団体紹介

 

第十二回  2001年8月  ワークショップ・ミュー      報告: 藁谷(わらがい) 豊

「環境」をテーマに「企画」する「企業」

 ワークショップ・ミューは、「環境」をテーマとした「企画」会社である。つまり、テーマを「環境」、手法を「企画」として、「新しい社会=持続可能な社会づくりの一端を担っていく」というのが最終的な「企業」目的である。よくワークショップ・ミューをNPOと勘違いされる方も多いのだが、私は企業であることにかなりのこだわりを持っている。このワークショップ・ミューの「環境」「企画」「新しい社会づくり」「企業」という4つのキーワードについて簡単に説明していきたい。
◆「環境」というテーマ
 まず、「環境」というテーマであるが、私たちはかなり広い範囲で使っている。1999年に出した『「まなび」の時代へ(小学館ワークショップ・ミュー編)』のあとがきで次のように書いている。
 「百五十億年の宇宙の歴史と百五十億光年の広さを持つ宇宙。四十六億年の地球の歴史と三十八億年の生命の歴史。動く大地と、大気と水の循環によって繰り広げられる多様な生態系。その自然と共生してきた私たちの暮らしの歴史、共生できなくなって滅んでいった文明、今も残る自然と共生した文化。イデオロギーと政治体制の中でつくられてきた戦争や差別の歴史。歴史を物語として読むのではなく、自分の体に刻みこまれたものとして認識し、歴史の延長に『私』という存在がいることに気づき、未来は他者から与えれるものではなく、『私』が切り拓くものだということを知る。近代に目をやれば、薪・炭から石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料、原子力にいたるまでのエネルギーの変化。資源枯渇、人口、南北、宗教などのワールドワイドな問題。大量生産・大量消費・大量廃棄、その結果としての公害問題、地球環境問題。そして公害や地球環境問題を解決するための法律や条例、環境技術、代替エネルギーや新交通システムの開発。リフューズ、リデュース、リユース、リサイクルに代表されるライフスタイルと社会システムの変革。現実を自分の知らないところで起こっていることとして本棚や標本箱やテレビの中に片付けるのではなく、手に取り袖を通して、暖かいのか、寒いのか、心地好いのか、自分との関係性の中で考えることで、課題は他者が解決してくれるのではなく、『私』が解決の主体であることを知る」 「環境」とは単に自分の外側で起こっている単なる事件ではなく、自分の問題であり、自分が選択してきたこの社会の問題だということである。つまり、「環境」を考えるということは、「この社会システム」を考えることであり、「環境」を変えるということは、「この社会システム」を変えるということである。「環境」といわかりやすい問題から社会全体のことを考えたいといつも思っている。
◆「企画」という手法
 社会システムを変える方法として、政治による変革、活動による変革、芸術表現による変革などがあるが、私たちは「企画」によって社会を変えていきたいと思っている。その時にふたつの方法をとっている。ひとつは私たち自身がソーシャル・プランナーとしてラジカル(根源的)なコンセプトを社会に提示すること。ひとつの言葉によって未来が切り拓かれていくことは多い。もうひとつは、社会を変えるための企画手法を公共財として広く情報公開すること。たくさんの人に企画手法を自分のものとしてもらい、企画立案できる力を持ってもらいたいと考えている。
◆「新しい社会=持続可能な社会づくり」という企業目的
 行き過ぎた資本主義が壊したものにふたつある。ひとつは「自然」、もうひとつは「地域」である。「自然」とは言うまでもなく環境問題のことをいうのだが、自然の持つ多様な機能を市場価値だけに置きかえ、収奪してきた結果がこの環境問題といえるだろう。「地域」に関しても同様で、本来地域住民は多様な機能を持っていた。知恵の伝達者、自然との共生者、労働の担い手、教育者、これらの多様な機能を単なる労働力に置きかえていったのが、地域コミュニティの解体のプロセスだろう。同様に南北、未来世代との問題も同様な根源的課題を抱えている。これらの課題に対して、きちんとオルターナティブを提示していきたいと考えている。確かに私たちにできることは小さなことかも知れない。しかしながら、その小さなことをやり続けることが需要だと考えている。
◆「企業」であることへのこだわり
 これもまた、大それたことをいうことになってしまうのだが、3つの意味で新しい社会の「企業」のありかたを社会に提示したいと思っている。ひとつめは、株主、クライアント、ブレイン、スタッフ、外部スタッフなどのステークホルダーとの協働(コラボレーション)である。この協働を通じてものづくりやコミュニケーション活動を行っていく。すべてが対等な関係性を持ったプロジェクト・チームをひとつひとつに作っていきたいと思っている。ふたつめは、パートナーシップ事業のコーディネーター役を担っていくことだ。企業・行政・NPOのパートナーシップが言われて久しいが、彼らが自分たちのセクターの自立性を担保しながらパートナーシップを組んでいくのは簡単ではない。そこで必要とされるのが、そのセクターとは別の土俵を作り上げていくコーディネーターの役割だ。それぞれのセクターの強み弱みを活かしながら事業を作り上げていく。そのようなフットワークがある小集団企業を目指している。3つめが、「社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)」としての先導的役割を果たしていきたいと考えている。きちんとした収益構造を持ち、計画的な資金投入による社会的事業を実践していく。そんな役割が担えたらと思っている。

キャプション1
里山から考える21世紀(財)世界自然保護基金ジャパン、(財)日本自然保護協会、(財)日本野鳥の会、(株)NHKエンタープライズ21などで構成される実行委員会で活動を行っている。ワークショップ・ミューが事務局を運営している。「里山」というコンセプトをたくさんの人に伝え、里山保全の活動に少しでも興味を持ってもらえたらと思っている。

キャプション2
企業人のためのボランティアアクション企業の社会貢献室の人たちと実行委員会をつくり、NPOの人たちと協力し、企業人がボランティア活動をする機会を作り出そうという活動。ワークショップ・ミューが事務局を運営している。市民社会を作り上げていくためには、企業の社会貢献活動とNPOのコラボレーションが必要。大きなムーブメントにしていきたい。

キャプション3
エコのもりセミナートヨタ自動車と日本環境教育フォーラムの共催事業。ワークショップ・ミューが事務局を運営している。トヨタ自動車の社会貢献事業と日本環境教育フォーラムの専門性を合わせ、里山保全と環境教育を合わせ持った人材育成を目標に活動を行っている。

キャンプション4
「まなび」の時代へ(小学館、ワークショップ・ミュー編)環境教育、野外教育、開発教育、国際理解教育など、新しい教育を進めている人たち30人の取材を通して、新しい時代とその教育のあり方を提言している。ワークショップ・ミューのコンセプトブックでもある。



DATA

【有限会社 ワークショップ・ミュー】
オルタナティブな社会づくりを目指し、イベント、出版、デジタル・プロダクツ、 映像、施設、まちづくり等、さまざまな分野で企画・プロデュースを行う。
主な仕事 に、東京国際フォーラム開館記念事業「環太平洋21生活文化フォーラム」企画、クロード・ランズマンと土本典昭の両監督の作品を上映した「ふたつの世界の映画を観る」主催、東京ガス「環境エネルギー館」企画、「エコのもりセミナー」企画・運 営、BE-PAL OUTING MOOK『自然の学校 プロが教える自然遊び術』『自然の学校2  雑木林をつくってあそぶ』(共に小学館)編集、『「まなび」の時代へ〜地球市民へ の学び・30人の現場』(小学館)編著、中部リサイクル運動市民の会「イーズ」第11 号など。イベント「里山から考える21世紀」(10月開催予定)実行委員会事務局。

 

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