『南京大虐殺特別号』の刊行

−−「アジアにおける第二次世界大戦の
歴史を保存する世界連盟」の活動−−

野崎与志子


「アジアにおける第二次世界大戦の歴史を保存する世界連盟」というと、 とても仰々しく聞こえますが、この組織は、 主に中国および中国系の人々によって、 現在世界各地で草の根運動の形でとりくまれている、 日中戦争によってもたらされた被害の歴史を記録する会の連合・連絡機関です。 「世界連盟」という英語、 Global Alliance(グローバル アライアンス)の最初の二文字をとって、 GA(ジーエイ)と呼んでいます。

友人のタム(譚汝謙)さんは、GAニュースレターの編集長です。 タムさんは、ミネソタ州のマカレスター大学の教授です。 タムさんを知ったのは、私と連れ合いの井口博充が、 合州国で(私はウィスコンシン州立大学マジソン校に留学中) 家永教科書裁判支援活動をしていたおりに、Eメールでの呼びかけに、 彼が応えてくれたことにはじまります。 今にして思うと、カリフォルニアの中国系アメリカ人のごく普通の人々から、 最高裁判事あて家永支援レターがたくさん届いたのは、 タムさんとGAのおかげだったようです。 その時はGAのことは知らなかったので、 どうしてこんなに普通の人たちからレターが届くのかと少し不思議でした (合州国での教科書裁判支援は知識人や学者が中心だった)。 後で聞いたところでは、 カナダではGAが中心となって数万のレターを集めたそうです。

その後、学会でタムさんと会い、 GAが南京大虐殺60周年にあたって刊行した記念特集号を、 多くの日本人に知ってもらうことができないものか、と相談をうけました。 で「ノーモア南京の会」に連絡しました。 なぜ、「ノーモア南京の会」のことを知っていたのかは思い出せないのですが、 田中宏さんとは、 私も井口も会ったことがあり(井口は指紋押捺拒否運動の関係で、 私は名古屋大学での講義で)、電話をかけたときはなつかしく感じました。 (もちろん、田中宏さんの方は、覚えておいでではなかったと思います。)

さて、本題の『南京大虐殺特別号』ですが、この本は、 GAニュースレターの特別号で、英語、中国語、 日本語の三か国語で書かれています。 GAには「平和と和解を実現するための純粋な友好を築きたい人」 なら誰でも参加でき、 ニュースレターは世界中にちらばる「連盟の会員の意思疎通を深めること」 を目的としています。 というわけで、 バイリンガルならぬトリリンガルのコミュニケーションをはかっています。 これからの平和運動や市民運動で、 ナショナリズムの壁を打ち破ることは非常に重要だと思います。 その一歩として、多言語での活動はますます必要になるでしょう。

私は中国語は読めませんが、題名の日本語訳と本文の漢字から、中国語の記事が、 中国軍事法廷の判決を含め、多岐にわたるものであることが分かります。 いつかは中国語が読めるようになりたい、という気持ちになりました。 英語の記事の一つは、会員のアイリス・チャンさんによるものです。 日本語では、東史郎さんや尾山宏さんが寄稿しています。 また、各地で催された南京大虐殺記念活動なども報告されています。 一つ一つが、社会正義と平和を訴える「声」であると同時に、 貴重な「歴史の記録」です。

GAは今秋カナダのトロントで総会を開く予定です。 興味の有る方、ニュースレターを購読されたい方、記事を寄稿されたい方は、 下記に連絡してください。 ノーモア南京の会ニュースとGAニュースレターで、 お互いの記事を掲載しあうなどの交流をしていくのはどうでしょうか。

Prof. Yue-Him Tam, Chief Editor GA Newsletter
1600 Grand Ave., St. Paul, MN 55105, USA / Fax: 612-552-7028

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