団体紹介

 

第十回  2001年6月
特定非営利活動法人 
緑の列島ネットワーク 

(Green Archipelago Network)

  報告:高橋 純

山と町、生産者と消費者、流通の川上と川下、
そして各地の木の家づくりグループを結び、つなぐ、
ネットワークの大きな力で、
国産材による家づくりと健全な山を取り戻そう。

 『私たちは古来より、山の恵みをうけ、暮らしを育んできました。山の幸、水が育む幸、そしてもちろん木々の恵み。木づくりの家々は「近くの山の木」という地域資源を活用して建てられてきました。しかし今、この緑の列島の木材自給率は2割に低下し、日本の歴史ある育成林業は、割高なコスト、販売不振、人手不足などでたちゆかなくなり、多くの地域で、手入れもままならずに疲弊、荒廃する状況にいたっています。過度の伐採によるものではなく、木が使われず、逆に放置されたがゆえの、山の荒廃という不思議な現象です。
 緑の列島の多くの家々は、残念なことに今では「近くの山の木」では建てられず、消費される木材の多くは、時間と運搬エネルギーを費やして遠く海を越えてやってくるようになりました。熱帯や北方からの安価な輸入材で緑の列島の家々はつくられ、しかも短いサイクルで消費されるようになっています。』
 以上『』内は、わたしたち緑の列島ネットワークの設立趣旨書からの抜粋ですが、緑の列島ネットワークは、その不健全な山の姿、山の危うさに目を向け、山の資源の循環的な活用を通して、健全な自然環境と地域経済の再興をめざしています。
 そのための核となる活動として、「近くの山の木で家をつくる運動」を提唱しています。それは、「山と町と人と資源を、木の家づくりのネットワークを通じて、つなぎ、むすび、互いが理解を深め、健全な山を取り戻す」運動です。
 実は今まで、幾多の国産材利用の推進運動がありました。しかし、声をからしての山側からの呼びかけにもかかわらず、町側からのそれに呼応する動きは鈍く、力を失った運動の例が少なくありませんでした。それは、山の問題が実は町の問題でもあるという視点、木材を生産する山とその多くを住まいとして消費する町は密に結びついているのだという視点、健全な山があってこその町という視点を欠いていたことによるものと私たちは考えています。
 そうした頓挫の経験をくぐりぬけ、今、「近くの山の木で家をつくる運動」が、だれいうともなく、いわば自然発生的に、全国各地で起こっています。また起こりつつあります。これを全国レベルでつなぎ結び、知恵と力を合わせ、国産材による家づくりと健全な山を取り戻そう、というのが私たちの提唱する「近くの山の木で家をつくる運動」なのです。国産材による家づくりが可能な新しい社会システムの構築こそ、健全な山を取り戻す近道なのだと信じるからです。
 そしてこの運動は、サラワク・キャンペーン委員会の吉永卓さんもおっしゃっているように「熱帯林保護と国産材の利用推進は相互に関連したもの」でもありますし、また伐採、植林、間伐といった山の資源の適正な管理・循環と長持ちする木の家づくりは、今問題になっているCO2削減、固定にも貢献する、といったように、地球というひとつの環境の中で重要な位置を占めている運動なのだと感じないではいられません。

 さて、私たちは、近くの山の木で家をつくる運動の活動第一弾として、昨年11月に、この運動の呼びかけ人422人の協力を得ながら、「近くの山の木で家をつくる運動宣言」(発売元:農文協 1,000円)という本を出版しました。
 この本は当初、2万部刷りました。この種の本は初版2000部、いくらがんばっても売れるのは5,000部が限度だろうという、さらに、売れなければ倉庫代が発生するという発売元からの「忠告」を押し切っての2万部でしたが、発売3ヶ月目、1月には完売し、2月に5,000部、3月にはさらに5,000部増刷することになりました。
 話は前後しますが、この本の出版は、運動の普及啓蒙、運動と団体の認知度を高めるというのが直接的目的でしたが、もうひとつ、今年元旦、つまり、21世紀、環境の世紀の幕開けに、全国紙に意見広告を出したい、それによってさらに運動の普及啓蒙ができればという思いがあり、その意見広告を出すための賛同人を募る本でもありました。平たく言えば、この本を読んで運動に賛同した人たちがお金を出しあって船を出そう、意見広告を出そうということでした。
紆余曲折、すったもんだがありましたが、新聞2ページ見開きの賛同人2271人の名前が山々をかたちづくる、この意見広告が出てみると、それまで専門領域の話と思われていたこの運動と考え方を、多くの人の身近なものごとへとぐっと引き寄せたようです。事実、それまで、林業あるいは住宅業界などの専門メディアは注目してくれていたのですが、今年に入ってからは、一般市民が対象の、全国紙の生活情報欄、雑誌の記事や書評に大きくとりあげられるようになり、それがまた問合せや取材を呼ぶといったように、着実に裾野が広がってきた手ごたえを感じています。
 意見広告と同時に「木の家に住むことを勉強する本」(緑の列島ネットワーク推薦)という本が出版されました。この本は初版30,000部だったそうですが、あっという間に店頭から消え、25,000部を増刷ということです。この本が、木の家を持ちたいと願う人たちに「近くの山の木で家をつくる」ことをわかりやすく伝え、運動の普及・啓蒙に一役かったことは間違いないでしょう。見方を変えると、「近くの山の木で家をつくりたいと願う人」がどれほど多かったか、それが現実に見えてきた、氷山の下の大きさが見えてきたといえると思います。そしてこの人たちと山をよりよくどれだけつなげていけるか、それは今後の私たちの活動のあり方にかかってくると思い、気を引き締めているところです。
 活動のひとつ、この4月から、大阪と富山でMOKスクールが始まりました。これは山とまちをむすびつなぐ、山、木材、木の家づくりに習熟した人材育成をめざすスクールです。9月からは東京でも始まります。
 また、6月30日(土)には東京で、7月15日(日)には大阪で、私たちが主催するものとしては初めてのフォーラムを開催します。これまでも、全国各地の林業関係、建築関係の団体等の講演、セミナー依頼で理事が東奔西走して運動の普及啓蒙をしてきましたが、東京、大阪の集会では、さらにこの運動の意味と意義、また、その実際がみなさんに開陳できると思います。詳細はお問合せください。参加をお待ちしています。
 これから、使命に向けての具体的活動がいっそう求められることになると思います。
 誌面を借りて、皆さんからのますますのお知恵拝借、また、運動へのご参加、ご支援をお願いしたいところです。協働の輪を広げましょう。

DATA
●連絡先
 〒108-0014 東京都港区芝5-26-20 建築会館4階
 tel.03-5419-3621 fax.03-5419-3623
 http://www.green-arch.or.jp
●その他の事務所
 秋田事務所 tel.0185-73-5660 fax.0185-73-5856
 大阪事務所 tel.06-6201-0700 fax.06-6201-1038
●設立経緯
1999年から林業関係者、建築関係者等で構成された、近くの山の木で家をつくる運動全国協議会を実施し、全国規模のネットワーク団体の必要性を討議。2000年5月に準備会理事会で任意団体として緑の列島ネットワーク発足。6月に経済企画庁(現内閣府)に特定非営利活動法人の認証申請。9月19日に認証され、その後法人登記。10月より第一期の事業年度開始。
●活動概要
1 国産材による家づくりの啓蒙と支援
2 林業の担い手育成の支援
3 山林の維持管理、保護およびその支援事業
4 山と町を結ぶ役割を担う人材育成事業
5 まちづくり・山村活性化を図る事業 など
●情報媒体および出版等
「近くの山の木で家をつくる運動宣言」(発売)2000年11月初版発行。「木の家に住むことを勉強する本」(推薦)2001年1月発行。緑の列島ニューズレター(会報 4月創刊 年数回発行予定)実践的レポート主体の記事。ホームページ(月1回〜2回更新予定)ニュース、イベント案内、フォーラム、意見、各地の木の家づくりネットワーク紹介など
●現在の役員
理事13名・監事2名。理事のうち以下の3名が共同代表理事
長谷川敬(建築家/東京の木で家を造る会代表)
熊崎 実(岐阜県立森林文化アカデミー学長)
鈴木 有(秋田県立大学木材高度加工研究所教授)
事務局スタッフ3名+アルバイト1名
●会員数
 5月21日現在の会員総数 682名(団体含む)
●会員種別と年会費
正会員  個人10,000円 団体120,000円
賛助会員 個人5,000円 NPO10,000円 法人60,000円     自治体120,000円
会員募集中です。9月30日までは会費半額です。会員になって活動、事業、情報交換の場に参加し、また活動を支えてください。ご希望の方には入会資料をお送りしています。また入会資料はホームページからダウンロードできます。  

 

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