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中村哲さん/第2回報告会(156号掲載

安易な対立の構図否定

対立のフィクション

 10月10日、衆議院第二議員会館で、9月26日(本紙前号参照)に続いて2回目となるペシャワール会の中村哲さんの報告会がおこなわれた。中村さんは、パキスタンの国境地域やアフガニスタン国内で17年以上医療活動に携わっている医師。今回は、主にアフガニスタンの複雑な国内情勢について説明した。
 中村さんは、「無限の正義米国対悪の権化タリバンという図式に単純化することは無理がある」と指摘し、2万人程度のタリバン兵が、各地域を取り仕切る長老会の九割の支持を得ているのは、イスラム法的秩序で、内戦状態を終わらせ、国家を統一し、民衆に平和をもたらすのが先決という消極的支持も含まれているからだ、という。
 また、地域の支持を得た政権であるため、誰がタリバンかと限定することも難しい一方、平和が脅かされるとなると必ず反タリバンの動きも出てくる、ただし、それに代わるものは考えられず、つまりタリバンの穏健化以外に道はないというのが、八割方の民衆の考えだろう、と語った。
 中村さんは、カブール市民は、アメリカの空爆が拠点攻撃と分かると、むしろ混乱に乗じた北部同盟などの軍隊のカーブル進駐をより恐れている、という。日本で伝えられるアフガニスタンの情報源は北部同盟側からのものが多いことは確かだろう。
「民衆はより穏健な政権が権力につくということを望んでいる。ただし米国の力による政策によってそうなったのではなく、過去22年の内戦を経験してもう血を見るのは嫌なのだ。公式には言わないが、アフガニスタンの対アラブ感情はあまりよくない。アラブ人のために自分たちの国を荒らされているという意識がどこかにある。タリバンも含め、(旧ソ連と戦った人物である上、異国からの客は丁寧にもてなすアフガンの伝統はあるが)オサマ・ビン・ラディンの存在を喜ぶ人はあまりいない」(中村さん)

難民を出さないために

 中村さんは著書『医者 井戸を掘る』(石風社)などで、アフガニスタンは地球温暖化と国連経済制裁の犠牲者であると述べている。この17年の間、ヒンズークス山脈の降雪量が減ると同時に、雪解水の量も降雨量も激減、地下水の水位も下がってきた。そこへ昨年夏からの大干ばつ。アフガニスタン国内で、千二百万人が被災した。田畑や牧草地が砂漠化したため、農民や遊牧民が都市に流れ込んだが、アメリカや国連は、アフガニスタンをテロ支援国家に指定し経済封鎖を続けて事態を悪化させている、と。
「次の恐怖は砂漠化。1000万人以上の人が住居を失い、政治混乱から国際秩序の崩壊が起きる。そうなればテロの温床という以上の意味さえ持つことも射程に入れ日本ができる国際貢献は、大量難民を出さないための努力」「今パキスタンで百四十数団体も外国の難民援助団体が手ぐすね引いて待っているが、難民よ出てこいという動きに日本はのるべきではない。パキスタンでは難民の強制送還が始まっている。有効な援助を情報を十分集め支援すべき」「アフガニスタンはパキスタンと並び、世界で最も親日的な国。それ故にできることがある。日本の恥になるようなことはすべきでない」と訴えた。


 
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