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第二十五回2002年11月 “森に植える心の苗・森の手の活動”
報告: 吉澤 守
私が、それまでの造園業から転身し、現在でも世間では珍しい仕事と言われる“整林家”という職業に就いて、今年で14年目を迎えました。整林家というのは、私がその職業の方向性を決めるときに、「これからの森は、環境を重視した森に向かう」べきではないかという考えから、自分自身で勝手に発想した職業です。環境整林家といったほうが正しいかもしれません。 聖林作業はキーピングが主体 整林作業を一口で表すなら、現代の流行言葉になっている“里山の森”、つまりかつての里人が生活の材を森の中で得るために行ってきた森の活用が、結果的に森の管理につながってきた方法と似ています。似てはいますが、里山の森は何らかの活用が目的であったのに対して、環境整林は森が森らしくあるための維持作業という点に違いがあります。それは、家の環境を守るために掃除を欠かさなかったり、定期的にお庭の手入れをしたり、歯磨きや洗顔や入浴をして垢を落としたりするように、放っておくと悪循環になってしまうことに関する日常的な、あるいは定期的な手入れを指しています。つまり、森の手の活動です。したがって整林作業はキーピング(手入れ)を主体としていますから、メーキング(森づくり)を目的とする林業作業のような専門的な技術を必要とすることなく、経験を問うこともなく、誰もが何らかの作業に参加することができます。そういえば、かつての里山の森も、薪集めや落ち葉集めは、主にガキ大将がリードする子供たちの仕事でした。
放置林を再生する道 放っておくと様々な悪循環を引き起こす日本の森の環境は、ごく一部の原生林(人の手を必要としない自立した森)を除いて、常に整林をしていく必要があります。 しかし現在の森の状況は、その多くが放置され、長い間の放置によって各地で森の悪循環による現象が顕在化してきています。私が放置林害と呼ぶこの現象は、将来さらに放置が続けば、もっと明らかな実害につながる大きな社会問題となることが予測されます。この状況を救う道は、多くの人が整林作業のために森に入っていただくか、あるいは、必要な公共事業としてのプロジェクトを展開するかのどちらかにかかっていると考えます。
整林作業に参加してもらうための3つの会 多くの人に整林作業に参加してもらうために、私が呼びかけを行っている「日本森林環境隊」「東濃ウェットランズ」「なでの会」は、それぞれ性格が異なります。 森らしさを取り戻す日を願って 私の普段の仕事は、森の現場で整林作業を行うことをベースとしながら、森の環境活用に関する地域づくりのお手伝いのための整備計画書の作成や、地元の“ふるさとの森”を開設する“森の自然塾”の開催、小学校などに出向する“森の授業”、そのほか森に関する講演やローカルテレビへのレギュラー出演などがあります。本当の気持ちとしては「現場へ、現場へ」という思いですが、ひとりでも多くの人たちに環境の森の重要性を理解していただきながら、ふるさとの森の再生に参加していただけたらと願う私にとっては、様々な形での啓蒙活動も、必要な仕事のうちかもしれません。
日本森林環境隊
●連絡先 〒509-7123 岐阜県恵那市三郷町野井210 オフィス・マモ
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