わたしの雑記帳

2007/9/15 保育園児・榎本侑人くん(4)熱中症死亡事件裁判の傍聴報告


2007年9月12日(水)、さいたま地裁504号法廷にて、榎本侑人くん(4)保育所内熱中症死事件(事件概要についてはme070527 陳述書 参照)の口頭弁論が行われた。
前回は用事と重なって傍聴できなかったので、今回が第3回。

1回目、2回目と105号法廷という大きな法廷だったが、今回は18席しかない小さな部屋だった。
そのため、1時15分開廷の約30分前である12時40分に傍聴券の配布が行われた。
私は、赤羽根で列車を乗り間違え、特急電車で浦和を通り越して大宮まで行ってしまって、戻ってきたこともあって、列の一番最後。札は17番だった。記者席や親族席を除いて、抽選の傍聴席は約14席くらいだったと思う。
傍聴券はコンピューターによる抽選。いつもくじ運の悪い私は、またまた選にもれてしまった。
しかし、くじ運は悪いけれど、ひと運がとてもよい私。今回も、目の前に並んでいた女性の方が、「私は原告の知り合いなので、よかったら傍聴券をお譲りしましょうか」と言ってくださって、しっかりとご好意に甘えてしまった。

何人も傍聴できない人たちがいた。
書類のやりとり段階なので、時間は短かった。傍聴後の弁護士さんの説明では、榎本さんの主張に対して、被告の上尾市が回答していない部分があったので、改めて求釈明(説明を求める)を行ったという。
岩田眞裁判長は、原告側に今後も法廷でのやりとりを行うかと問うた。
原告弁護団は、証拠提出の照合などの準備段階では、法廷でなくともけっこうですと答えて、次回からしばらくは非公開でやりとりが続けられることになった。

原告代理人の寺町東子弁護士が、書類のやりとりのときはやむをえないとしても、今回も傍聴できないひとが何人もいたので、証人尋問が始まったら、ぜひ大きな法廷でお願いしたいと言った。しかし、岩田裁判長は、「基本的にこの法廷で行うことになっているので」と証人尋問がはじまっても504号法廷で行うと言った。

大きな法廷がふさがっているときはやむをえないにしても、このような裁判長の受け答えははじめて聞いた。
多くの裁判で、裁判長は傍聴人を意識して、入れないひとがいる場合には、大きな法廷をとりましょうかと言ってくれることが多い。千葉地裁の浦安女児のわいせつ事件の裁判では、仮庁舎ということもあるかもしれないが、入りきれない傍聴人のために、わざわざ控え室から長いすを毎回、職員の方が運びこんでくれる。ふつうなら入れない、法廷の囲いの中にさえ、傍聴人を入れてくれた。
このさいたま地裁でも、たしか大野悟くんいじめ自死の裁判のときには、ふつうだったら「立っての傍聴はできないので、法廷から出るように」と注意されるところを、小さな法廷で、立ったままの傍聴を許可してもらったこともあった。
まして、これから一般市民も裁判に参加させようというときに、随分とそっけない対応だと思う。
裁判長の感性として、この裁判の先行きにも若干の不安を感じた。(大野悟くんの裁判、桶川ストーカー事件の猪野詩織さんの裁判ともに、さいたま地裁で、ひどい判決が下ってしまったことに起因しているかもしれないが)

さいたま地裁では、傍聴人の待ち室や裁判後の弁護士が傍聴人に説明するときに使える部屋もない。場所によっては、建物内で説明を受けているだけで、集会は禁じられていると注意されることもあるので、まだ、集まって話を聞いていても注意されないだけましかもしれないが。

弁護団からの説明によると、被告の上尾市側の主張がいまひとつはっきりしていないという。事故の予見可能性を否定して何もしなくても「責任はない」と言っているのか、やることはやったのだから「責任はない」と言っているのか。
侑人くんのお父さんは言った。「上尾市はことの重大さをいまだに認識していないのではないかと感じる」「刑事罰が、罰金刑だったったから、略式だったか大したことはないと思っているのではないか。だから、こちらの主張に対して、いろいろ言い返してくる」と怒りを表した。
事件前から、担任に「子ども同士でトラブルがあるから、ちゃんと子どもを見てほしい」とお願いしたのに、担任は「ちゃんとやっているじゃないか」とそのときも反論してきたという。適切であるかどうか、評価も判断もせずに。
あれだけ心配して、何度もお願いしていたのに、結果は最悪の事態を迎えてしまった。普通であれば、どんな言いわけもありえないはずなのに、子どもが亡くなってもまだ、同じことを繰り返している。

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今年、7月27日、北九州市小倉北区の無認可保育園「中井保育園」で、園外保育から戻った園児らが車を降りる際、同乗した職員らが人数確認を怠り、浜崎暖人(はると)ちゃん(2)が3時間以上放置され、熱射病症状で死亡した事件があった。当時の車内温度は50度近くになっていた可能性が高いという。
その後の小倉北署の調べでは、車が保育園に到着して以降のおやつ提供やおむつ交換の際にも、職員が暖人ちゃんがいるかを確認していなかったことや、暖人ちゃん発見後も直ちに119番せず、30分以上、車のエアコンをかけるなどして処置していたことが分かっている。

榎本侑人くんの事件が起きたのは、2005年8月10日。それから2年。ご両親は裁判まで起こしているのだから、いくら地域が離れていると言っても、知ることができたのではないか。侑人くんの死は教訓にならなかったのかと思うと残念でならない。
寺町東子弁護士に、北九州の事件による影響は何かあるかと尋ねてみたが、とくにはないという。そのことについての問い合わせもないという。

車内などに子どもが放置されて、熱中症で死亡する事件は各地で頻繁に起きている。エアコンをつけていても、寝ていた子どもが起きだして、いろいろ触っているうちに止まってしまったり、日陰になっているから大丈夫だろうと短時間だけ車で寝かせておくつもりが、ついパチンコに夢中になっているうちに、日向になり、熱中症で亡くなった例などなど。季節も真夏とは限らない。狭い車内はすぐに温度があがる。
熱中症、水の事故、交通事故、誘拐。子どもはほんの数十分目を離しただけで、どんな危険に遭遇するかわからない。「子どもがたくさんいて」というのは、保育園、幼稚園などでは言い訳にはならない。その人数の子どもを預かることは、自分たちで決めて、最初からわかりきっていることなのだから。



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