沖縄県収用委員会審理記録

松永和宏弁護士(土地所有者代理人)


土地所有者代理人(弁護士 松永和宏)

 代理人の松永です。私は東野理原350番の地主の代理人です。

 なぜ、この釈明をしているのかということについて一言触れますが、土地収用法47条、この法律の規定に違反して裁決申請がなされた場合には、この申請は却下しなければならないと、このように規定されております。

 したがって、この法律の規定に違反しているとしたら、却下されねばならないのです。土地収用法の40条には、この所有者の氏名、住所、これを記載しなければならないとされております。収用委員会が裁決する場合にも、この氏名、住所に基づいて裁決をするわけであります。

 したがって、これが違法に40条に違反している場合には、裁決申請は却下されることになります。そして、土地物件調書、これについても石原正一氏は立ち会いの機会を与えられていないわけです。真実の所有者は記載をされていないわけであります。物件調書の作成過程に違法がある以上、当然、その面からも、法律の規定に違反するものとして却下されねばなりません。そのためにこの釈明をしているということです。

 島田正博さんのほうから釈明がありましたが、私としてどうしても理解できない点について、数点、釈明を求めておきたいと思います。

 防衛施設局は、これは昭和61年9月19日、この日に石原正一さんが死亡したと、ゆえに相続登記をしたのだと、このようなことをされているわけであります。ところで、真実の所有者、いまだ生存しているこの石原さん、この方の登記がされたのはいつなんでしょうか。昭和62年3月30日に登記の受け付けがなされているんです。

 一体、防衛施設局はどのようなお考えでこんな死者が登記をできたのか、死んだ人が霊界から登記をできたというふうにおっしゃっておるのか、明らかにしていただきたい。

 それから、私は職業は弁護士であります。登記というのは日常的にいたします。登記をする場合に、登記簿上の住所と住民票の住所が違う場合、その間の住所の移転の経過というのは、これは全部証明をしなければなりません。普通の人が相続登記をする場合には、登記簿上の住所と住民票の住所が違う場合、その間の住所の移転の経過を証明しなければ、登記は受け付けていただけません。

 私どもがその登記の申請書のほうを見たところ、この住所について証する書面というのは防衛施設局のほうに還付をされたということになっておりますので、防衛施設局の手元にあるようです。一体、死んだ人が住所を転々と移転したことをどうやって証明したんでしょうか。その登記申請の際に、住所の移転の経過を証明した書類、これをぜひとも見せていただきたいと、大変興味深い書類です。ぜひ見せていただきたい。

 さらに、通常、住民票というものを取りますと、住民登録をした日というのは住民票を見れば分かるわけであります。亡くなった石原さんが、この最後の住所に住所を定めたのは昭和24年の5月30日、私どもが住民票を見ると、こういうことが分かる。今、生きていらっしゃる石原さんが今の住民票の住所に住所を定めたのは、昭和30年の7月18日です。

 皆さんがとられた住民票、これ見せてください。一体、いつ住所を定めたことになっているんですか。登記簿上の住所と最後の住所、これが違うとおっしゃっているわけですから、一体、いつ住所が移転したんでしょうか、そのことについてきっちりお答えいただきたい。

 最後に、こういったことを踏まえて、当事者を取り違えたことに過失があるのかないのか、そのことに対する防衛施設局の認識をきっちり示していただきたい。

 当時者を取り違えたことに過失がある場合には、これは裁決申請を却下しなければいけないということは、これは建設省自身がこれまで重ねて表明してきた、学説でも当然のこととされていることであります。

 皆さん、これだけのことをやって、過失があったんですか、なかったんですか。きっちりお答えください。以上です。

○当山会長代理

 施設局、釈明できる部分はやっていただけますか。これは事前に書面出されていませんよね、松永さん。ちょっと手元にないものですから。

○土地所有者代理人(弁護士 松永和宏)

 当然、関連するということですね。今までの調査事項があれば、この釈明事項に答えられるための調査をされていれば、当然、答えられることだと思います。

○当山会長代理

 一番最初、考えを聞きたいという求釈明ですか。ちょっとよく聞きとれなかったんですが、釈明がよく分からなかった。

○土地所有者代理人(弁護士 松永和宏)

 では、昭和62年に石原正一さんに登記がなされているわけです。防衛施設局は昭和61年の9月19日に石原さんは死亡したといって、相続人に相続移転登記をしたわけです。これは、どういうご見解に基づいてなされたんでしょうか。これ1点ですね。

 それから住民票……まとめてやったほうがよろしいでしょうか。

○当山会長代理

 住民票の2番目は、住所の移転について証明が必要であるはずだと、その住民票を見せてほしいという意味ですか。何か口頭の釈明になじみにくい、見せろとか見せないというのは。

○土地所有者代理人(弁護士 松永和宏)

 そうであれば、相続登記をした際に、住所についてどのような証する書面をつけられたんでしょうか。その内容をきちんとお答えいただきたい。

○当山会長代理

 3番目はいつ変わったかと、こういう趣旨ですか。

○土地所有者代理人(弁護士 松永和宏)

 はい。

○当山会長代理

 最後に過失の有無はどう考えているのかということですね。

○土地所有者代理人(弁護士 松永和宏)

 はい。それから、防衛施設局がとられた住民票については、住所を定めた時期への記載はなかったんでしょうかということです。

○当山会長代理

 はい、それでは防衛施設局、よろしくお願いします。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 ただいまのご質問につきましては、収用委員会のほうに、疎明書及び補正の関連について資料を出しておりますので、その関連を一括してお答えしたいと思います。

 まず、対象土地、所有者名等でございますが、対象土地につきまして、嘉手納飛行場内に所在する、中頭郡嘉手納町字東野理原350番の土地でございます。実測面積590.20平方メートル、共有者数1,121名であります。裁決申請書等記載の土地所有者につきましては、静岡県清水市東大曲町3番37号、石原正一氏、昭和61年9月19日死亡の法定相続人の4名の方であります。

 判明した真の土地所有者につきましては、静岡県清水市江尻東1丁目1番16号、石原正一氏登記人名義。持分1,044分の1であります。

 登記名義人、石原正一氏が死亡したものと受け止め、同姓同名の別人の相続人を手続対象者としていた事情等について、ご説明します。

 土地所有者の確認調査につきましては、昭和57年9月、嘉手納飛行場内の一部土地、昭和57年5月から昭和62年5月までの間は、駐留軍用地特措法に基づき、貴収用委員会の裁決を得て使用権原を取得済みでございます。これにつきまして、いわゆる一坪共有地主の約820名の共有登記がなされました。このため、当局は土地登記簿記載のこれら土地所有者につきまして、所有権の異動、住所の移転等を把握するため、土地登記簿謄本、住民票、戸籍簿等の交付を受けるなどして、継続して確認調査を行ってきました。

 登記簿名義人、石原正一氏についての確認調査につきましては、昭和61年7月1日売買を原因として、昭和62年3月30日付けで共有登記がなされました。なお、昭和62年2月24日裁決分について、昭和60年11月14日に裁決手続開始登記がなされていたため、同氏は同裁決の名宛人とはなりませんでした。

 そこで、土地登記簿記載の住所地である清水市役所に、登記名義人の氏名、石原正一氏及び住所、清水市江尻東1丁日1番16号を記載して、住民票の交付を依頼しました。これに対し、同市から、同姓同名の別人である石原正一氏、住所、清水市東大曲町3番37号は、昭和61年9月19日に死亡している旨記載された昭和62年10月12日付け住民票除票が交付されてきました。

 このため、石原正一氏、住所清水市東大曲町3番37号の戸籍謄本等の交付を受け、法定相続人を調査し、翌年からはこの法定相続人を調査対象として住民票の交付を受けるなど、確認調査を実施し、今回の駐留軍用地特措法の手続きを執ってきたところであります。

 登記名義人が死亡していたものと受け止め、同姓同名の別人の相続人を対象として手続きを進めてきた理由について申し上げますと、住民基本台帳法第3条において、市町村長は常に住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるよう努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされており、また、これまでの住民票等の取り付け業務において、誤った住民票等が送付されたことがなかったため、真の所有者と同姓同名の住民票の交付に誤りがあるとは考えなかったこと。

 昭和62年2月24日裁決分に係る手続きにおいて、一坪共有地主1,979名のうち405名について、住所移転、住居表示変更等土地登記簿記載の内容と何らかの変動があったことから、交付依頼した住所と交付を受けた住民票除票の住所が異なるものの、その住所は登記簿記載の土地所有者、石原正一氏の死亡時の最後の住所であると判断したこと。

 その後、契約説得に当たった当局職員に対し、死亡した石原正一氏の法定相続人から、権利者であると信じるに足る「亡くなった主人の意思のようであるので、今回は法定相続人である私どもとしては契約を拒否します」旨の返答があったこと。

 また、真の権利者である石原正一氏は、裁決申請がなされた旨、隠れた権利者を含む関係権利者に周知し、意見書提出の機会を与える趣旨を有する裁決申請書等の公告・縦覧の機会があったにもかかわらず、土地所有者である旨の申し立てがなかったことなどでございます。

 補正についての考え方についてご説明します。

 本件土地が所在する嘉手納飛行場は、昭和47年5月15日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに当たり、地位協定第2条第1項の施設及び区域として閣議決定の上、駐留軍に提供されたものであり、本件土地は同飛行場の着陸帯敷地として使用され、本施設全体と有機的に一体として機能しており、平成9年5月15日以降も継続して提供する必要があるため、平成7年3月以来、駐留軍用地特措法に基づく使用権原取得の手続きを進めてきたところであります。

 共有地である本件土地の所有者であることが今般判明した石原正一氏、住所、清水市江尻東1丁目1番16号、持分1,044分の1につきましては、現在行われている貴収用委員会の審理に参加させることにより、適正な補償を確保し、その権利保護を図る必要があると考えております。

 なお、収用委員会の審理中に、権利者の取り違えが判明した場合には、収用委員会において真の権利者を確定され、これを対象に審理を継続して裁決すべきであると考えている理由は次のとおりでございます。

 裁決申請がなされている旨を権利者に周知し、意見書提出の機会を与える趣旨を有する裁決申請書等の公告・縦覧が、使用する土地について適正に行われている以上、真の権利者をはじめとする関係権利者には、収用委員会に対する意見書提出の機会は与えられており、その権利保護に欠けることはないこと。また、収用委員会の審理中に新たに判明した真の権利者につきましては、使用による損失について適正な補償を行うため、審理に参加する機会を与えることにより、その権利保護が図られること。

 前述により、真の権利者等の権利保護が図られる以上、今般のような権利者の取り違えは、申請を却下しなければならないほどの瑕疵とは言えないと考えられること。

 以上から、今般判明した真の土地所有者に対し、使用による損失について適正な補償を行うことにより、その権利保護を図るため、裁決申請書等関係書類を補正したいと考えている次第でございます。

○当山会長代理

 では、三宅俊司さん、お願いします。


 出典:沖縄県収用委員会 公開審理議事録
    違憲共闘会議提供、テキスト化は仲田

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