1997年「科学と平和・国際週間」への参加の呼び掛け


 1988年12月に国連総会で「決議:科学と平和」が採択され、11月11日(第1次世界大戦終了日)を含む週が「科学と平和・国際週間」と設定されてから9回目の週間を迎える年となりました。この週間の設定のきっかけを作った「科学者による国際平和週間」から数えると、12年目に当たります。

 この運動が始まったときには、戦争に対峙するものとしての平和と科学という文脈で核兵器の撤去、縮小、実験禁止、廃絶をめざすことに力点がおかれていましたが、国連決議では人類の平和的生存にかかわるあらゆる分野に科学が配慮することを求めています。

 今年の「科学と平和・国際週間」は11月10日(月)から16日(日)までです。どうぞ、この週間あるいは近辺で行事を計画してください。御計画はなるべく早く下記の日本センター事務局または連絡委員会までお知らせください。

 日本では毎年約20カ所の大学や地域でさまざまな行事が自主的に行われ、世界にも類の無いほど定着しています。1994年と95年には横浜市立大学の一楽重雄教授が世界のセンターとして議長を勤めました。昨年、その議長は、フランスのDaniel Schertzer 教授となり、今年も引き続いて引き受けてもらえることになりました。そして、この運動の最初のセンターを努め、その後10年間パーマネント・オフィスの役割を果たして来たドイツのH.Bramhoffさんに代わって、昨年から物質工業技術研究所の松崎早苗研究調査官がその役を勤めています。

 今年は、IWOSP週間の直後に予定されている京都でのICCP(第3回国連気候変動会議)へヨーロッパから多数の科学者が来ます (Kyoto Journey)。ヨーロッパでは、IWOSPの準備を早くして、この会議に参加する国連NGOとしての地位を獲得しようという動きが出ています。ICCPに参加する予定の方は、ぜひ、その動きをフォローしてください。

 この運動も10年をすぎましたので、少しスタイルにも新規性を取り入れたいと考え、昨年からネットワークにホームページを開設致しました。埼玉大学の橘雅彦先生の御世話でJCA(市民ネットワーク)にのせていただきました。若い人達や科学畑でない人達にも注目されることを願っています。

 さて、近年は科学そして技術の影響が生活のすみずみまで行き渡り、「科学・技術はいったい人類にとって何なのか?」という問いかけをせずに、この仕事に携わることが許されない時代になって参りました。CTBT(包括的核実験禁止条約)は締結されましたが、まだ片手で数えられる国しか批准しておりませんし、未臨界実験と称して依然として核兵器が維持され続けることが立証されました。チェルノブイリの惨事や我が国の原発関連施設の事故にも拘わらず、核分裂の利用は推進されています。また、環境と資源の両方から地球の有限性が叫ばれても、依然として科学万能の幻想から抜けられない科学者・技術者も少なくありません。

 1962年に発表された「沈黙の春」は、私たちに衝撃を与え、深い反省を促すものでしたが、昨年、90年代の「沈黙の春」と呼ばれる「Our Stolen Future」(翔泳社より長尾力氏による日本語訳「奪われし未来」刊行)が出版されましたが、これは私達の反省がきわめて不十分であったことを明らかにしています。

 さまざまな合成化学物質が、生物の免疫機能、代謝機能、ホルモン作用などに微妙に働いて、生物の誕生前のバランスを壊し、その結果が大人になってから現れるというのです。ダイオキシン、PCBなど塩素の入った有機化合物、重金属、アルキルフェノールなどが自然の中で分解せず、生物の栄養連鎖によって体内に取り込まれ、やがては種を絶滅に導く、という恐ろしい可能性を指摘しています。有毒化学物質の摂取による直接の死ではなく、微妙なバランスを失うことによる子孫の突然死が予見されているのです。

 人々の平和な生活と密接にかかわる「科学の問題」、「技術の問題」は何なのかを常に問い続けることが、科学者・技術者にとって大切なことではないでしょうか。この週間がそのきっかけになるように、特に、これからの地球を担う若い科学者・技術者の参加が得られるように、行事を工夫して下さるよう呼び掛けます。

IWOSP ホームページ Kyoto Journey ホームページ http://www.uea.ac.uk/‾e256/kyoto/journey.html
世界センター議長:
  Daniel Schertzer
	Laboratoire de Meteorologie Dynamique, case 99
	Universite P. et M. Curie,
	4, place Jussieu, F-75252 Paris cedex 05.
	Tel: +33-1-44.27.49.63 ou -73.52, Fax: +33-1-44.27.62.72
	email: schertze@lmd.jussieu.fr

国際パーマネント・オフィス:
  松崎早苗 MATSUZAKI, Sanae Y. (ms)
	物質工学工業技術研究所
	基礎部/研究調査官(併)
	305 つくば市東1ー1
	Tel: 0298-54-6244 or 54-4516   Fax:0298-54-6232 or 4478
	email: matsuzaki@nimc.go.jp

日本連絡センター
  岡部恒治 Tsuneharu Okabe
	埼玉大学経済学部
	338 浦和市下大久保255
	Tel & Fax: 048-858-858-3611 

同事務局
  橘 雅彦 TACHIBANA Masahiko
	埼玉大学理学部 基礎化学科
	Tel: 048-858-3388 Fax: 048-858-3700
	email: mtachiba@chem.saitama-u.ac.jp

NCC(日本コーディネータ)
  一樂重雄 ICHIRAKU Shigeo
	横浜市立大学文理学部数学教室 
	236 横浜市金沢区瀬戸22-2 
	Tel & Fax: 045-902-7287(自宅)
	email: ichiraku@yokohama-cu.ac.jp

  伊藤嘉昭 ITOH oshiaki 
	沖縄大学教養科
	那覇市国場 555

  松崎早苗(前掲)

呼びかけ人:

麻生泰弘(数学・情報科学)
飯島宗一(医学)
石塚靖子(化学)
一楽重雄(数学)
板垣雄三(中東地域研究)
伊藤嘉昭(生態学)
井上 允(天文学)
弥永昌吉(数学)
上野 正(数学)
梅林宏道(太平洋軍備撤廃運動国際コーヂネーター)
岡部恒治(数学)
加藤周一(日本思想史)
鎌田定夫(仏文学)
岸本量夫(数学)
小出昭一郎(物理学)
斉藤勝弥(教育学)
篠笥憲爾(経済学)
佐藤裕二(技術教育)
沢田昭二(物理学)
庄野直美(物理学)
下山房雄(経済学)
杉江栄一(国際関係)
諏訪兼位(地質学)
高口 真(数学)
武井 洋(生化学)
田添京二(経済学)
橘 雅彦(化学)
田村和之(法学)
鳴海正泰(地方財政学)
早川康弌(数学)
伏見康治(物理学)
古川昭夫(数学教育)
堀 重雄(科学)
堀井謙一(日本文学研究)
本尾 実(数学)
松崎早苗(化学)
三輪 浩(物理学)
柳原二郎(数学)
矢吹 晋(中国経済)
吉川智教(経営学)


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