森づくりフォーラム活動報告・0112
第4回グリーンカレッジ 「グリーンカレッジ
in 小国町」
◆主催 (社)国土緑化推進機構 ◆企画運営 NPO法人森づくりフォーラム ◆実施日 2001年11月1日(木)〜5日(月) 4泊5日 ◆実施場所 熊本県小国町(研修場所/学びやの里・木魂館)
報告 坂井武志
トライアルを含めて、全6回の事業の最終回となる「第4回グリーン・カレッジ」が大分県との県境に近い熊本県小国町で開講した。本会が企画運営をした過去4回の問題点を可能な限り改善し、タイムスケジュールも前倒しをして、夕食後の講座は止めることにした。
また、受講生とスタッフという異なる立場で参加することによって、コーディネーターやリーダーの役目を実感出来るのではと考え、グリーン・カレッジの卒業生から3人の方に運営スタッフとしてお願いした。
開講に当たり、小国町役場方々、地元のみなさん、講師の方々、スタッフのみなさん、ご協力ありがとうございました。心からお礼申し上げます。
■研修内容
講義1 「ボランティア活動とリーダーの役割」
杉浦嘉雄(日本文理大学教授)
ボランティア活動は、多岐多様で10人いれば10通りのボランティア感がある。参加者同士が、互いの考え方や経験を共有することが大切。よきリーダーとは、よきプランナー。よきプランナーとは、よきコーディネーターであり、よきファシリテーターである。
講義2 「森林環境教育プログラムデザイン技術」
山口久臣(野外教育研究所IOE所長)
プログラムデザインとは、明確な目的をもって、その目的達成のための活動を組み合わせることである。
講義3「林業とボランティアの関わり」
田島信太郎(田島山業椛纒\取締役)
ボランティアを受け入れて10年の経験から、ボランティアの体系的なトレーニングする機関の必要を痛感している。
講義4「フィールドワーク学(地域学)」
竹田純一(里地ネットワーク事務局長)
単に森林だけを見るのではなく、地域全体を複合的に見ることが必要。よそ者の目で地域を見ることによって、地域興しに結びつく資源が見えてくる。
講義5「市民参加の森づくり」
重松敏則(九州芸術工科大学教授)
多様化してきた森づくりに、「どんな森をつくりたいのか」「何のために森づくりをするのか」ということを明確にして、森に対するアプローチや管理手法、市民、行政、企業それぞれの役割を整理することが大切である。
講義6「活動の企画運営の考え方」
藁谷豊(ワークショップ・ミュー代表)
企画とは、自分の思いを形にすることである。社会動向や人の気持ちを知るとともに、フィールド資源の強みと弱みを知った上で、ねらいをしっかり決めること。共感の得られない企画、独り善がりの企画は失敗につながる。
以上の研修内容で実施した。全5回を同様な内容で実施してきたが、開講場所、受講者の顔ぶれ等の条件で、満足感の落差に一喜一憂してきた。
研修生の意識、経験、年齢等の違いによって、求めているものが異なるのは当然なことはいえ、そのギャップが大きすぎると研修が成立しない。企画運営の立場として、募集のあり方、目的に集約されたプログラムデザインを再考する必要を感じている。
【参加者からの感想】
◆「ひろしま人と樹の会」 竹岡宏美
どんな人たちが集まるんだろう、と期待と不安が入り交じった気持ちで研修会場へ。女性の研修生は4人と少なめでしたが、素敵な女性スタッフの方々がいたので、とても安心しました。開講式の後行われたアイスブレイクのおかげで、初めて会ってからたった数時間でも、打ち解けて話すことができました。
2日目の午前中は、リーダーに必要な様々な能力についての講義でした。リーダーに必要なものはとても多く、それを1人でこなすことは難しいので、自分のできる所から始めれば良いとのこと。私は、スペシャリストでもなく、企画力や人の意見を引き出せるような力もないけれど、インタープリター(感動・物語を伝える人=自然の通訳)なら、なれるかもしれないと思いました。午後は、野外でのネイチャープログラム体験。様々な種類のアクテビティを体験でき、自然の物の見方というのは人それぞれで違う事を改めて実感できました。5時からは森林ボランティアを10年間受け入れている林業家の方の講義。山村、林業界が閉鎖的・保守的であること、森林ボランティアを受け入れると作業が非効率になることなどから、森林ボランティアでは森林は守れないとの結論。しかし生業として成り立っていない林業だけでも守れない。森林ボランティアにトレーニングを受けてもらって役に立てるようになってもらわないと困るというお話。全くその通りだなと感じると同時に、県の林業職員、森林ボランティアという二つの視点から、自分に何ができるか考えていかなくてはいけないと思いました。
3日目は、フィールドワーク学の講義と現地調査。初めて聞いた学問で、いきなり実践ということで戸惑いつつも、参加できて本当に良かったです。地域の人との対話を通してその地域の事を知っていく。たった1日の体験でしたが、頂いた資料を読み返しながら、今後の活動で活かせるような気がしました。
4日目は、3日間のふりかえりから始まりました。今回の研修では、体験だけで終わらせず、ふりかえる習慣をつける事でより深く考えることができるようになった気がします。今までは、やりっぱなしという感じでふりかえるという事に慣れていなかったので、3日間を振り返るのに1時間はとても短かく感じました。午後は、活動の企画運営の考え方についての講義と企画づくり。自分で企画を作ったことがなかったので、考え方について教わる事ができて良かったです。森林を守りたいという思いは同じ者同士でも、それをかたちにする過程で人それぞれ異なってくることが分かり、合意形成の大変さを知りました。
最終日は、企画づくりの発表と閉講式。5日間を振り返ると、講義や実習も勉強になったのですが、食事時や夜の交流会で色々な方の活動についてのお話を聞けた事が印象に残っています。既にリーダー的な役割を担っている方が多く、そういった人達とつながりを持てたのが幸せなことだと思います。このグリーンカレッジを主催、企画、運営して下さった皆様、勉強するのにとても良い環境を提供して下さった小国町の皆様、本当にありがとうございました。これから活動を続けていく中で、研修で学んだ事をできるところから実践していきたいと思います。
◆「森林自由クラブ」 瀬古文男
私は森林ボランティアグループを編成して2年になりますが、継続的なメンバー、フィールド、資金の確保等々、手探りで孤軍奮闘、試行錯誤の連続でした。そんな矢先に第4回グリーンカレッジの応募があり、幸い参加をさせて戴きました。
参加者は、それぞれ、キャリア、環境、活動目的、活動内容は多少異なっていてもボランティア活動を展開する上での多面にわたるリーダーシップ発揮の苦楽は共通課題でした。その点、今回の研修のねらいは的確で、多くのお世話を受け、有意義な5日間でした。その感謝のこころをもって感想報告をさせて戴きます。
日本は全国的に緑多き国であり、木を植え森林を育てる文化を持っています。ただ、人間の文化風土は歴史の中で時間をかけて熟成されてきたものであり、地域によってはかなり視点と方策風土を異にしています。小国町小藪地区への訪問(フィールドワーク)をしましたが、事前の根回しがよろしく、スムーズな調査ができ、得るものも沢山ありました。小生は、都会から山里に移動し、身を置いて山里の人達と密着して生活をしていますが、信頼関係を築くのは容易ではありません。山里の人と一体となって行動することへの大変さと素晴らしさが実感できた今日この頃ですが、小国町は総合面で一歩も二歩も進んでいることが体感でき、よい刺激になりました。また、参加者の様々な発想から視点を変えると世界も変わることも発見できました。
全国で展開されている山里の原風景を取り戻そうとする森林自然保全活動は、人の喜びがあり、生き甲斐も生まれるすばらしい活動とあらためてこころより思いました。
リーダーシップは、ボランティアに参加する人全てに必要なものですが、グループを主宰するリーダーは、特に明確なビジョンとプログラムと人の育成マネジメントが格別必要と思われます。そうした意味からは、もう少し突っ込んだグループリーダーの活動事例(成功、失敗例)を取り上げて戴ければ尚良かったと思います。
運営面ではスタッフの人達の献身的なヘッドワーク、フットワークよろしく、お陰で楽々と研修が受けられました。しかし、リーダー研鑽の場としては、お客様過ぎていささか贅沢な物足りなさを感じました。総じて言えば、転換期としての今後の森林ボランティア活動に大きな智恵とパワーを賜ったことは間違いないことです。ありがとうございました。
◆「熊本県みどり推進室」 続 健一
今回の研修会はボランティアリーダーの養成・育成を進めていく上で、必要なノウハウを修得するために、この研修会に応募し参加させてもらった。
特に各都府県から参加されていた方達は、それぞれの団体でリーダーとして積極的に活動されている方達で、これらの人たちと様々な意見交換・情報交換が行えたことは大変有意義であった。
「共通の意識作り」では、アイスブレイク(お互い初対面同士である緊張を解きほぐすための自己紹介などを兼ねたアクティビティ)から始まり、今回の研修会が何のために行われるのか、なぜこの研修会に参加したのかを、お互いに議論しあい目的の共有化を図った。
「ボランティア活動とリーダーの役割」では、講師が自らの体験談を語り、ボランティアリーダーにとって必要ものは一体何であるかを学ばせてもらった。
併せて、「ボランティアリーダー育成者はトレーナーとして自覚を持つことが重要である。」と説かれた。
本県では、「森林は社会全体で支えていく。」という県民意識を醸成するために、森林の応援団を増やすために様々な施策を講じており、その一つとして森林ボランティアの推進も例外ではない。森林ボランティア活動を行うために、平成9年度から「みどりのボランティア登録者」(登録者246名<H13.4.30現在>)を募っている。
本県では民間の森林ボランティア団体が十分に育っているとはいえず、自治体が主導となって、みどりのボランティア登録者の中から参加者を募り活動を行っているが、これからは団体主導・民間主導へと少しずつ移行していくのが必要と考える。
そのための手段として県内各地に「リーダー」を養成・育成しなけらばならない。
この研修で得たことを、仕掛け人(行政)の立場から今後のリーダー養成・育成のカリキュラムに生かしていきたい。
【スタッフからの感想】
◆福岡市油山自然観察の森「森を育てる会」 森 順子
今回の研修に対する受講者の感想で私が最も印象深かったのは「我々は生徒なのか?」という問い掛けでした。残念ながらその真意を詳しく聞く時間はありませんでしたが、私は、今回の研修の企画・運営の課題を考える上で重要なキーワードだったように感じています。それは、ボランティア団体が、ボランティアの人材育成研修を組む難しさと意義を語るものだと思っています。
グリーン・カレッジの目的は「緑のボランティア文化社会」に資する人材の育成にありますが、それに適った、明確な手本が存在するわけではありません。むしろ、グリーン・カレッジの受講者には、先駆的な活動の実践者も少なくないわけですから、様々な手本は受講者の中にあるのかもしれません。ただ、日々の活動ではスケジュールを消化することで手一杯になり、リーダーとしての自己を見つめたり、自分たちの活動を客観的に検証することはなかなかありません。ですから、これからのグリーン・カレッジでは、リーダーどうしで、活動を見つめ直し、課題を見つけ、答えを探し合う、互いに啓発し合うようなプログラムづくりが必要なのかもしれません。
もちろん、森林ボランティアの抱える共通の課題に対して、一つの方向性(シーズ)が打ち出せるのは、森林ボランティア団体のネットワーク組織である、森づくりフォーラムならでは果せる役割のように思います。
批評は簡単ですね。では、自分達の活動を検証するプログラムとは具体的にどういうものか、共通の課題とは何で、その答えは何なのか‥‥。私は答えを持っていないのです。ただ研修に参加して感じたことは、受講者も企画運営者も互いが謙虚に学び、ともに作り上げていく、互いが教師として、同時に生徒として学び合うという姿勢の大切さだったように思います。
ところで、私はグリーン・カレッジがプレ企画として1999年に埼玉県飯能市で行なわれた、最初の研修に受講生として参加し、今回の小国の研修ではスタッフとして、運営のお手伝いをしました。今回の研修では、他団体で活躍されている有能なメンバーが、同じスタッフとして参加されていましたが、プログラム全体を見る視点や、段取りの手順、細かな配慮、ファシリテーションの技術、熱意やエネルギーなど、多岐に渡って様々な事を教えられました。それらは、日頃、自分のフィールドで行なっている活動の中では、気づいていなかった視点で、貴重な体験学習となったわけです。今回の研修で、私のリーダーとしての資質が向上したかどうかは別問題として、リーダー養成として最も効果的な方法は、様々なリーダー達の姿に学ぶことで、そういう機会の重要さを強く認識しました。
◆「もりメイト倶楽部Hiroshima」 山本恵由美
私にとってグリーンカレッジは、2回のトライヤル後に正式に行なわれた第1回の受講生として選任された誇りと、新しいボランティアの領域である森林保全グループのリーダーとして明日を築く責任と志を持って参加しました。しかし同時に、5日間という日程のなかでしっかり熟知して帰ることができるのかというプレッシャーもあり、日々暗中模索しながら会の運営に勤しむ自分にとって、更なる指導者としての役割やステップアップさせるためのテクニックについての学びへの期待感や他地域のリーダー達との出会いの緊張感などが錯綜して、到着するまでは少し力んでいた事を覚えています。とにかくまな板に載った鯉、素直な気持ちで挑もうと決めて受講。これまで様々な講座や研修会に参加して勉強してきましたが、ここでの内容は全て新鮮な感動と非常に広い視野と自信に繋がる確固たる方向性への気づきをいただきました。好い想い出として鮮烈な記憶が今も深く残っています。私も120名を超える大所帯を率い、成熟度を増した会のリーダーとして森林ボランティア全体の底上げと社会化を図るために、会内の運営はもとより、きちんと知識と技術の段階を踏む事で力をつけ信頼を得ることで、行政に提言したり先導的な活動をする義務があると信じ、色々と展開しています。これもグリーンカレッジでの成果だと思います。
そのご縁もあって来年広島県で開催される「第7回森林と市民を結ぶ全国の集い」でも実行委員として参加しています。そんな折、森づくりフォーラムの坂井氏が来広され、この度の第4回のスタッフとしてお声をかけて頂きました。多忙な日々を送り時間調整が不可能ではないかと、頭を過りましたが、私にとって愛着ある研修会にもう一度参加できるという喜びと、恩返しをしたいという一念で即答しました。
私が受講した第1回目は夜9時まで研修が行なわれ、学びが多い分、消化不良や慣れない生活の中で体調を崩す人や、疲労感や孤独感を少なからず抱えながらも皆さん頑張っておられました。その時は若いスタッフが大半だったので親身になって気を配ってくれる余裕があまり感じられませんでしたので、今回は参加者の立場を知る経験者として同じ志を持ち自然を愛し世の中を何とかしなければと立ちあがった仲間達をサポートし励ましたい、メンタルケアに少しでもなればという気持ちいっぱいで参加しました。
皆さんにとっていかに学びの多い研修会にするにはと一生懸命努めたつもりでもその役果たせたか心配でしたが、帰広後、お礼の電話やお手紙をいただき感激しております。一期一会のご縁をいただいた皆さんに、この場をお借りして心から御礼申し上げます。
私は「リーダーたる者、困難を乗り越え、たじろがず、開き直らず、謙虚であれ!」という思いで、道を拓いて尽力して参ります。どうぞ今後ともよろしくお願いします。
◆「福岡市油山自然観察の森」 田中ちはる
私は、昨年8月に静岡県富士で行なわれた第1回グリーンカレッジの参加者でした。そして、今年11月に熊本県小国町で行なわれた第4回グリーンカレッジでは、スタッフとして参加させていただきました。
九州、福岡に住む私にとって熊本は馴染み深いものでもあり、当日を迎えるまでは、大きな緊張に襲われることなどありませんでした。参加者を迎え入れる準備のため、スタッフは前日から現地入りしましたが、とても穏やかな気持ちでした。しかし11月1日、参加者が現地入りし、大きな期待を抱いた姿を見たとたん、私の背筋をピリピリと喩えようのない緊張が走り始めました。参加者は、年齢や性別、森林ボランティアにおける経験も様々です。私にとって、このグリーンカレッジのように全国規模で開催される研修のスタッフとして参加するのは、これが初めてでした。次の私の行動を誰も教えてはくれません。自分でその場の状況を判断し、自分で考えて行動しなければなりませんでした。研修期間中、私は常に戸惑いと不安との戦いでした。
第1回富士での森林ボランティア研修では、視点を変えることができ、さらなるボランティアとしての自分を開花させ、多くの学びをいただきました。そして今回、全く逆の立場スタッフとして、同じグリーンカッレジに参加させていただいたことは、私にとってさらに大きな学びがありました。今まで漠然としか見ていなかった、「全体を見る力」、「個を見る力」。多くの経験を積んだ他のスタッフが直接ではなく、そのまなざしで教えてくれました。先に先に行動し、自分にできることを確実にこなしていく姿から多くの教えをいただきました。本当に素晴らしいスタッフに支えられたと思います。
そして、参加者からは未熟な私にお叱りの言葉や温かい言葉をいただき、今後の私の活動、スタッフとしての心得などに大きな指針を与えてくれました。また同時に、様々な課題や、問題点も出てきました。しかし、これらはこれからの森づくり活動のさらなる原動力として、新たな学びにつなげていきたいと思います。
今後このように、たくさんのグリーンカレッジ卒業生が、その地域のボランティアリーダーだけにとどまることなく、全国規模で活躍できる多くの機会を与えてくださるよう、主催者である国土緑化推進機構、運営者である森づくりフォーラムにお願いしたいと思います。
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