わたしの雑記帳

2015/4/13 いじめ・生徒間暴力裁判にみる親の責任

2004年2月25日、愛媛県今治市の市立小学校の校庭で、放課後に子どもたちがサッカーで遊んでいた際、男児(小6・11)がフリーキックの練習で蹴ったボールが、高さ1.3メートルの門扉を越えて道路に転がった。
これをよけようとしたオートバイの男性(85)が転倒し、足の骨折等で入院。寝たきりとなり、約1年4カ月後に誤嚥性肺炎で死亡した。

2007年、男性の遺族は、ボールを蹴った男児の保護者に約5000万円の損害賠償を求めて、民事裁判を提起。
一方、「小学校を設置する今治市を相手に争うと時間がかかる」として、学校の安全管理責任は問わなかった。
1審の大阪地裁、2審の大阪高裁ともに、男児に過失があったと認定。「子どもを指導する義務があった」として両親に計約1180万円の賠償を命じていた。

2015年4月10日、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は、「「ゴールに向けたフリーキックの練習は、通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない。また、親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ない」「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によって、たまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」として、原告側の請求を棄却した。

この判決は妥当だと思う。問われるべきは、学校の安全配慮義務であり、普通に、校庭で遊んでいた男子児童やその保護者に責任を負わせるのはあまりに酷だと思う。


この最高裁の逆転判決について、多くの報道で、「ほとんどの事故で親の監督責任を無条件で認めてきた」かのような表現がみられるが、私の知る限り、そうとも言い切れない。(確かに認められることのほうが多いが)
いじめや生徒間暴力とでは、親に課せられる責任は、今回のような偶発的な事故以上に重いはずだが、それでも、親の責任を認めるにはいくつかの条件がある。それは、今回の判決ともそれほど大きく異なるものではないように思う。

民法712条(責任能力)には、行為を行った子どもに責任能力がない場合は、加害児童生徒自身は責任を負わないとあるが、いじめ・生徒間暴力の判例をみると、責任能力の有無は、中学生あたりで、責任能力があるかないかの判断が分かれることが多い。

そして、今回の判決で問題になった第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)は、第1項で、「責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても 
損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」とある。

この「ただし」書きの部分による免責が今までほとんど判決で使われなかったという報道が多いように思うが、少なくとも、いじめ・生徒間暴力事件では、
@日常的に、事件を予測させるような問題行動があったかどうか。
A学校や被害者から、問題行動の事実を知らされていたかどうか。
B事実を知った時の親の対応。具体的な形で再発防止策を講じていたかどうか。
で、親の責任が認定されるか、否定されるかが左右される。


なお、いじめ・生徒間暴力の場合、安全配慮義務違反を問われたくない学校や教育委員会が、加害者側と一緒になって、事実を隠そうとするので、まずは不法行為の証明自体が難しく、とくに被害者が亡くなっており、証言ができない場合には、原告側の勝訴判決はあまり多くない。とくに、言葉や態度でのいじめは、行為そのものの立証と、それが不法行為にあたるということの立証、PTSDや心の傷の立証と行為との因果関係を立証することが難しく、きわめて困難な訴訟となっている。
(いじめ自殺裁判の判決一覧 20141116ijimejisatusaiban PDFファイル参照)

以下、手持ちの資料から、いじめ・生徒間暴力裁判から、どういう時に認められて、どういう時に否定されているのか、「親の責任」について触れた部分を拾ってみた。
なお、ここでは、原告の訴えが一部でも認められたものを対象としている。
全面棄却されたものは、子どもの責任さえ否定されているため、親の責任の有無まで審議されないからだ。


いじめ・生徒間暴力裁判にみる親の責任
1 1969/5/1 大阪府大阪市の市立南市岡小学校で、給食準備中に教室前の廊下で、男子児童A (小6・11)が、同級生の女子児童といさかいを起こし、追いかけたり、草履でたたいたりしたことから、X子さん(小6)がB子さん(小6)を通じてAに放課後、決闘を申し込だ。
放課後、学校の裏門脇の講堂裏に、X子さんはB子さんと、AはDほか4人の友人を連れて集まった。取っ組み合いのけんかになった際、X子さんはAに左眼付近を殴られた。
その後、保健室で応急手当てを受け、通院入院などして手術治療を受けたが、網膜剥離のため、左眼はほとんど失明に近い状態(裸眼0.01)になった。

被害児童が、Aの親権者と学校(大阪市)に、400万円の損害賠償を求めて提訴。
小6

けんか
  親の責任
認定
1975/3/3 大阪地裁で、一部認容。(確定)
Aの親権者に35万円の支払いを命じる。学校の責任については否定。

「小学校における児童のけんか自体は日常必ずしも珍しいことではなく、それが社会通念ないし条理上一般に容認される範囲内にとどまるものであるかぎりにおいては、一概に違法性とはいいがたいとしても、それにはことの性質上おのずから限界があり、本件の如き重大な傷害をもたらしたけんかはもはや社会的に許容された行為として違法性を阻却するものとは解しえない」との判断を示し、Aの親権者の責任を肯定。
昭和46年(ワ)第4031号

判例時報781
93
2 1970/6/17 兵庫県神戸市の市立小学校でテスト中、女子児童B子ちゃん(小3)が、右隣の同級生の男子児童A(小3・8)から突然、鉛筆の尖った先で左眼を突き刺され、穿孔性角膜外傷、外傷性白内障の傷害を受けた。
左眼裸眼視力が0.01、矯正0.6程度となり、調節力を失い、コンタクト使用時も新聞の字が読めず、教科書も読みにくい状態となる。

被害者側が、加害児童の両親と、教師の責任について損害賠償を請求。
小3

傷害
親の責任を
認定
1976/9/30 神戸地裁で、一部認容。
被告らに、各自382万5796円の支払いを命じる。

 「児童が一般に社会生活規範に習熟せず人格が未熟で意思能力に欠けるだけに加害行為を行いやすく、行動も合理性を欠き予測し難い面があるため何をするか判らぬが加害行為をすることだけは十分予見できる場合が多く、家庭など周囲の環境にも影響されやすいことからすると、親権者の負担する児童の他人に対する加害行為を防止すべき監督義務は、児童が加害行為に及ぶ現実的かつ具体的危険が生じた場合にその発生を阻止すべきであるという具体的な狭い範囲の義務につきるものではなく、児童の生活全般にわたる広範かつ一般的なものであ(る)
「Aの両親は、他人の顔面を先の尖ったもので突いたりなどすると思わぬ大怪我をさせることがあるからしてはならないこと、また、他人の人格は尊重しなければならないから他人の気持ちを大切にしないとか、他人の嫌がるようなこと、特に他人の身体を故意又は重大な過失によって傷つけるようなことは厳につつしまなければならないこと、また、担任教諭の注意をよく聞き授業中は同級生にいたずらなどしてはならないことを、日常平素から、少なくとも戒しめ教育することによっても監督すべき義務があるものと解せられるのである。そうだとすると、このような親権者の一般的監督義務は、児童の加害行為が授業中に行われたからといって果たすことができないものではない」として、両親の責任を認定。
判例時報856号
73頁、

判例タイムズ352号
283頁
3 1970/11/11 和歌山県の私立さかえ保育園で、降園時間(自由保育時間)中、園児らが保護者の迎えまで園庭で遊んでいるときに、園児同士がけんか。A(6)が相手に投げつけた板切れが、近くにいた別の園児(3)の眼に当り、受傷させた。

被害者側が、保育園長と加害児童の父母を相手に提訴。
6歳

けんかの巻き添え
親の責任を
認定
1973/8/10 和歌山地裁で、一部認容。(確定)
園長と加害児童の父母に、総額150万円の支払いを命じる。

「親権者は児童の全生活関係について監督義務を負うものであるから、たとえ代理監督義務者に責任があるからといって、それがため当然に親権者の責任が免除されるいわれはない。親権者の過失責任は、当該違法行為についてのそれではなく、一般的に監督を怠ることであり、実質上危険責任の性格を有すると解される。
「児童の日常における生活関係の全面にわたって監督義務を怠らなかったことを立証しないかぎり、親権者は責任を免れることができないと解するのが相当である。」
「再三にわたる保育園等からの指摘によって、同人には教育上配慮すべき多くの問題があることを知悉しながら、何ら適切な措置を講ずることなく時日が経過していた間に本件事故が発生した」として、加害児童の保護者の責任を認定。
判例時報721号
83頁
4 1979/5/2 東京都板橋区の上板橋第一中学校で、男子生徒Aくん(中2)が午後3時過ぎに教室の清掃を終えて帰り支度をし、友人に隠された帽子を探していたところ、サッカーの練習のために体操着に着替えをしようと教室に入って来た隣のクラスの男子生徒B(中2・13)にいきなり後ろから、手拳で左後頭部の首の付近を強打された。
Aくんは、午後4時頃帰宅したが、下校途中から乗り物酔いのように気分が悪くなり、吐き気及びめまいを感じるようになり、入院。「後頭部打撲挫傷、頭部捻挫、ギラン・バレー症候群の疑い」との診断を受ける。
Bはいじめグループに入っていた。

男子生徒と両親は、学校とBの父親に対し、監督義務違反を主張して、男子生徒に約897万円、両親に各100万円の損害賠償を求めて、提訴。
中2

暴行
親の責任を
認定
1985/5/31 東京地裁で、一部認容。
加害者の父親に約160万円を支払うよう命じる。学校の責任は否定。

Bの父親について、「本件暴行当時Bが満13歳6か月であったこと」「他に特段の事情のないかぎり、Bはその年齢からして本件暴行の責任を弁識するに足りる能力を備えていなかったものと認めるほかはないから、Bの親権者である被告Xは民法714条により原告Aに生じた後記の損害について賠償義務を負う」として、親権者の責任の認定。

東京高裁で、一審原告控訴後、和解。
判例時報1202号
64頁、

判例タイムズ577号
60頁、
5 1979/11/1 埼玉県浦和市の市立三室小学校で、女子児童Mちゃん(小4)が放課後、学校の廊下で友人と談話中、同級生の男子児童2人(小4)に、当時流行っていた「ズッコケ」という遊びで、後方から足元に滑り込みをかけられ、2人目で転倒。廊下の床面に顔面を強打し、前歯2本を折る。
被害者は事件後、転校。

両親が、学校設置者・生徒2人の保護者に約644万円の損害賠償を求めて、提訴。
小4

遊び
親の責任を
認定
1985/4/22 浦和地裁で、一部認容。
男子児童1名の親と市に273万円の支払いを命じる。

加害生徒の両親については、「親権者は、その子たる児童が家庭内にいると家庭外にいるとを問わず、原則として子どもの生活関係全般にわたってこれを保護監督すべきであり、少なくとも、社会生活を営んでいくうえでの基本的規範の一として、他人の生命、身体に対して不法な侵害を加えることのないよう、子に対し、常日頃から社会生活規範についての理解と認識を深め、これを身につけさせる教育を行って、児童の人格の成熟を図るべき広汎かつ深遠な義務を負うといわなければならないのであって、たとえ、子どもが学校内で起こした事故であっても、それが他人の生命、及び身体に危害を加えるというような社会生活の基本規範に抵触する性質の事故である場合には、親権者が右のような内容を有する保護監督義務を怠らなかったと認められる場合でない限り、右事故により生じた損害を賠償すべき責任を負担するものというべきである」として、監護教育義務違反を認めた。

1986/6/
被告控訴の東京高裁で、市が和解金150万円、男子児童の両親らが100万円支払うことで和解。
判例時報1159号
68頁、

判例タイムズ552号
126頁
6 1985/10/23 大分県の大分大学教育学部付属中学校で放課後、男子生徒Xくん(中3)は、ささいなことから、他のクラスの男子生徒Y(中3・14)とけんかになり、Yから後頭部を殴打され、くも膜下出血により死亡。

Xくんの両親らが、YとYの両親、学校を設置した国を相手に、損害賠償を求めて提訴。
中3

暴行後、死亡
親の責任を
否定
1990/11/13 大分地裁で、一部認容。
被告Yに、原告X両親に対し、それぞれ1044万円支払うよう命じた。
学校の責任については否定。

両親の責任について、「被告Yの暴力的性格は、同級生の間ではかなり知れわたっていたが、被告Y父、被告Y母は、学校からの連絡を受けていなかったため、このことも知らなかった。」
被告Y父、被告Y母は、被告Yの性格からすれば、同人が何時喧嘩をするかも知れないと思っていたので、同人に対し、平素から喧嘩をしないよう、もし喧嘩をしても決して手を出さず話し合うようにと説諭するなど指導していたが、学校側に対し、学校内における被告Yの行動を問い合わすなどということはなかった。
「これを、被告Y父、同Y母が積極的に学校側と連絡を取り、学校内における被告Yの行動の把握に努めるべきであったのにこれを怠ったがためであるとして、被告Y父、同Y母を責めるのはいささか酷であり、それは被告Y父、同Y母が学校から適切な連絡を受けていなかったことによるものとして、むしろ教育現場を預かる学校側の責任というべきであろう」として、両親の過失責任を否定。

判例タイムズ757号
223頁
7 1986/2/1 東京都中野区の区立富士見中学校の鹿川裕史(ひろふみ)くん(中2・13)が、いじめ自殺。
「家の人へそして友達へ。突然姿を消して申し訳ありません。くわしい事についてはAとかBとかにきけばわかると思う。僕だって、まだ死にたくない。だけど、このままじゃ『生きジゴク』になっちゃうよ。ただ僕が死んだからって他のヤツが犠牲になったんじゃいみないじゃないか。だからもう君たちもバカな事をするのはやめてくれ、最後のお願いだ。」などと紙の買い物袋に書かれた遺書が発見された。
「葬式ごっこ」の色紙には4人の教師も署名していた。

両親が、学校設置者・生徒2人の保護者に対し、いじめを放置したとして、総額3004万円(控訴審では2804万円)の損害賠償を請求して提訴。
中2

いじめ自殺
親の責任を
認定
1991/3/21 東京地裁で、一部認容。
学校の安全義務違反に基づく慰謝料300万円と弁護士費用100万円の支払いを命じる。
裁判長は、予見可能性を否認。いじめの存在そのものを否定。いじめの存在やいじめと自殺との関連を否定。1986年1月以降の暴力のみ認定。

1994/5/20 東京高裁で、一部認容(確定)。
いじめと自殺との因果関係を認定し、都、中野区、同級生2人に1150万円(慰謝料1000万円、弁護士費用150万円)の支払いを命じる。

加害生徒の両親について、「Aは昭和60年9月、Bは同年8月にそれぞれ14歳となっており、同年10月頃から昭和61年1月までの本件いじめ当時既に責任能力を有したものというべきである。
しかし、被控訴人A父母らはAの親権者であり、被控訴人B父母らはBの親権者であるから、A又はBが不法行為をすることのないよう監督すべき義務を負っていたものである。そして、前記認定のとおり、被控訴人A父母ら及び被控訴人B父母らは、A又はBが昭和60年4月の第2学年第1学期早々から問題行動を反復していたことについて、その当時からF担任その他の中野富士見中学校の教師らから再三知らされて指導を求められており、さらに、被控訴人A父母らにおいてはAが警察の補導を受けた際にも警察から注意を受けていたのである。したがって、(略)裕史の心身に大きな悪影響が生ずるおそれがある状況であることは認識し得たはずであるにもかかわらず、そのような努力をすることもなく、A又はBに対し適切な指導監督をすることを怠り、A又はBに対し適切な指導監督をすることを怠り、A又はBをほとんど放任していたものであり、そのため、A及びBに対する本件いじめ行為を反復させる結果を招いたものである。したがって、同被控訴人らにはA又はBに対する監督義務を怠った過失があるというべきである。」と過失を認め、賠償責任があるとした。
判例時報1387号
26頁、

判例時報1495号
42頁、

判例タイムズ757号
98頁、

判例タイムズ847号
69頁
8 1986/7/30 静岡県焼津市の市立焼津中学校で、夏休みの柔道部の練習中に、男子部員Aくん(中1)は、先輩男子部員X(中3)から「投げ込み」練習の相手として、畳が敷き詰められた柔道場の端付近で大外刈りをかけられ、場外方向に投げられ、場外の板張りの床に頭部を強打。立ち上がりかけたのを場内に引き戻し、大外刈りをかけた。左側頭部脳挫傷の傷害を受ける。8/5死亡。

事件当日は、柔道部の練習とはされていなかったが、8月2日に開かれる県大会に3年生部員2名が出場することから、急きょ練習日となった。顧問教諭は立ち会っていなかった。
Xは、地区大会個人戦で敗退し、県大会個人戦への出場資格を得られなかったためふてくされていた。2年生部員との乱取り練習中にめそめそ泣きだしたAくんを連れていって、投げ込み練習の練習台とし、その後、後方受け身100回、側方受け身100回をさせ、指導するにあたって、竹刀で腿をたたいたり、泣きじゃくるAくんに、プロレス技をかけるなどした。一連の練習で疲労していたAくんを投げ込みの相手として、投げ技をかけた。

Aくんの両親が、上級生Xとその両親及び焼津市に損害賠償を求めて、提訴。
中3

柔道技で
傷害致死
親の責任を
認定
1994/8/4 静岡地裁で、一部認容。
市と加害生徒、両親に連帯して、Aくんの父親に約2503万円、Aくんの母親に2403万円を支払うよう命じた。

Xの両親の責任について、「被告Xには、非行などの問題行動の存在を窺わせる事情は存しないが、部活動においては、下級生に対して荒い投げ方をしたり厳しい練習を強いるなど、運動部における上級生と下級生の関係を考慮に入れてもなお相手に対する配慮を欠いた行動に出る傾向がうかがわれ、夏休みの解放感あるいは県大会の出場資格が得られなかった挫折感から、右傾向が助長される状況にあったと推認することができる。
また、被告Xは、過去に同学年の柔道部員をいじめたとして、その父親から苦情を申し立てられたことがあったこと、これは、被告Xの認識においても、同部員が柔道部の練習をさぼることが多かったことから、当時の1年生部員の多数も加わって同人を囲み、小突くなどしたものであるというものであって、いわば柔道部の統制が目的であったというのであるから、3年生になった時点でも、そのような行動を柔道部の下級生に対してとるかもしれないこと、ひいては練習において下級生に対しことさらに厳しい練習を強いるかもしれないということの認識は可能であったというべきである。
そうすると、被告父及び同母としては、被告Xの法廷監護義務者として、同人が部活動において下級生に対してそのような行動に出ないように日頃から一般的な注意を与えるべき義務があったというべきであり、これが尽くされていたならば、被告Xにおいて、体力に劣り、受け身等の技能の未熟なAに対し、ことさらに厳しい練習を課したり、大外刈りをかけて本件事故を惹起することは未然に防ぎ得たというべきである。
しかるところ、本件全記録によるも、この点について被告父及び母が被告Xに対してそのような注意を与えていたことを窺わせる証拠はないのであり、むしろ、被告Xが前記経過により本件事故を惹起させたことによれば、右注意を与えていなかったことが推認される」として、両親の監護義務違反に基づく民法709条の不法行為責任を認定。
判例時報1531号
77頁
9 1990/3/9 愛知県安城市の市立中学校の卒業式で、男子生徒Xくん(中3・15)が、同級生の男子生徒A(中3・15)から突然、殴りかかられたため、Xくんが反撃。担任教諭の仲裁で一旦はけんかが治まったあと、Aから顎部を蹴り上げられ、Xくんは下顎骨骨折および右側頭部知覚麻痺等の傷害を負う。
Aは1学期からXくんの首を絞めたり、ばかにする態度をとったりしていた。
2学期、3学期も嫌がらせはエスカレートしていた。卒業式一週間前には、前歯の一部を欠くような暴行を受けていた。

男子生徒が、加害生徒1名とその両親に、650万5845円の損害賠償を求めて提訴。
中3

傷害
親の責任を
認定
1994/7/22 名古屋地裁岡崎支部で、一部認容。
同級生1名とその両親に606万7735円の支払いを命じる。(控訴)

「被告Aは誰彼となくちょっかいを出す性癖があり、原告に対しては日頃よりいじめや嫌がらせをしていたことは同クラスの訴外Oなどのクラスメイトや担任の訴外Iにはある程度知れ渡っていることであり、同被告は3年生の夏休みに行われたサッカー予選を観戦中に同被告が周りの生徒に暴力を振るったこともあり、同被告はその両親とともに相手に謝りに赴いたことがあることが認められるところであるから、これを考えると被告父および被告母としては子である被告Aのこのような粗暴な性格があることに常日頃から注意をし、他人に暴行傷害行為を行わないよう充分に指導監督すべき義務があるのにこれを怠った結果、同被告の本件加害行為が生じたものといわなければならず、右注意義務違反の程度は大きいものがあるといわざるをえない」として、監督義務違反を認定。

被告側控訴。
判例時報1556号
118頁
10 1991/1/26 秋田県天王町の町立天王中学校で、男子生徒(中2)が変形学生服の売買を教師に告げ口したとして、休み時間にトイレで上級生3人(中3・15)から暴行を受け、病院に運ばれた。
その後、心因反応で記憶の喪失がひどくなったり、情緒的に赤ちゃん返りをするなど、治療のため引っ越しして転校。入退院を繰り返した。
中3

暴行
親の責任を
否定
1995/9/22 秋田地裁で、一部認容。
争点だったいじめの有無については判断せず、上級生による暴行の事実と情緒障害との因果関係を認め、加害者の上級生に対し、原告本人に200万円、原告父に133万8440円、原告母に50万円の計384万8440円を支払うよう命じた。加害者の親権者及び学校側に対する請求は棄却。

加害者の親の監督責任の範囲について、「被告Yら3名に責任能力が認められるにしても未成年であることから、被告親権者らはそれぞれの子を監督教育すべき義務を負っている。
被告親権者らが、右監護教育義務に違反し、本件暴行を発生したと認められる場合には、不法行為責任(民法709条)を負うが、法定監督義務者としての責任(民法714条)の場合とは異なり、一般的に監護教育義務を怠ったというのでは足りず、子が他人の生命身体等に対し危害を加えることがある程度具体的に予見されたにもかかわらず、それを阻止すべき措置を故意・過失によって採らなかった場合にその責任が認められると解する。
「被告親権者らは、その子の服装について学校から注意を受けたことがある程度で、いじめとか、暴行事件で天王中側から指導等を受けたことはないこと、被告Xが原告Aに変形学生服を売却したことについて、本件暴行発生前には、被告親権者らいずれに対しても、天王中側及び原告らから、何らの申し入れ、指導等はなく、変形学生服の売買を知らなかったことが認められる」「被告親権者らは、いずれも、その子が原告Aに対してはもとより、誰か他人に暴行を加えるおそれがあると具体的に予見することができる状況にはなかったと認められる。」として、親権者の責任を否定。

中学3年生の責任能力を肯定して、町の責任を認めなかったことを不服として、原告控訴。
判例時報1579号
124頁、

判例タイムズ903号
192頁
11 1991/4/ 千葉県神崎市の神崎町立神崎(こうざき)中学校で、男子生徒Xくん(中2)が入学直後から同級生4〜5人にトイレなどに連れ込まれ、2年足らずの間に計1万回以上も殴られる、髪や眉毛を抜かれ、ズボンを破かれるなどした。
男子生徒は、リーダー格の少年に小学生5、6年の頃から、学校で顔を膝蹴りされるなどの暴力を受けていた。
Xくんは授業への集中力や意欲をなくし、成績が低下。当初の希望とは異なる私立高校に進学した。

男子生徒と両親が、町と同級生5人の父親に総額5300万円の損害賠償を求めて提訴。
中2

いじめ
親の責任を
認定
2001/1/24 千葉地裁(及川憲夫・瀬木比呂志・澁谷勝海 裁判官)で、一部認容。
同級生4人のいじめを認定。町と4人の父親に共同して、総額760万円の支払いを命じる。残る1人の元同級生の父親に対する請求は棄却。

加害者の父親については、「右不法行為の成立は、同人らが12歳以上になった中学1年生以降であり、その時点で同人らが是非善悪を識別できる能力を有していたことは明らかである。」と判断。
A、B、C及びDにはいずれも補導歴はなく、学校生活で多少目立つところはあったものの、本件の問題を除くならば、学校から連絡があったA及びDの件を除いてはとりたてて問題行動があったわけではなく、(略)A及びDの件も、子供同士の喧嘩や遊びに伴う怪我とみられ、格別大きな問題へと発展することはなかったこと、(略)平成5年1月26日ないし27日に学校から連絡がある以前に、本件いじめの存在を認識し得たといえるだけの具体的な懲憑は見当たらないこと、(略)変形学生服をはいて通学することがあったとは認められるものの、これらをもって右Aら4名が原告に対し本件いじめを行うことの予見可能性があったということはできない」として、父親たちは、親権者として教育、監護し、いじめを制止するなどの措置を怠ったとは認められないとして、民法709条の損害賠償を否定。
そのため、損害賠償責任は親ではなく生徒本人が負うことになるが、「被告父らは、原告父から本件いじめに関する慰謝料額が正式に提示されたのを受けて、これに対する回答として本件回答書を作成し、交付したものであるところ、(略)右被告らの子には賠償能力がないこと、それ故、その子らに代わって右被告らが何らかの賠償をする意思があることが当然の前提とされており、(略)右意思表示は、右被告らにおいて、その子らの原告に対する不法行為に基づく損害賠償義務につき、金額については裁判所等の第三者機関が定めることを条件とする債務引き受けをなしたものと解するのが相当である」として、「子らのなした違法ないじめによる損害賠償債務につき、これを支払うべき責任を負う」とした。

2001/12/20 東京高裁で、一部認容。
一審判決の事実認定を支持し、町と元同級生の父親4人に計690万円の賠償金支払いを命じた。
判例地方自治216号
62頁
12 1991/9/27 石川県河北郡の七塚町立七塚小学校で昼休み、男子児童(小5)が、同じクラスの児童と隣のクラスの児童まで加わって16〜17人(小5)にロッカーに閉じ込められ、殴る、ける、背中を押す、などの集団暴行を約20分にわたって受け、2週間のけがを負う。
当日、担任教諭は出張中で1時間目から教師不在のまま自習授業が行われ、隣のクラスの担任教諭が時々、様子を見に訪れていた。

男子児童は家族の転居に伴い、小学校4年生の3学期途中、埼玉県から転校してきた。転校前の学校で、男子児童や妹もいじめの対象にされていたことから、母親は校長に集団で学習する場合には気にかけてほしいと要望していた。しかし、転校直後から同級生からのいじめが始まり、上級生から暴力を受けたこともあった。保護者は学校に対応を申し入れたり、子どもの安全を図るため、登校させても教室に入らせなかったり、登校させないなどの措置をとっていた。
集団暴行後半年間、5年生が終わるまでAくんは登校できなくなった。

両親が、児童7人の親権者と学校設置者である七塚町を相手どって、320万円の損害賠償を求めて提訴。
小5

集団暴行
親の責任を
認定
1996/10/25 金沢地裁で、一部認容。
町と児童の親権者に約35万円の支払いを命じる。

親権者については、「たとえ子供が学校内で起こした事故であっても、それが他人の生命・身体に危害を加えるというような社会生活の基本規範に抵触する性質の事故である場合には、親権者は、右のような内容を有する保護監督義務を怠らなかったものと認められる場合でない限り、学校関係者の責任の有無とは別に、右事故によって生じた損害を賠償すべき責任を負わなければならない。
「同被告らが、普段から、子に対して、人に迷惑をかけないこと、人のいやがるようなことをしないことなどを言い聞かせていた旨の供述部分があるが、かかる説諭のみをもってしては、右のような保護監督義務を尽くしたとは到底いえない。また、他に親権者らにおいて、右義務を怠らなかったと認めるに足りる証拠はない。
したがって、親権者被告らは、民法714条1項の規定に基づき、本件事件によって、原告に生じた損害の賠償をすべき義務がある。」として、保護監督義務違反を認定。

1997/10/29 
名古屋高裁金沢支部で、一部認容。町と親権者に60万円の支払いを命じる。
本件がいわゆるいじめの事案であること、登校再開後も原告に対するいやがらせ等は完全にはなくならなかったこと、学校側の対応に教育的配慮を欠いた点があったことを認め、学校と児童の親が誠意ある謝罪をしていないことなどを理由に1審判決より増額。
判例時報1629号
113頁
13 1991/10/31 奈良県香芝市の市立中学校で昼食時間中、障がいのある男子生徒Aくん(中3)が、持参した弁当の大きさ等について同級生XYの2人からからかわれたため、「うるさい。あっちへ行け」と反発したところ、カーテンで覆ったうえ、内1人から右側頭部付近を3回蹴られ、外傷性環軸椎亜脱臼等の傷害を負った。軽度の四肢麻痺、頸部痛、頸部の高度運動制限の後遺症を残すに至った。

被害生徒と母親、兄が、加害者2人と保護者、学校を提訴。被告ら各自に約1億7800万円の支払いを求め、提訴。
中3

傷害
親の責任を
否定
1999/2/1 奈良地裁葛城支部で、一部認容。(確定)
加害生徒らにのみ責任を認め、被害者本人に634万8828円、被害者の母親に167万3083円の支払いを命じる。学校と加害者の親の責任を否定。

加害者らの両親について、「被告X及び同Yが本件暴行に至る前において、他人に暴行を加えたり、そのおそれがある生活態度を示していたと認めるに足りる証拠はない。
そうすると、被告X父らにおいて被告Xが、同Y父らにおいて被告Yが、それぞれ他人に暴行を加えるおそれがあることを予見できるような状態にあったとは認定できず、結局、被告X父ら及び同Y父らにおいて、本件暴行を振るわないように監督し、あるいは教育すべきであったのにそれを怠った過失があったとは認定できない」として、棄却。
判例時報1730号
77頁
14 1991/11/15 大阪府豊中市の市立第十五中学校で放課後、軽い情緒障がいのある水元佐和さん(中3・15)が、男女4人の生徒に暴行されて死亡。

傷害致死容疑で4人を逮捕。
大阪家庭裁判所は、「4人の非行性はそれほど高くないが、女子生徒が死亡した結果は重大」として、男子生徒A、Bと、女子生徒Cを中等少年院送致(短期処遇=6カ月以内)処分。女子生徒Dは、事件を真摯に受け止めていたこと、暴行に関与した程度が極めて小さかったことなどから保護観察とした。

母親が、学校設置者と加害生徒4人の保護者を相手どって、計6578万円の損害賠償請求。
中3

暴行致死
親の責任を
認定
1997/4/23 大阪地裁で、一部認容。
保護者に5471万円を支払うよう命じる。市に対する請求は棄却。

親権者は、中学生の子であっても、原則として子どもの生活関係全般にわたってこれを保護監督すべきであり、少なくとも、社会生活を営んでいく上での基本的規範の一として、他人の生命、身体に対し不法な侵害を加えることのないよう、子に対し、常日頃から社会的規範についての理解と認識を深め、これを身につけさせる教育を行って、中学生の人格成熟を図るべき広汎かつ深遠な義務を負っているところ、(中略)A〜Dらが平成3年夏休み以降、第十五中のいわゆる『番長』であり暴力を背景として同級生・下級生に影響を及ぼしているAを中心とするグループを形成し、以来、A〜Dらの怠学、喫煙、服装の乱れ等の問題傾向が反復していたのであるから(かかる性向がやがて暴力的非行に結びつきやすいことは疑いを入れないところであろう。)、A〜Dらと起居を共にしている被告親権者として、A〜Dらの行状について実態を把握するための適切な努力をしていれば、A〜DらがAの影響のもとに早晩弱者に対する暴力行使によるいじめに及ぶ予見可能性を予見し得たはずであるにもかかわらず、そのような努力をすることなく、A〜Dらに対し、前社会規範を身につけさせることを中心とする適切な指導監督をすることを怠り、A〜Dらをほとんど放任していたものであり、そのため、A〜Dらに本件事件を惹起させる結果を招いたというべきであるから、被告親権者らには民法709条、719条に基づく不法行為責任がある」として、生徒らの親権者の監督義務違反を認定。
判例時報1630号
84頁、

判例タイムズ968号
224頁
15 1992/11/-
1995/3/
大分県臼杵市の市立中学校で、男子生徒Xくんが同級生で同じ吹奏楽部所属の男子学生Aから、中学1年時から卒業まで、夏休みに宿題をやらされたり、試験の答案の白紙を強要される、暴行を受け現金計30万円ほどを脅しとられるなどのいじめを受けた。
Xくんは吹奏楽部を退部し、中学2年生の2学期からは学校を欠席するようになっていた。
AとXくんは小学校からの知り合いで、同じクラスになったことはなかったが、グループで一緒に遊ぶこともあった。
Aは体格がよく、体力もあり、少林寺拳法を習っていて、けんかが強かった。

被害者側は、元同級生と両親に慰藉料など360万円の損害賠償を求めて提訴。
中2

暴行・恐喝
親の責任を
認定
1999/10/25 大分地裁で、一部認容。
元同級生に90万円、両親に各自4万円の支払いを命じる。

「被告Aの原告に対するいじめが始まった時点(平成4年11月)において、被告Aは13歳であったことが認められる。そうすると、被告Aの行った行為と年齢に照らせば、同被告は同行為の責任を弁識するに足るべき知能(責任能力)を有していたといえるものの、同被告は未だ中学生であったから、被告A父及び同A母は、被告Aの親権者として、被告Aが原告に対しいじめを行うことが予見し得る場合には、これを行うことがないよう指導監督すべき不法行為上の作為義務を原告に対し負っていたといえる。
 しかし、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告A父及び同A母は、平成6年2月ころ、中学校から被告Aが原告に対して暴行を行った旨の連絡を受けてはじめて、被告Aが原告に対していじめを行っていることを知ったことが認められ、本件全証拠によるも、それまでの間に、被告A父及び同A母が、被告Aが原告に対しいじめを行うことを予見し得たことを認めるに足りる証拠はない。」
「被告A父及び同A母には、平成6年2月に中学校から連絡を受ける以前においては、被告Aに対しいじめを行うことがないよう指導監督すべき作為義務はなかったといえるが、それ以降においては作為義務があるといえる。(中略)
被告A父及び同A母は、前記中学校からの連絡を受けた後においても、被告Aのいじめの存在を否定する弁解を鵜呑みにして、同被告に対する有効適切な指導監督を行わなかったことが認められる。
 そうすると、その結果発生した別紙記載の被告Aの行為については、被告A父及び同A母にも不法行為責任が成立することになる。」
として、両親の責任も認めた。

高裁に控訴後、控訴棄却。一審判決確定。
判例タイムズ1083号
161頁
16 1993/3/2 山梨県の村立小学校の帰りの会で、男児C(小4)が投げつけた鉛筆が男児Xくん(小4)に命中。
男児はも左眼球穿孔、角膜裂傷も外傷性白内障後無水晶体眼、後発性白内障の傷害を負い、入院治療を受けたが、左眼視力が0.01でほとんど見えない状態になった。

XくんとCは1学期には仲が良かったが、2学期に入った頃から一緒に行動しなくなり、Xくんの保護者から、Cからいじめられているのではないかと相談されていた。
帰りの会の際、Cが落ち着きのない行動を繰り返していたため、担任はCに落ち着くことと引き換えに、Cくんの隣の欠席者の席への移動を認めた。席を移動したCは、Xくんに向かって鉛筆を投げるしぐさを繰り返し、そのたびにXくんは「やめろよ」と返答していた。
担任教師は、児童の注文による裁縫道具の配布作業に没頭して、Xくんの負傷に気づかなかった。
小4

傷害
親の責任を
認定
2004/8/31 甲府地裁で、一部認容。
Cの保護者と村に、連帯して4383万3566円を支払うよう命じた。
Xくんの両親の請求は棄却。

Cの保護者について、「自己の行為についてその責任を弁識する能力を備えていない児童が不法行為を行った場合、親権者が、その全生活について監督義務を負うべきである。本件についてみるに、Cは、本件事故当時、満10歳であり、本件事故における違法行為について事故の責任を弁識する能力を備えていなかったと認められるのであるから、Cの親権者であった被告Y2、被告Y3において、民法714条1項に基づき、損害を賠償すべき義務を負うものと解される」「児童が加害行為を行った際、小学校教育のために担任教諭等の指導監督の下に置かれ、代理監督義務者がその責任を負うとしても、そのことによって親権者の責任が当然に免除されることにはならない。また、本件では、Cは、短気な性格で、(略)問題行動が日頃からみられたため、教諭が個別指導を繰り返していたことや、保護者である被告Y2らとのやりとりにおいて、授業中の態度や友達関係について話をしていたことも窺われるのであるから、本件事故が学校教育の場において生じたことをもって、被告Y2ら自らの監督義務を怠らなかったと認めることはできない」とした。
判例時報1878号
123頁
17 1993/5/22 岐阜県岐阜市の県立岐南工業高校で、他クラスの生徒とけんかして教師に叱られた男子生徒(高1・16)が、教室内で腹いせにこうもり傘を投げたところ、2メートル先で友人とパソコンの画面をのぞき込んでいた男子生徒(高1・15)の額に刺さり、脳挫傷で死亡。 高1

傷害致死
親の責任を
認定
1996/9/26 岐阜地裁で、一部認容。
傘を投げた同級生Bに約2590万円の支払い命令。
教諭に対しても、Bの両親に対しても、「予測は不可能だった」として、訴えを退けた。

1998/5/15
岐阜高裁で、一審判決を支持。(確定)
1996年9月27日付中日新聞 (月刊「子ども論」1996年12月号/クレヨンハウス)、「教育データランド2000-2001」/時事通信社
18 1997/4/13 静岡県駿東郡の私立高校の男子生徒(高2・16)が、自殺。
中学時代の同級生で、土木作業員の少年Aと別の高校の生徒Bの2人から恐喝や暴行を受けていた。
男子生徒は、1996年頃からAに暴力を振るわれていたため、避けていた。

男子生徒の両親が、息子が自殺したのは中学時代の同級生2人に恐喝、暴行されたためとして、加害者2人とその両親を相手取り、慰謝料など約1億1000万円の損害賠償を求めて提訴。
高2

いじめ自殺
親の責任を
認定
2001/4/18 静岡地裁沼津支部で一部認容。
恐喝行為と自殺の相当因果関係を認定して、加害者2人に計7700万円、親には約1100万円、総額約8800万円の支払いを命じる。

Aは暴走族に入ったり、中学時代の同級生に恐喝等をして、親が示談にしていたり、自動車窃盗、無免許運転、自動販売機荒らしなどの非行で、保護観察になっていた。
Bは、自動販売機荒らしなどをAと一緒に犯罪行為を行っていることを知っていたこと、警察からAと付き合わないように注意されていた。
これらのことなどから、「恐喝、暴行の不法行為は親が十分指導すれば回避できたはずで過失があった」と認定。しかし、「自殺まで予見不可能で、監督義務違反と自殺に因果関係はない」として、「保護者としての監督義務を怠ったが、自殺は予見できなかった」と認定。
判例時報1770号
118頁
19 1999/11/3 埼玉県三郷市の市立中学校の男子生徒Xくん(中3・14)は日ごろから同級生の男子生徒 AB(中3・15)らに使い走りをさせられるなどのいじめを受けていたが、公園でEにそそのかされた4人の少年(中3)に集団暴行され、顔面打撲、右肩峰骨折等の傷害を負う。(Aは暴行には加わらなかったが、面白がって見ていた)
暴行にはEに呼び出されて暴行に加わったもののXくんと全く面識のない少年(C・D)もいた。

男子生徒が、ABの保護者らは、自分の子どもがいじめを行っているのを知りながら、十分に監督せず放置したとして、連帯して1000万円の損害賠償を支払うよう求めて提訴。また、EDCの保護者らにも、ABと連帯して500万円の損害賠償を支払うよう請求。
中3

いじめ・集団暴行
親の責任を
認定
2003/6/27 さいたま地裁で、一部認容。
ABの両親らに、相互に連帯し、かつ、300万円及びこれに対する下記附帯の金員の支払いの限度で被告ECDの保護者と連帯して、原告に対し、400万円を支払うよう命じる。
ECDの保護者にも、相互に連帯し、かつAB保護者らと連携して、原告に対し、300万円を支払うよう命じた。

暴行事件を少年ら5人の共謀によるものと認定。
AB父母らによる、「A少年ら2名による万引の依頼や使い走りの命令を、いずれも原告としては断ることができたにもかかわらず、これを断らずに自らの判断で行ったものである」との主張に対しては、「2名が原告を格下として扱い、その間に上下関係を形成していたこと、原告が万引を断った際にA少年ら2名は原告に暴行を加えたこと、原告が万引した商品は、一度の例外を除きA少年ら2名が取得し、また、原告が買出ししてきた菓子等も、購入代金をA少年らが出捐したか否かを問わず、すべてA少年らが取得したことは、上記認定のとおりであり、これらの事実に照らせば、原告は、A少年ら2名による万引きや買出しの命令を断れば、自己の身体等に対し危害が加えられるものと畏怖したことにより、何ら自己の利益とならない万引や買出しの命令に従っていたことは明白」とした。

保護者の監督義務違反について、「少年ら5名には、いずれも本件暴行事件より以前から(A少年ら2名については、本件いじめ行為の前か、少なくともこれと並行して)、喫煙、ピアスの着用、粗暴な行為、不良グループの結成等の問題行動が生じていたところ、被告はこれを認識し、又は認識すべきであったから、早晩弱者に対するいじめや暴力行為に及ぶことも十分に予見しえたものといえる。それにもかかわらず、被告らはいずれもその子に対する監督教育等に特段の努力をせずこれを放置し、少年ら5名の上記問題行動を解消させようとはしなかった。そのため、少年ら5名の非行傾向は深刻化し、原告に対する本件いじめ行為及び本件暴行行為を惹起させるに至ったものである」とて、監督義務を怠った過失を認めた。
判例時報1849号
71頁
20 2000/4/-
2001/3/
神奈川県川崎市多摩区の市立南菅小学校で、中国人の父と日本人の母を持つ女子児童Kさん(小3・8)が、複数の同級生らからいじめを受けて、転居して転校。
PTSDと診断される。
小3

いじめ
親の責任を
認定
2007/12/21 横浜地裁川崎支部で、一部認容。
AとBの両親らに連帯して、本人に100万円を支払うよう命じた。
原告両親の請求は棄却。

Aの親については、「Aに対し、原告Kのことを『うんこ』と言うのはやめるよう言っていたという程度であり、この程度では到底保護監督義務を怠らなかったとはいえない」と認定。
Bの親についても、「父及び母がBに対する保護監督義務を怠らなかったことを認めるに足りる証拠はない」と保護監督義務違反を認定。

Bの親については、被告B母が、保護者学年懇談会において、「被害者にも問題があったのではないか」という旨の発言をしたことは認定。
しかし、「そのことをもって、原告父及び母の社会的評価を低下させたということはできない」として、原告の名誉棄損の訴えは棄却。
判決文
21 2000/7/3 福島県の県立岩瀬農業高校で、男子生徒Aくん(高2)は同級生(高2・16)から、いじめにあい、プロレス技をかけられて頸椎を骨折。身体に障がいが残った。

Aくんと保護者が、加害者の元同級生(20)と父親、県に総額5500万円の損害賠償を求めて提訴。
「Aが毎日のようにいじめを受けていることを学校側は知っており、Aへの暴行を未然に防止する義務があった」「県(学校)はいじめを未然に防ぐ安全配慮義務を怠った」「父親には息子に対する監督義務違反があり、怠った」と主張。
高2

暴行
親の責任を
否定
2004/11/30 福島地裁郡山支部で、一部認容。
元同級生に約3213万円の支払いを命じる。父親と県への請求は棄却。

宍戸充裁判長は、「いじめがあったのは事実。元同級生は当時16歳で、責任能力があった」と指摘。
父親については「息子が他人に危害を加えることを予見できなかった」とし、父親の監督義務違反を否定。
2004年11月30日河北新報、2004年11月30日日刊スポーツ、2004年12月1日毎日新聞
22 2000/4/-
2001/5/7
京都府城陽市の市立小学校で、男子児童Xくんは、男子児童A、B、Cと5年生から同じクラスだったが、6年生の1学期から、当該グループから元いじめられていたDを加えて、Xくんにいじめをするようになった。

2001年1月15日から、AとBはXくんの顔をみるとむかむかするので教室にいられないと訴えたことから、別室で授業を受けた。教室に戻る場合はXくんに暴力を振るわないよう教師が指導したが、AとBは承諾しなかった。
その後も2人は、「あいつ(Xくん)が悪い。またやったる」と言って、彫刻刀をもって学校内をうろついたり、教師に付き添われて下校中のXくんのあとをつけたりした。
AやBの保護者や関係者や祖父は学校に対して、別室指導について抗議。
AとBの2人から、Xくんは帰宅途中に、頭や顔を踏みつけられるなどの暴行を受けた。AやBは教師に対しても暴言を吐いたり、暴力を振るったりした。

2001年2月14日には授業中に、AとBは、教師の制止を振り切って「クラス全員皆殺しや」と怒鳴りながらAくんに暴力を振るい、教師にも靴を投げつけるなどした。Aくんは恐怖心から不登校になった。

3月、Xくん側が、代理人弁護士を通じて、ABの保護者に暴行等の再発防止を求めたが、かえって、暴行を受ける原因はXくんにあると言われ、指導・監督等の具体策は示されなかった。

4月2日、中学生になっても、リーダー格のAに命じられたCが、玄関のドアを蹴り壊してXくんの自宅に乗り込んで、Xくんに殴るけるの暴行を加えた。Cが外に逃げだしたXくんを追い掛け暴行するのをAは現場付近で見ていた。その後Cは転校。
4月9日、中学の入学式直後から、AとBはXくんの教室に乗り込んで脅した。
その後、Xくん一家は転居して、5月7日付けでXくんは別の中学校に通う。

男子生徒と保護者が、加害生徒の保護者に、子に対する指導監督を怠ったとして、市には、その設置する小学校ないし中学校において、生徒間の行為による生徒の生命、身体等への侵害を防止する義務を怠ったとして、慰謝料や転居費用など計750万円の損害賠償を求め提訴。
小6〜中1

いじめ
親の責任を
認定
2005/2/22 京都地裁で、原告勝訴判決。
葛井久雄裁判長は、保護者と加害生徒に、慰謝料と転居費用、転居先家賃の一部など計380万円(内転居費用128万5000円)の支払いを命じる。
被害者本人に対する慰謝料は認めたが、被害者の両親に対する慰謝料は棄却。

Aの両親の責任について、「被告A父及び被告A母は、度重なる被告Aの不法行為につき、何ら具体的な指導・監督をした形跡はなく、かえって、トラブルの原因は原告Xにあるとして、本件小学校にも非協力的な態度をとるなど、被告Aに対する指導・監督義務違反があると認められるから、被告Aと連帯して不法行為責任を負う。
なお、被告Aには、被告A父の指導・監督義務につき、本件当時、既に離婚しており、指導・監督は不可能であった旨主張するが、被告A父と被告A母が離婚したのは、前記一連の行為よりも後である平成13年10月であることは当裁判所に顕著な事実であり、上記各行為当時は、別居中であるにすぎなかったと認められる。そして、単に、別居中であるというのみで、被告A父が指導・監督義務を負わないことにはならない。」と責任を認定。

Bの両親の責任について、「被告B父及び被告B母は、被告Bの不法行為につき、具体的・実効的な指導・監督をした形跡はなく、かえって、トラブルの原因は原告Xにあるとの態度をとるなど、被告Bに対する指導・監督義務違反があると認められるから、被告Bと連帯して不法行為責任を負う。」と認定。

Cの両親の責任について、「被告Cはも本件住居侵入暴行につき、不法行為責任を負う。そして、被告C父及び被告C母は、被告Cに対し、積極的に指導・監督を行った形跡はなく、かえって、トラブルの原因は原告Xの暴言にあるという態度をとるなど、被告Cに対する指導・監督義務違反があると認められるから、被告Cと連帯して不法行為責任を負う」と認定。
判例時報1915号
122頁、

判例地方自治271号
40頁
23 2002/12/20 宮城県黒川郡富谷町の町立中学校で、始業前の時間帯に、男子生徒Aくん(中1・13)同級生の男子生徒B(中1・13)から、箒(ほうき)を投げつけられて、右目を損傷。視力低下等の後遺症を負った。
Bは執拗にAくんに嫌がらせを繰り返していたところ、AくんがBの足を蹴って抵抗したので、Bは教室の掃除用具入れのロッカーから、座敷箒と自在箒を持ち出し、座敷箒の柄でAくんを突いたが、Aくんに取り上げられたことから、約3メートルの距離でAくんに向かって槍投げのように自在箒を投げつけたところ、メガネをかけていたAくんの右眼にあたり、割れたメガネのガラス片でAくんは受傷した。

被害生徒が、加害生徒の親と、町に損害賠償を求めて提訴。
中1

傷害
親の責任を
認定
2008/7/31 仙台地裁で、一部認容。
加害者の親と町に、連帯して3313万5733円を支払うよう命じた。

Bの両親については、「Bには幼さや自己抑制力に乏しい面があり、他の生徒の生命、身体等に危害をおよぼす危険性があることを認識していたのであるから、抑制力を高める適切な指導をすべき義務を怠った過失がある」とした。
判例時報2028号
90頁
24 2001/12/-
2003/2
東京都渋谷区千駄ヶ谷の保育園で、女児Xちゃん(4-6)が、保育中に男子児童Y(4-6)に、いじめや性的嫌がらせを受け、PTSDを発症。
また、2002年3月に実施された卒園行事の際、送る側の保護者の当日の手伝いで、他の保護者が全員希望どおりの役に決まったなかで、Y母は、X母のみ希望に反した役に振り替えた。そのことを主たる話題とした臨時保護者会の翌日から、X宅に無言電話がかかるようになった。また、「X母からお金まで求められた」などの噂を流された。
2003年2月、Xちゃんは退園を余儀なくされた。

Xちゃんと親権者が、男児Yの両親に対して損害賠償と謝罪文、無言電話の差し止めを求めて、提訴。
4〜6歳

いじめ
親の責任を
一部認定
2005/12/8 東京地裁で、原告の訴えを棄却。

2006/2/16 東京高裁で、一部認容。
Yの両親らに、10万円支払うよう命じた。

Yの親権者の過失について、「被控訴人(Yの親権者)らは、Yに対し他人に暴力をふるってはいけない旨を言い聞かせたり、Yが粗暴であることの原因は言葉の障害にあると考え、渋谷区立心身障害センターの小児心理士による指導を受けたりしていたことを理由に、Yに対する監督義務を怠っていなかった旨を主張する」が、「被控訴人(Yの親権者)らは、現にYが保育園で他の園児に対する加害行為に及んでいることを知っていたのであるから、被控訴人らとしては、上記の程度の対応策にとどまるのではなく、Yに対する指導をより実効性のあるものにしたり、保育園との意思疎通をさらに密なものとし、Yが他の園児に粗暴な振舞をすることがないよう対応すべき義務があったというべきである。」として、監督義務の懈怠を認定

しかし、「Yによる加害行為は、保育中にされたもので、態様において悪質とまでは言い難い上、控訴人Xの損害の程度も必ずしも深刻なものとはいえない。さらに、Yがした加害行為の中には控訴人Xの言動に誘発されたとうかがわれないわけではないものも含まれていることは前記のとおりであって、これらの事情を勘案すれば、控訴人Xに支払われるべき慰謝料は、10万円とするのが相当というべきである。」とした。
判例タイムズ1240号
294頁
25 2001/5/-
2003/6/19
広島県広島市の市立中学校で、男子生徒Xくん(中2-中3)が、同学年の生徒からほぼ毎日のように集団的な暴行や侮蔑の嫌がらせによるいじめを受け、2002年6月17日から不登校になる。統合失調症を発症。妄想に襲われ、対人緊張、迫害不安、易疲労感などの症状がでるようになった。
中学卒業後も、自宅を訪れたり、町で脅したり、からかったり、靴を取り上げ、ビルの屋上に閉じ込めたりした。
リーダー格のAは、1年生のときから、他の生徒をいじめるなどしていた。同じグループの他のメンバーの首を絞めることもあった。
2003年6月19日、初めていじめを受けていたことを両親に話した。(ただし、リーダー格のAについては話さなかった)

男子生徒と両親が、元同級生4人や広島市、広島県県などにあわせて2600万円の損害賠償を求め提訴。
中2〜中3

いじめ
一部の
親の責任を
認定
2007/2/13 広島地裁で、一部認容。

被告Aと両親、被告B、被告C、広島市と広島県は各自約660万円、被告Dには約33万円を、Xくんに対し支払うよう命じた。
被告Aと両親、被告B、被告C、広島市と広島県に対し、Xくんの父親に各自約6万円を支払うよう命じた。
被告Aと両親、被告B、被告C、広島市と広島県に対し、Xくんに各自約132万円を支払うよう命じた。

保護者らの過失について、Aの両親に対し、「被告Aは、上記認定の問題行動があったのであり、その行為の内容は同級生への陰湿で悪質な嫌がらせ、蹴るなどの暴行、器物損壊というものであったこと、クラス担当のF教諭は、これら問題行動について被告A本人に注意、指導を行い、被告A両親にもこれらの問題行動を逐次知らせて家庭内での指導監督を促したことが認められる。
この事実からすれば、被告A両親は、遅くとも平成12年秋ころには、被告Aが他者への共感性に乏しく、同級生への嫌がらせや暴行等を内容とする違法ないじめ行為に及ぶことを予見することが可能であったといえる」として、予見可能性を認定。

「被告Aの両親は、その時から、折に触れて、被告Aに対し、いじめ行為がその被害者に多大な精神的苦痛を与えるもので決してしてはならない行為であることをたびたび言い聞かせるとともに、担任教師等と連絡を密に取って被告Aの学校内での生活ぶりを聴取し、問題行動とみられる行為があればこれを制止すべく説得するなどの措置を講じる義務を負っていたというべきである。」しかし被告Aの両親は、「F教諭から上記の問題行動があったことについて連絡を受けても、これを深刻に受け止めず、被告Aが他者への共感性に乏しい未熟な人格で本件各不法行為のような違法ないじめ行為に及ぶ危険性があることを理解せず、上記のような教育・監督の措置を講じることなく漫然と過ごしていたものと推認される。したがって、この点で被告A両親には、子である被告Aに対する教育、監督義務の違反、懈怠があったといえる。」と責任を認定。
他の3人の保護者については、予見可能性を否定し、責任を認めなかった

2008/10/15 広島高裁で、「いじめ行為がなくても、男性が統合失調症を発症した可能性はある」として、1審の賠償額はいじめ分と疾患分を合わせて計690万円だった賠償額を、330万円に減額。原告側が上告。

2010/1/21 最高裁判所第1小法廷の甲斐中辰夫裁判長は、いじめが原因だったと認めたうえで、「2審は、統合失調症になったことに対する賠償額だけでなく、いじめに対する慰謝料まで減額しているが、慰謝料は減額する必要はない」という判断を示し、2審の賠償額の算定方法には誤りがあるとして高裁判決を破棄。審理を広島高等裁判所に差し戻す。

2010/12/20 広島高裁(差し戻し控訴審)で、廣田聡裁判長は、330万円の賠償を命じた差し戻し前の同高裁判決から賠償額を増額し、507万円の支払いを命じた。
判例時報1984号
49頁、

判例タイムズ1248号
271頁、

裁判所ウェブサイ
26 2003/10/18 福島県須賀川市の須賀川市立第一中学校の女子生徒Aさん(中1)が、柔道部の練習中倒れ、遷延性意識障害(植物状態)となる。
当初、練習中の事故と思われていた。3ヵ月後、両親から依頼を受けた弁護士による生徒への聞き取り調査から、主将である男子部員F(中2・13)にリンチまがいの練習を強要されて重傷を負ったことが判明。

女子生徒と両親が市や県、男子生徒と親権者らを提訴。
中2

傷害
親の責任を
否定
2009/3/27 福島地裁郡山支部で、一部認容。
見米正裁判長は、学校側の責任を認め、市や県などに約1億5600万円の支払いを命じる。内約300万円は元部長を含む3者に連帯して支払うよう命じる。

男子生徒の親権者については、「被告Fの性格や日ごろの行動等から、直ちに、被告Fが本件柔道部の活動中に、他の部員らに対し、不法行為を加えることまで予見できたとはいえない」として、請求を棄却。
裁判所ウェブサイト
27 2005/11/9 兵庫県神戸市の市立中学校で、柔道部のクラブ活動の練習終了後の着替え中、男子生徒(中1)Xくんが、同級生の男子生徒A(中1・13)から突然、両足で飛び蹴りを仕掛けられ、柔道場の壁に後頭部を強打。Xくんは反撃したが、AがXくんを押し倒し馬乗りになって、手拳で数回殴打した。
結果、Xくんは外傷性低隋液圧症候群等の傷害を負った。慢性的な頭頸部痛、腰痛、視機能低下、記憶力低下の後遺症が出る。

被害者が、Aの両親と市に対し、損害賠償を求めて、提訴。
中1

傷害
親の責任を
認定
2009/10/27 神戸地裁で、一部認容。
裁判所は、Aの保護者と市に、連帯して831万2110円を支払うよう命じた。

両親の責任について、「被告(両親)らにおいては、Aが中学校において、けんかに発展しかねない遊びをしており、注意するように教諭から要請されていた上、傷害事件において、Aが同級生の○○に骨折の傷害を負わせる事件を起こしたために、教諭から厳重に注意するよう要請させており、また、本件事故直前に神戸市内のゲームセンターにおいて、Aが○○に暴行を振るって、警察が出動する事件を起こしていたことを認識していたのであるから、従前どおりの指導を続けるのみでは、未だ13歳の未成年であり、自己抑制力の発達が十分でないAが同級生とけんかをし、また、暴力を振るうなどして、同級生を負傷させる危険性があることを具体的に予見し得たものというべきであって、従前の指導教育に加えて、Aの日頃の動静を注意深く見守り、また、Aと普段の生活状況について十分に話をし、同級生に対して手を出すことがないように厳重に注意するなど適切に指導監督を行うべき義務を負っていたものと認めるのが相当である」「しかるに。被告(母親)は、傷害事件の後も、従前同様に、けんかになっても手を出さないよう漫然と注意するにとどまり、また被告(父親)においては、特段の注意を行ったことが認められない」「親権者としてAに対して適切な指導監督を行うべき義務を懈怠したものといわざるを得ない」として、責任を認容。
判例時報2064号
108頁
28 2011/5/-
9/
愛知県名古屋市立中学校の男子生徒(中3)が、同級生の男子生徒からのいじめが原因で精神的苦痛を受けた。
2011年10月、うつ状態と診断される。高校進学後も、精神安定剤を服用。
加害生徒は謝罪したが、母親は学校を通じた話し合いに応じなかった。
2011年12月、被害生徒側は名古屋簡易裁判所に調停を申し立てたが、加害生徒側は出頭しなかった。

当時の男子同級生と母親に計220万円の損害賠償を求めて提訴。
中3

いじめ
親の責任を
認定
2013/3/29 名古屋地裁で、いじめと母親の監督義務違反を認定。
母子に33万円の支払いを命じた。

同級生の母親について、「学校から連絡を受けた後も具体的な注意をせず、漫然と過ごしていた」「子どもの教育や監督を怠った」として、監督義務違反を認めた。
2013年4月3日産経新聞、
2013年4月4日毎日新聞

※いじめや生徒間暴力の民事裁判で、親の責任に言及したものは、これ以外にもあります。

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