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『一坪反戦通信』
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 第168号(2005年6月28日発行)

5月30日第11回公開審理

今回で審理が終了 — 7月8日に裁決の予定


 5月30日、那覇市自治会館で第11回公開審理が開かれ、土地所有者の意見陳述が行われた。

 1913年生まれ、今年92歳を迎える中村文子さんは、「空に一機の軍用機も飛ばない、地上に一台の戦車も走らない、海に一船の軍艦も浮かばない、本当の沖縄を取り戻したいという願望があるから。もっと長く生きたいと努力を続けている。本当の沖縄を取り戻したと沖縄戦で亡くなった同胞に報告したい、人殺しの練習をするための基地は一坪も置かない。豊かな自然の沖縄を子供たちへの遺産にしたいという念願をもっている」と発言した。

 少女期から青年前期にすりこまれた公民化教育を、教師になってから今度はそれを教え子にすりこんだ。子供たちに日の丸の旗を振らせ、天に響くような大きな声で歌わせて出征兵士を送った。ひめゆりの学友の中に重症を負い、軍の解散命令のあと壕に残された教え子がふたりいた。「暗い壕の中で傷の痛みに耐えて、死と向き合ってすごした彼女たちを忘れることができない」と声を詰まらせた。沖縄戦で母親に抱かれ、兄姉におぶわれて戦場の砲弾の雨の中を逃げ延びた赤ん坊が定年退職を迎える年になった。戦争をどうしても語り継ぎたいと思っている体験者もどんどん世を去っていった。憲法9条、教育基本法がゆさぶられ、国民保護法などというものがでてきた。こんな社会の情勢だからこそ「私たちは沖縄戦を繰り返すことはありません。沖縄の平和、日本の平和を築くために最大限の努力を尽くしますと未来永劫にわたって誓い合いたい」と陳述された。

 続いて謝花悦子さんは、戦争、軍備に対して言葉に表せないほど憎しみをもっている。強制的に土地をとられて60年になるというのに自分の土地は返還されず、戦争準備のための道具にされている。デンマーク式農民学校を造るため阿波根昌鴻さんが半生をかけて土地を用意し、学校は80%が完成していたが、60年前の戦争によって破壊された。戦後、再度学校建設のための準備をしたが、強制接収された土地は返還されずに今日に至っている。土地が解放されたら学校を造るという望みを本人は果せなかったが、阿波根昌鴻さんの遺志は一日も早く実行したい。人間としての権利、地主としての権利はまったく無視されてきた。これ以上憲法に反することはやめてほしい。恐怖のない社会をつくるために国は予算をつくり、知恵と力をすべての国民に与えてほしい。これから生まれてくる子供たちを平和で安全で安心できる社会に迎えるため、軍備をやめ、土地を解放してほしいと訴えた。

 島袋善祐さんは、嘉手納基地の滑走路は4000メートルある。大根を蒔くと1列に20万本が生産できる。7列つくると140万本!沖縄県民ひとりひとりに1本ずつ配れる。防衛施設局の人にもあげましょう(会場内爆笑)。軍事基地を返されたら大変なことになるよと言う人もいるが、これは我々の祖先から引き継ぐ土地の平和利用である。土地は人を殺すものではなく、人を育てるものにつくりあげたい。収用委員会は土地を返すよう判断してほしいと強く訴えた。

 宮城政雄さんは、前回の収用委員会で地籍不明地の強制使用却下裁決がだされた。今回も使用申請を却下するよう強く要求した。米軍特措法が2度も改悪されて、収用委員会の権限を奪い、いくら反対しても総理大臣の一存で土地をとりあげて米軍に提供できるようになってしまったが、日本国憲法の理念を堅持して、却下裁決をだしてほしいと訴えた。

 阿波根弁護士は、今回の審理中に弁護士の基地内立ち入りができ、基地としての的確性が失われていることを実感した。地主が主張することと施設局が説明することに乖離があるが、現場を確認することによって地主が主張していることが正しいという印象を受けた。前回の収用委員会では、地籍不明地、位置不明地の強制使用手続きはまちがっていると申請を却下した。その精神はいまでも正しく、維持すべきである。さすが沖縄の収用委員会はすごいといわれるような裁決をだしてほしいと訴えた。

 仲山弁護士は。那覇防衛施設局は沖縄県民のおかれた状況、基地の使用状況をまったく無視して、安保あるがゆえに使用申請をしている。収用委員会が独立国家としての誇りと、基地がもたらす被害、県民に対する良心があるならば申請をただちに取り下げてほしい。それが収用委員に与えられた歴史を切り開く任務である。歴史は現在に生きるものにしか未来を託せない。沖縄の未来を託すためにも勇気をもって申請を取り下げるよう訴えた。

 有銘政夫さんは、収用委員会は沖縄の側にたって、憲法の立場にたって、すべて却下してほしい。今回の公開審理では地籍不明地についての防衛施設局の法的根拠のないいいかげんさと責任逃れが明らかになったと思う。その点も最大限に考慮して、ぜひ却下の方向で全力を投入してほしいと特段の要請をした。

 今回の意見陳述には10名の反戦地主と2名の弁護士がたった。地主の方々は異口同音に、土地は生命を育てるものである。戦争のために土地は貸さない。基地がなくなるまで闘い続けると発言され、収用委員会は憲法の理念を堅持し、県民の人権、財産権を守るため、自主的、主体的に勇気をもった決断をくだしてほしいと強く訴えた。今回の審理で、普天間飛行場等11施設についての審理が終了、7月8日が裁決予定となっている。

 2003年3月13日から2年3ヶ月間におよぶ公開審理でした。公開審理は公の場で反戦地主の生の声を直接聴くことができる機会です。正しいと信じることはどこまでも貫くその意志の強さに毎回深く感動しました。審理後の交流会では、時間の制約があって発言できなかったこと等々、更に突っ込んだお話が聴けました。その言葉のひとつひとつを思い出して胸が熱くなります。

 渡具地会長、比嘉会長代理、大城委員が7月15日で任期満了とのことですが、収用委員会は事実と地主の方々の思いを受け止めて、公正な裁決をしてほしいと思います。                (I)