第九回 2001年5月
木文化研究所
報告:****
◇木の利用開発
山から伐り出された木は、乾燥の後必要な寸法形状に成形されて用途を果たします。使われる目的によって木の種類や、木目を考えた木取りの方法も変えればとても合理的ですが、現実にはあまり緻密な対応がなされていません。
従って多くの場合、木材製品は完成された個々の“商品”を使うことが主で、木を利用する行為が山を育てることと関係づけられる可能性がとても薄いのです。
当研究所の木材利用事業は、材の特性や木目を生かす事を大切にするだけでなく、産出される森林が明らかで、再造林される目途を持ったものを中心にして山と暮らしをつないでいきます。
◇森の利用開発
今日、私たちの身近にある森は、見かけほど豊かではありません。森の木が切られなくなったり、森へ足を運ぶ人がいなくなったりして単調な様相を呈し、ごみや捨て物で溢れています。森は古来から人間との関わりの中でいろいろな表情を見せると同時に、様々な生き物を擁してきました。そんな森が人類始まって以来といえるほど深刻な危機に遭っています。それは人の心に具体性を持った森がなくなってしまったからです。
森の役割とか、緑の景観的価値を疑う人がいない代わりに、生活そのものに森が必要なくなっています。当研究所の森の利用は、まず、森のすばらしさを体験してみることを勧めています。森での遊びが楽しくて、森と交わるほどに創造性が高まる。自分の能力に目覚め、他人のすばらしさを見つけることになります。森の新しい利用はそれに関わる人たちによって開かれていきます。
◇木を使う人づくり 木は極めて個性的であると同時に固有性の高い素材ですから、その利用にあたっては個別性に配慮する必要があります。
木が古くから広く一般に使われてきた形跡から見て、木を利用する知恵はそれほど難しいものではなかったはず。多分に家族や地域社会から受けた教示や応用となる経験則が補ってきました。
当研究所は一般の人たちや家具作家、建築士などの塗装仕上げの相談に応じたり、木工教室の開催、木材の販売などを通じて木の特性や木とのつきあい方を提示しています。
◇森を育てる人づくり 森の活力を保ちつつ、森の保全を図っていくためには森を利用し、樹木などの更新を計画的に行わなければなりません。森の近くで暮らし、森に関わって生計を立てていく人がいなければそれが叶わなくなってしまいます。
当研究所では青少年を対象にした森林体験講座や成人による森づくり講座を企画、運営し、将来、森林に関わって生業(なりわい)を立てる人材が育つよう働きかけています。学校脇の小さな森や公園の一画でも、その森をどんな風に活かすのかを考え、森を育てていくプログラムに取り組んでいます。森を育てるという視点が、森の業の基本だと考えています。
スギ材を使ったフェンスやガレージ。街の表情にやわらかさを与えている(愛知県津島市)
竹で組んだステージドーム(名古屋市)
小学校の近くの森づくりを検討するワークショップ(愛知県瀬戸市)
古材の利用と自然素材にこだわった土間のある住宅(愛知県小牧市)
森づくり講座(静岡県小笠山)
DATA
●連絡先
〒451-0081
名古屋市西区名塚町1-77
TEL:052-522-3838 FAX :052-522-2929
Mail:mokubun@pat.hi-ho.ne.jp
●設立
1994年6月8日
●業務内容
○PR、催事企画部門
・里山等環境教育講座、セミナーの企画・運営
・木材及び森関係イベントの企画・運営
・本、カタログ、パンフレットの制作
○環境計画、デザイン部門
・緑地等(林地、河川、公園、庭園等)の計画・設計
・イベント会場の計画・設計
○木の商品開発部門
・木の家具、道具類の企画・制作
・野外木造施設(あずまや、展望台等)の企画・制作
・住宅及び外構の木製部品の企画・制作
●連携する団体等(メンバーが加入する団体)
○雑木林研究会(事務局)?現代における雑木林及び里 山の保全及び活用の研究と市民を主体とした実践活動
○木質バイオマスネットワーク、バンブー楽団・あい ち、豊田文化フォーラム、野あそび教えたる隊、創遊 くらぶ、ふろしき研究会、てんぱくプレーパークの会、 大井川「白羽山はばたきの森」に集う会、相生山オア シスの森くらぶ、愛知環境すまい会議、環境教育ミー ティング中部、EEネット、街づくりフォーラム
●コンセプト
1.企画立案から計画、実施までの一貫したまなざしと連 携する人々の多様な視点からの運営
2.自然や歴史的な社会への充分な配慮と使い手参加の計 画・運営によるライブな(生き生きした)環境の育成
3.継続的な再生産可能であり、人の能力を引き出す素材 として木文化にこだわり、木を活かし、山河を活かし、人 を活かす。
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