沖縄県収用委員会 第9回審理記録

弁護士 新垣勉


当山会長:

 再開したいと思います。

 トリイ通信施設関係、新垣勉さん、お願いします。

新垣勉(弁護士・土地所有者代理人):

 それでは、私の方は阿波根昌鴻ほか地主の代理人の弁護士の新垣ですけれども、トリイ通信施設について、冒頭に私の方で基地の概況と問題点の所在を説明して後に、トリイ通信基地に駐留をするグリーンベレー部隊のもっている問題点について、内藤代理人に引き続いて発言をしていただきます。

 それでは、さっそくスライドを使わせていただきまして、現地の状況を見ていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

  (スライド)

 今、画面に映しました青い枠でくくってあるのが、トリイ通信施設の全施設の状況です。上の方が北になっております。左側が海岸沿いになっております。沖縄に住む私どもは、よく知っている施設の一つでありますけれども、右端のほうから左側の斜め上に向かって公道が走っておりまして、それに面してトリイ通信施設の基地があります。上のほうの赤い色でくくってあるところ、ここが今矢印で示しているところが隊舎、それから施設が所在をする区域で、この赤い枠のところがさらにフェンスで囲まれております。そして、黄色い部分がいわゆる黙認耕作地となっておりますけれども、この黙認耕作地もフェンスで囲まれております。

 この図をごらんいただいて分かりますように、このトリイ通信施設というのは、施設の大半が黙認耕作地になっているのが大きな特徴だと思います。そして、このトリイ通信施設をめぐる付近の都市化の状況を見てみますと、国道58号線の右側から入ってきますと、古堅の部落があります。ここはもう集落地帯になっております。そして、トリイ通信施設をさらに西北のほうに北上しますと、フェンス沿いに従って北側の方に楚辺の部落が密集をしております。

 このように、トリイ通信施設に隔てられまして民間地域が分断をされている都市形成の状況にあります。したがって、このトリイ通信施設の施設全体を眺めてみますと、いずれも住宅地域として、基地なかりせば、有効に利用できるような位置環境にある施設であります。

 今、本件収用委員会で問題になっている土地は2筆あります。画面で番号が見にく いと思いますけれども、黄色い黙認耕作地の中のちょうど真ん中のほうにある、今、矢印で示しているところですけれども、これが池原安夫さんの所有土地です。そのすぐ上の方に、同じく黙認耕作地と隊舎施設を囲むフェンス沿いにあるのが、ここにあるのが池原シゲオさんという方の土地、この2筆が本件審理の対象になっている土地 であります。

 本件施設で使用申請をしているこの2筆の土地について、申請書を見てみますと、 いずれも電磁障害地として必要であるので、強制使用をしたいと、こういうことで申請をされております。電磁障害地というふうに聞きますと耳慣れない言葉ですけれども、実はこの黙認耕作地の中に約70本ぐらい、棒状の電波通信塔が立っておりまして、この黙認耕作地に立っている棒状の通信塔から発信をする電波の妨害をなくするための用地という意味で、強制使用が必要であると、こういうことのようであります。

 ところが、新聞でも報道されておりましたのでご承知だと思いますけれども、5〜6年ほど前からこの黙認耕作地の中に立っていた棒状の通信アンテナというのは、実際には使われてないという報道がされております。したがって、この報道が事実だということになりますと、今回、国側が電磁障害地として必要だという根拠が失われていくわけであります。対象地が米軍基地であるところから、私ども民間人にとって非常に難しい課題ではありますけれども、実際にこの黙認耕作地の中に入って、日々農耕をしている地元の人たちに聞きますと、既にかなり前から通信塔は使用されずに、放置をされている。中には、壊れた通信塔もあって、修理されないまま放置をされていると、こういう指摘であります。

 ですから、ぜひ収用委員会の皆さんがこの施設内に立ち入って、現場を確認するときには、この通信塔が本当に実際に使われているのか否かについては、ぜひ収用委員会の権限で究明をしていただきたい点であります。私どもも実は立入申請をしていたわけでありますけれども、ご承知のように、米軍から立ち入りを拒否されております。したがって、今後どのような経緯をたどるかは分かりませんけれども、収用委員会の皆さんにおいては、ぜひこの点を念頭において、施設の現状をよく確認をしていただきたい、こういうふうに思います。

 それから、もう1点は、収用委員会は使用裁決をする際に、土地収用法で48条1項に定めがあるように、使用する土地の区域及び使用の方法及び期間を裁決しなければならないというふうに規定をされております。このことは、収用委員会がその判断で使用の方法を判断をすることができると、こういうことになるだろうと思います。

 そうしますと、問題はこの電磁障害地として強制使用をするという申請がなされているわけでありますけれども、この使用方法違反の問題がどのような意味合いをもつかという問題であります。もし、裁決書の中で判断をした使用方法に違反をして、米軍が将来裁決が行われた場合に、使用方法に違反をしてこの黙認耕作地を使った場合にどうなるのかという問題であります。

 私がこのような問題提起をいたしますのは、実は昨年のSACOの最終合意の中で、読谷村の瀬名波通信所が2000年度の末をめどに、トリイ通信施設の中に移設をするという最終報告書の記載があるからであります。SACOの最終報告書とトリイ通信施設の現在の不使用の状態を比較をしてみますと、今回の強制使用というのは、現在は使ってないけれども、将来、いわゆる西暦2000年度の末には瀬名波通信施設を、この黙認耕作地の地帯に移転をすると、こういう目的で強制使用をされているのではないかという疑いが極めて濃厚だからであります。

 私は、この電磁障害地として使用するという問題を解明することが非常に重要な意味をもっていることをここでは指摘をして、収用委員会の調査の課題として問題提起をしておきたいと思います。

 2番目に、瀬名波通信所が今から計算をしますと、あと約3年ぐらいで移設をされる。トリイ通信施設に移設をすると、こういうSACOの合意が仮に実施をされることになりますと、このトリイ通信施設の施設の状況が全く変わってくるわけであります。そういう意味では、強制使用の判断をする適正かつ合理的な要件があるか否かという問題にも直ちに影響をする問題だろうと思います。そういう意味で、ぜひこのSACOの最終報告書の瀬名波通信施設を2000年度末をめどにトリイ通信施設の中に移設をするということが、具体的にどこに移設をし、どのような運用をしようとしているのかという点についても、ぜひ収用委員会の権限で解明をしていただきたい問題だと思います。

 それから、第3番目に、現地に入って見ていただくとよく分かりますけれども、こ の黙認工作地のフェンス沿いには、たくさんの住宅地が建設をされ、2階建て、ある いは3階建ての建物が既に建築をされております。そういう意味では、このフェンス を取り払っても、電波障害地の有無には直接影響を与えないのではないのかという問題を、かねてから地主側は指摘をしてきております。

 ある報道によりますと、現在、この黙認工作地の中に建設されている電波塔というのは、復帰直後の1973年ごろにつくられたもので、すでに古い施設になっていて、現在の使用に耐えられない、こういうことで使ってないという報道もあります。

 ですから、この黙認工作地帯のフェンスを外して、土地を地主に返還した場合に、具体的にどのような支障が生ずるのかというのも、いまだ不明であります。

 象のオリの仮処分事件で明らかになったように、国が言う理由というのは、全く信用できないということが分かりました。そういう意味では、ぜひ現在あるこの通信塔のために、これだけ広大な黙認工作地が必要であるのか否かについてもぜひ解明をしていただきたいと思います。

 それから、先ほど図で示しました池原昌緊さんの土地は、かつて宅地であった土地であります。収用委員会の皆さんは、今後、鑑定を進めるようでありますけれども、もし収用委員の皆様が、現地に入って現況を見ますと、全くの畑であります。普通鑑定と言いますのは、現況に即して鑑定を行うのが鑑定の原則でありますから、もし何らの条件を付さないで現況のまま池原昌繁さんの土地を鑑定してほしいという鑑定依頼をしますと、鑑定人は現地を見て、これは農地である。あるいはせいぜい付近の都市化の状況を踏まえて、宅地見込地と評価するのがせいぜいだと思われます。しかし、よく考えてみますと、元々宅地であった土地を取り上げて、今のような黙認工作地にしたのは、ほかならぬ米軍であります。米軍が取り上げた土地をどのように使うかによって、本来あった土地の価値が損なわれては奇妙であります。

 収用委員会も既にお気づきだと思いますけれども、国のほうも米軍が取り上げたときに、宅地であった土地については、宅地で評価をするということを実際に軍用地料を算定するときには採用しております。

 ですから、ぜひ収用委員会の皆さんが土地に入って、地主のそれぞれの土地を鑑定するときには、地目が宅地であった土地については、ぜひ宅地という条件を付して鑑定をしていただくよう申し上げておきたいと思います。

 これは、理屈で言いますと、宅地を取り上げた米軍、あるいはそれを引き継いだ国には、返すときに現況がどのような土地になっていようが、宅地に復元をして返す義務があるわけであります。

 したがって、宅地に復元をして返す義務を負っている宅地でありますから、当然理屈上は宅地として評価をしなければいけないと、こういうふうになるだろうと思います。

 それから、下のほうに池原安夫さんの土地があるわけでありますけれども、ここは現在、見ますと先ほど言いましたように畑であります。しかし、これも現況のまま畑ということで評価をしてまいりますと、著しく正義に反するような事態が起きます。それはなぜかと言いますと、付近の都市化の状況をごらんになってお分かりいただけるよう、もしこの土地取り上げがなかったとしたならば、この地帯は、純然たる住宅地域になっていたことは、今日までの都市化の状況を振り返って見ると明らかであるからであります。

 ですから、私どもは米軍が取り上げたことは違法であり、不法であるという主張をずっと続けてまいりました。私どもが言っているこの事実は、土地の評価に結びつく問題であります。

 私ども地主が伊江島で、あるいはほかの施設でずっと主張し続けてきましたように、もしこれまでの米軍の取り上げ、国の使用が適法であったなら、この地帯は純然として住宅地域になっていたと思われる、考えられる土地でありますから、当然に現況とは異なって宅地として評価をしていただかなければ適正な補償というのは行えない、こういうふうに考えております。

 今、私が申し上げたのは、トリイ通信施設に限る問題ではなくて、現在、公開審理で行われている米軍施設内のすべての土地について言えることであります。

 ですから、すでに私どもは収用委員会に土地鑑定についての意見も提出をしておりますので、ぜひ収用委員会においては土地鑑定をするについても今私が申し上げたような基本的な問題点を含んでいることを理解された上で、適切な鑑定条件を付して鑑定をしていただくようにお願いをしたいと思います。

 最後に、本件施設については、現在米軍が入り口にゲートを設けて、黙認耕作地を行っている部落民だけにパスを発行して、部落民だけが出入りをするようになっています。しかし、かつてはこの地域は、部落民が自ら警備員を雇って出入りをチェックして、自分たちで敷地内の管理をしていた時期があります。これは耕作した作物が勝手に人に取られてはいけないということで、ゲートを置いたことがありますけれども、何も施設を守るためにゲートを置いたわけではないんですけど、そういうことでこの黙認工作地帯というのは、必ずしも米軍が管理をしなければならないような歴史的な経過は全くもっていません。

 分かりやすく言いますと、ここはフェンスがなくても十分なところであります。そういう意味で一般の人たちがずっと迂回をしなければいけない状況もやはり問題の一つだろうと思います。

 それから、左側に海岸沿いがありますけれども、ここにはすばらしい海岸が横たわっておりますけれども、これも米軍施設の提供施設の区域内になっておりまして、なかなか法律上は地域住民が入れないようなところになっております。

 黙認海岸と言ったほうが正確かもしれませんけれども、この海岸の利用という面から見ても、ぜひこの黙認耕作地を囲んでいるフェンスというのは、取り外していただかなければいけない、こういう性質のものではないだろうかというふうに考えております。

 私の方からは、この程度でトリイ通信施設の概要を説明して、内藤代理人に、この施設に駐留をしている最も中心的な部隊であるグリーンベレー部隊の実態等について意見を述べていただきたいと思います。

当山会長:

 ありがとうございました。それでは内藤功さんお願いします。


  出典:第9回公開審理の議事録から(テキスト化は仲田


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