2000年の刊行書


ART&ist
大岩オスカール幸男特集
大岩オスカール幸男 
A4判・並製・98頁・4色カラー・日英両語併記・定価2500円+税
ISBN4-7738-0014-3
大岩オスカールは、1965年サンパウロ生まれの日系ブラジル人。10代の頃から漫画を描き始めた。大学では建築を学び、90年代に日本に移住した。コミカルで、ユーモラスなその作品は、時おり漫画雑誌でも見かけるが、その底には、世界規模の環境破壊、地域格差、エイズウイルスなどをめぐる社会的な問題意識が渦巻いている。
本書は、「現代アートはどこへ行くのか?」という問題意識のもとに、大岩オスカールの作品をカラーで一望すると共に、折々の文章に加えて、「アーティストインタビュー」も掲載されており、創造活動の秘密に迫る興味深い一書となっている。


アルコールと作家たち
ドナルド.W.グッドウィン/著 小山昭夫/訳
A5判、上製、320頁、定価2500円+税
ISBN4-7738-0017-8
米国の7人のノーベル文学賞受賞作家のうち5人もが「アル中」だった!なぜ、作家たちは駆り立てられるようにして酒を飲むのか?
アルコール中毒の研究にかけては世界的な権威であるグッドウィン博士は、この疑問を解くために、8人の作家【ポー、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、スタインベック、シムノン、フォークナー、オニール、ラウリー】を取り上げ、その生涯と作品を綿密に調査した。20年余にわたって続けられた研究は、作家たちの人間性と精神の闇に迫って、彼らの知られざる面を明らかにし、紋きり方に陥ることなく病跡学的な展開を示している。
自身も長年精神病とアルコール中毒の研究に携わってきた訳者による解説は、専門的な領域をわかりやすく説明し、本書の理解のための格好の一編となっている。文学的な面からも、病理学的な面からも興味深い書


ホセ・マルティ・黒之介
木村祥子=写真・文 装丁本永恵子
サイズ:縦210mm 横119m、上製、96頁、定価1500円+税
ISBN4-7738-0015-1
飼い主が溺愛しているネコの本がまた1冊、と言うなかれ。
物好きな飼い主によって、キューバ独立の英雄の名をとって、あろうことか、「ホセ・マルティ・黒之介」という、たいそうな名前を授かった黒いネコが見せる、興味津々の百態。母はアメリカンショートヘア、父は不明種。その一挙手一投足と、凛々しい表情は、ネコがもつ奥深くも魅力的な世界へと見る者を導いてくれる。

サンプル画像→


「棚田」インスタレーション
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ
ILYA/EMILIA KABAKOV
"THE RICE FIELDS" INSTALLATION
ECHIGO-TSUMARI ART TRIENNIAL
イリヤ/エミリア・カバコフ  作家のドローイング、写真(安斎重男撮影)多数収録。
装丁:イリヤ/エミリア・カバコフ+有賀強
A4判(横長)・80頁・並製・4色カラー 定価3000円+税
ISBN4-7738-0013-5
世界的な注目を集めるウクライナの現代美術家カバコフは、新潟の山間地域の四季折々の光景を見て、何を感じとったか。卓抜なインスピレーションに基づいて、田園風景の中に再現された、5つの彫刻と5つのテキストによる、伝統的な稲作の情景。オリジナルアイディア→米作の実際を観察しての修正→製作→設置→完成の全過程を日英両語でたどる。

サンプル画像→


夢のゆくえ
日系移民の子孫、百年後の故国へ帰る
モンセ・ワトキンス著  井戸光子  装丁本永恵子
46判、218頁、並製、定価2300円+税
ISBN4−7738−0008−9
19世紀末、太平洋を越えてはるか中南米の地に渡った日本人たちがいた。
百年後のいま、その子孫たちは、「黄金の国=ジパング」をめざして還流してきた。在日15年、日本社会と文化に通暁したスペイン人ジャーナリストが、一世紀に渡る移民の夢の「いま」を語るドキュメンタリー。

目次
第一章 河内丸が遺したもの
第二章 不況時の出稼ぎ労働者たち
    1 仕事はなし、給料も安く
    2 リストラ下の日本経済
    3 まだ日系人労働者は必要か
    4 ビザの取得はますます困難に
    5 悪夢のような一斉手入れ
第三章 日本に残るか、国へ帰るか   
    1 どこで生きていくのか
    2 日本に居残った人たち
    3 大きく変化したこの十年  
    4 日本社会に根を張る日系人たち
第四章 新たな課題   
    1 教育ーー将来のために今なすべきこと
    2 過程崩壊ーー出稼ぎで失ったもの
    3 増加する犯罪
    4 心と体を売って
    5 不運の再生産
おわりに 夢のゆくえ

【著者紹介】
モンセ・ワトキンス
1955年スペイン・バルセロナに生まれる。小津安二郎の『東京物語』に惹かれ、映画に舞台となった町を見たいと考え1985年来日。EFE(スペイン国営通信社)の記者として1995年末まで勤務。その後は、バルセロナの日刊紙AVUI特派員であり、また他の新聞や雑誌にもジャーナリストとして協力するほか、日本文化・歴史の研究、日本文学のスペイン語への翻訳に力を入れている。
日本語での著作:『ひかげの日系人』(彩流社)、『月光物語』(河出書房新社)スペイン語への翻訳:『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『風の又三郎』『坊ちゃん』『吾輩は猫である』(これのみ抄訳)『破戒』『高瀬舟』『斜陽』『人間失格』『怪談』など多数。 

訃報
モンセ・ワトキンスさん逝去


性の差異
La Difference des Sexes
ジュヌヴィエーヴ・フレス著 小野ゆり子 装丁有賀強
46判、168頁、上製、定価2300円+税
ISBN4−7738−0007−0
「女性的なもの」ではなく、思考する主体として女性が浮上する哲学思想書。
著者が愛読していたスピノッザにとって、「狂人、女性、子供」は同じカテゴリーをなすものだった! 読者として想定されていない、「非理性的な存在=女性」に位置づけられた著者が「性の差異」という、不在の哲学素をめぐって、プラトンから現代思想までを疾駆して、分析する。

目次
変なアイディア  愛  エロスと哲学者  経験性と貨幣  歴史と歴史性 断絶  明敏さ  他者性 

【著者紹介】
ジュヌヴィエーヴ・フレス Genevieve Fraisse
(1948― ) フランス生まれの哲学者、歴史家。国立科学研究所研究主任。1970年代以来、女性解放運動に関わる。1997年11月から翌年11月まで社会党ジョスパン政権で女性の権利省庁間連絡担当官を務め、1999年6月のヨーロッパ議会選挙では共産党のりすとから立候補し当選したので、現在ヨーロッパ議会議員である。社会党員でも共産党員でもないが、自ら語るところによれば、「70年代の政治活動」を経て、「政治の状況、女性に関する世論の状態、私的状況に応じて異なるやり方で、引きこもったり、表に出たり、絶え間なく行き来しながら、理論から実践へ、実践から理論へと移動」している、行動的な哲学者である。日本では、個別論文はいくつも紹介されてきたが、単著が翻訳・紹介されるのは初めてである。

2000年3月から6月にかけて、パリ首都圏で「ナヌムの家」が上映された。ビヨン・ヨンジュ監督もパリへ駆けつけた。3月26日、クレテイユ女性国際映画祭に際しての上映の時には、『性の差異』の著者ジュヌヴィエーヴ・フレスも参加し、上映後に簡潔なスピーチを行なった。「ナヌムの家」パリ上映委員会のコリン・コバヤシさんのご好意により、フレスの発言を紹介する。「発言1」  
去る11月29日、一週間後に東京で開かれる「女性国際戦犯法廷2000」に連帯するための記者会見がパリで開かれた。この席に、『性の差異』の著者ジュヌヴィエーヴ・フレスがいた。以下は、その場に同席した「ナヌムの家」パリ上映委員会のコリン・コバヤシさんが寄せてくれた記者会見のもように関する報告である。「発言2」


アンデスで先住民の映画を撮る 
ウカマウの実践40年と日本からの協働20年
太田昌国/編 装丁:本永恵子
A5判、312頁、並製、口絵写真・資料写真多数、 定価3000円+税
ISBN4−7738−0012−7
風に舞うポンチョ、冷気を震わすケーナの響き。神話の果て、アンデスの魂を映像に刻み続けるボリビア・ウカマウ集団。「映像による帝国主義論」の創造を経て、先住民世界への「越境」を試みる果敢な営為と、日本からの協働実践をふりかえる。

『第一の敵』『コンドルの血』『地下の民』そして最新作『鳥の歌』など、この20年来全作品が自主上映されて、全国各地に根強いフアンをもつ南米ボリビア・ウカマウ集団&ホルヘ・サンヒネス監督は、映画造りにむけてどんな試みを行なってきたか。

映像による帝国主義論、西洋的映画文法の解体、先住民の価値観の重視など、個性あふれるその全貌を示す。同時に、自主上映の形で協働し始めた日本側スタッフの、共同製作へと至る歩みを多角的な構成で明らかにする。

目次
関連マップ
ウカマウ集団の映画とは何であり、何であったか ホルヘ・サンヒネス
ウカマウ映画を知るための五つのキーワード   太田昌国

第一章 ウカマウ自身によるウカマウ映画
ボリビアの経験                ホルヘ・サンヒネス+ウカマウ集団
集団制作の映画へ向けて、われわれはなお試行する ホルヘ・サンヒネス
文化の政治と労働者階級            ホルヘ・サンヒネス
政治亡命を終えて、故国へ帰ってから      ホルヘ・サンヒネス
もうひとつのコミュニケーション        ベアトリス・パラシオス
内省の場としての映画             ホルヘ・サンヒネス+マリオ・ベネデッティ
ホルヘ・サンヒネスへの一九の質問       ホルヘ・サンヒネス
映画における感動と隔意            ホルヘ・サンヒネス
アンデス映画学院がめざすもの         ホルヘ・サンヒネス

第二章 ウカマウ映画の周辺から
マチュピチュ アメリカの石の謎        エルネスト・ゲバラ・セルナ
『第一の敵』の画面で旧友に出会う       マリオ・ホセ・アタパウカル
それは暁と呼ばれる              グラウベル・ローシャ
サンヒネスの映画に出演する          ジェラルディーン・チャプリン

第三章 ウカマウ映画を〈読む〉
ウカマウ映画ーー伴走のクロニクル          松田政男
支配しない〈知〉のほうへ ウカマウ映画論      太田昌国
ウカマウ映画の中の女性像              唐澤秀子
〈着がえる〉身体                  児島峰
新たなる「革命映画の創造」へ向けて         平沢剛

第四章 自主上映から共同制作へ
ウカマウ映画自主上映二〇年の軌跡をふりかえる 平沢剛/太田昌国/唐澤秀子/坂口一                       直/児島峰/松田政男/小野沢稔彦
ウカマウ自主上映初期ー八〇年代初めという時代 
           光州 ウカマウ 釜が崎 蜷川泰司
『第一の敵』の季節              鵜飼 哲
上映運動ーー余滴と異聞            太田昌国
第五章 フィルモグラフィー
あとがき


船の救世主
ロドリゴ・レイローサ/著 杉山晃/訳 装丁:本永恵子
46判、上製、140頁、 定価1600円+税
ISBN4−7738−0011−9
主人公は模範的な軍人の海軍大将。規律を重んじ、禁欲的で、完璧主義者だ。しかし、軍人に義務づけられた精神鑑定を受けることになったことから、彼の頭の中の歯車が狂いはじめる。

 異常性は次第に大きく、抑えがたいものになり、ついには凶行におよぶ。だが、沈む船も、人を呑み込んだ海も、あくまで静かだ。太陽は相変わらず照り続け、海軍大将は常に変わらず礼装を調え、会合に出席するための準備を続ける……

ファナティックな人物や組織が陥りやすい狂気の世界を、持ち前の、優雅で、余白に満ちた文章で描ききる、これぞ、レイローサ・ワールドの真髄!先に刊行したレイローサの作品『その時は殺され??』は、去る8月26日放映のNHK・BSブック・レビューで吉岡忍氏によって取り上げられ、座談会出席者の辻井喬氏、山口果林氏、児玉清氏らがいずれも高くこの作品を評価されました。


日本ナショナリズム解体新書 発言1996−2000
太田昌国/著 装丁:本永恵子
46判、上製、324頁、 定価2500円+税
ISBN4−7738−0009−7
米国主導のグローバリズムに合わせて、経済諸領域・貿易・文化のあり方を急速に変貌させる日本社会。他方で、それとバランスをとるかのよう噴出する偏狭なナショナリズムの衝動。

都知事の「三国人」発言、首相の「神の国」「国体」発言などは、「不況・失業・リストラ」などに窒息する社会の底辺に暗く澱む、不満感情・怨念の炎に、油を注ぐはたらきをしている。

他者を迎え入れず、貧しく閉塞する日本の社会・文化・政治・文学の状況を批判的ない内省する1996−2000年の諸論考を集成。

論じる対象は、司馬遼太郎、丸山真男、吉本隆明、山内昌之、中島ゆみき、船戸与一、目頭真俊、小林よしのり、ラーゲリ、ペルー人質事件、ベトナム戦争、東チモール、周辺事態法、日の丸君が代、天皇制、ユーゴ空爆、自由主義史観、アイヌ文化法、オウム裁判、映画「プライド」など、多岐におよぶ。


「ゲバラを脱神話化する」
太田昌国/著 装丁:本永恵子
新書版、上製、171p、定価1500円+税
ISBN4−7738−0005−4
「英雄的なゲリラ戦士」の「栄光」に包まれてきたゲバラを、傷つき、悩み、苦しみ、絶望する、等身大の人間として解釈しなおす。

ボリビアにおけるゲバラの死から30年目を迎えた1997年。発掘された遺骨がキューバに帰り、米国、メキシコ、フランスで何冊もの大部のゲバラ伝が出版され、封印されてきた重要資料も公開され始めて、旧来のゲバラ像は大きな変更を強いられた。社会主義の「敗北」もまた、ゲバラの再解釈が必要であることを示した。著者はこの問題にどう対峙しているのか?
目次
 1、ゲバラはなぜかくも魅力的だったのか
 2、チェ・ゲバラと私たちの時代
 3、第三世界は死んだ、第三世界主義万歳!
 4、「神話」からの解放、ゲバラの、そして私たちの
 5、ゲバラは死んだか 
 6、ゲバラとキューバと1960年代をめぐる最近のいくつかの事態に関して
 7、「複数の」ゲバラ像のために


さよなら腕木式信号機&タブレット
君島靖彦/著・撮影
290×240mm・ソフトカバー・128p 定価3800円+税
ISBN4-7738-0003-8 C0065
写真はカラー85枚、モノクロ176枚。腕木が光る!タブレットが宙を舞う!

失われゆく非自動閉塞の写真集。
第1部写真編では、あの懐かしい腕木式信号機やタブレットの交換風景をカラー85枚、モノクロ176枚のボリュームで収録。秩父鉄道・名古屋鉄道・花輪線・八高線(全通過)・因美線の特集、現役腕木式信号機を全て紹介。

 第2部資料編も充実。腕木式信号機の各部名称、路面電車の通票式や代用閉塞方式を含む非自動閉塞の詳細、通過の取扱い、バラエティーに富むコラム、そして全国の通票類の種別が一覧表に。専門書として現在・近代の情報が満載。 この10年で駅での運転扱いは殆ど過去のものとなり、多岐にわたる実例も次々と姿を消していった。もう戻れない、非自動閉塞末期の貴重な記録。


オール・アバウト・マイ・マザー
ペドロ・アルモドバル/著  杉山晃/訳
A5判・上製・ハンディな148p 定価1600円+税
ISBN4-7738-0001-1
スペイン・パンク映画の奇才は手練の文学者でもあった!
臓器移植、ドラッグ、同性愛、トランスジェンダー、エイズ、シングル・マザー現代の社会風俗を折り込みつつ、アルモドバルがこよなく愛する映画・文学作品・映画 ……ジョゼフ・マンキーウィッツ「イヴの総て」、テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』(小田島雄志訳、新潮文庫、1988年刊)、トルーマン・カポーティ『カメレオンのための音楽』(野坂昭如訳、早川書房、1983年刊)、ガルシア・ロルカ『血の婚礼』(牛島信明訳、岩波文庫、1992年刊)を巧みに引用しながら綴られてゆく、すべての女性に捧げられた女性讃歌!

「オール・アバウト・マイ・マザー」:原作シナリオと映画の間 唐澤秀子(現代企画室編集部)

アルモドバル略歴
1950年代、スペイン中央部にあるシウダー・レアル県に生まれる。8歳のときとともに南西部のエストレマドゥラに移り住む。そこで中高等教育を受け、映画館に通いはじめる。16歳のとき、ひとりで首都マドリードへ。家族も金もなく、ひとつの目標だけを抱いていた――勉強し、映画をつくること。
映画学校への入学がかなわず、独学で映画を学ぶ。さまざまな職業を転々としているうちに、スペイン電話会社テレフォニカで〈まっとうな〉職を得て、ようやくスーパー8ミリ・キャメラを手に入れた。夜になると文章を書き、劇団〈ロス・ゴリアルドス〉で芝居を演じ、仲間たちと8ミリ映画を撮ったりした。一年半にわたる波乱に満ちた撮影のあと「ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の女の子たち」を完成させる。それ以来、映画とともに生きている。
フィルムグラフィー
「ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の女の子たち」(1980)
「セクシリア」(1982)
「バチあたり修道院の最期」(1983)
「グロリアの憂鬱 セックスとドラッグと殺人」(1984)
「マタドール 炎のレクイエム」(1986)
「欲望の法則」(1987)
「神経衰弱ぎりぎりの女たち」(1988)
「アタメ 私をしばって!」(1990)
「ハイヒール」(1991)
「キカ」(1993)
「私の秘密の花」(1996)
「ライブ・フレッシュ」(1997)
「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999)


ラテンアメリカ文学バザール
杉山晃/著 
46判・並製・192p 定価2000円+税 ISBN4-7738-0001-1
ラテンアメリカの現代文学は、なぜ、かくも人びとの心を惹きつけるのか。
メキシコのルルフォ、キューバのアレナス、アンデスのアルゲダス、そしてあの大陸を離れ外部からの眼差しも交えて自己の土地を凝視するセプルベダやレイローサなどの若い世代の作家を意欲的に紹介する杉山晃の、『南のざわめき』に続く第二評論集。

第1部 ラテンアメリカの作家たち     7

1 ガルシア=マルケス――友情と銃弾   8
2 バルガス=リョサ――笑いと反逆     15
3 ルルフォ――荒涼たる風景        22
4 プイグ――老いと死           28
5 アレナス――苦難の日々         33
6 ボルヘス――書物と闇          38
7 コルタサル――聖なる時間        46
8 イサベル・アジェンデ――あふれる物語  51
9 カルペンティエル――旅と魔術       58
10 ビオイ=カサーレス−−幻と狂気     63
11 オクタビオ・パス――強靭な知性     68
12 ネルーダ――すべてを詩に        73
13 ブライス=エチェニケ――饒舌な語り口  79
14 オネッティ―― 強力な磁場        83
15 フエンテス――仮面と鏡          87
16 アルゲダス――ふたつの文化の狭間で   92
17 アストゥリアス――新しい小説の夜明け  99
18 ドノーソ――ブームの時代       105
19 マルティ――詩と独立運動       112
20 セプルベダ――文明の野蛮性       117

第2部 ラテンアメリカ文学の周辺       121
1 ペルーでの日々       122
2 アルゲダスとハサミの踊り手      131
3 小説と映画       141
ネルーダと「イル・ポスティーノ」/マヌエル・プイグと「蜘蛛女のキス」/
ボルヘスと「エビータ」/バルガス=リョサと『フリアとシナリオライター』/
ルルフォと「黄金の鶏」/ガルシア=マルケスと『十二の遍歴の物語』
4 日本文学の翻訳      153
新しい翻訳家たちの登場/春樹やばななよりも谷崎や川端/芭蕉のハイク
5 コラム集       161
リベイロの暖かな筆致/バレンスエラの女性たち/モンテロソの笑いと皮肉/
ボンバルの繊細さ/アントニオ・シスネロスの小さな物語/
パチェーコの鮮やかな戦略/ペドロ・シモセの詩集/スコルサの『ランカスのための弔鐘』/
クロリンダ・マットの『巣のない鳥たち』/ビクトリア・オカンポの詳伝/
ペリ=ロッシの淫靡な妄想/ロア=バストスの独裁者小説/
ルベン・ダリーオの新しい文体/レサマ=リマの栄光と哀しみ/
ベネデッティのコラム集/ロペス・アルブーハルの官能的な小説/
マストレッタの恋愛小説/ラウラ・エスキベルの調理場/レイローサの白日夢

あとがき     191


路上の瞳 ブラジルの子どもたちと暮らした400日
木村ゆり/著 本永恵子/装丁
46判・並製・336p 定価2200円+税 ISBN4-7738-9914-X
栄華をきわめる大都市の中心部で路上をねぐらとして生きる子どもたち。その子どもたちとの関わり合いを求めてブラジルに渡った著者は、あるNGO(非政府団体)に参加し、子どもたちに寄り添う日々を重ねるにつれて、信頼と愛情をもって迎えられるに至った。

その四〇〇日のあいだに育まれた友情を絆に、路上の子どもたちの劇団は来日し、各地で公演を行なった。

自由で、シンプルな生き方を求める現代女性の、しなやかだが、強靭で、地に足のついた、異文化との接し方。


転覆の政治学
アントニオ・ネグリ/著  小倉利丸/訳 有賀強/装丁
A5判・上製・270p 定価3500円+税 ISBN4ー7738ー9913ー1
「労働」の主力が、生産労働からサービス労働・情報処理労働に移行し、質的な大転換を迎えている先進社会。

そこでの社会的闘争/階級闘争は、いかに展開されうるのか。失業者、女性、移民、サービス労働者、ゲイ、少数者……社会的闘争の、多様で新しい主体の登場を告知して、 マルクスの読み方を大胆に変え、新しいマルクス主義の構築へと向かうネグリ理論。

【目次】                                  第1章 パリ1986、11月26日〜12月10日  
第2章 世紀の終わりに
第3章 大衆化された労働者から社会化された労働者へ
第4章 工場からエコロジー機械へ
第5章 社会化された労働者の世界経済
第6章 成熟した資本主義の収奪
第7章 敵対的な主体性の生産
第8章 オートノミー、秘密組織から<党>へ
第9章 「社会的実践」について
第10章 市民社会の旅(ブルックナーの思い出に) 
第11章 実践的包摂の局面における国家と階級  
第12章 「核国家」概念に関するノート
第13章 新たな価値に向けて
解説「「ヤン・ムーリエ


荒川の部落史 まち・くらし・しごと
「荒川部落史」調査会=編 本永恵子/装丁
A5判・並製・188P 定価1800円+税 ISBN4-7738-9915-8
浅草から移転した人びと、滋賀県をはじめ各地から仕事を求めて移住した人びと。いまからおよそ百年前、そのような「新住民」によって、 東京・荒川の「部落」は成立した。 一般社会の偏見と差別のなかで、人びとはどんな仕事に就きながら、 どんな思いでこの時代を生きてきたか。

人びとからの丹念な聞き取りと、緻密な文献資料の調査を通して、 ある仕事を必要とする社会が、その技術の担い手を差別するーーという 日本社会と文化のあり方の問題点を抉る。 町の、めまぐるしい変化を背景に描かれた、土の匂いがする地域史。

【本書の目次から】        
皮革産業の歴史と弾左衛門     都市化と産業化のなかで
近代のはじまり          まちの形成と人びとの暮らし
近代の皮革産業がつくられる    水平社運動の影響と差別糾弾
新谷町に集まる人びと       戦時下ー疎開、東京皮革の成立
三ノ輪、三河島への移転と定住   戦後の荒川

【主な執筆者】友常勉・藤沢靖介