沖縄県収用委員 第8回会審理記録

大城保英


大城保英(土地所有者):

 私は、嘉手納基地の中に土地をもちます大城保英といいます。私は、空の基地について意見を申し上げます。

 沖縄の陸地面積は全国の0.6パーセント、そのうちのおよそ11パーセントが米軍基地ということで、これまで陸地における基地の問題をみんなで話し合ってきました。意見も述べてきました。今回、私は空の基地ということで、あまり見えない空の基地について申し上げたい。

 沖縄の空というのは、実は空も海も含めましてですけれども、東西に1,000キロメ ートル、南北に500キロメートルの広がりをもつわけです。そのおよそ40パーセント、これがアメリカの軍隊の基地であるということ。これは沖縄の陸地総面積の数十倍にあたる面積なんです。この空の地域では、米軍のミサイルの発射訓練が行われています。だから日常的に行われているわけです。そして、嘉手納基地からあのF15、あるいはFA18ホーネットとか、いろんな戦闘機が模擬ミサイルを持って出ていきます。出ていって帰ってくるときにはなくなっているんです。この訓練空域で発射しております。

 昨年明らかになったあの劣化ウラン弾の発射訓練、これもこのような空域で行われています。そして、私たちもすぐあのときには領事館に抗議に行きました。領事館では、これは何と言ったかというと、そこにはどうせ民間の船が入ってこれないから、危険はないと思った。だから、日本に通報しなかったということを、はっきり言っているわけです。つまり、この空域・海域というのは、私たち民間人の民間の船や飛行機が全く入れない、ここも完全なる治外法権の場所であります。

 沖縄の空には私は三つの大きな危険があるとよく言いますけれども、その一つが今の沖縄の空の基地です。これをもし陸上の基地と同じように金網で囲みますと、地上から無制限に伸びるすごいビルが建つわけです。私たちの乗っている飛行機は、その間をぬって飛んでいるわけです。それは非常に危険な状況になるはずだし、また燃料も余計に食うわけなんです。

 これが非常に大きな1番目の危険なんですけど、2番目の危険というのは、嘉手納ラプコンというのがございます。レイダーアプローチコントロールという、こういうものの略がラプコンなんですけど。これは嘉手納基地を中心に半径50マイル、これはキロにしますとおよそ90キロメートル。それから、久米島を中心に半径30マイル、およそ48キロメートル。この空域に入ってくるときには、いかなる航空機もすべて嘉手納の許可を得なければなりません。例えば、本土から来る飛行機が沖縄に入ってくるとき、乗っているわれわれは全く気がつきませんけれども、パイロットはちゃんと嘉手納の管制タワーのほうに連緒をとって、許可をとって入っております。

 それで、実は一昨年の8月でしたけれども、辺戸岬の上空で最高40分間、上空待ちをさせられた飛行機がいるわけです。これはなぜそういうことが起こったかといいますと、嘉手納から沖縄の空域に入ってはいけないと言われたわけじゃない、ただ嘉手納の、あのラプコンの電気が停電してしまいまして、どう連絡をしようにも連絡がとれない、ただこれだけで沖縄に入ってこれないんです。これは、沖縄は47都道府県の一つであるはずなんです。一つの国内で、ほかの県から沖縄に入ってくるとき、外国軍隊の許可を得なければならないという国がどこにあるでしょうか。あったら教えていただきたいと思うんです。これは52年続いています。さらに、本土からだけではありません。宮古・八重山から沖縄に来るとき、大東島から沖縄本島に来るとき、すべて嘉手納の許可をとっています。これが、第2の空の危険なんです。

 今から12〜13年前ぐらいだったと思うんですけれども、宮崎空港から出発したジャンボ機が那覇空港に着陸をしようとしまして、そこで空の状態が悪くて、とうとうこの飛行機はそのま宮崎空港に引き返したという例がございます。それはなぜそういうことになったのかと言いますと、実は沖縄の空というのは離陸着陵時に1,000フィー ト(およそ330メートル)という制限があります。日本の航空法によりますと、私はこの条文まできちっと今押さえきれてないんですが、空港周辺では上空3,000フィートまではいかなる傷害物もあってはならないという規定があるそうです。それを沖縄では1,000フィートという形で抑えつけられています。そのために、沖縄に入ってくる飛行機、出ていく飛行機はすべてこの、大体300メートルちょっと高いところ、ここを通ってはいってきて、また出ていくときもそうです。これはトンネル状になります。なぜ上は使えないか。2,000フィートから上は米軍が使うんです。つまり、あの大きな図体をした飛行機が、全力を上げて、エンジン全開でばーっと上がっていきます。途中でエンジンをゆるめると、やっぱり危険なわけです。ですから、嘉手納から飛ぶ飛行機はそのままずっと上に上がれるようになっています。那覇から来る飛行機は、その下をもぐっていかなければならない。これが沖縄の空なんです。

 この宮崎空港から来たジャンボは、あの当時、そこに雲が見つかりまして、そのまま突っ込んだら、何しろ300メートルの高度ですから、万一、雲に突っ込んだ場合にぐらぐらしますと、態勢の立て直しがきかない。上へ行くためにはどうするかというと、嘉手納の許可を得なければいけません。管制官の話によりますと、雲を見つけてから突っ込むまでの時間が2〜8分、嘉手納に連絡をとって返事が返ってくるまで5〜6分、上も地獄、下も地獄なんです。Uターンだけは可能です。これで引き返した。

 こういうような危険が沖縄にはあるんです。これは普通見えていません。管制官の組合である全運輸の沖縄の空の黒書、これには何回かこれ告発されておりますけれども、このような状況があります。

 そして、今、この沖縄の空の管制権の問題なんですが、これは復帰時点で日米間で合意がなされております。そのときの合意内容といいますのは、例えば今、軍がいて、そして民間の飛行機が飛びます。この場合に、一つの施設で管制をしたほうが安全だ、だから日本がこの管制をするようになるまで、暫定的にアメリカがこの管制権を持つ、こういう取り決めがなされています。

 しかし、暫定といいましても、もう27年経っております。英語でtemporaryという言葉は、日本語でいう暫定という言葉は、これは地球ができたときからの規模で、時間でみると暫定になるかもしれませんが、われわれが生きている人間としてやる場合に、暫定というのは27年はないんじゃないでしょうか。

 しかも、われわれは30年をもって1世代と言います。これは暫定とはいえ、1世代にあたる期間、依然としてまだ米軍は持っている。これをず一つと前から最初からやりますと52年になります。

 私はこう思うんです。今、私たちの乗る飛行機、これが危険にさらされ、そして漁船も入っていけない海域が、沖縄の全陸地面積の数10倍の面積がある。やはりわれわれの生活に大きな圧力をかけているわけです。それでよく言われますけれども、戦争というのは最大の非行であり、暴力であり、犯罪であると言います。その最大の犯罪、非行、暴力のために、われわれの土地が使われるというのは絶対に認められません。

 そしてまた、私はこの20世紀というもの、先ほどの方からも話がありましたけれども、私は20世紀というとらえ方について一言意見を申し上げます。

 いろんなとらえ方がありますけれども、私は20世紀というのは、かつてない大量殺戮の時代であった。そして同時にまた、それを見たわれわれ人類は、その戦争の愚かさ、非人道性、不毛性、こういうものを認識し、意識的に、組織的に、平和を守る、命を守るという努力をするようになった世紀でもある。

 そして、これはまた、私たちは20世紀の世紀未におる人間として、どうしても21世紀に引き継いでいかなければいけない、われわれ人類の大切な遺産だと思います。

 そういう意味で、ぜひ周囲の皆さん、この嘉手納基地、百害あって一利なし、前回も私は申し上げましたけれども、戦争というものはそういうものだと私は思います。ぜひ賢明なる判断で、私たちの土地がこの殺戮のために使われないように、そして私たちの生活破壊のために使われないように、賢明なるご判断をお願いして、終わります。

当山会長:ご苦労様。 では次に当山栄さん。


  出典:第8回公開審理の議事録から(OCRによるテキスト化は仲田

  写真提供:顔写真(上原成信


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