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『一坪反戦通信』
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 第156号(2004年5月28日発行)

前編

第10回連続学習会

「環境アセスメントと市民アセス」(後編)

(2004年3月5日  中野商工会館)

講師 花輪伸一さん(WWFJ)



 使用機種が不明ではアセスができない

 それから米軍に限らず、民間航空会社にしろ一体どんな飛行機を使って1日何回ぐらい何時から何時の間に飛ぶのか、まだこれがはっきりしないですね。少なくとも代替施設の環境アセスメントというのは空港の建設に関わるアセスメントですので、空港の基本的な使用状況、どんな飛行機がどのくらい、いつ飛んで来るのか、これがなかったらアセスメントのしようがないわけです。当然、米軍の軍用機は普天間飛行場所属のヘリコプターが移ってくるのは予想されますが、それ以外に飛んでくる米軍の軍用機の機種についてはわからない。では民間機はどうなんだ、軍民共用空港と言っておきながら民間のどの航空会社がどんな機種を飛ばすのか、全くわからないわけです。

 では、環境アセスメントは誰がやるのか、これは皆さんご承知のように国か県かでもめていましたが、防衛施設庁がやるということで一応決着をみた。しかし防衛施設庁設置法には民間空港を作るというのは一言も書いてない。それをごまかして、防衛施設庁の設置要綱の中の軍用空港等の中でやるんだというように法の根拠が曖昧なまま、違法のまま国がやろうとしている。現地技術調査の問題、使用すべき飛行機がはっきりしないアセスメントの曖昧さ、こんな状況でものごとを進めるということになればこれは環境アセスメント法を全く無視したいい加減なものです。
 
 63カ所もなんでボーリングを打つのかというと、関西空港で失敗しているんです。ボーリングをして地質構造を調べて、埋め立てをして、関空を作ったがどんどんあの空港は沈んでいるんです。最初のボーリングの本数が足りなくて、予測が悪かったので沈みはじめた。それの失敗に懲りてたくさんボーリングを打ち込んで、できるだけ精度のいい調査をやって設計をしようというものです。しかしながら外洋を埋め立てて空港を作る例は世界中にどこにもないはずです。関西空港も中部国際空港も、あれは内湾に位置しているわけですから、外洋の波がもろに当たるところにはない。ところがこれは、太平洋からの波がもろにこの空港にぶち当たるわけです。塩水ですから、そんなのを被った飛行機が長持ちするわけがない。軍用機はともかくも、航空会社がこんな所に飛行機を飛ばすだろうか。絶対にいやがります。


 市民アセスの闘い、藤前干潟の場合

 こういう国のいい加減な環境アセスメントに対して、市民はどう対応していったらいいのか。今までの例、市民が自ら調査をやって政策を覆したいくつかの例について見ていきます。
 
 伊勢湾、名古屋市の一番奥に位置する藤前干潟は323ヘクタールの面積ですが、渡り鳥がたくさんやってきて日本でも1位から10位の間に入る、年によって変動がありますが、渡り鳥の渡来地として日本でも有数の干潟です。ここに名古屋市は、ゴミ処分場を作ろうとした。この藤前干潟を埋めないと名古屋市はゴミであふれかえるというのが名古屋市の主張で、ずっと政策を変更せずにやろうとしてきたわけです。ところが一方では、渡り鳥の渡来地で日本でも有数の所だということでここでも環境アセスメントが行われた。この時代は、環境アセスメント法がなくて、閣議アセス、それから名古屋市の環境アセスメント要綱ですね、この二つに則ってアセスメントが行われました。

 ここで面白いというか、すごかったのが当時の名古屋市の環境アセスメント要綱で日本でも当時は一番進んでいた制度だったんです。その手続きに則って名古屋市が淡々とアセスメントをやっていくわけです。名古屋市は環境アセスメントを新日本気象海洋という会社にまかした。その会社の報告書ではシギ・チドリ類が藤前干潟の埋め立て予定地の部分を利用する割合は3パーセント程度で渡り鳥や干潟への影響は大きくないという評価書案を出してきた。一方、環境NGO「藤前干潟を守る会」の調査では全く逆の結果となっている。利用する割合は大変高いという結果だった。

 コンサルタントがなぜ利用率が低いという結果を出したかというと、調査日時によるわけです。シギ・チドリ類というのは、干潮時に干潟が出ているときに、この干潟にやってきて餌を食べる、満潮で干潟が沈めば食べられなくなるので別のところに行く、こういうことを繰り返すわけです。ところが潮時の悪い、干潟があまり出ない日に調べれば、鳥が少ないのは当たり前なんです。その辺がコンサルタントと環境NGOの調査日時の設定の仕方で調査結果がこれだけ違ってくる。それを名古屋市の環境アセス審査委員はしっかりと見抜いたということなんです。そして再調査をすることになって、やってみたらその通りだった。

 この結果から、環境アセスメント審議会は環境や渡り鳥への影響が軽微であるというのを書き直させて、環境や渡り鳥への影響は明らかであるというのがアセスメントの結論になったわけです。藤前干潟の問題は1984年に計画があって、90年に名古屋市が埋立を断念するまで15年かかっている。名古屋市の環境アセスメント要綱が先進的だったのは、公聴会の口述人は、公募なんです。公募して意見を言わせる自治体というのは当時ほとんどなかった。私も募集に応募したら合格したんですね。そして口述人、顔を合わせてみたら全員反対意見の人だった。ここは名古屋市が正直にやったんです。悪知恵の働くところでしたら、反対は半分にして半分は賛成派を入れてくるという、あるいは賛成派の方を多くするという小細工をやりますけど、名古屋市はそれをやらずに10人とも反対意見を述べる、しかも1回の予定だったのが口述人は一人で10分の所を1時間近く延々としゃべる。そしたらフロアからも名古屋市の政策に対して批判が次々と飛び出してくる。1回目じゃ終わらない、2回目をやった。2回目でも終わらない、3回かかりました。その間に半年くらい、名古屋市としては公聴会のために時間を取られてしまった。そして、この影響審査、影響評価審査委員会で出た結論が干潟への影響は明らかである。そこで、名古屋市はすぐあきらめないで人工干潟を作るから埋立をやるんだと主張したんですね。この時も人工干潟のための検討委員会というのを作ったわけです。

 名古屋市の良かったところは評価委員会も検討委員会も人選がすばらしいんです。環境影響評価委員会には、鳥の専門家がいなかったので、二人の野鳥の専門家を委員に選定した。その委員がきちんとした人たちで、調査結果を科学的に判断して、意見を出していく。審議会の席でNGOの調査の正しさを認めた。人工干潟についても別の鳥類学者がきちんとものを言っている。結局古屋市としてはどうしようかと言っているうちに、環境省が出てきて、環境省の説得に応じて名古屋市は断念した。環境省はこの時には、諫早湾の干拓問題で何のいいところも見せられなかったけれども、名古屋市に対しては自治体相手なのでできたんです。諫早干拓のような農水省が相手だとなかなか強気には出られないけど。それでも環境省をほめるべきだろうと我々は考えています。


 愛知万博と海上の森

 名古屋市郊外にある海上の森で、愛知万博が2005年に行われる予定でした。海上の森という里山なんですが、この山には多くの野鳥が住み、植物も豊かで人が里山を利用してきた雰囲気が良く残されている所です。ここに最初に万博会場を計画したわけです。ところが万博によって、アクセス道路を造り、会場、パビリオンを幾つも作り、そして半年経つと終わりですから、終わった後どうするかというと、道路はそのまま残し、開発した所は住宅地や商業地域に再利用するという計画です。

 これは、万博を口実に森を開発してここを宅地化しようという話しなんですね。それに対して、環境NGOがこの森の保全を訴えた。そして万博協会、パリにありますけど、そこからも委員がきて視察をしたりする。環境アセスメントも行われ、住民の意見も聴取するようになり、環境NGOが実際に自分たちも調査をやって、オオタカの繁殖地を見つけたわけです。そうするとオオタカの保全のために開発は控えなきゃいけないということになってきた。結局、隣接地にある青少年自然公園に会場計画が変更になって、森の大部分は保全された。これも環境アセスメントの大きな成果です。そのアセスメントに対して市民が参加してものを言っていく、そして検討会議が、円卓会議と言っていますけど、開かれた。これに万博促進派、それから海上の森保全派、それから万博なんかいらないという、そういう30人くらいの円卓会議で延々と討論を繰り返してこの場で合意を見たということです。やはり自然環境をきちんと調べ、価値を明らかにして、開発した場合にはどういう影響が出るのか、その開発を取るのか保全を取るのかそれを皆で考えようというアセスメントの手法というのが非常に効果的なわけです。


 諫早湾干拓と市民版時のアセス
 
 それから諫早湾、有明海。1997年に堤防で、干潟が閉め切られて貝類やカニ類ゴカイ類がほぼ全滅したわけです。今でも盛んに開発計画を実行してます。これに対して2000年に「市民による諫早干拓時のアセス」というプロジェクトができた。環境NGOと研究者が共同で現地や資料を調査をして「時のアセス」をやったわけです。時のアセスというのは、これは環境アセスメントをやってゴーサインが出た後5年以上も事業が進まないとき、もう一回評価するということで、農水省の委員会でこれを評価するもので、社会状況は変化していないし環境への影響も軽微であると言うことで、多くの場合追認するのが時のアセスだったわけです。

 そのアセスの委員会に、この「時のアセス」NGOが疑問をぶつけた。その中で、営農計画に非常に問題があると。もともとは稲作だったのが減反でできなくなって、ジャガイモだ酪農だと言っているけど、こんな所でジャガイモを作ったってだめだ、北海道で夏場にジャガイモを作って冬場にできないから、冬場に長崎県でジャガイモを作れば儲かるという話しだが、そんな所でジャガイモを作ったら、そのかわり長崎県内のジャガイモが値崩れを起こすという指摘がされている。

 それから防災計画も、となりの佐賀県などでは、国土交通省のほうがいい堤防を作って、そっちのほうが防災効果も確実である、そういうふうなことをはっきりここで調べ上げたわけです。そして諫早湾干拓によって有明海全体がおかしくなっているということを関連づけているわけです。そして費用対効果、農水省の場合には、費用対効果が一定以上じゃないと 干拓をしちゃいけないわけです。簡単に言えば、干拓事業をやるのに100円かかるとする、100円投資して後で儲かるお金は100円以上じゃないといけない。その時に農水省が公的に言っていたのが100円投資した結果103円だから3円儲かりますというのが農水省の計算結果だったんですが、これを経済学者が計算し直してみたら0.3ぐらいで、7割損だというのがここではっきりと出てきている。

 そういうことで市民は再評価としては、このアセスメントで諫早湾の干拓事業は止めるべきであるという報告を出して、この委員会にぶつけたわけです。しかしながら、結果的にはその委員会は中で大分もめて肝心の所だけ非公開でやって、委員の中にはやっぱり見直すべきだという意見もかなり強かったようですが、環境への影響に対して十分な配慮をするようにという言葉が入ったということです。これまでの委員会に比べれば、そういう言葉が入っただけでも、相当なこれは力になりました。その後、農水省は干拓面積を半減した。これは市民のアセスの力と言ってよいが、しかし、堤防は閉め切ったままですから、干潟の回復にはつながらない。根本的問題が未解決のままです。

 実は諫早湾の問題は、最初の大干拓構想は1952年で、それが姿を変えて2003年になっても未だに続いている。最初は漁民の闘争だったわけで、陸の上の市民はほとんど知らなかったし関係もないと思っていた。だんだん環境NGOが干潟を守ろうということを進めていった。その時には実は漁民は切り崩されて補償金を貰って、運動から手を引いている人が多くなっていた。しかしながらまだ漁業を続けたい人たちが、貝がとれない、魚がとれない,海苔までがとれなくなったということで、有明海全体が悪くなっていることに対して声を上げ始めた。2000年の海苔不作というのが大きなきっかけになって、連日テレビのニュースで報道されたけれど、実は,2000年の海苔不作の10年前から、魚がとれない、貝がとれない、エビがだめというのがずっーと続いていたんです。そういう漁業、漁師たちはひとりひとりでは力が小さいものですから、声を上げても取り上げられなかった。そして今度は、ノリ漁業者はほんとうにつらい状況におちいってしまった。すると海苔業界、生産から設備、流通まで含めると巨大な産業で、ここが被害にあったとたんに社会問題になった。それが今度は、逆に有明海全体の環境問題をクローズアップさせる役割を演じて、その中で漁民が自ら「有明海漁民市民ネットワーク」という任意団体を作って、市民や研究者、弁護士のサポートを得ながら、裁判闘争を起こしたり、公害調停を始めたりしているわけです。それまで漁民の人たちは自分の属する漁業組合に強く左右されていて、自分の意見をあまり言えない。そこで漁協とは別に横並びでネットワークを作って自分たちの被害を訴えていこうという、こういう動きが出てきたわけです。

 漁業組合というのは、漁業権を持っている漁師だけではないんですね。漁師でなくても漁業権だけを持っている人がいる。そう言う人たちは埋め立てをしてもらったほうが漁業補償が入るので喜ぶわけです。そんなわけで、漁民と市民が一緒になって、現在進めているのが公害調停の原因裁定、有明海異変の原因は諫早湾干拓にあるという裁定を出してもらうのを公害調停に持ち込んで闘っているわけです。


 敦賀市の中池見湿地

 それからもう一つの例として、これは福井県の敦賀市の中池見湿地。山に囲まれた湿原があって、昔は田んぼだった。田植えをする時に胸まで泥につかるような湿田だったわけです。ところが減反で使わなくなって放棄されて、自然の湿原に戻って、そこにたくさんの生物、植物や湿地の動物などがいるわけです。そこに大阪ガスがこの土地を買い取って、天然ガスの備蓄基地を作ろうとした。これに対して地域住民を中心にして反対運動が起こっていく。

 ここの運動の仕方としては、お金を集めてきて大学の研究機関に調査を依頼する。そうすると大学の研究者が植物や昆虫、鳥類、その他いろんな分野ごとに集まってきては総合調査をやって報告書を出す。この報告書を海外でも発表していく。地球規模で見てもここの泥炭地というのは非常に興味深い所で、海外の学会でも、こんな所を埋めてはいかんという要望書が出ているわけです。そして学術調査をもとに、議会等へロビーイングをしたり、市民運動を展開したり、あるいは市民への宣伝活動を行っていく。こういうことを精力的に続けたわけです。

 その結果、大阪ガスは建設断念に追い込まれて、今年の1月にはこの土地を敦賀市へ寄贈しますというところまできてしまったわけです。ですから、最初の大阪ガスのLNG基地計画は、1982年にあったわけですが、12年でなくなってこの地域は保全されることになった。80ヘクタールの土地をどうやって自然を豊かなまま維持していくのか、大きな課題を敦賀市は受け取ったわけですけども、LNGガスの基地によって自然を潰すのではなくて、自然を保全するという方向で市民も行政も企業も一緒になってやっていくということです。これは環境アセスメントではないですが、市民が研究者と一緒になって調査をやって、その調査結果をもとに開発を断念させたという非常にいいサクセスストーリーになっているわけです。大阪ガスとしては、絶滅のおそれのある植物は、ここから他の地域に移植して人工的に増やしていきますと、一種の代償措置として対処しようとしたわけですが、市民はそれを認めなかったということです。


 沖縄の泡瀬干潟

 それから沖縄県の泡瀬干潟。環境アセスメントの結果、環境保全措置としてトカゲハゼという非常に珍しいハゼや、クビレミドロという藻類、それらを守っていくための措置をする。また、埋立で失われる水草は移植する、環境アセスメント等で見つかっていない希少なものが出てきたら、それはきちんと保全対策をとるということがうたわれています。

 最初に行われた水草移植実験、事業者は沖縄総合事務局ですが、コンサルタントに調査をしてもらって機械でもって切り取って移植したら何パーセントはうまくいきましたと、発表したわけですけど、地元の環境NGO、泡瀬干潟を守る連絡会の人たちが自分たちで潜水調査を行って調べてみたら、これは何パーセント失敗であるという結果を出したわけです。では、一緒に合同調査をしようということで、事業者側とNGO側が同じ日に同じ場所で一緒に調査して、それぞれが別のコメントを出したりするわけですが、次第にNGO側が事業者側を追いつめていく。この結果、事業が遅れに遅れて未だに少ししか着工できない。今年は、埋め立て用の仮橋を105メートル延長しただけで、そしてまたすぐにトカゲハゼの保全のために4ヶ月間工事を休まなきゃいけないということになって、いつできあがるのか、もうわからない状態になってきているわけです。


 「ふるさとに基地はいらない」から始まった
 
 名護市辺野古の場合には、皆さんのお手元にコピーを作っていただきましたが、市民が集まってきて、どうやって環境アセスメントに対抗していったらいいんだということを、名護市で、それから東京で、大阪で関心ある人に集まってもらって話しあいをしながら、市民からの方法書をどうしようか、研究者のアドバイスも聞いてずっと議論をして作り上げたのが、皆さんの手元にあるものです。この代表は、名護市出身の方だと思いますけど、リタイアされている普通の市民です。別に今まで環境運動や平和運動をやってきたわけではない本当に普通の人々が、自分の住んでいるふるさとに、こんな軍事基地作られたら困る、でも、何やったらいいか全然わからない、わからんけどもこの環境アセスメントで勉強してみようということから始まったわけです。
環境アセスメントの本来の目的は何なのかと言うと、研究者の方々が言うには、事業による環境変化の可能性を住民に知らせる、これが環境アセスメントの本来の目的なのです。工事をしたり開発したりしたら、環境は変わる可能性があるということで、住民に知らせることがアセスメントの目的である。それから、事業による経済的メリットと、環境低下のデメリットを明確にして、意思決定の判断材料を提供する。こういう開発をすればこういう経済効果はあるが、環境はこれだけ悪くなりますよ、どっちを選びますかというのを示すのが環境アセスメントの本来の目的であるということです。そしてこの環境アセスメントを通じて事業者と住人がコミュニケーションをはかる。事業者と住民というのは必ずしも喧嘩するばかりではなく、お互いにコミュニケーションを取りながら、より良い解決策を目指していく。それが環境アセスメントなんだと言っているわけです。


 方法書への要求

 市民アセスとしては、まだ闘うアセスみたいな面が多いんですけど、事業者がやっているアセスの流れを検証していく、どんなアセスメントの手続きをやっているのか、新石垣みたいにいいかげんなことをしないようにしてくれということを主張していく。それから市民アセスを実施する。市民と研究者が一緒になって調査をしていく。辺野古沖であれば水草やサンゴ礁あるいはジュゴンがどうなっているのか、生態系はどうなのか、それから地域社会、経済、文化、地域住民の社会的な背景がどうなるのか。きちんと調べよう。事業者の目ではなくて、地域住民、市民の目で調べていこうということです。そして事業者のアセスをきちんと公開しろと主張します。全体で3年くらい調査しますけど、状況を聞いても教えてくれないんですね、調査中だからということで。そういうことではなくて、公開していきなさいと言うべき。そのためには市民自身も自分たちのやったことをきちんと公開していく。

 方法書が真っ先に出てくるわけですが、環境アセスメント学会の会長さん、何度も名護に行っては地元の人たちと話し合いをして、いろいろ貴重な意見をくださる方なんですけど、方法書としてはこんなふうなものを要求しましょうというようなことを言ってるわけです。一般的には200ページ以下にしなさい。1000ページもあったら読めやしないよということです。

 それから何を調べるか。環境影響評価項目に、調査方法、予測、評価方法、それらをきちんとしなさいということを言っているわけです。1000ページもの方法書が出てくると、このうち8割方は現地調査結果です。ここにこんな植物があった、ここにこんな動物がいたということだけで、実際にどういう方法で調べますというのがほとんど書かれてない。

 それでは方法書にならないよということです。それから公開に関しては、沖縄だけじゃなくて東京でも公開しなさい。CDロムで出しなさい。実費で販売してもいいんじゃないかということを言ってるわけです。そして調査、予測、評価、これについてきちんと理由をつけなさい。何故こういう調査をやったのか、何故こういう予測をしたのか、何故こういう評価になるのか、それをきちんとしなさいということです。それから、方法書を作ってそれで実際に調査をして評価書ができて、実際に物ができてしまった後で不測の結果が出るかもしれない、考えてなかったような事態が起こるかもしれない、そういう時にはどうするんだという結果責任まで項目に書いておけということです。飛行場を差し戻して、自然を再生するんだとか、そういうことまで書きなさいということですね。


 方法書を武器に

 そしてこの会長さんがいうには、市民による方法書をとにかく出しなさいということで、「市民アセスなご」が作ったのが皆さんのお手元にある方法書です。表紙に書いてあるように、これまでの経緯の整理があって、事業の特性、それから環境の特性があって、この事業が環境にどんな影響を与えるのか、空港がサンゴ礁にどんな影響を与えるのか、ジュゴンにどうなのか、地域住民にどうなのか、その影響の度合いはどうなのか、こういうことを自分たちで考えて、どんなふうに調査して予測して評価するのかということを市民の立場でまとめ上げたわけです。

 この特徴というのは、さっきも言いましたように名護、東京、大阪で多くの人々の意見を聞いて集めたんです。米兵が来たら犯罪が増えるんじゃないかとか、空港ができたらジュゴンは絶滅するんじゃないかとか、騒音でもって地域の子供達の情緒が不安定になるんじゃないかとか、そういうことが心配だという意見を集めて、それに対処するためにはどう調査したらいいのかということを話し合ってきたわけです。

 環境アセスメントを合意形成への第一歩にする。これでもって話し合いをしながらやっていくんだ。その上できちんとした環境アセスメントが行われれば、こんなおかしな事業が実行されるはずがない、というのが「名護アセス」の考えで、これは正しいと思います。

 そして自然環境だけでなくて社会や文化環境にも配慮するようなアセスメントをすべきだということ。それからアメリカ合衆国のアセス参加を求める。これは米軍基地である以上、米軍の管轄で、日本の国の力が及ばない所があるためです。国際自然保護連合の勧告でも求められています。

 調査をしてみた、予測をした、その結果これは環境にかなりな影響を及ぼすということだったら、代替案をさぐる、あるいは作らないという案を採択しなさいということを言っている。事業者が出す前に、民間で作って出した、これはたいへん意味があるわけです。先手先手とやって相手を追いつめていく。といっても相手は巨大ですから、どれぐらいの力になるのかなあという心配はありますけれども、今まで見たいくつかの市民アセスの例、あるいは国際世論、国際自然保護連合のような世界の研究者たちをバックに、事業者を追い込んでいく、これが市民アセスの力なわけです。

 時間が来てしまいました。ご静聴、どうもありがとうございました。                            
(了)

(テープおこし・構成 一坪反戦通信編集部)