NCC Networking News



CONTENTS[101] 2000/ 9/ 19

・中国へ派遣された日本語語学教師の活動を覚えて

・「近くて遠い国?(青島での4年間)」 清水新二郎

・「最近の靖国状況と私たちの反対運動」 NCC靖国神社問題委員会委員長 森山つとむ

・NCC情報掲示板





中国へ派遣された日本語語学教師の活動を覚えて

 中国で日本語を教えていらっしゃる方々とその働きをご紹介します。

 日本キリスト教協議会(NCC)では、1983年に第1回訪中団を送り、翌年、1984年に第1回中国キリスト教協会(CCC)訪日団を迎えました。この相互訪問を機に、NCCは、日本の教会の戦争責任を告白し、共に世界の平和と両国の人々の福祉のために手を取り合って力を尽くすことを約束しました。そして、その内実を深めるべく、1987年以降、NCCでは具体的な中国への協力交流活動として、中国愛徳基金会を通して日本語教師の派遣を行っています。
 2000年7月に次の3名の方々を中国に派遣しました。また、現在このほか に、2名の方が昨年7月より活躍なさっています。


 <2000年7月派遣>
 ●嶺 尚(みねひさし)さん  日本基督教団関東教区巡回教師
  派遣先 湖南省 長沙大学
  支援会 「嶺教師の中国における活動を支える会」
  〒345-1155 埼玉県北埼玉郡大利根町277 光の子どもの家気付
  TEL.0480-72-3883

 ●堀江咲夫(ほりえさきお)さん  日本聖公会八王子復活教会信徒
  派遣先 江西省 南昌大学
  支援会 「イサク堀江咲夫兄中国派遣後援会」
  〒229-0026 神奈川県相模原市陽光台4-5-6
  TEL.042-755-1892

 ●加藤 実(かとうみのる)さん  日本基督教団教師
  派遣先 江南省 南京師範大学金陵女子学院
  支援会 「再び中国で働く加藤実牧師・鈴さんと共に歩む会」
  〒214-0037 神奈川県川崎市多摩区西生田4-9-9 禿 準一様方
  TEL.044-955-2923 FAX.044-955-2925


 長らく弘前学院で教務教師として働いていらした嶺さんは、弘前学院に留学してきた生徒や、外国人英語教員に日本語や日本文化について教える機会が多くありました。その経験は関東教区にこられ、巡回牧師になられてからも地域の日本語教室のボランティア活動にいかされています。また、言葉を教えることにとどまらず、在日外国人の生活と権利を守る活動も続けてこられました。弘前時代に「花岡事件」に出会い、「中国人強制連行を考える会」のメンバーとして日本と中国のあるべき関係について考え、行動して来られました。
 堀江さんは、業務用AV、視聴覚システムの設計施工のプロ。日本語の他にこちらも十分に技術指導が出来きます。クラッシク音楽の趣味を持つ堀江さんは、自らも「東京インターナショナルシンガーズ」とアカペラ混声合唱団「城の音」の団員。楽しい交流が出来るのではないかと、報告が今から楽しみです。
 加藤実さんは、1996年9月から1999年7月まで、すでにNCC派遣の日本語教師として安黴省の合肥総合大学の専科で教えておられました。今度が2回目の派遣となります。中国語の堪能な加藤さんは、日本語教育の教科書づくりをしたり、この度は、1984年に南京市で実施された一斉調査とその後の調査による、日本軍による南京大虐殺の640編の証言を翻訳・出版されました。今年2月より一般書店でも購入することが出来るようになりましたので、一度是非お手にとってご覧ください。

  『この事実を』 「南京大虐殺」生存者証言集
  侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館 編/ 加藤 実 訳
  発売 株式会社星雲社 発行 株式会社ストーク
  定 価 2,000円 + 消費税
  (ご注文は最寄りの書店か(株)ストークへ直接ご注文下さい。
   TEL.047-384-7671/FAX.047-384-7880)

 今度加藤さんが赴任される金陵大学は、戦争中「難民区」とされたところだそうで、ここで当時9名の宣教師が働いており、その日記や手紙がイェール神学校の図書館に保存されていました。この資料を武漢師範大学の歴史の教授が中国語に翻訳し、南京大学出版社から昨年の10月に出版されたそうです。加藤さんはこれも翻訳したいとお考えのようです。
 上記3名の方々の活動について、後援会情報などは、ホームページでみなさまにお知らせしておりますので、是非アクセスしてみてください。
http://www.threeweb.ad.jp/logos/amity/

 <1999年7月派遣>
 ●栗原由華(くりはらゆか)さん 日本基督教団津教会信徒
  派遣先 南京外国語学校
  持ち前の若さとバイタリティーで楽しく生活なさっている様子を時々メールで送ってきてくださいます。今回派遣の3人のみなさまのオリエンテーションの準備等を愛徳基金会のスタッフと共にしてくださいました。

 ●富沢千代(とみざわちよ)さん 日本基督教団蒔田教会信徒
  派遣先 江西省南昌市 江西医学院
  支援会 「富沢千代姉と共に歩む会」
  〒232-0018  横浜市南区花之木町3-49 日キ教団 蒔田教会内
 友人の輪が少しづつ広がり、南昌大学の日本語教師宮崎愛子のお誘いによって江西医学院での授業の他に金曜日と日曜日の夜に南昌大学の「日本語コーナー」に参加しているそうです。この日本語コーナーとは南昌大学の日本語科の学生や他で日本語を学んでいる人たちが集まり対話を楽しむ時間だそうで、授業とは違った交流の場を楽しんでいる様子です。

 ◇派遣教師のみなさま、どうぞ、健康に留意して中国での生活をお楽しみください。
 ◇みなさまも毎日の祈りに覚えていただければ幸いです。
 ◇中国派遣日本語教師に興味を持たれた方は、担当幹事山本俊正までご連絡ください。
 (TEL.03-3203-0372)

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今年7月に4年間中国青島大学で教鞭を取ってこられた清水新二郎さんが帰国しました。清水さんにお願いして、中国での生活を振り返って報告を書いていただきました。


「近くて遠い国?(青島での4年間)」  清水新二郎


 1996年7月NCCJから派遣された日本語教師として、日本を離れ、中国に向かった。外国で生活するうえでの不安はあまりなく、期待ばかりが大きかった。外国で生活し、外国人と交流することで日本がもっとよく見えてくるのではないだろうかと期待していた。中国という国は、隣の国なのに、社会制度が日本と大きく異なっていて、その現実はよく見えて来ないということもあり、ずっと行ってみたいと思っていた。中国は私にとって「近くて遠い国」だった。
 私は、山東省青島の青島大学に派遣された。青島は中国では稀な海に面した中都市であり、海外からの投資などで、経済発展の目覚ましいところである。また、歴史的にはドイツが侵略をし、その後は日本が侵略をした場所であり、歴史に翻弄された場所でもある。
 私は青島大学の日本語科で教えることとなった。はじめは習慣の違いに戸惑ったが、それも慣れればなんでもなかった。
 仕事の面で、習慣の違いの具体例を挙げると、「報告・連絡・相談」が不充分で苦労した。時間割の変更や、授業内容の変更など、一度決めたことでもすぐに変わる。それも、連絡や話し合いが十分になされずに変わっていく。最初は腹が立ったが、ある時にふと気がついた。中国の人は小さいことを気にしないのである。どこでどう変わってもいいように準備(心の準備も)しておけばいいのだ。それに、相手も小さいことを気にしないということは、こちらが自由にやっていいということである。
 それからの私は、授業の内容をはじめとして、大いに自分のやりたいことをやるようにした。この国はそういうことに寛容なのだ。そうすると、とたんに楽しくなって来た。
 学生との交流は楽しかった。私は子供が一生懸命やるのを応援するのが好きだ。大学生もぎりぎり子供といえよう。彼らが苦しんでいるときに、ほら、頑張れ頑張れとハッパをかけ、彼らがまた頑張っていい結果を出した時ほどうれしいことはない。そんなことをやっているうち、気がついたら、もう一年が過ぎているという感じだった。
 さて、私が学生達と、また他の中国人達と交流して最も感じたことは、日本人も中国人も全く変わらないということだった。先ほど習慣の違いに苦労したといったが、人間としての根本的な部分、たとえば、「本能」や「感情」「心の動き」などは全く同じで(個人差はあるが)、ただ、表面に現れる部分、たとえば「行動」や「表現」が違うと思う。だから、外国人でも、心の交流ができれば、表面に現れる部分が違っても、それほど問題なく、心を許せるのである。逆に、表面の違いを気にしていては、いつまでも心の交流ができないといえる。
 簡単に言ってしまったが、表面の違いを気にしないことも結構骨が折れるだろう。ただ、若くて、柔軟性のあるうちは、また相手が文化基盤が似ているアジア系だったりすれば、割に容易にクリアーできると思う。
 私は学生達と日本語で交流すればよかったので、学生や先生方とは割と早く近い関係になれたと思う。しばらくして、中国語がわかるようになってきてから、日本語を話さない中国人ともだんだん近くなってくるのを感じた。これも裏を返せば、言葉の問題というのは大きいということになる。
 私は2年目の終わり頃に中国人である現在の妻と知り合い、1999年7月に結婚した。しばらくして、彼女は私に言った、「不思議です。今、あなたが外国人という感じがしません。」実は、私は結婚前からそう感じていた。国際結婚ではあるが、自分達は今、特別に「外国人」と結婚したという感じがない。それは、まず日常会話に不自由がなく、そして互いに心の「根本的」な部分が同じであると感じているからだと思う。私にとっても以前は「国際結婚」というのは他人事だったが、自分がそういう立場になってみると、特別驚くほどのことでもなかった。
 以上のことから考えると、よく外国人同士が仲良くなるのは難しいことのように言われるが、そうでもないのではないだろうか。文化、習慣の違い、「行動」「表現」の違いを気にするのではなく、偏見を捨てて、普通に、遠慮無く付き合うことがその近道ではないだろうか。今、日本人はその方向に行きつつあると思う。いい傾向だと思う。中国に留学している日本人留学生などを見ていると、国籍や文化の壁を、乗り越えるというよりは、感じなくなって来ているような気がする。
 しかし、まだ難題はある。たとえば日中間には歴史認識問題がある。せっかく人と人との交流が進んでも、国家間の歴史認識問題が解決に向かわない限り、交流の糸が切れてしまう危険性を含むことになる。なぜなら、この問題は、心の根本の、「感情」に根ざす問題だからである。これをクリアーしなければ、国と国レベルの交流は進展せず、また人と人との交流にも悪影響を与えると思う。
 私はNCCのこのプログラムのおかげで、今まで考えなかったようなこのような事柄に気がつくようになった。また、私には今、中国に妻の家族がおり、学生達がおり、また友人知人がいる。もう私にとって、中国は外国であって外国ではない。少なくとも「近くて遠い国」ではないのである。なんと愉快で、ありがたいことか。
 このような機会を与えてくださったNCCJには本当に感謝をしている。今中国にいらっしゃる方や、これから行かれる方もぜひいい体験をされることを祈っている。



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改憲の動きや、内閣閣僚の靖国神社公式参拝等、よく目を見開いて世情を見ていないと知らず、知らずに私たちはいつか来たあの道を歩むことになる。すでに、私たちは、新たな戦前を今生きている。NCCの靖国神社問題委員会委員長の森山つとむさんに「最近の靖国状況と私たちの反対運動」と題して文章を寄せていただいた。(編集)


「最近の靖国状況と私たちの反対運動」
 NCC靖国神社問題委員会委員長 森山つとむ

1.最近の靖国状況
 靖国問題が政治問題化して、30有余年も経つ。
 1967年から、自民党内において靖国神社法案の準備がなされ、その準備段階において宗教界を中心に非常な注目を浴びた。
 69年、靖国神社法案は国会に上程され、継続審議、廃案を繰り返し、ついに1974年に廃案となった。その後、靖国神社国家護持推進派は、首相、閣僚の靖国神社公式参拝実現をはかり、首相らは10年にわたって、靖国参拝を強行する。私は8月15日はもとより、春秋の靖国神社の例大祭に、参拝抗議の意思表示をするために、仲間とともに通いつづけたものである。鈴木元首相は公式参拝か私的参拝か、その公私は言わないと言明した。
 今年の8月15日、石原慎太郎東京都知事は靖国神社参拝を行ったが、「公人ということでしょうか」との質問に対して、「私人も公人もないだろう。そういう下らない仕分けをしない方がいいよ。」と答えている。真に重大な仕分けを下らない、と言い切る都知事の憲法無視の態度は絶対に赦されるべきものではない。1985年、靖国神社の定めた正式な参拝によらず、玉串料を出さず、宗教色をうすめた一礼方式ならば、憲法違反にはならないと言う詭弁としか言いようのない理屈によって、中曽根元首相は靖国神社公式参拝を強行した。私は中曽根内閣の官房長官と面会して、アジアの国は猛反発していますよ、といったら、彼は外務省に調べさせている、と答えたのをよく覚えている。すさまじい反発と怒りがアジア諸国から噴出した。あれ以来、今日まで、靖国問題は宙に浮いたままになっている。
 靖国神社当局と推進派の人々は、靖国神社法案や一礼方式によって、靖国神社の正しい伝統的な祭祀がゆがめられることに反発して、最近は国家護持を排して国民護持運動を展開している。昨年夏の、アジア諸国からの批判を交わすためのA級戦犯の祭神を、他の所に分祀するという野中官房長官(当時)のアイディアなどは、神社と推進派にとっては絶対に許されない発言なのである。しかし、国家護持でなく、国民護持といっても、国の代表が、国の象徴たる天皇が参拝してくれなければ、国のために戦死した「英霊」の慰霊顕彰にはならない。推進派の本音には、国家護持によって神社の実体が損なわれることなく、天皇・首相等が公式参拝することである。注目すべきことに、最近の靖国神社の宮司はこれまで国民護持を言ってきたのに、その態度を変えて、「将来は、私どもは国へお返ししたい」と言っていることである。この変化の意味するところは何か。宗教法人靖国神社を解散し、祭祀法人化して、宗教団体なら国が参拝行為をすれば違憲になるが、祭祀だけをする法人であれば、参拝しても違憲にならない。このように祭祀法人化すれば、靖国問題という難問を解決することができるのではないか。靖国神社法案廃案後、推進派の一部に、この構想が浮上したことがあった。

2.私たちの反対運動
 かつての国家神道時代、神社は宗教にあらず、というペテンがまかり通り、日本の教会も参拝は宗教的活動ではなく、国民、国家儀礼なのだから参拝してもよいと自らを説得し、自らをごまかして参拝をしてしまった。現人神(あらひとがみ)が創建し、お国のために天皇のために戦死したとされる靖国の祭神(「英霊」)を祭る靖国神社は、たとえ祭祀法人になっても、れっきとした宗教団体に他ならない。仮に祭祀法人になっても私たちは、神社は宗教にあらずはペテンだと言い続け、国民儀礼という名の参拝を拒否するべきである。反対運動は、この点を特に留意しなくてはならない
 昨年は異常に長い国会において、周辺事態法等新ガイドライン関連法、日の丸・君が代の法制化、いわゆる盗聴法など次々と成立し、日本は戦争放棄の「平和」憲法を骨抜きにし、戦争のできる国へと変質させてしまった。アジア・太平洋地域における周辺事態発生に際しては、自衛隊は米軍とともに出動する。戦没者が出る。まさに靖国が政府にとって緊急課題・大問題なのだ。
 現在、私たちは、靖国神社法の制定に反対する請願書提出運動を続けている。いかなる形であってもかつての靖国神社法案のような法律を制定しないことを請願内容としている。石原都知事の参拝に関して違憲訴訟提訴がなされる可能性がある。即位の礼・大嘗祭違憲訴訟は高裁で弁論が進められている。平和遺族会や月例デモがある。反対運動にご参加を!

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[NCC情報掲示板]

◎NCC教育部より
今年の教育週間資料を全国発送しました。みなさんの教会には届いているでしょうか?
お申し込み、お問い合わせは、TEL.03-3203-0731までお願いいたします。

◎CCA−YOUTH出版の−アジアの視点で聖書を読む−『アウトカーストとしてのイエス』−アジアの教会における宣教の再定義協議会(1998.8.14〜21 於・台湾)が、日本語で読めます!!
日本聖公会全国青年ネットワ−ク、青年ボランティアの皆さんが学習しながら翻訳しました。1冊400円でお分けしています。NCC小泉までご連絡下さい。

◎火山噴火で全島民が避難した三宅島へ救援金を送りたいと思っても、どうすればよいか迷っている方々へ。 日本基督教団が募金を始めました。集めたお金は次のような目的のために使われます。
   ・日本基督教団三宅島伝道所の皆さんのために
   ・救援ボランティア活動のために
   ・三宅島役場を通して島民の方々へ
送金先等、くわしくは日本基督教団社会委員会へお問い合わせ下さい。(TEL.03-3202-0546)

◎NCCの部落差別問題委員会は、このほど、新版『いばらの冠』を刊行しました。  B5版・並製・192頁・税込みで1冊1,000円で販売しています。日キ販を通して販売しますので、みなさんの最寄りの書店でも購入できます。また、NCCへの直接のご注文も頂いております。20冊以上お求めの方には、送料NCC負担で1冊税込み800円でお分け致しております。同封いたしました本の紹介のチラシに注文書がついております。ご注文をお待ち致しております



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