団体紹介

 

第五回    遊学の道Project    2000年12月号

                          報告:青柳信太

◆林業のテーマパーク「遊学の森」

 東京を西から東へ流れる多摩川、この上流域は青梅林業地と呼ばれ、古くから都の生活を支えるために木材生産が行われてきました。多摩川の支流である秋川も、また同様に林業が盛んに行われてきた地域で、その上流に伊豆・小笠原諸島を除けば東京都唯一の村である檜原村は位置します。この山に囲まれた自然豊かな檜原に遊学の森はあります。

 遊学の森は檜原村で林業を営む田中惣次さんが所有する約20haの森林で、ここを訪れた人々が自然に親しみながら、気軽に森林や林業について学べるように、幾つかの遊歩道や森林・林業についての看板などが整備されています。可憐なカタクリから始まり、透き通るような新緑、雫の踊るアジサイ、暑さを忘れさせる沢のせせらぎ、目が疲れるほどの紅葉、そして冬の柔らかな陽射しを受け輝く雪化粧と、一年を通して驚くほど多くの表情を見せてくれます。しかし、遊学の森は森林公園ではなく、そこで林業を営んでいることに最大の特徴があるのです。

 江戸時代に植林されたスギ、手入れの行き届いたスギ・ヒノキ林や広葉樹林、雪害跡地を複層林に仕立てたところもあります。こうした林業地としての森林をみることで、林業の仕組みやそのサイクルを理解できるとともに、山に生き、山を育ててきた人々の熱い思いを感じることのできる、まさに「林業のテーマパーク」なのです。

 そもそも遊学の森は、平成3年に農工大の学生グループが田中さんの山に遊歩道をつけて、森林や林業について色々勉強できるようにしたいと言ったのがきっかけで、一周一時間程度のコースが造られました。その後数年が経ち、五日市青年の家の主催事業に参加した、当時東京農業大学の学生であった佐々木さんが、講師である田中さんから遊学の森にもっと遊歩道を造りたいと言うことを聞いて、それならばと、平成10年5月より佐々木さんと仲間数名で遊歩道づくりのために始まったのが「遊学の道Project(YMP)」です。

 ◆我らがボス

 こうした素晴らしい森林を持つ田中さんの肩書きは、林業家ではなく森林業で、これには新しい林業「新林業」、親しむ林業「親林業」、真面目にやって地域から信望を集めるようになりたい「信林業」という意味も込められていて、森林業というのは、昭和30年代に植えたものが今までは林でしたが、これからはそれを森に育てるという意味で、空気、水、空間、下層植生など、森林を取り巻くあらゆる価値を創造し生かしていく産業というところに、木材生産に執着した林業との違いがあるそうです。また、「親林業」ということで、田中さんは多くの人に森林や林業に親しみを持ってもらおうと、林業体験の講師を務めたり、助言者となって、様々な市民グループと積極的に交流されています。

 YMPは、より多くの人々が、遊学の森を通して、これからの森林・林業を見つめられるよう、田中さんの森林・林業に対する考えを基に活動を続けています。

 ◆水土里の森林づくり

 活動開始当初は、ほとんどが学生だった参加者も、回数を重ねるうちに多種多様な顔ぶれとなり、和気藹々とした活動を続けるなかで、着実に遊歩道は延び、看板も設置されていきました。2000年2月には予定されていた遊歩道と看板のほとんどが完成しました。そして、活動は遊学の森の利用の可能性を探る段階へと移行していきました。

 そうしたなか、森林整備活動に公的補助が受けられることを知り、下刈りのイベントを企画する運びとなりました。それが、今年8月に行った「水土里の森林づくり(みどりのやまづくり)」です。意気揚々と思い立ったイベントでしたが、経験のない我々には、課題が山積みでした。自分たちの生活が森林と繋がっていること、その森林と共に生きている人、それらを支える林業の役割など、我々が普段の活動で知ったことを2日間で伝えるためにはどうしたらよいのか?

 当日はスタッフを含め40数名が集まり、なかには遠く徳島から参加された方もいらっしゃいました。

 第1日目、田中さんの鎌研ぎ教室のあと現場へ。初めての方が多く悪戦苦闘。コテージに戻ってからは、森の学習会・バーベキュー・交流会と夜遅くまで焚き火を囲んでいました。

 第2日目、眠い体に気合いを入れて鎌を振る。慣れてきて、ペースが上がったところで作業終了。シャワーで汗を流してから解散。不安要素を多分に残したまま行われたイベントでしたが、多くの方々の協力を得て、結果的には無事終了しました。

 反省すべき点は多々ありますが、こうしたイベントを今後も続けていきたいと思います。そのためにも、今回の経験を活かし、遊学の森の意義やその利用について考えていきます。

 ◆遊学とは

 遊学とは、「よその土地に行って勉強すること」という意味があります。普段の生活では森林と接することのない都市生活者が、都市を離れ、森林の中に入り込み、見て、触り、汗を流し感じたものを都市へ持ち帰り、それが広がりを見せ、新たな都市生活者が森林へと入り込んでくるという、森林と都市における遊学の連鎖。つまり、「遊学の森づくり」を行うYMPは、きっと「遊学する人づくり」を行っているのです。そして、このことが、森林や自然環境など、究極的には人が「生きる」ことを考えるときに、僅かばかりでも、お役に立つことができれば幸いです。

  

DATA

●連絡先   〒150-0002   東京都渋谷区渋谷1-20-26 青柳 信太

 TEL:090-7242-7481  FAX:03-3498-5273    E-mail:shinta@mx2.ttcn.ne.jp

●YMPホームページ      http://www.geocities.co.jp/NatureLand/1635

●活動場所      東京都西多摩郡檜原村「遊学の森」

●活動を始めた時期と経過

 平成10年5月東京農業大学の学生が中心となって、田中惣次氏指導のもと「遊学の森」の遊歩道づくりを始める。現在、「遊学の森」の更なる充実と利用推進のために約170名の仲間と活動を続けている。

●活動の目的

 遊学の森で活動し、森林に親しみながら、楽しい時を過ごすこと。遊学の森を歩けば、森林、林業を理解できる森にすること。

●活動の内容

 ・遊学の森の整備

 ・遊歩道及び看板の整備

 ・アジサイの植付けなど

●今後の予定      第2回「水土里の森林づくり」を是非行いたい。

●定例活動

 原則として毎月第2週の土・日曜日に1泊2日で行う。 土曜日午後1時、「ひのはら緑の休暇村フォレスティングコテージ」(東京都西多摩郡檜原村729)集合。

●今後の活動予定日

 2001年1月20日・21日,2月17日・18日,3月10日・11日(活動日程は変更する場合がある)

●参加申し込み     活動日の1週間前までに、青柳にその旨ご連絡を。

●会費

 会費は300円。活動参加時に、そのつど参加費(保険料+食費)とあわせて、納めてもらっている。通信費や消耗品・備品(活動が宿泊を伴うため)の購入に充てられている。

●通信       「遊学の道通信」が不定期にEメールで配信されている。

 

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