有銘政夫さんの話(要約)

(文責・比嘉


京都・沖縄懇談会
 1997年4月19日 午後6時、京都弁護士会館
 米軍用地特別措置法の改悪に反対する「京都沖縄県人の会」


 今回の東京行動についてまず話します。昨年のちょうど4月17日、安保の再定義が行われるために、クリントンが来るというので、15日に大阪、16日に東京、17日にシンポジウムを開いた。安保条約が条文改訂しないままに拡大強化され、「安保繁栄論」ととも危険な方向へむかった。

 あれからちょうど1年、25人の反戦地主が国会を傍聴していたが、当事者だからあんな状況になったら異議を唱えるのが当たり前、4、5回注意をうけたが、あれが審理妨害になるのか。あんなことで逮捕されるのは許せない。あれだけのことで逮捕されて、裁判になったとしても、結果的には本質的な問題を争うことになっただろう。あの二人はそれくらいではへこたれない。会長は、体のこともあったから、薬の差し入れも申し出たが「薬物の差し入れは受けられない」と断られた。あの二人にとっては、パクられたことが、これからはハクがつくんではないかと(笑い)。

 沖縄の状況について、はっきりしているのは占領された当時のままだということ。それも銃剣とブルドーザーでとられたものだということ。例えば普天間基地は当時の宜野湾村の集落の5つくらいがすっぽりはいっていて、当時の住民の生活の中心地であり、住民の大半が住んでいた。収容所からもどった住民は、そこを追い出され、ハブしか住まない、墓しかない、山の谷間などに住まざるを得なかった。

 戦後7、8年たって、あらたな土地接収が「銃剣とブルドーザー」によって行われた。例えば、宜野湾の伊佐浜。自分の土地に帰って、田畑を作り、落ちついたと思ったところに、改めてやられた。基地は中部13市町村に集中。米軍基地のおおかたが私有地で、復帰以前は、布令布告で、復帰後は「公用地法」で取り上げられた。

 復帰の時には3000人あまりが拒否したが、いろんな形で追い込まれどうしようもない形で契約をせざるを得ない状況にされた。どうぞ使ってくださいと、言って貸している地主は一人もいない。毎年地代をもらっている人と契約拒否した人とでは、課税の仕方などのやり方で、地代に大きな差がある。また、10年分地代を一括してもらってしまった土地は担保の価値がなくなる。契約地主には、謝礼金がでるなど、契約拒否の地主に経済的圧力をかけ脅迫する。「99%の地主がすでに契約している」という国の言い分の背景にはこんな状況がある。

 復帰運動のときは、全国的に訴えるチャンスを失っていた。それをいいことに、今となって、「間に合わない、国の根幹に関わる」という。なにをいうか。25年間、放ったらかしにしていたのは誰か。非は政府にある、それをさも沖縄のせいであるかのように言っている。

 本当に沖縄の基地を縮小する気があるか。日本政府にはない。なぜ、沖縄に75%の基地があるのか。復帰までに本土の米軍基地を沖縄にもっていった。「核抜き本土並」といいながら。アメリカが海兵隊を、外国においているのは、日本だけ。

 普天間基地は撤去とはいわずに移設。橋本は「命がけ」といったが、そういっただけで、目に見えた進展はない。やったことは「法改悪」だけ。

 この特措法改悪でも、くくれない問題が出てきたら、どうするんでしょうね。大田知事はアメリカ通。女性団体は独自に米国に出かけていった。アメリカが、この安保をやめるといったら、日本はどうするんでしょうか。なきつくんでしょうか。ちょっとさまにならない。

 戦後、米軍支配を一貫して批判してきた。それは主権回復の闘いだった。例えば「適正な補償をして土地を取り上げなさい」といったプライス勧告の時にも、沖縄では総立ち上がりして10万人集会を開いた。沖縄の人口が今の半分であった時代にである。そんな運動に対し、アメリカは米軍支配のなかでも動いた。ところが日本はどうか。高等弁務官が「自治は神話」とまでいったが、その中でも公選首席を実現していった、体で勝ち取った民主主義を、沖縄の運動は知っている。

 これを踏みにじる日本はなにか。民主主義はあるのか。憲法はあるのか。これは、沖縄の問題ではない。国の存亡に関わる問題であり、「日本人」の尊厳に関わる問題である。

 以前の運動、60年、70年、復帰運動などよりも、日本中で無数の集会が行われている。民主主義の生まれる兆し。

 わたしたちは、もう、たすけてくださいとは、申しません。沖縄は戦争の被害者であったと同時に、加害者にさせられてきた。負の遺産であった。

 あのような暴挙にもへこたれない。ヘリポート建設については、市長のリコールの声もでている、住民投票の準備が始まっている。嘉手納弾薬庫に爆弾を落としたようなもの。沖縄にもあちこちに火がついた。あの怠慢な国会はこれに答えなければ、いつか、崩壊する。

 大田知事の公告縦覧応諾で、「沖縄問題は終わった」というキャンペーンが張られた。しかし、問題はより具体的になってきている。

 52年分を1、2日で動かせるとは思わない。これは生活そのものであり、生き様の問題である。高校生も独自の感性でやっている。

 本土のみなさん、どうですか。復帰の時は、なんとか沖縄を取り返そうという感じだった。今の問題は語れば語るほど、沖縄の問題ではない。中国や北朝鮮の問題でもない。「上から下へ」の組織的なものは具体化されない。草の根、市民レベルの集まりに呼ばれることが非常に多い。国会は成長していないが、市民レベルで具体的に討論できる状況になってきたのではないか。

 憲法については、護憲ではいけない。実践するものである。例えば、明治憲法は、徹底的に実践された憲法であった。日本の国体を守るために。

 憲法は守るものではなく、実践するもの。

 今、数あわせで、憲法を改悪できるとほくそ笑んでいる人がいる。その時も、今回のように、沖縄が騒いでいるからだと言って、「沖縄のせい」にされてはたまらない。

 沖縄では、憲法を実践していく。

 これからの運動については、収用委員会に実質的審理を続けさせることをやっていく。政府に首輪をはめられたこと、その範囲で動かされることにだまっているわけはない。10年の裁決申請がそうはならないかもしれない。石原正一さんの件(登記簿殺人事件)をはじめ、今回の特措法改悪に当てはまらない「火種」はたくさんあるのだから。また、今回のような。地主の「過激派」扱いキャンペーンには注意してほしい。


沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック