沖縄県収用委員 第7回会審理記録

池宮城紀夫


池宮城:

 え、私は嘉手納飛行場の共有地主の1人でございます。嘉手納飛行場から、日常的にこの52年間、常時公害をばらまいているわけですが、騒音問題について話したいと思います。

 わたしたち共有地主に対して、ある国会議員が座布団地主、ハンカチ地主と揶揄して、蔑視して喜んでいるようですが、ま、しかし、彼はわれわれの本質をきちんと見ていない。みなさんがた日常、座布団とハンカチのない生活はですね、われわれの生活ではできないと、それほど座布団とハンカチはわれわれの生活に、みなさんの生活に必要不可欠な必要な貴重な存在だったとあらためて認識しております。ま、冗談はこれくらいにして。

 あの、わたくしは嘉手納爆音訴訟の弁護団の団長をしている関係で、、騒音問題をこの、この16年間やってきました。この嘉手納基地に6市町村の住民のみなさんが張り付くようにして生活してきていますが、その6市町村から907名のみなさんが、もうこれ以上騒音は勘弁してくれと。とんでもないということで、裁判を起こしたのが1982年の2月6日です。もうすでに16年ですか、たっています。そして、われわれはこの裁判にですね、どういうことを重く見てきたかというと、え、午後の7時から翌日の7時まで、米軍機を飛ばすなと。そして午前7時から午後7時まで、日中ですね、65ホン以上の騒音をまき散らすなと。そして、3番目に過去および将来の損害賠償、この3つを柱に裁判を出しました。

 ま、こうして、提訴して12年たった、12年目に那覇地方裁判所の沖縄支部で判決がでまして、ま、残念ながら飛行差し止めは棄却されまして、しかしながら、過去の損害賠償は認められたということはみなさんご承知のとおりであります。

 これは、われわれ原告を含めて、この判決をどう評価しているかといいますと、嘉手納基地を周辺としては本当にこの、私たちもこれを騒音を通り越して爆音といってます、そして、裁判の名称もですね、「嘉手納爆音差し止め訴訟」ということですが、これはみなさんもすでにご経験があるかと思いますが、このすさまじい爆音に晒されているとですね、日常的に精神的にも大変な被害がある。そしてこの、生活妨害のみならず、心身への影響、健康にも被害が発生しているんだということで、全国のみなさん、ひとりひとり訴えてきたんですが、ま、裁判所は特に身体的な被害については、あの、立証されていないと、いうことで、精神的な生活妨害、精神的な被害に対する損害賠償を認めたということです。

 そして差し止めについてはですね、日本の政府は、アメリカの飛行機に対して、飛ばすなとか、そういう具体的な指示する権限がないと。従って日本政府に飛行差し止めを求めることは日本の法律ではだめだと。日本においてはだめだというような。これは最高裁でも決まっちゃっているわけですよね。ま、しかし、よくみなさん、考えてみて下さい。向こうの国家がですね、安保条約に基づいて地位協定に基づいて、具体的に嘉手納基地を提供しているわけです。それでその提供に基づいて、米軍は日常基地を利用しているわけなんです。そうであれば基地の使用について、安保条約そして地位協定に基づいて、そして、日本の主権がですね、きちんと実効性があれば、当然その米軍のですね、飛行機の運用についても、それに口を挟む権限があるはずなんです。しかし、ながら、日本の最高裁は安保条約はアンタッチャブルということで、基地の飛行機の差し止めは、駄目だと。政府が関与できないということで、嘉手納のみならず、小松、横田、厚木全部の裁判において、差し止めは認めないと。但し損害賠償だけは認めるというような現在の状況です。

 ところで、いろいろみなさんから基地被害、これからまた述べると思いますが、これまでもみなさん陳述してますが、ま、基地からいろんな被害が出てます。しかしながら、日常的に一番ひどいのは爆音ですね。現在でも、朝6時ころから、先ほどのイーグルとかいろんな戦闘機が飛び立ってやっています。あの、みなさんも、例えば東京のガード下とか、都会のど真ん中で、騒音に晒されて騒音はひどいなと思うんですが。しかし、そういう中で24時間、しかも、52年ですよ、そういう中で生活するというのは、どういう状況か。これはやはり大変なものです。そういう意味で、嘉手納・宮城町長がですね、那覇施設局の職員のみなさんも、那覇のしずかなところで、あの、やって基地の被害を調べると。嘉手納町に、施設局を移せと、今、具体的に要求しているところですが、これは当然なんですね。

 だからまあ、施設局のみなさん、なかなか県民のわれわれの意思を受け止めることができない、あの、精神をお持ちのようですから、爆音に晒されても、果たして、住民と同じように爆音に悩まされるかどうか、保証の限りではないんですが、少なくともやはり嘉手納基地に移ってですね、そこでまず仕事をしてみてくださいと。そうすれば嘉手納町民や宮城町長やこの周辺のみなさんが置かれている状況、みなさんの怒りや苦しみがよく分かると思います。

 さてそれで、騒音のですね、具体的な、あの、どういう被害があるかということをまず、二つに分けることができるんですね。あの、生活妨害、例えば、家族団らんの破壊、電話妨害、テレビ・ラジオ、あるいは子供の学習妨害、こういう精神的な被害と。もう一つは身体的な被害、これは高血圧、心悸亢進、めまい、難聴とかですね、そういう二つに大きく騒音による被害が分類されるわけです。

 ところでですね、騒音に関しては、従来からいろんな、専門家、学者の研究がなされていてですね、データは十分出尽くしているわけです。例えば、生理機能への影響はどういうものかというと、騒音レベルが50デシベルから70デシベル以上になると主として交感神経が緊張して抹消血管の収縮、心臓からの血液流出の現象、瞳孔が拡散する、血圧の上昇、胃の収縮、収縮の強さの減少とか、いろいろあるわけですね。

 これは例えばみなさん、ま、大体75デシベルというのはガード下あたりのあの騒音だと言われていますね。ああゆうところで、まず実験してみれば、やはり、心臓が急に収縮したり、そういう経験もおありだと思います。

 そして、まず内分泌系への影響としてはですね、副腎皮質刺激ホルモンの分泌とそれに起因する副腎皮質ホルモンの分泌の増加があると。そういうものが既に実験と文献にいっぱい出ています。そしてあの、もう一つは、騒音によって、これに長年暴露されることによって、回復不能な難聴になる。これも経験、あるいはこれまでのデータからいろいろ出ているわけです。

 そういうことで、われわれはこの爆音訴訟において、今いったような、被害をですね、原告本人が訴えてきたわけですけれども、先ほどいったように裁判所は具体的な実証がないということで蹴られたわけです。そこでわれわれは、一審が終わった以後、県の責任において、健康調査をぜひやってくれと。ということで、大田知事にですね、要請しまして、その結果知事がですね、基地政策の一つの資料にするということで、3年がかりで、調査をはじめたわけです。これは正式にはですね、「航空機騒音による健康影響に関する調査」と言うことで平成7年度から3ヶ年計画で現在なされています。それで、その中間報告がみなさんご承知のとおり、すでに出たんですが、あの、まず結論からいいますと、この調査結果はですね、具体的なやはり、騒音によるまず、あの、難聴者が、特にひどい、北谷町の砂辺地区でですね、厳密な検査をした結果、8名、これはもう間違いなく、爆音によるものだと言う専門医師による判定が出ているわけですね。そして2番目には、幼児への影響。3番目には嘉手納地区においては出生時、生まれた子供が他にくらべて、体重が小さいと。そういう中間報告3つが出ているわけです。

 それから、この調査委員会は国立公衆衛生院、永田泰公という先生で、会長が山本剛夫・京都大学名誉教授という。そして、委員には沖縄県中部病院・耳鼻咽喉科部長の與座朝義、その他専門家のメンバーで。その調査結果は、大変疫学的な調査も含めて、世界的なレベルのですね、これ以上の、これだけ大がかりな調査をしない限り、この調査のひっくり返すような結論でないだろうと、その委員の先生方も世界的な、どう国が反論しようが覆すことができないようのを、きちっとした科学的な調査結果だと言うことで。調査方法、その結果による結論と言うことで、大変自信をお持ちであるわけです。

 騒音によって、ですね、特に。みなさん、考えてみてご覧なさい。お腹に10カ月の間にですね、爆音に晒されて、母体がイライラし、そして、それが大変いろんなストレスが胎内の胎児に影響を与えられていると、これは医学的に証明されているわけです。それで現に、この結果が、屋良区の、子どもたち、新生児が、他の地区より、体重が低いと。体重が小さい。そして、その基地周辺、屋良地区周辺かの、その嘉手納基地周辺の幼児が、保育園にいっている子どもたちもきちんとした、科学的な調査の結果ですが、かぜをひきやすいと、落ち着きがないと。機が散りやすいと、ぐずぐずしがち。友達づくりに苦労しているとかですね。そういう結果がでているわけですね。三つ子の魂百までもといわれますが、ほんとにこんなお腹にいるころから、そして生まれてなおかつこんな爆音に晒せて、人間が人間らしい生活が出来ると思いますか。

 もう、そういう意味でも、本当に一日も早く、嘉手納基地をですね、撤去するということが、21世紀のわれわれの子どもたち孫たちにわれわれ大人が出来る唯一の責任ある仕事だと思います。そういう意味でも、この収用委員会の先生方にも、この嘉手納基地のあの、収用申請をすべて却下することを期待して、意見陳述を終わります。

(拍手)

当山会長:はい。では次に高良勉さん。


  出典:第7回公開審理の録音から(テープおこしは比嘉


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