団体紹介

 

第十五回 2002年1月  “愉快な山仕事” 

報告:浜田 久美子


“愉快な山仕事”は、山仕事の技術と知識を学ぶ場を仕掛けるグループです。また、その場に集った方たちをゆるやかに組織して継続性のある同窓会システムをつくっています。
“愉快な山仕事”最初の一歩は、長野県伊那市で開かれている山仕事の塾で年間を通して山のイロハを学んだことです。
山に対する実体験が皆無の者にとって、そこで学ぶすべてが楽しみと充実感でした。と同時に日本の山の深刻さも痛感しました。
でも、何よりインパクトがあったのが、山との乖離は農山村部でも激しく深く広がっているという事実です。
▼“一石三鳥“の戦略
「地元の人に山に入ってもらいたい」と始められたこの塾には、都市の人ばかりが集まってきます。
見慣れた山の風景と山仕事は大変、というのが常識の農山村では、地元の人に関心をもってもらうことが困難であることを知りました。
一方、都市部では森林ボランティアの機会は増えていますが、山仕事について深く学ぶ機会は当時あまりありませんでした。
そこで、学ぶ場をもうけるだけでなく、もう一歩踏みこんだ仕掛けが必要だ考えたわけです。
都市部の熱意がある人たちには質の高い技術と知識と田舎のホスピタリティを。農山村の人たちには都市部から来る人の熱気と山への新たな関り方の機会と、すでに山でも伝えられなくなった山仕事を学ぶ機会を。そして実習の場となることで山に人手が入る、という三者(都市の人、山近くの人、山そのもの)のそれぞれにメリットとなる仕掛け―これを一石三鳥作戦と呼びます―を考えようと1997年、“愉快な山仕事”を始めました。
▼学びと実践で森づくり
日本の7割近くを占める山林をごく少数の人が背負う形になっていることがさまざまな弊害となっています。
多くの人にこの現実が見えていないし、理解することですら難しくなっているからでしょう。
このため、“愉快な山仕事”は「学び」と「実践」を通して山と、山を取り囲む社会の理解が”常識“になること、また山仕事がみんなの文化―楽しみだったり、地域づくりだったり―であることを復活させたいと活動しています。
当会のフィールドは長野県佐久市の大沢と同県辰野町です。いずれも県外各地からの参加者と地元の人とで成り立っています。
入り口の質が高いほどその後のハマリ方は大きい、という信念のもと、「素人でも習いさえすれば山仕事は難しくない。庭仕事の感覚で山仕事を楽しみとしてやろう」と提唱する元信州大学農学部教授の島崎洋路氏に講師をお願いする“愉快な山仕事”講座(3泊4日・年1回開講)が活動の基本です。
▼間伐中心に山仕事体験
カリキュラムは、山づくりの考え方から、今最も山で望まれている間伐を中心に学びます。島崎氏の長年のテーマは「いかに素人の山主にも間伐ができるようにするか」でした。
実習は、ナタやノコギリなどの山仕事の基本道具の使い方、メンテナンス、チェーンソーによる間伐、造材して集材までを行うことで山の流れを実感できるように組んでいます。
募集枠は長野県外と地元佐久市内と二つにわけて、バランスをとりながら行います。
この講座を修了した方は「同窓生」となり、年間5回の同窓会(植林や下草刈り、間伐など)を開催します。
これは地元大沢財産区の活動に“愉快な山仕事”同窓会が加わる形と、“愉快な山仕事”主催で大沢財産区が加わる形があります。いずれにしても、地元大沢の活動に則って“愉快な山仕事”が柔軟に動く、というスタイルです。
また、辰野町での活動(「なるには塾」)は通年10回の連続講座となっています。これは、“愉快な山仕事”を修了した方たちを対象に個人所有の山林を「もしも私が山主だったら」をキャッチフレーズに実践的、主体的に関わる形です。
▼一般募集から会員へ移行
 “愉快な山仕事”講座のみが一般募集を行い、同窓会及び「なるには塾」は講座修了生のみによる会員制の活動です。
山仕事をするために必要な知識と技術を学べる場を設けることが“愉快な山仕事”本体の役割です。この主催講座の参加者たちの同窓会、もしくは発展講座が一般の会員にあたります。
会員を講座修了生のみに限定しているのは、地元の負担を減らし信頼関係を確固とさせるため、かつ山への実効性を高めるためです。また、同窓生は遠く北海道、福岡、富山、神戸など県外からも集うことも特徴のひとつです。
▼同窓生の今後の活躍に期待
 地元密着のため仕掛けと継続に手間暇がかかりますが“愉快な山仕事”に専業スタッフはいません。「自分の仕事と“愉快な山仕事”の両立」を各自が目指しています。
どこまでこれでやれるのか、熱心に関わる同窓生が増えていく中で、いかに彼らに活躍してもらうか。島崎氏の後任の育成など、5年間の蓄積の結果生じた課題に取り組むこと自体が、新しい展開をもたらすと考えています。


【データ】

▽代表 浜田久美子
▽事務局 東京都三鷹市下連雀3−43−4 セザール三鷹302
▽会員数 “愉快な山仕事”5名 同窓会56名
▽会費  1000円(通信費)
▽活動日 “愉快な山仕事”講座 9月に3泊4日(有料)・同窓会 1、4、7、9、11月・なるには塾 毎月1回(有料)
▽問い合わせ先 Eメール kumi−hama@msc.biglobe.ne.jp