わたしの雑記帳

2011/8/10 文部科学省発表、平成22年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」
児童生徒の自殺は、相変わらず、警察庁発表の半分!

2011年8月4日、文部科学省の平成22年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果が発表になった。2006年度からは、文部科学省の数字も、公立学校に私立、公立を加えているので、警察庁発表の職業別自殺者数と変わらないはずだが、相変わらず、半分以下しかない。(「今回公表する平成22年度調査結果には、東日本大震災の影響により調査の実施が困難であった岩手県、宮城県、福島県は含んでいない。」とあるが、これが原因とも思えない)


                                                                     単位:人
     小学校 中学校 高 校 合 計
年度   自殺 いじめ
自殺
自殺 いじめ
自殺
自殺 いじめ
自殺
自殺 いじめ
自殺
2007
(平成19)
文科省  3  0  34  1  121  4  158  5
警察庁  8  0  51  1(1:0)  215  6(3:3)  274  7(4:3)
2008
(平成20)
文科省  0  0  36  1  100  2  136  3
警察庁  9  0  74  5(4:1)  225  6(3:3)  308  11(7:4)
2009
(平成21)
文科省  0  0  44  1  121  1  165  2
警察庁  1  0  79  3(1:2)  226  4(2:2)  306  7(3:4)
2010
(平成22)
文科省  1  0  41  4  105  0  147  4
警察庁  7  0  76  3(2:1)  204  1(1:0)  287  4(3:1)

※文科省の数字は、2005年度までは公立学校のみだったが、2006年度からは国立、私立も加わった。
※警察庁の数字は、2007年に自殺統計原票を改正し、遺書等の自殺を裏付ける資料より明らかに推定できる原因・動機を3つまで計上。
※警察庁のいじめ自殺()内は、左が男子、右が女子。


2010年度 自殺した児童生徒の学年内訳は、
小学生は、小6女子1人。
中学生は、中1男子4人、女子2人。中2男子人8、女子7人。中3男子14人、女子6人。
高校生は、高1男子24人、女子11人。高2男子20人、女子13人。高3男子21人、女子10人。高4男子5人、女子1人。


今回、とくに私が注目したのは、小学生の自殺。
2010年8月17日、大阪府高槻市の小学校の女子児童(小3・8)が、自室ベランダで首吊り自殺した事件が、この統計には入っていない。しかも、道具箱や教科書、ドリル計12冊に「しね」という落書きがあり、いじめが原因ではないかとの報道もされた。
その後、何か自殺とは認定できないような事情が見つかったとでもいうのだろうか。

自殺予防を大々的に掲げながら、あれだけ大きく騒がれた小学3年生の自殺が、いじめ自殺どころか自殺統計にさえ上がっていないことを文部科学省はどう考えているのだろうか。正しい数字をあげる、あげないは、教育委員会の責任で行うことなので、文部科学省は関係がないので、疑問にも思わないということだろうか。

2010年10月23日、群馬県桐生市の市立新里東小学校の上村明子さん(小6・12)が自殺した事案は、いじめ自殺には入れられていない。「友人関係での悩み」にも入っていない。「不明」となっている。
第三者委員会が「いじめだけが原因とは断定できない」と結論づけたにしても、いじめがあったことは明らかであるなら、当然、いじめも原因のひとつとしてあがっていてよいはずだ。
いじめ自殺7年連続0だった過去の反省から、2006年度からは、原因は複数回答できるようになったのだから。
文科省の「自殺した生徒が置かれていた状況」のところには、「当該項目は、自殺した児童生徒が置かれていた状況について,自殺の理由に関係なく,学校が事実として把握しているもの以外でも,保護者や他の児童生徒等の情報があれば,該当する項目を全て選択するものとして調査。」とある。明子さんのご両親は「いじめが原因である」と訴えている。学校も、調査委員会も、いじめがあったことは認めている。これでは、原因と思われるものをひとつしか選択できなかった2006年以前と変わらない。
(なお、警察庁の数字は遺書などを中心としてしていること、自殺直後しか調査しないことを考えると、実際の原因を反映していなくともある程度仕方がないと思われる)

これは他の遺族にも言える。
おそらく、自殺遺族たちは、自分の子どもの死が、文部科学省にどのように報告されたのか、統計上、どのように処理されたのかも知らないだろう。

文部科学省は、平成23年6月1日付け、23初児生第8号「児童生徒の自殺等に関する実態調査について(依頼)」のなかで、「正確なデータをより多く収集し、分析することを通じて、児童生徒の自殺について全体的な傾向を把握することにより、自殺予防対策を充実させることを目的とする」として、家庭の細かい事情にまで踏み込んだ調査の依頼をしている。
しかし、そのなかで、「調査票の取扱いについての配慮事項」として、「提出を受けた調査票が一般に公開されることになると、秘匿性の高い個人情報を含む調査票の性質上、学校及び教育委員会等の実施の協力が得られなくなるなど正確な情報が得られない可能性が高くなり。全国的な状況を把握できなくなるなど調査の適正な遂行に支障を来すおそれがあると考えられるため、行政機関が保有する情報の公開に関する法律第5条第6号の指定を根拠として、同法における不開示情報として取り扱うこととする。」「また、提出を受けた調査票について、行政文書の開示請求があった場合、文書が存在する旨を回答すると、その提出時期等から個別の事案に関する調査票の提出が判明する可能性があり、その結果、学校及び教育委員会等の実施の協力が得られなくなるなど正確な情報が得られない可能性が高くなり、全国的な状況を把握できなくなるなど調査の適正な遂行に支障を来すおそれがあるため、行政機関の保有する情報に関する法律第8条の規定を根拠として、文書の存在を応えずに開示を拒否することとする」とある。(これは裁判で、作文やアンケートの開示が争われたときに、必ず行政が持ち出す常套句

情報公開法は、情報を公開することが原則であるにも関わらず、各自治体の判断に委ねることもせずに、最初から法律を前面に押し出して、非公開を決定している。
しかも、個人情報保護法の目的のひとつは、自己の情報が正しく扱われているか、正確さを確保することでもある。

「正確な情報の収集」を目指すと言いながら、いちぱん身近にその子どもの情報をもっているはずの家族が、内容をチェックすることができない。かつ、家庭的背景では、保護者の離婚、保護者との不和、兄弟姉妹間の不和、保護者の亡、他の家族の死亡、経済的困難、虐待の疑い、保護者の素行不良。個人的背景では。身体の病気(風邪、麻疹、虫垂炎で入院)、慢性疾患、身体のけが、精神科治療歴、独特の性格無以降、喪失体験、災害等に遭う、などを選択チェックすることになっている。

警察でもない学校教師に、これらの報告をさせることも問題だと思う。そして、遺族が許諾するとも思えない。これをこっそり情報として挙げられれば、どういう結論になるかは、明らかだろう。
教師は学校問題にはほとんど丸をつけず、家庭問題をあることないこと、自殺との関係が全く考えられないと思うものにも丸をつけるだろう。文科省が最初から、遺族には知られないと保証しているのだからこそ、正しい内容ではなく、平気でうそが書ける。

こんなでたらめな調査が、自殺防止に役立つはずがない。むしろ、自殺調査は警察か厚生労働省にでも任せて、学校、遺族ともに協力すると決めたほうがずっと本当の数字があがるだろう。あるいは、一番身近な遺族に、自殺と思われる原因を複数挙げてもらえばよい。それを学校調査と比べれば、非常に大きな差があるだろう。

NPO法人ジェントルハートプロジェクトでは、文部科学省に一部の自治体で体罰に関して行われているように、遺族の意見欄を設けてほしいと要望しているが、文部科学省には権限がないとして、通知という形での提案さえしてもらえない。

原発事故がなぜ起きたのか、実際に自らの命が危険にさらされるまで、安全神話がまかり通っていたのはなぜか。考えてほしい。正しい情報がなければ、次の命を危険にさらす。
学校安全神話をまだ信じますか?NPOや被害者団体の言うことより、文科省が言っていることは信じられると思いますか?
(文科省は、中学校での武道必修化について、柔道の死亡事故のほとんどは部活動で起きていることで、授業ではないので大丈夫、安全であると、計画通り実施されます)

昨年の同調査については me101112 参照。


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