わたしの雑記帳

2014/1/6 学校のトイレを子どもが素手・裸足で掃除するのは美談?
2014/1/19 追記

2014年1月5日付の朝日新聞兵庫県版(デジタル版)に、「磨く尽くす男子の美学」というタイトルで、私立の中高一貫校で、生徒が素足、素手、上半身裸で、たわしやぞうきんで、トイレの小便器、大便器を清掃する姿が、美談として紹介されていた。
この学校に限らず、他の小学校や中学校などでも、児童生徒が素手でトイレ掃除をやらせている学校はいくつもあるし、「掃除を学ぶ会」というのもある。横浜市では平成21年度から、公立の小中高校全校で実施している(「豊かな心を育む児童生徒によるトイレ清掃 教職員のためのリーフレット」 参照)。
しかし、私がいつも気になるのは、感染症対策。

とくに学校では和式便器がほとんどで、排泄物で周囲が汚れる確率は高く、範囲も広くなる。
(TOTO 「学校のトイレに求められていること」 参照)
ほとんどの家庭が洋式便器を使用するなかで、今だに学校や公共施設のほとんどが和式を採用しているのは、コスト面が大きいのだろうと思うが、バリアフリーの点から考えれば、洋式が望ましいのではないかと思う。障がいのある子どもはもちろんのこと、けがをした場合や災害時の避難所として高齢者を含む多くの人が利用することを考えれば、洋式便器をもっと採用すべきだと思う。
小学校入学で、慣れない和式便器や個室になっていない男子の小用便器がいやで、トイレをがまんしたり、トイレに行けずに漏らしてしまったり、学校そのものに不適応を起こす子どももいると聞く。

当たり前のことだが、トイレは排泄をする場所。排泄物には菌が多い。まして、体調を比較的管理しやすい家族だけが使用するわけではない。体調を崩していたり、感染症をもっている児童生徒がいる可能性も考慮に入れておく必要があるだろう。
前掲の横浜市のリーフレットには、「下痢や嘔吐物の確認」してある場合には教師に連絡すると書いてあるが、便器や床の汚れが「下痢や嘔吐物」であるかどうか、子どもが簡単に判断できるのだろうか。それでなくても忙しい教師がすぐに対応できるだろうか。
ホームヘルパーの研修でも、排泄物の扱いについては、手袋を使用するようにとあるし、大人の清掃業の人たちでさえ、トイレ掃除には感染症の心配から使い捨ての手袋を使用する。
看護師や介護職の人たちには肝炎などの感染症にかかる確率が高いという。知識が設備、備品があって、十分に気をつけていてさえ、大人でも完全には防ぎきれない。

手指だけを考えても、お湯の出ない学校で、きちんと石けんを使用して子どもが水の冷たさも気にせず、よく洗うだろうか。手足に傷がある児童生徒が自己申告して清掃を逃れるのはけっして容易なことではないだろう。
トイレで、専用の履物を履くのは菌を広げないため。手だけでも十分に洗えているか心配だが、ひざをついてトイレ清掃したあと、ひざや足の裏まで、石けんで洗っているとは思えない。
まして、新聞で紹介された学校では、「洗剤をほとんど使わず、ただひたすらこする」という。こすったあとの雑巾はきっと繰り返し使われるだろう。水拭きすることで、表面上はきれいに見えても、かえって菌を広めている結果にはならないのだろうか。

2000年には、神奈川県内の小学校での感染性胃腸炎の集団発生で、トイレ前の廊下の掃除当番だった児童の発症率が有意に高かったことが報告されている。http://idsc.nih.go.jp/iasr/22/253/dj2533.html

東京都福祉局の「家庭や施設における二次感染予防ガイドブック」には、「腸管感染症とは、病原体が人の口から入り、腸内で増えて下痢や腹痛などをおこす病気です。細菌性赤痢、コレラ、腸管出血性大腸菌(O157 など)、感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルスなど)があります。」「細菌性赤痢や腸管出血性大腸菌感染症では、ごく少量の菌で感染し発病します。」「便には、たくさんの細菌が含まれています。目に見えない病原体は、直接、間接に手指などに付いて、二次感染の原因となります。」「トイレ掃除のときは、専用の手袋を用いて、汚物に直接ふれないようにします。手袋を外したあとも手洗いをしましょう。」と書いてある。血液や排泄物を介して感染するものにはほかに、肝炎ウイルスやHIVもある。

リスク管理からすれば、学校内に感染者がいないことを前提にするのではなく、むしろ感染者がいるかもしれないことを前提に、トイレの清掃は行うべきだと思う。
それを学校管理者は、感染症の危険性を知りつつ、リーフレットやマニュアルだけで安全対策をすませている。
子どもが感染症にかかったら、教師の指導方法が問われたり、子ども自身の自己責任にされかねない。また、感染症の原因がトイレ掃除にあると立証することは、現実的には難しい。
大人が正しい知識と子どもの特性を踏まえて、安全に十分に配慮したうえで、教育を行ってほしい。単なる思い付きや精神論で、子どもたちの健康を害したり、苦しめたりしないでほしい。


2014年1月16日から17日にかけて、浜松市の小学校17校と、中学校1校、そして2つの幼稚園で、1,133人が、下痢や嘔吐などの症状を訴えて欠席。一部の児童から、ノロウイルスが検出された問題で、食パンを製造した会社の工場女子トイレのスリッパからウイルスが検出。その後、工場従業員3人からノロウイルスを検出した。
食品を扱う大人が気をつけていても、食中毒が起きる。工場の従業員はトイレ掃除などはきっとやらされていたわけではないだろう。それでも、トイレのスリッパからでさえ感染が広がる可能性がある。
なお、ノロウイルスは便や吐物に大量に排出され、症状が治まっても1か月以上、便に排出されるという。目で見て、ノロウイルスの有無を判断することは不可能。
ノロウイルスを扱う注意書きには必ず、使い捨て手袋を使い、素手では行わないようにと書いてある。

ノロウイルスによる集団感染が問題になっている今、学校のトイレ掃除はどうなっているだろう?浜松市以外は関係がないとして今まで通り、続けられているのだろうか。



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