団体紹介

 

第十四回  2001年10月  NPO法人 木と遊ぶ研究所  ボランティアだけでは森は守れない、森を守るためなら何でもしよう

報告:相川 明 

 森林ボランティアらしくない名称の団体です。多分、名前から見れば「木」のホビー関係者の集まりと勘違いされます。事実、勘違いされてというか誤解されて「まじめなボランティアと一緒にしては困る」などボランティア団体の集まりで露骨に言われたこともあります。でも、名前にはその団体の出生の意味も含まれていますし、ボランティアの原点が込められています。

●木のハギレから森へ
 研究所の前身は、6年前に遡ります。建具や家具などの木工所の製造過程で出る木の端材で、子どもに木に親しんでもらおう、造形遊びをしてもらおうと始めたボランティアにあります。端材による「木工教室」がそれで、キッドによる同じモノの制作でなく、ひとつとして同じモノがない端材で、のびのびと創造性を発揮した造形遊びをしようと有志によるボランティアでした。その段階では確かに「木」の好きなホビー関係者の集まりだったわけです。
 木工教室で子ども達は素直に質問します。「この木は何?」「生えてる木はどんな形?」と。改めて良く見るとほとんどが外材でした。国産材がほとんど無いのです。日本建築の「粋」でもある建具屋さんが作る障子や欄間、引き戸、それらがほとんど外材で占められている。いったい日本の木は、地域の木はどうなっているんだ。地域材の流通は? 山元は?。
 子ども達に教えられながら、小さな端材から森にたどりついたのが4年前。改めて有志が呼びかけて研究所を立ち上げたのは平成10年5月のことです。中心的な活動を人工林の森林ボランティアに置き、啓蒙活動として「木工教室」を位置付け、さらに森林保全や地場材の流通などの調査・研究などを柱にしてのスタートです。
 折りからのNPO法案可決(平成10年3月)。法人化をめざして準備。同12月1日の法施行と同時に新潟県に認可申請を提出。翌11年4月12日認可・登記というのが経過です。

●4つの事業
 私たちの活動は、別表のように大きくは4つの事業を行っています。またこの事業を通して4つの機能をもって社会に貢献したいと考えています。
 3つの事業の核は、やはり「森林ボランティア」です。人工林、自然林(国有林)、市街地部の3つのフィールドを持ち、人工林の手入れ、自然林遊歩道等の整備、市街地の更地の「変風の砦公園づくりのボランティアを行っています。年間40回、約1,000人近くの市民が参加しています。
 ふたつ目は、「調査・研究・提言活動」です。ボランティアだけでは解決できない課題を追求しています。特に地場産材の流通を通した人工林保全です。産地認証シールは、地場材であることを認証するシステムで、間伐材を有効活用している事業体と提携しながら展開しています。すでに、このシステムで認証した家具は2,360点、シール代118万円円が「森の基金」として積み立てられています。また、地場材や間伐材が流れるシステムづくりとして、川上から川下までの企業・団体等を組織するためのコーディネート活動も行い、2年半かけてようやく「地場産・間伐材流通の環境型協同組合」がこの秋結成されることになりました。
 3つめは「普及・啓発活動」です。名前の由来となっている「木工教室」は学校・地域への出前講座を含めて年間70回にものぼり、子どもなど約4,000人の市民が参加します。
 また、独自の「住いの学校」(半年講座)も開いています。常設で、上越市からの委託で「森の教室」も運営しています。
 4つめは、受託事業です。行政からの森や環境問題に関する事業を受託し、他の3つの事業とも関連付けながら事業を受託しています。
 
●事業を通して4つの機能をもった研究所に
 これらの事業を通して、研究所は次のような機能をもって社会的に貢献して行く方針をもっています。
1)森や自然環境と人間との共存にかかる計画や提案のできるシンクタンク機能
2)人や団体間のネットワーク機能
3)森林保全や自然環境にかかる研究・開発のできるクリエイティブ機能
4)これらの事業や活動に対する相談・援助できるオペレーション機能
 もちろん、この機能があるわけではありません。大事なのは4つの事業を展開しながらこうした機能を蓄積していくことだと考えています。

●視点はグローバルに、活動はローカルに
 ボランティアだけでは森は守れません。森を守るためには何でもしよう、これが研究所のスタンスです。視点はグローバルに、活動はローカルに、具体的に、です。したがって、あれもこれもやることになります。最近では、佐渡で活躍している世界的に評価の高い音楽集団「鼓童」との提携も進んでいます。太鼓の音楽集団と組んで、森を守るためのどんな仕掛けや活動ができるか、来年の企画の打合せに入っています。
DATA
●連絡先
 〒943-0891 新潟県上越市昭和町1-6-2
 NPO法人 木と遊ぶ研究所
Tel:0255-23-0365 FAX:0255-23-0838
Mail:kitoaso@rose.ocn.ne.jp
●活動場所
新潟県。主に新潟県の上越地域。固定したフィールドとして@スギ人工林(中山間地の共有林)での手入れ、A国有林(2次林)での散策道の整備、B市街地での鎮守の森づくり、を持って、恒常的な活動の場としている。
●活動の目的
森林ボランティアを中心にして、森林の保全、地場材の流通促進、森林保全のためのPR活動、森林に関する調査・研究・提言活動を通して地域の森林保全を促進していく。
●活動内容
「中核的な活動である森林整備のボランティア事業」「調査・研究・提言事業」「普及・啓発事業」「受託事業」の4つの柱で活動。受託事業を除いて会員による「プロジェクトチーム」を作って活動しており、16の課題別の目標をもって事業を進めている。受託事業では、新潟県、市などから森林に関する調査・研究、コーディネート、自然環境関連施設の運営などの事業委託を受けている。
●組織(法人登録は平成11年4月16日)
運営:最高決議機関としての総会。執行機関としての理事会。理事会の下に事務局。理事は10人で   月1回開催。事務局は緊急雇用対策による採用者4人を含め8人。
役員:理事長 室岡耕次 専務理事(所長)相川 明 
会員:個人会員107人。企業会員24 団体会員2。
   会員は会社員、建築士、大工、飲食店経営者、看護婦、製材会社、建築会社など多様。
会費:個人会員年間3,000円。
   企業・団体会員年間10,000円

 

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