沖縄県収用委員会 第9回審理記録

弁護士 内藤功


内藤功(弁護士・土地所有者代理人):

 代理人の内藤でございます、伊江島を除く12施設区域の土地所有者代理人として、ただいまのご発言に補足をいたしまして、トリイ施設について申し上げたいと思います。

 言うまでもなく、人と人との土地の使用契約の場合には、必ずその使用目的というものを約束した条項があり、これに反する場合には、これは契約解除原因となり得るものであります。いわんや一国が他国の軍隊に土地を貸すという場合には、もっと厳しくて当然であります。

 日米安保条約第6条の日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の 維持に寄与するため、使用することが許されるという目的条項は、いわば基地の使用許可条件であります。トリイ基地と特殊作戦部隊の実態に見ますように、在日米軍とその基地は、明白にこの条項にさえ逸脱してきております。その一つは96年4月の日 米安保共同宣言には、極東の平和と安全の文言は消え果てまして、その代わりアジア太平洋、あるいはこの地域という表現が22カ所登場してきました。

 これは安保条約の対象地域をアジア太平洋地域、さらには全地球的規模に拡大しようというものにほかなりません。国会の承認も経ないで安保条約のさらなる大改悪をやるに等しいのであります。

 目的条項の許可条件違反であり、条約の重大明白な違反逸脱であると言わなければなりません。第一が許可条件違反であることはこの一つであります。

 その2は、97年4月の米国防報告が次のように言っております。アメリカは自国の国境をはるかに越えて、効果的かつ大規模な軍事作戦を単独で行う能力をもつ唯一の国である。その能力はアメリカを直接の脅威から守るためだけでなく、特にアメリカの利益にとって、決定的に重要な地域で、国際環境を有利な方法で形成するためである。ゆえにアメリカの戦力は平時に海外の主要な地域に前進展開、あるいは駐留していなければならないと述べております。

 まさに、日本国の安全に寄与する軍隊ではなく、そのような認識の一かけらもありません。ただただ、米合衆国の国益に寄与するために、展開し、行動するために駐留する軍隊と基地であります。

 第2の許可条件違反と私が申し上げるのはこの点であります。

 以上、2点で安保条約の条項すらも逸脱している。米軍用地特別措置法の第3条、これは駐留軍の用に供することが適正かつ合理的、適正かつ合理的であるときは、使用することができる。これがまさに当収用委員会のご判断をなさるポイントでありますけれども、条約の許可条件のこのような違反逸脱はどのように考えても適正かつ合理的とは言えない。このような使用を許してはならないと思うのであります。

 以上の前提に立ちまして、米陸軍、特殊部隊について申し上げたいと思います。

 先に述べました米国防報告におきましては、アメリカは、アメリカの利益を守るために、様々な緊急事態作戦に備えておかなければならない。それらの作戦にはとりわけ比較的小規模の戦闘作戦、他国間平和活動、麻薬対策、テロ対策、制裁の執行、非戦闘員の救出、人道的支援と災害救援活動が含まれると述べております。

 米陸・海・空・海兵の4軍は、おのおの特殊部隊を保有しております。米陸軍の特 殊作戦部隊は、これらの様々な任務に対応する部隊であります。特殊作戦部隊出身のロバート・C・キングストン退役陸軍大将の著書にはこのように言っております。ほ とんどの特殊部隊は、国の最高レベルの統括下に置かれており、戦略的性格の任務を旨としておる。現在、米統合参謀本部議長には、特殊作戦部隊出身の総元締の統合特殊作戦軍司令官シェルトン大将が就任しており、米軍内での地位を示すものであります。

 第1特殊部隊軍第1大隊、この性格について申し上げたいと思います。沖縄には、この米陸海空、各特殊部隊が駐留しているということが非常な特徴でありますが、この部隊は兵力は約390名と言われております。読谷村トリイステーションに、その根拠 地をもつ。現在、日本に駐留する米軍の中で、唯一、陸軍の戦闘部隊になっております。米陸軍に特殊作戦部隊が誕生したのは、52年4月10日、ノースカロライナ州フオ ートブラッグ心理作戦センターがその起源であります。われわれ日本の国民と縁のないところでつくられている。続いて、57年6月24日、沖縄の第1特殊作戦軍が配置された。同年、チームをベトナム侵略戦争に派遣をする南ベトナム陸軍兵士、五十数名の訓練にあたります。61年11月、特殊部隊はさらに南ベトナムに増強され、南ベトナムのいわゆる民間フセイキセン防衛隊の募集と訓練にあたっております。61年から65年にかけて、80以上のキャンプを設置をしております。特殊部隊は、南ベトナム全土で南ベトナム傀儡軍の陸軍と最も密着し、山岳部族との深い関わりをもち、さまざまな役割を果たしたのであります。

 しかしながら、この部隊の作戦行動の実態は謎に包まれている部分が多かったのでありますが、県立那覇高校出身で、アメリカンハイスクールを卒業した上、米陸軍に志願し、21年間米陸軍特殊作戦部隊におりました軍曹三島ミズホという人が、ベトナム戦線でベトナム軍の特定の幹部を、情報を持っているだろうというので、待ち伏せして地雷で車を爆破し、その人間に麻酔薬を注射して捕虜にするというなど、生々しいグリーンベレーの実戦体験を書いた著書「グリーンベレーD446」がその一端を明らかにいたしました。これは某週刊誌に連載をされたものであります。ベトナム侵略戦争時代には5,000人を超えるグリーンベレー部隊が沖縄におりましたが、一旦すべて 撤退いたしました。84年、レーガン政権の軍拡政策のもとで、1個大隊がトリイステ ーションに戻ってきました。その後、91年の湾岸戦争では、第1特殊作戦部隊軍第1大隊、この部隊でありますが、空中給油機、海兵隊とともに沖縄から出撃しております。今年になりまして、97年7月のプノンペン武力衝突の際、米太平洋軍の特殊作戦指令 部主任の指揮のもと、米軍C130輸送機9台が、7月9日タイのウタパオ基地に展開した と。これは米軍準機関紙「星条旗」誌が報道しているところであります。さらに、アジアの台湾、韓国、タイ、フィリピン、さらにアフリカ、中南米のアメリカの友好国、同盟国の軍隊に助言し、これら各国の軍隊との各種共同訓練を実施しております。ちなみに、日本の陸上自衛隊とも共同訓練を行っております。

 次に、作戦指揮系統ですが、在日米軍の作戦統制を受けない特別の本国からの指揮系統にある部隊であります。統合特殊作戦軍、これはフロリダ州マクディル空軍基地、それからハワイの太平洋特殊作戦軍に指揮命令が来て、それから第1特殊部隊軍第1大隊、こういう作戦命令の系統です。

 作戦命令以外の兵站あるいは行政上の指揮は、ハワイの第4特殊作戦支援群から受 けることになっております。隊形処理の指示は、言わば原隊と申しますか、陸軍第1 特殊作戦軍ノースカロライナ州フオートブラッグから受けるようになっております。

 編成の特徴は、士官、準士官の比重が高いということであります。1個大隊は3個中隊と1個軍事諜報分遣隊から編成されます。1個中隊はA分遣隊6個、B分遣隊1個からなります。特徴は、戦闘隊は10人で戦う。十数人で戦闘隊を構成するというのが特徴であります。

 訓練の多くはこの1個分遣隊、チームと称していますが、この十数人規模の単位で 実施されております。この特徹は、まず一つは、迫撃砲、重火器、自動小銃の射撃戦闘訓練、これは基本ですが、そのほかに世界各国の軍隊の、例えばロシアの主な迫撃砲、機関銃、小銃、ピストルの操作と組み立てと分解を行っております。これは相手国の軍隊の中に紛れ込む可能性がある。その場合、相手国の兵隊の銃を使って自分も撃っていく必要があるということから、やられております。さらに、自由落下訓練。ヘリコプターだけではなく、非常に多くの種類の航空機からの落下訓練を行っております。さらに、水中のスキューバ潜水訓練、さらに爆破訓練。爆破訓練の特徴は地雷をつくる、組み立てるということです。医療の訓練、これはインターン並みに1年間、内科、外科、産婦人科、皮膚科というものをひとまわりしております。これは、現地住民を味方にするという方策の必要性、それから軍医、衛生隊のいないところで戦闘できる場合の準備という目的であるとされております。さらに、諜報活動。戦争映画でごらんになるあらゆる分野の訓練を実施し、訓練脱落率は60%を示すということは、その厳しさを示すと言われております。

 以上、私の調べた実態の一端をお示ししましたが、こういうことこそ徹底的に調べて、こういう軍隊が沖縄に、日本にいることが許されるかということを明らかにしなければなりません。安保条約上の基地使用の許可条件にさえ反した、沖縄米軍と基地の異常な実態。私どもはしかるが故に、第1回公開審理において、防衛施設庁に対し て、アジア・太平洋と極東の関係、安保の問題の論戦をするように求めたのですが、なじまないということで逃げているのは極めて遺憾なことであります。このような米軍と基地のために、沖縄県民の財産、自由、権利が犠牲にされてよいのか。

 収用委員会が、目的条項、許可条件を厳格に吟味をし、その実態を可能な限り明らかにし、できれば基地内に立ち入って、よく徹底的にお調べいただき、許可条件に違反した、また期間を徒過したような土地については、使用を許さないという法律的には極めて単純で明快で、常識的な見識とご判断をお示しになるように要請をいたしまして、私の陳述を終わります。

当山会長:

 はい、ありがとうございました。

 次に、キャンプ・シールズ関係に移ります。梅田章二さん。


  出典:第9回公開審理の議事録から(テキスト化は仲田


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