンカーバスターを都市部とその周辺の地下施設を攻撃するために開発・改良される発端となったのも、この湾岸戦争でした。アフガンでの使用は洞窟などへの攻撃用に本格的に用いられると同時に、いわば「予行演習」の意味合いも持っています。イラクでの使用こそが「本番」なのです。

 ダイ・ウィリアムズ氏は、私たちへの私信の中で、来るイラク攻撃では米軍は1500dもの大量の劣化ウラン弾を使用する可能性があると指摘されました。もしこれが本当なら、これはかつての湾岸戦争の5倍(米政府の公式発表との比較)、今回のアフガンでの使用量の3倍となります。いずれにしても膨大な数字です。

 今度の戦争でブッシュが狙っているのはバグダッド侵攻とフセインの打倒です。かつての湾岸戦争では、長期にわたる大規模な空爆と砂漠の中での戦車戦が中心でした。しかし今回はそれだけではありません。かつての湾岸戦争を何倍も上回る量の劣化ウランがバグダッドと大都市周辺の軍事基地、通信中枢、都市機能や避難用シェルター(おそらくフセイン大統領避難用のシェルターがこれに含まれる)に投下され、劣化ウランという放射性物質が撃ち込まればらまかれるのです。何の罪もないイラク民衆が、大人から子どもまで、事実上永久に続く放射能の危険にさらされるのです。
 一旦、放射性物質がばらまかれると一体どうなるのか。それはいつまでも終わることのない半永久的な放射能汚染と被曝被害です。広島・長崎の被爆者、原発・核関連施設での被曝労働者、核燃料サイクル、あるいは原水爆開発の関連施設の被曝者とその周辺環境の汚染の実態が、否応なしに告発する悲惨です。
 イラクへの劣化ウラン戦争は絶対阻止しなければなりません。戦争そのものを食い止めることで、「ウラニウム戦争」、放射能による大量の環境汚染と被曝被害を阻止しなければなりません。

(7) 今なお苦しむ湾岸戦争の被曝者−−ブッシュは再びこれを何倍も上回る放射能汚染と被爆者を生み出そうとしている

 秒読み段階に入った米によるイラク攻撃は、「劣化ウラン戦争」になることは間違いないでしょう。そしてその被害状況は、12年前にイラク民衆が身を持って実体験したことなのです。劣化ウラン弾使用量が増えれば、それだけ汚染と被害も格段に増えるでしょう。

 かつての湾岸戦争では、米国防総省の発表によっても320dもの劣化ウランがイラク南部にばらまかれました。その後、戦場に近いイラク南部の諸都市で、癌・白血病が3倍〜7倍に増加しているという深刻な実態が明らかにされてきました(※1)。
 最近、1999年以降、ガン・白血病がさらに急激な勢いで増大しているという驚くべき結果がイラクの専門家から報告されました。2002年12月1日に、広島で開催された「イラクの医師を囲む集い」に講演者として招かれたバグダッド大学医学部のジョルマクリー医師とバスラ大学のアル・アリ医師は、劣化ウラン被害者たちの直接の担当医師として治療に当たっているのですが、最新のデータを用いて事態の深刻さを明らかにしました。

 特に白血病の増加が特徴的であり、バスラでの小児白血病(悪性)の発生数は、1994年〜1998年は24〜25人ですが、1999年は30人、2000年は60人、2001年は70人と急激に増加しているというのです。また、バスラでの15歳以下の子供における悪性腫瘍の発生率は、1994年〜1998年は10万人当たり7人前後で推移していますが、1999年〜2001年には11〜13人と、これも急激に増加しています。その中でも5歳未満の乳幼児の白血病発生率の増加が顕著で、2001年度における15歳以下の子供の白血病の発生数70件のうち41件が5歳未満の乳幼児でした。許し難いことに、劣化ウランによって癌に犯されたこれらの子どもを治療するための薬も医療設備も「大量破壊兵器の材料になる」と輸入が禁止されているのです。治療することさえ許されないのです。

 被害は癌・白血病だけではありません。湾岸戦争後に産まれた子供たちの間で、眼、耳、鼻、舌および性器の変形、あるいは、欠損といった先天的障害が頻繁に現れているのです。極めて深刻な事態です(※2)。さらに劣化ウランは、さまざまな全身症状を引き起こします。1991年から1997年にかけて行われた調査では、癌・白血病、先天的奇形の発生の他、深刻な免疫不全によって引き起こされた感染症の大幅な増加、AIDS様の症状、重い疱疹の多発、腎臓と肝臓の機能障害の多発(1991年の終りにはすでに出現)が見出され、特に子供への罹患が特徴的であったと報告されています。

 湾岸戦争では劣化ウラン弾は砂漠の中で使われました。戦車への命中によって酸化物のダストとなって飛び散った劣化ウランが今でも風が吹くたびに空気中に舞い上がり、人々はそれを吸い込んでいるのです。さらに食物に付着した劣化ウランや飲料水を通じての劣化ウランの摂取が行われています。劣化ウラン(ウラン238)の半減期は45億年と、気の遠くなる長さです。一旦汚染された地域は数十年どころか数百年、数千年にわたって、事実上永久に汚染され続け、次々と癌患者、癌死者を生み出し続けるのです。アメリカが大量使用した最悪の非人道兵器=劣化ウラン弾は、何の罪もないイラクの一般民衆、とりわけ子供たちに苦しみを与え、殺し続けているのです。
※1:1998年12月にバグダットで「劣化ウラン弾の被害と環境に与えた影響に関する会議」が開催された。この会議には内外から、600人もの医師・科学者が参加し、被害についての研究・調査報告が行われた。その中で、接触等によって劣化ウラン弾に直接被曝した兵士と、被曝していない兵士との比較研究の報告が行われた。その報告によれば、被曝していない兵士に対して被曝兵士は、白血病で4.8倍、リンパ腫で5.6倍発生率が高い。同じ兵士集団の間に生じた数倍もの発生率の違いの原因は、劣化ウランへの被曝以外に考えられない。さらにこの報告は、直接被曝していない兵士であっても、1991年から97年にかけて、それ以前の時期と比較して癌の発生率が約3倍になったことを示した。戦場で直接被曝していなくても、事後に拡散したウラニウムの粉塵を吸い込んだり、その他の様々な経路で被曝したことが原因だと考えられる。このことは、戦場の周辺地域の住民も、同じように拡散した劣化ウランによる被曝被害を被っているであろうことを示唆している(Conference on Health and Environmental Consequences of Depleted Uranium used by U.S. and British forces in the 1991 Gulf War - Hotel Al-Rashid, Baghdad, Iraq December 2-3, 1998)。
※2: http://www.iacenter.org/depleted/gunther.htm

(8) アメリカによる新しい形態の核戦争:「劣化ウラン戦争」

 アフガニスタンにおける劣化ウランの使用は、私たちに戦争のあり方と形態を根本から再考する必要性を示しています。1991年湾岸戦争−1995年ボスニア介入−1999年旧ユーゴへの空爆と侵略−2001年アフガニスタン侵略−2003年イラク侵略?−−これだけ続けばもう偶然ではありません。実は1991年以来、米英軍によるイラクの飛行禁止区域に対する空爆でも劣化ウラン弾が使用されているのです。この空爆は最近、イラク攻撃を前にして飛躍的に強まっています。米国とペンタゴンは、1990年代以降の戦争を全て「劣化ウラン戦争」として展開してきたのです。2年前、あれほど非難の集中砲火を浴びたにも関わらず、平気で大量使用し続けているのです。劣化ウラン弾が、いわば「標準装備」となっていることを示しています。

 私たちは12年前に米ソ冷戦が終わり核戦争は過去のものとなった、そう考えました。確かにソ連が崩壊したことで、人類と地球環境全体を一瞬のうちに壊滅させる米ソの間の「旧いタイプの世界熱核戦争」は過去のものとなりました。しかし今やこの認識を根本的に改めなければなりません。かつて広島や長崎で使用されたような原爆ではありません。劣化ウランという「放射性廃棄物」を砲弾化してばらまくという全く新しい発想、全く新しい型の核を使った核戦争が、米軍やNATO軍によって、実際に行われているという紛れもない事実です。

 アメリカは、広島・長崎以来、湾岸戦争まで、戦場で核を使用することはできませんでした。相次いで情報公開された米公文書を見ても、朝鮮戦争やベトナム戦争で、米政権が幾度も核を使う寸前まで行ったことは今や歴史的事実ではあります。しかしソ連と社会主義による報復の恐怖が、民族解放運動の高揚と親米・傀儡政権崩壊の恐怖が、更には全世界の反核平和運動の高揚の恐怖がその軍事的冒険主義を抑えてきたのです。時の米大統領と政府首脳は自分の政権そのものの倒壊を恐れ、同盟関係の崩壊を恐れ躊躇したと言えるでしょう。つまり代償があまりにも大きくて使用できなかったのです。

 しかし途上国や紛争地域で核廃棄物と低レベル放射能を戦場にばらまくという思いも寄らない、一部で「低強度核戦争」と呼ばれる「全く新しいタイプの核戦争」が、世界の政治軍事情勢の根本的変化の下で新しく始まっているのです。
※2年前、バルカン・シンドロームが欧州を席巻した当時、反対運動の一部で「低強度核戦争」という用語が飛び交った。これはミッシェル・チョスドフスキー氏が2001年1月16日付で発表した論文の表題である。本論文は、コソボでの深刻な被害の実態についての優れたドキュメントであり、被害の隠蔽を狙うNATOと欧州各国政府、さらにNATOと一体となったUNEPやWHOなど国連機関の欺瞞的な調査に対する怒りと批判に充ち満ちている。氏は『貧困の世界化―IMFと世界銀行による構造調整の衝撃』(柘植書房新社 1999/05)の著者でもある。この表題「低強度核戦争」という言葉は事の本質を突くものだ。「低強度戦争」とは、米による途上国介入を意味する軍事用語であり、“途上国介入”と“核戦争”を結びつけた造語であり、新しい型の核戦争の本質を表現しているのである。
http://emperors-clothes.com/articles/choss/dep2.htm
※アメリカは「劣化ウラン戦争」を展開しているだけではない。ブッシュ政権になって以降、「超小型核兵器」の開発・製造をスピードアップさせ、公然と核兵器を振りかざす新しい核脅迫を始めたのだ。ちょうど1年前の昨年1月、「核態勢見直し報告」(NPR)が米紙にリークされた。それによれば、米政府は、「抑止力としての核」から「使用しやすい核」への核戦略転換を図ろうとしているという衝撃的なものだった。先制核攻撃、核攻撃対象の拡大、核使用の敷居の引き下げという極めて危険な内容を含み、実際に「使用可能な超小型核兵器」の開発・製造に膨大な予算が投入された。私たちは、こうした米核戦略の転換と核・軍産複合体の復活・再生の異常なプロセスを描いたパンフレット『ブッシュ政権と軍産複合体』を発行した。併せてご覧頂きたい。

(9) 対イラク「新型核戦争」に参戦目論む小泉政権。アフガニスタン「後方支援」を含む一切の対米戦争協力を拒否せよ!

 9・11以降、ブッシュ政権は「ダーティ爆弾」という放射性物質=劣化ウランで作られた特殊爆弾をめぐって大騒ぎしました。せいぜい1個のことで天地をひっくり返したような騒ぎになったのです。しかし彼らは世界中で、そしてアフガニスタンで放射性物質=劣化ウランをばらまいているのです。自分が標的になれば「テロリスト」と騒ぎ立て、他に対してはやりたい放題、開いた口がふさがりません。
 そして何よりも今現在、ブッシュ政権は、イラクに対して「大量破壊兵器開発の疑惑がある」「申告書に遺漏があれば重大問題」「ウソを付けば重大違反」等々、もう言いたい放題です。ところが自分は劣化ウラン弾という正真正銘の「大量破壊兵器」を現に12年前に使っただけではなく、アフガニスタンに使い、今再びイラクで大量使用しようとしているのです。大量破壊兵器を開発している“かも知れない”国に、思いっ切り大量破壊兵器をぶち込む!! ここまでくればブラック・ジョークです。
 しかし一番問題なのは、誰が考えても理不尽かつ不当なこのようなブッシュ政権の振る舞いを、批判し告発するどころか、それこそが「正義」「自由」「解放」と言って支持・同調するマス・メディアや言論人のおぞましさです。「兵隊ラッパ」に成り下がった彼らをどう表現したらいいのか。知的荒廃、知的頽廃の極致と言うことではないでしょうか。

 アフガニスタンでの劣化ウラン使用が事実なら、現在インド洋で「後方支援」する自衛隊、そして世論の反対を押し切って派遣を強行したイージス艦は、紛れもなく、劣化ウラン戦争、「新型核戦争」への参戦です。大量破壊兵器使用への支援・加担です。もっと言えば、核を使った戦争の共犯者になるのです。私たちは自衛艦の即刻の引き揚げ、「テロ特措法」の廃止、一切の対米戦争協力を拒否します。

 昨年末から、小泉政権は、官邸と防衛庁、制服組が中心になり、ブッシュの対イラク侵略戦争に全面的に参戦する「対イラク参戦包括法」とも言える全面的な加担を策動しています。全く許し難いことです。

 私たちは、対イラク戦争への参戦は、国際法や憲法に反し、現行法にも反するという根拠で絶対反対だと主張するだけでは決定的に不十分です。イラク戦争への参戦は、「劣化ウラン戦争」への参戦、「核戦争」への参戦に他なりません。イラクの民衆、イラクの農地と環境に放射性物質をばらまくことを支持することに他なりません。被爆国日本がイラク全域を放射能で汚染するという第一級の戦争犯罪に加担するのです。新たな被爆国、新たな被爆者を生み出すことに加担するのです。
 小泉政権は、対イラク戦争の最中とその後に自衛隊員だけではなく、多くの民間人やNGOの人々をイラクに送り込もうとしています。政府は、米軍兵士が湾岸戦争で被ったような劣化ウランへの被曝が原因と思われる湾岸戦争症候群に自衛隊員と民間人をさらすつもりなのです。

 「劣化ウラン戦争」は、非戦闘員に対する無差別大量殺戮であり、人道と国際法に反する戦争犯罪そのものです。人類と地球環境に対する犯罪です。絶対に許してはなりません。私たちは、「対イラク参戦包括法」反対の闘いを、「劣化ウラン戦争」「核戦争」への参戦反対の闘いとしても闘う決意です。

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 本パンフレットの構成は以下の通りです。
 第1部は、私たちの考察を述べた部分です。まず「はじめに」で、アフガニスタンにおける劣化ウラン大量使用を告発する今回の小冊子発刊の意義と概要を述べ、「経緯と検証」で、そのうち「硬化目標攻撃用誘導兵器」に関する疑惑を紹介しました。第2部以降は翻訳資料が中心となります。
 第2部は、現にアフガニスタンで生じている劣化ウランによると思われる健康被害とサンプルからの高レベルのウラニウム検出について、現地調査を行ったアサフ・ドラコヴィッチ博士の緊急アピールです。
 第3部は、マーク・ヘロルド教授とダイ・ウィリアムズ氏からの手紙の紹介です。短いものですが、重要な内容を含んでいるので別立てとしました。
 第4部は、マーク・ヘロルド教授の「ウラニウム戦争:ペンタゴンは放射性弾薬の使用をさらに進める」の翻訳です。これは私たちが、今回の重大疑惑に取り組み始めたきっかけとなる論文です。
 第5部は、ダイ・ウィリアムズ氏の200nにおよぶ2つの大論文の中から、「イラクに対して企てられる戦争でのウラニウム兵器の危険性」(2002年9月発表)の前半部分、「氷山の一角?−−爆弾やミサイルシステムへの劣化ウラニウムの明白な使用」(2002年2月発表)、アメリカ政府の特許からの検索結果などの資料を翻訳紹介します。
 最後に第6部では、「硬化目標攻撃用誘導兵器」への劣化ウランの使用問題で、ダイ・ウィリアムズ氏とは独立に吟味・検討した英ガーディアン紙の「重金属論理爆弾」(2002年9月5日)と私たち自身の検証結果を紹介します。

 最後になりましたが、今回もヘロルド教授には大変お世話になりました。CURSORというウェブサイトに掲載された教授の新論文に出会わなければ、このパンフレットは日の目を見なかったでしょう。翻訳の快諾と併せて、バージョン・アップ版を送って頂き、参考にさせていただきました。
 特に今回はダイ・ウィリアムズ氏からたくさんの示唆と協力を頂きました。氏の研究姿勢と精力的なエネルギーに敬意を表するとともに、私信の形で氏の最新の考察や貴重な情報を頂いたことに心から感謝する次第です。

 このパンフレットの原稿を脱稿する頃から、アフガニスタンにおける劣化ウラン使用に関する情報が、インターネット上で目立ち始めました。私たちは、このパンフレットを第一弾として位置付け、機会を見て、これら新しい情報を、逐次紹介して行きたいと思います。何分、緊急出版のため、内容や翻訳については、多々間違いもあるかと思いますが、基本線は間違いないと確信しております。一人でも多くの皆さんが、この問題に関心を持たれ、アフガニスタンにおける戦争を最後的に終結させるとともに、来るイラク攻撃を阻止するために、活用して頂くことを願います。

2003年1月8日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
吉田 正弘




経緯と検証

――硬化化目標攻撃用誘導兵器の劣化ウラン疑惑について


[1] 私たちが疑惑を抱いたきっかけ−−新しいヘロルド論文との出会い

 きっかけは2002年11月、ウェブサイト上に掲載されたマーク・ヘロルド教授の新しい論文「ウラニウム戦争」です。私たちはそれを見て驚きました。一つ目は、教授がアフガニスタンでの劣化ウランの使用について、A-10攻撃機の配備と出撃状況を詳細に確認することによって、それがほぼ確実なことを論証したからです。湾岸戦争でもユーゴ戦争でもA-10は出撃するたびに劣化ウラン弾を発射しました。私たちもアフガニスタンでの劣化ウラン弾の使用について、たぶん使っているに違いないと想像はしていましたが、それが出撃の事実で裏付けられたのは初めてのことでした。

 しかし二つ目に、もっと大きなショックを受けたのは、この論文の中でヘロルド教授がアフガニスタンで使用された劣化ウランの量は、かつての湾岸戦争に匹敵するかそれを上回る可能性があると評価し、500〜600dという数字を挙げていることでした。(湾岸戦争での米軍発表は320トンです)。
 私たちは湾岸戦争で公表された事実や、さまざまな情報から劣化ウラン弾が使われるのはA-10攻撃機、アッパチ攻撃ヘリの30ミリ砲、M1戦車の120ミリ砲などの対戦車砲弾と考えていました。(これに加えて、AC-130攻撃機の25ミリ砲も疑われていました)
 ところが教授は、これまで私たちが考えもしなかった“硬化目標攻撃用誘導兵器”(コンクリート製防護施設などを貫通して破壊する爆弾や巡航ミサイル。これの一つがいわゆる「バンカーバスター」と呼ばれるもの。爆弾の種類や構造については【解説記事】参照)の“貫通体”に劣化ウランが使われている疑いがあるとし、もしそうならば一発に5`の劣化ウランを含む戦車砲弾と比べて1発当たり150〜300倍の劣化ウランを含んでいると指摘したのです。

 アフガニスタンに“硬化目標攻撃用誘導兵器”が大量に使われたのは周知のことです。とりわけアル・カイダの幹部たちが潜むと疑われたアフガニスタン東部のトラボラ付近の洞窟に対しては多数の“硬化目標攻撃用誘導爆弾”が投下されました。投下された数百発の爆弾に劣化ウランが使われていたとすればとんでもない被害を与えている可能性があります。この論文は私たちに劣化ウラン弾の使用をめぐる「常識」が覆っていること、湾岸戦争と比べても格段に大量の劣化ウランが戦争に使われ、放射能の汚染と被害が桁違いに拡大する時代に入っている可能性を突き付けたのです。

 正直なところ、ヘロルド教授の指摘は当初はにわかには信じられませんでした。2001年の暮れには日本の一部の新聞でもアフガニスタンで使われているバンカーバスターに劣化ウランが使われているという指摘が載りました。しかし、私たちはその報道をうかつにも重視しませんでした。その段階ではその記事以外には同様の指摘は見当たらず、確実な根拠も見い出すことができなかったからです。しかし、事は極めて重大です。もし“硬化目標攻撃用誘導兵器”が劣化ウランで製造されていたとすれば、アフガンの被害は言うまでもなく、秒読み段階に入った対イラク戦争は文字通り「ウラニウム戦争」「放射能戦争」になるでしょうし、イラクの民衆と環境に取り返しのつかない甚大な被害を与える危険があるのです。


[2] アメリカによる対イラク戦争が迫る中で−−追跡調査と自己検証

 私たちはヘロルド教授の指摘と根拠を追跡調査し、自分自身でも検証する作業から始めました。昨年11月から今回のパンフレット作成まで、丸々1ヶ月半も費やしたのは、この検証作業に時間を掛けたためでした。
 その結果、“硬化目標攻撃用誘導兵器”が劣化ウラン製だという教授の論文の根拠になっているのは、イギリスのダイ・ウイリアムズ氏という在野の劣化ウラン研究者の緻密な研究だと分かりました。さらに、彼の論文に基づいて『ルモンド・ディプロマティーク』2002年3月号にロバート・ジェイムズ・パーソンズ氏が、アメリカが劣化ウランをバンカーバスターに使っているという記事を書きました。(※1) また、2002年9月にはイギリスのガーディアン紙がウィリアムズ氏の研究を全く独立に検証し、“硬化目標攻撃用誘導兵器”の一部はアメリカのいうように鋼製ではなく、もっと比重の高い劣化ウランの可能性が高いとの記事を載せていることも分かってきました。
 ダイ・ウィリアムズ氏は、極めて緻密な研究に基づいて“硬化目標攻撃用誘導兵器”等が劣化ウラン製の疑いが濃いことを論証しただけではありません。氏は、極めて活発に英政府と英議会、EU政府、米政府などに対して、真相究明と使用禁止を求める要請や働き掛けを行ってきました。ところが、米英政府はおろか、欧米のほとんどのマス・メディアがこれを全く無視するという驚くべき事実も浮かび上がってきました。

 私たちは、こうした欧米の研究者や新聞や雑誌の記事の経緯を踏まえ、ウィリアムズ氏とは別個に疑惑の検証を行いました。簡単なモデル試算を行い、最新の“硬化目標攻撃用誘導兵器”が米政府が公表するように鋼鉄でできていると考えると重大な矛盾が生じること、劣化ウラン製でなければ計算が合わないことを論証し、結論はウィリアムズ氏と同様、劣化ウランの大量使用の疑いが強いことを確信するようになりました。
 もちろん、疑惑はあくまでも疑惑にとどまります。米政府が詳細な事実やデータを公表しない下では、私たちが直接、劣化ウラン製であることを断言することはできません。しかし私たちは、以下の理由から緊急にでもヘロルド教授の論文を日本語に翻訳して公表すべきだと判断しました。その際、自分たちの見解を添えると共に、この問題の元々の問題提起者で、この重大問題に執念を燃やしておられるダイ・ウィリアムズ氏の論証の中心部分(彼は後ほど紹介するインターネットのホームページに200nに近い詳細な論証と文献リストを出しているが、残念ながら分量の関係で紹介できるのは一部に限定せざるをえませんでした)、ガーディアン紙の記事など関係する資料を翻訳して掲載することにしました。

 私たちがこの問題の公表を急いだ理由は、アメリカのイラク攻撃が差し迫っていることです。ヘロルド教授やダイ・ウィリアムズ氏が指摘するように、バンカーバスターや“硬化目標攻撃用誘導兵器”がもし劣化ウラン製なら、差し迫る対イラク戦争において、確実に大量使用され、何の罪もないイラクの一般民衆に計り知れない深刻な犠牲と被害を与えるでしょう。1991年にアメリカは湾岸戦争で大量の劣化ウラン弾を使いました。それは自国兵士に湾岸戦争症候群という形で犠牲を強いただけでなく、それをはるかに上回るイラクの民衆、特に子どもたちに深刻な被害を与えたし、今も与え続けています。否、半永久的に与え続けるでしょう。

 私たちはつい最近も、訪日したイラクの医師の報告によって南部のバスラを中心に癌や白血病が増えていること、まさにここ数年急増状態にあるという憂うべき事態を知ったところです。12年前の湾岸戦争では、劣化ウラン弾が使われたのは主としてサウジ、クウェートとの国境に近い砂漠の真っ只中のことでした。それでさえこれだけの被害が出ているのです。ところが今度ブッシュが起こそうとしている戦争では、劣化ウランを大量に含んだ“硬化目標攻撃用誘導兵器”が都市とその周辺にある地下施設、軍事施設などに集中的に、雨霰と投下されることでしょう。(そもそもバンカーバスターは湾岸戦争での使用を念頭に開発されたのです)。開戦と同時にバグダッドを初め大都市とその近郊に大量の劣化ウラン−−放射性物質がばらまかれるのです。しかもその量は湾岸戦争で主として使われた対戦車砲弾をはるかに上回る量に達するのです。その被害は極めて深刻なものになるのは明らかです。世界中の反戦平和を願う人々、核戦争に反対し新たな被爆者を生み出すことに反対する人々に危険性を広く知らせること、何としてもこの「ウラニウム戦争」を阻止するために運動を強めることが必要なのです。
※1:ルモンド・ディプロマティーク2002年3月「きれいな戦争という汚い嘘」。記事のリードは仏英日の各国語版で異なる。 http://www.netlaputa.ne.jp/~kagumi/articles02/0203-2.html


[3] マーク・ヘロルド教授の注目の新論文:「ウラニウム戦争」

 私たちは昨年4月、ヘロルド教授の「アフガニスタンでのアメリカの空爆による民間人犠牲者に関する報告」(※1) を翻訳して、『アメリカはアフガニスタンで何人の人々を殺したのか!?』として出版しました。その論文を読めば分かりますが、教授は緻密な調査と論証で知られる方です。

 この「ウラニウム戦争:ペンタゴンは放射性弾薬の使用をさらに進める」(※2) はインターネット上に2002年11月13日に発表された最新の論文です。今回の論文で、ヘロルド教授はA-10攻撃機、AC-130攻撃機、F-15E戦闘攻撃機、AH-64アパッチ攻撃ヘリ、新型巡航ミサイルCALCM等を劣化ウラン弾の運搬手段と考えています。A-10、AH-64、(AC-130)はバルカン砲によってPGU-14API劣化ウラン焼夷徹甲弾を発射します。通常、A-10は劣化ウラン焼夷徹甲弾と焼夷弾を交互に装填していると言われます。F-15Eはバンカーバスターや“硬化目標攻撃用誘導爆弾”を運ぶ攻撃機です。新世代の巡航ミサイルCALCMにも貫通型の弾頭が開発されたので加えられています。この中で主にA-10とF-15によって劣化ウラン弾が発射されたとヘロルド教授は見ています。

 教授の指摘で重要なのは、使用されたと思われる劣化ウランの量を算出していることです。4機のA-10が2002年3月にはアフガニスタンに配備されたというダン・ファーヒーの報告を引きながら、ヘロルド教授は1ヶ月に15回の出撃、1回当たり1500発の使用と見なして劣化ウラン弾の使用量を算出しています。
 単純に言えば15回×1500発×0.3kg×6ヶ月で約40dにもなります。(これは1機当たりの数字)この計算はヘロルド教授が書いているものではありませんが(きっとこれほど出撃頻度は高くないのかもしれません)、少なくともA-10が一度出撃して1000発を発射すれば、その半分が劣化ウラン弾としても500×0.3=15`近い劣化ウランがばらまかれるのです。

 劣化ウラン弾の使用量の「常識」を打ち破り桁違いに多くするのが“硬化目標攻撃用誘導兵器”です。教授は50発のGBU-28とGBU-37、200発のGBU-34が投下されたと見ていますが、前者は2d爆弾で1.5dもの劣化ウランを含んでいる可能性があり、後者は1d爆弾で同じ様に0.75dもの劣化ウランを含んでいる可能性があります。すると、GBU-28/37だけで75d GBU-24で150dもの劣化ウランが投下された計算になります。

 新型巡航ミサイルであるCALCMの使用量は分かりません。しかし、戦争の初期に巡航ミサイルによる攻撃が行われ、そのうち一部が地下などの防御された目標用に“硬化目標弾頭”を装備していたのは間違いありません。また、アフガニスタンで対地攻撃用に多用されたAC-130もその25ミリ砲で劣化ウラン弾をばらまいた可能性があります。

 これらを総合して求めたのが今回教授が出した数字500〜600dです。決して荒唐無稽な数字でないことが分かります。キーポイントになるのは“硬化目標攻撃用誘導兵器”が劣化ウランを含んでいるかどうかということなのです。この問題については、教授は論文の中で国防情報センターCDIのシニア・アドバイザーのフィリップ・コイルの発言を取り上げています。「12月に使用量を最小に抑えるように主張したにもかかわらず、劣化ウランがアフガニスタンで使われている」と苦言を呈した発言です。これは米軍による劣化ウラン使用の重要な傍証となります。

 前述のように、“硬化目標攻撃用誘導兵器”の本体にあたる“貫通体”と呼ばれる部分が劣化ウランでできていれば、GBU-28/37爆弾1発で1.5dも劣化ウランを含むことになります。これはA-10の1発当たり0.3kgの30ミリ砲弾やM1戦車の120ミリ砲の5kgを300倍も上回るわけで、従来言われてきた戦争で使われる劣化ウランの量を数倍に引き上げるほど大きな影響があります。そして、アフガニスタンの人々は“硬化目標攻撃用誘導爆弾”を大量投下されたことで、想像を超える大量の放射性物質に汚染された可能性があるのです。

 アフガニスタンにおける劣化ウラン被害について、ヘロルド教授は、アメリカ軍が10月10日にB2爆撃機からGBU-37Bを初めて投下し始めた後、極めて短期間にヘラートとカンダハルで原因物質の分からない毒物中毒症状が出ていると報道されていることや、パキスタンの日刊紙ドーン紙が「主導的な軍事専門家は、アメリカ空軍が劣化ウラン弾の雨を標的に降らせてきた」(※3) と報じていることを指摘し、大量に使用された可能性のある劣化ウラン弾が住民に急性の被害を与えた可能性を問題にしています。また11月中旬には、アルカイダとタリバンを洞窟から追い立てるためにバンカーバスターが多用されたので、地下水がウランで汚染され環境への遅発性の深刻な影響をもたらしているのではないか、懸念が起こってきたことを指摘しています。アフガニスタン東部の山岳地帯の洞窟に対する爆撃では、地下水を通じて命の源である川が劣化ウランで汚染される可能性があるのであり、アフガニスタン南部ではイラクと同じ様に劣化ウランの微粒子がいつまでもダストの形で吹き上げられる可能性があることを指摘しています。
※1:「Marc W. Herold ; A Dossier on Civilian Victims of United States' Aerial Bombing of Afghanistan:A Comprehensive Accounting」 http://www.cursor.org/stories/civilian_deaths.htm
※2:「Marc W. Herold ; Uranium Wars:The Pentagon Steps Up its Use of Radioactive Munitions.」
http://www.cursor.org/stories/uranium.htm
※3:同上


[4] イギリス人研究者ダイ・ウィリアムズ氏による徹底した追及
  
 “硬化目標攻撃用誘導兵器”が劣化ウランを使っているのではないかとの疑問を持ち、この問題を一貫して追及し、真相を明らかにするために活動し続けているのはイギリスの心理学者で劣化ウラン研究者のダイ・ウィリアムズ氏です。
 彼はその結果を「アフガニスタンで疑惑の金属の悪夢?−−劣化ウラン兵器2001-2002(Mystery Metal Nightmare in Afghanistan?--Depleted Uranium weapons in 2001-2002)」(2002年1月)(※1) と「イラクに対して企てられる戦争での劣化ウラン疑惑兵器の危険−−劣化ウラン兵器2001-2003」(Hazards of suspected Uranium weapons in the proposed war on Iraq--Uranium weapons in 2001-2003)(※2) (2002年10月)という2つの詳細なレポートとしてインターネット上に公表しています。この研究がヘロルド教授の論文のベースの一つになっています。今回のパンフレットでは時間と分量の関係で全部は到底紹介できませんでした。重要な部分の一部を翻訳して紹介することにします。

 ウィリアムズ氏の劣化ウラン弾に対する調査は、アメリカが対ユーゴ戦争(1999年)で使用した劣化ウランについてのUNEP PCAU(国連環境計画戦後評価部隊)報告の中の記述について、なぜ500マイルも離れたギリシャで爆撃直後から空中放射線のレベルが跳ね上がったのか、なぜアルファー線しか出さない劣化ウラン弾をUNEPの調査団はベータ線やガンマー線の検出器で見つけることができたのか、という素朴な疑問を持ったことから始まりました。

 しかし、氏はインターネット上に公表されているデータを使って調査を続けるうちに、もっと重要な疑問を持つようになったのです。それは、アメリカの新しい世代の“硬化目標誘導兵器”(コンクリート等で防御された硬化目標を破壊するための貫通爆弾や貫通弾頭をもつ巡航ミサイルなど)が弾頭に劣化ウランを使っているのではないかというものでした。彼は軍事情報では世界的な権威を持つ二つのサイトの情報の中に、この疑惑を強く裏付ける記述を見い出しました。
 一つは「FAS」(アメリカ科学者連盟)のウェブサイトにある1997年付の「米空軍任務範囲計画(US Air Force Mission Area Plan)」という文書です。この中ではBLU-109という最も一般的な貫通弾頭をGBU-31というJDAM(衛星誘導爆弾)用に改良し、貫通力を2倍にするという計画の中で、「高密度金属の重りdense metal ballast」「高密度金属の貫通体dense metal penetrator」という言葉が頻繁に使われている事でした。250ポンドから2dまでの貫通力を向上させた誘導爆弾や誘導ミサイルの弾頭には劣化ウラン(劣化ウランはタングステンと並んで密度が極めて高い金属である)が使われている可能性を示すものです。
 もう一つの情報は、これも世界的に権威あるイギリスの「ジェーン・デフェンス」のサイトの情報でした。これはもっと露骨に「いくつかの誘導兵器が貫通効果を高めるために劣化ウランを使っているというのは本当だ」(2001年1月)と書いてありました。問い合わせの後で突如、理由もなく削除されてしまいました。
 ウィリアムズ氏はさらにインターネット上の文書から“硬化目標誘導兵器”に劣化ウランが使われている新しい証拠を探し出しました。2002年10月に米特許データベースからBLU-116AUPというBLU-109の改良品が、タングステンや劣化ウランの貫通体を使っているという記述を見つけたのです。

 ウィリアムズはこれらの文書を詳細に検討した結果、23種類の兵器について劣化ウランでできている疑いを提起しました。その主なものは以下の通りです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
★GBU-28/37(貫通体BLU-113) いわゆるバンカーバスター 硬化目標攻撃用の2d爆弾
★GBU-15,24,27,118/B,GBU-31JDAM(BLU-116,BLU-109/B,BLU110/B,AUP) 
           レーザー誘導あるいは衛星誘導の硬化目標攻撃用1d爆弾
☆SSB(AUPorBR) 開発中
★AGM-130C(boosted GBU-15) 中距離空対地ミサイル(ロケットブースター付爆弾)
★AGM86DCALCM(AUP3M) 新型巡航ミサイル
★AGM142(1-800AUP)、☆StormShadow/SCALP-ER(BR)、?AGM84 SLAM-ER、?AGM65G(S/CH-P)など空対地ミサイル
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
※ウィリアムズ氏は、これらのうち★印の付いている兵器がアフガニスタンでも使われた事を確認したとしています。GBUとは誘導爆弾、AGMとは空対地誘導ミサイルのこと。かっこ内はその弾頭にあたる部分の種類。BLUは硬化目標貫通用の弾頭。AUPは改良型統合貫通体(新型貫通弾頭)の略。例えばGBU-24は前から順に誘導ユニット、弾頭、誘導用フィンからできていて、弾頭部分を硬化目標貫通用のBLU-116や通常目標用のMK-84など用途別に入れ替えることができます。


 これまで劣化ウランの使用が確認されてきた兵器はA-10攻撃機やアパッチヘリの30ミリバルカン砲弾、M1戦車などの主砲の120ミリ対戦車砲弾などですから、劣化ウランを使用した兵器の種類が飛躍的に増えたことになります。(これ以外に巡航ミサイルのバラストに使われたケースと、戦車の防御用鋼鉄に使われている場合などがある)前述のようにこれらの爆弾ではこれまでよりも飛躍的に大量の劣化ウランが使われており、使用された場合に環境を汚染する量も格段に増大するのです。
※1:「Mystery Metal Nightmare in Afghanistan?」 http://www.eoslifework.co.uk/pdfs/DU012v12.pdf
※2:「Hazards of Uranium weapons in the proposed war on Iraq」 http://www.eoslifework.co.uk/u231.htm


[5] ダイ・ウィリアムズ氏の緻密な調査・研究と私たちの検証−−“新型硬化目標貫通弾頭(貫通体)”は劣化ウランの可能性が非常に高い

 ダイ・ウィリアムズ氏は、こうした多方面にわたる調査・研究を行った結果、総合的判断として“硬化目標攻撃用誘導兵器”への劣化ウラン使用の疑惑が極めて濃いとの結論を出しました。特に1997年以降開発された新型弾頭(貫通体)−−その中で最も一般的なものがBLU-116です−−は劣化ウラン(あるいはタングステン)でなければ理解できないというのです。

 もともと“硬化目標貫通弾頭”の開発・改良は1991年の湾岸戦争の最中に始まりました。イラク軍のコンクリート・シェルターや地下施設に対して投下したGBU-24誘導爆弾(弾頭はBLU-109で1d)の貫通力が不十分だったために、目標を貫通しなかったからです。そのため急遽陸軍の大砲の砲身を改造してもっと大型(2d)のバンカーバスターGBU-28を作ったのです。しかし長さが3m半を超えるバンカーバスターを搭載できる飛行機は限られます。(F-15とB-2だけ)だからもっと色々な種類の航空機に搭載でき、一番よく使われていたGBU-24誘導爆弾の弾頭であるBLU-109貫通体の改良が行われたのです。BLU-109の改良型であるBLU-116(あるいはAUPと呼ばれます)は、BLU-109と同じ大きさ、同じ重さ、同じ重心と飛行特性を持っています。つまり完全に互換なのです。そして、貫通力はBLU-109の6フィート(1.8b)に対してBLU-116は11フィート(3.3b)、1.8倍の能力を持つのです。

 一般に貫通爆弾の能力は断面積(輪切りにした時の面積)当たりの重さに比例します。だから一番簡単な方法は断面積を同じままにして長さを伸ばすことです。単純に言えば2倍の長さにすれば貫通力は2倍になります。バンカーバスター開発で採用したのはこの方法です。しかし、これでは従来の兵器には使えません。(長すぎて航空機に積めない)FASによれば、貫通能力を上げるためにアメリカ軍が使った方法は、「長さや総重量は同じままで直径を細くする、内部に詰める火薬の量も減らす」(※1) という方法です。ウィリアムズ氏は、この方法を検討した上で、これではBLU-109の能力を1.8倍にすることはできない、(従来使われている)鋼鉄[高張力鋼]よりも比重の大きい金属でなければ不可能だ。それに該当する“dense metal”は劣化ウランかタングステンしかないという結論を出しました。それではどちらなのか?高価で加工しにくいタングステンと廉価で加工しやすく着弾すれば焼夷性を持つ劣化ウランとどちらがコスト・パフォーマンスが良いか?劣化ウランが有利なのは言うまでもない。−−氏はこう結論付けたのです。

 まさにこの点が決定的に重要なのです。1997年以降の改良が劣化ウランによる改良かどうかの判断を左右するキーポイントになるのです。私たちもこの問題を独自に簡単なモデルを作って検討しました。結果から言えば弾頭(貫通体)が鋼のままでは貫通力の改良を行うことは難しく、貫通体を劣化ウランと鋼の合金にするか、劣化ウランの重りを付けるやり方をしている可能性が高いという、ウィリアムズ氏と同じ結論を得たことを付け加えておきます。(検討結果は別途解説を参照)昨年9月5日のイギリスの新聞ガーディアンは、同じ様な計算を独自に行ったと思われますが、バンカーバスターGBU-28用のBLU-113弾頭は鋼鉄だが、BLU-116ははるかに比重の高い劣化ウラン(またはタングステン)を含んでいるとしか考えられないという結論を出しています。(この翻訳は別添資料参照)

 同時にダイ・ウィリアムズ氏は、アメリカの特許資料の膨大なデータベースの中から、改良型弾頭に関する特許を調べ上げ、その中に「劣化ウラン製」と明記されたものを発見しました。劣化ウランの疑いは文献上からもますます確かなものになったのです。この特許資料の抜き書きと米空軍特別任務計画の資料を後に資料として添付しました。

 “硬化目標攻撃用誘導兵器”が劣化ウランでできているのではないかという疑惑はますます深くなるばかりです。ウィリアムズ氏はイギリス政府とイギリス議会、EU議会、さらにはアメリカ政府に対して精力的に質問状を出し返答を求めました。何よりも「米英の兵士たちが被爆しているはずだ」、「バルカンやアフガンで劣化ウランが燃えたダストを直接吸い込み健康被害が生じている可能性がある」「だから米英政府はきちんと回答すべきだ」と迫りますが、アメリカ政府は解答を拒否したままです。イギリス政府は「使っていない」という事務的な返答をしただけで、まともには答えていません。もしも鋼鉄製であるのなら何の軍事秘密もないのだから正々堂々と公表できるはずです。タングステン製でも同じことです。
 彼らはなぜ答えようとしないのか。それは、湾岸シンドロームやバルカン・シンドロームが大騒ぎになって以降、「劣化ウランには毒性がない」、「兵士にも住民にも何の被害ももたらさない」という従来の立場をあからさまには言えなくなっているからです。もしもアフガニスタンで大量に使ったとなれば再び国際的な批判が高まるでしょう。実際に被害が出れば補償も問題になるでしょう。だから意図的に事態を隠蔽しようとしているのです。
※1:FASにはGBU-24/BLU-116に関するサイトがある。
http://www.fas.org/man/dod-101/sys/smart/gbu-24.htm




[関連パンフレットの案内]

(劣化ウラン関連)

   「劣化ウラン弾−−被害の実態と人体影響」
      美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 発行


(署名事務局作成のパンフレット)

  「アメリカはアフガニスタンで何人の人々を殺したのか!?
    −−アメリカの無法な戦争、戦争犯罪、そして戦争レイシズム−−

  「ブッシュ政権と軍産複合体」

  「イラク:石油のための戦争 − ブッシュはなぜイラクを攻めたいのか