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死の影の谷間から
<死の影の谷間から>
ムミア・アブ=ジャマール/著
今井恭平/訳
現代人文社/刊
これまでの情報ログ

ジョーンズ証人を公判廷の場で別件逮捕


2時間半にわたる反対尋問

 10月1日、14年ぶりに証言に立ったジョーンズ証人は、1982年の裁判で、フォークナー巡査が撃たれた直後に、犯行現場から2人の黒人男性が逃げ去るのを見たことを否定したのは、警察による脅迫と取引の強要によるものであったことを証言した。(ジョーンズさんの新たな証言内容の詳細は、ここをクリックして下さい。)  検察側は、2時間半にわたって、反対尋問を行った。この尋問は、もと売春婦であったジョーンズさんの経歴を事細かにほじくり返して、証人が信用のおけない人物である、と印象づけようとする意図があからさまなものであった。

 検察は、ジョーンズさんが、昨年7〜8月にフィラデルフィアで行われたムミア再審のヒヤリングに出廷しなかったことをとりあげ、弁護側は彼女を昨年出廷させられなかったのだから、今更再度証人として採用する必要はない、と主張した。

 ジョーンズさんは、当時アルコール依存症で、治療に専念していたため、ムミアの再審のニュースを知らず、名乗り出ることができなかった、と証言した。また、弁護団は、検察側が一貫して証人の居所を明かさず、弁護団が探し出すことも妨害し続け、さらに昨年夏の公判でも明らかになったように、ムミアに有利な証言をしようとする証人は、嫌がらせや脅迫を受けていることを指摘して反論した。

 検察は、ジョーンズさんが過去において福祉給付金を不正に受け取ったことがある、と述べた。これについては、ジョーンズさんの弁護士Jordan Yeagerが抗議し、すでにその件は容疑が薄弱であるとして、起訴もされておらず、無関係な事件を蒸し返すのは不当である、と抗議した。

突然、別件逮捕を宣言

 こうしたやりとりの後、地方検事補のArlene Fisk(女性)が、突然ジョーンズ証人には逮捕状が出ている、と言い出した。検事補によれば、ジョーンズさんは、4年前の1992年に、ニュージャージーの酒屋で、200ドル余りの買い物をした際に小切手を使ったが、銀行の残高が足りなかったため、小切手不正使用の容疑で、1994年に逮捕状が出ており、彼女はその後逃走し続けていたので、今逮捕する、というもの。
 セイボ判事は、検察のこの言い分を受け入れ、証言台から彼女を逮捕させ、勾留を認めた。
 当然、弁護側は激しく抗議したが、判事はいっさい受け入れず、この日の公判を強引に終了させた。
 ムミアの弁護団、ジョーンズさんの弁護士は、このあと抗議の記者会見を行った。また、法廷の内外にいたムミア支援者からも、激しい怒りの声が、あげられた。

 Fisk地方検事補は、「弁護側は、口を開けば証人脅迫だと言うが、私は自分の職務を果たしただけだし、証人を公判廷で逮捕したのも、初めてのことではない」と述べた。  100歩ゆずって、ジョーンズさんが逮捕される容疑があったのだとしても、なぜ彼女がムミアの裁判で証言台に立ったときに、逮捕する必要があったのか?検察は、弁護側が昨年夏の公判に、ジョーンズさんを見つけて連れて来れなかったことを非難しているが、それなら検察は、2年前に逮捕状が出ていたジョーンズさんを、なぜ今まで逮捕できなかったのか、どう説明するのだろうか?

 また、ジョーンズさんの容疑そのものは、検察の言い分を100%正しいと仮定しても、とるに足らない微罪であり、証人脅迫の別件逮捕であることは、火を見るよりも明らかと言わざるを得ない。

 われわれに最初に入ってきた情報では、セイボ判事は法廷内に州兵を導入した、と言われていたが、その後入ってくる情報では州兵に触れたものはないので、未確認である。

 なお、ジョーンズさんは、多くの人からの保釈金カンパがただちに寄せられ、翌朝保釈された。しかし、弁護士によれば、保釈金1万ドルは、容疑の軽さからすると、異例に高いものだという。

ジョーンズさん逮捕に関するAP電