沖縄県収用委員会審理記録

新垣勉弁護士(土地所有者代理人)


○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 地主代理人の弁護士の新垣です。私は5・15メモについて求釈明を行いたいと思います。

 ご承知のように、復帰後25年たって、一昨日、初めて国民の目に分かるような形で5・15メモと称する文書の内容が明らかになりました。25年間も5・15メモを公開てこなかったこと自身に対して激しい憤りを覚えるものですけれども、とりわけこの5・15メモは、今審理をしている私たちの土地の強制使用の問題と非常に密接に関連していることを痛感しているところであります。

 そこで、起業者のほうに釈明を求めたいと思います。

 一つは、復帰後、再三にわたって地主の土地の強制使用認定申請及び強制使用裁決申請を繰り返してきておりますけれども、今回なされている使用認定及び裁決申請は、5・15メモに基づく申請であるのかどうなのか、まず冒頭に問いただしておきたいと思います。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

 これはあらかじめの質問事項には書かれてないですけど。

○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 よくお読みをいただければ、記載してあることがお分かりいただけると思いますけれども。

○当山会長代理

 その1番目でしょうか。

○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 3月11日付け求釈明申立補充書の一の3のところをごらんください。

○当山会長代理

 はい、施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 5・15メモに記載された各米軍施設区域の使用方法は、本件強制使用認定申請の際に、使用認定申請及び認定の前提理由となったものか、明らかにされたいとの事項について、回答いたします。

 米軍施設区域の使用方法は日米合意に基づくものでありますが、5・15メモにつきまして議論することは、貴委員会に対して本審理になじまない旨、回答しております。

○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 今、起業者のほうからなじまない旨の答弁がありましたけれども、この点については納得いたしかねます。今日まで5・15メモの内容が明らかにされてこなかったゆえに、私どもはよく反論をすることができませんでした。しかし、今や5・15メモの内容が手元に入手できました。この5・15メモというのは、ー体何であるのかをよく理解をしていただきたいと思います。1972年5月15日、午前0時1分に第251回の日米合同委員会が招集をされ、そこで日本政府がアメリカ合衆国政府に対して、地位協定に基づいて提供をする具体的な個々の施設及び区域を取り決めたのが、この5・15メモと題する文書であることがもはや明らかになりました。したがって、起業者側が申請理由で記載をし、この公開審理でたびたび述べておりますように、起業者が理由とする安保条約及び地位協定に基づく基地提供義務というのは、具体的にはこの5・15メモで合意をされた事項の履行ということになります。

 したがって、抽象的に日本政府がアメリカ合衆国政府に対して提供義務をもっているという弁明からさらに一歩踏み込んで、具体的にどの土地をどのような使用目的のもとに提供する政治的な義務を負わされているのかということを明らかにするのが、実はこの5・15メモなのであります。

 ですから、まさに本件強制使用認定申請及び本件強制使用裁決申請の根底にあるものが5・15メモであるはずであります。したがって、これは本件収用委員会になじまないものではなくて、むしろ本件強制使用申請をする前提の不可欠なものでありますので、再度、この5・15メモの日米両政府の合意が本件強制使用認定及び本件強制使用裁決申請の前提根拠となっているのかどうなのかについては、ぜひ答えさせていただきたいと思います。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 米軍施設及び区域の使用方法は、日米合意に基づくものでありますが、5・15メモにつきまして議論することは、平成9年3月26日付けで貴収用委員会に対し、本審理になじまない旨、回答しております。

○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 今、巧みに議論をすり替えて、議論をするのはと言いましたけれども、私は議論をするつもりはありません。強制使用認定申請及び強制使用裁決申請の前

提根拠になっているのが5・15メモであるのかどうなのかを答弁を求めているわけでありますので、皆さんと不用な議論をするつもりはありませんので、きちっと答えをしてください。

○当山会長代理

 施設局、どうですか。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 ただいまお答えしたとおりでございます。

○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 本当に強制使用申請をしておきながら、これほど相手方を侮辱する答弁はないと思います。ましてや、起業者は国の代表として本件申請をしているわけですから、本来は私たち国民の公益の代表者として、真摯にその理由を説明する義務を負っているにもかかわらず、このありさまであります。しかし、ここは求釈明の場ですので、議論にわたることは差し控えさせていただきます。

 次に、第2点目の釈明を求めたいと思います。5・15メモを拝見をいたしますと、提供する区域の範囲という項目があります。この提供する区域の範囲に、本件各土地が含まれるか否かが、実は重要な問題だと思います。

 ところが、公開をされました5・15メモを拝見をいたしますと、提供するはずの区域の範囲が、概略としか記載をされておりません。

 そこで、お尋ねをしたいのですけれども、5・15メモで合意をされた提供する区域、施設というのは、実測図面に基づいて具体的に土地を特定をして提供の範囲を定めたのか、それとも大体このへんまで提供しましょうということで、概略図で提供の合意をされたのか、この点はしかと答えていただきたいと思います。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 求釈明事項にございませんので、これは改めて答えさせていただきます。

○土地所有者代理人(弁護士 新垣勉)

 非常に便利な言葉で、改めて答えさせていただきますということですから、じゃあ改めて答えていただきます。私どもは時間は出し惜しみしません。いくらでも待ちますので、しかと答えていただきたいと思います。

 次に、第3点目の釈明をお願いをいたします。

 5・15メモには、提供する施設や区域の使用主目的という項目があります。例えば、嘉手納飛行場を例にとりますと、使用主目的は飛行場と記載をされております。したがって、日本政府はこの5・15メモに基づいて飛行場として嘉手納飛行場施設を提供する、こういうふうになるはずであります。

 そこで、求釈明に移りますけれども、用心深く主使用目的というふうに記載をされていますから、必ずしも飛行場のために使うものではないのも含まれるという日本語の文脈が読み取れます。そこで、お尋ねをしますけれども、使用主目的の飛行場という中には、学校用地、家族住宅敷地、浄水場池敷地等も入るのかどうなのか、答えていただきたいと思います。

 実は、この求釈明は先ほどの仲山代理人の求釈明とも関連をいたしておりますけれども、起業者側は再三再四、日米両政府の合意に基づいて、義務を履行するために必要だということを弁明をしておりますけれども、5・15メモで合意をされたものは、あくまでも飛行場用地としての提供だというふうに理解ができます。ただし、飛行場のためには管制塔も必要でしょうし、格納庫も必要でしょうから、それに関連する施設が含まれることは容易に理解はできます。

 しかし、これを無制限に広げて、飛行場用地のために提供合意をした施設に学校施設をつくり、浄水場池敷地をつくり、ましてや家族の住宅用地をつくるというのは、あまりにも広げすぎだと言わざるを得ません。そこで、この使用主目的というのは、どこまで一体含むものと考えているのか、ぜひ答弁をしていただきたいと思います。

 時間がありませんので、第4点目の求釈明も併せていたします。

 5・15メモの中には、使用期間という項目があります。ほとんどの提供施設は「期間定めず」という記載になっております。つまり、提供する期間についての合意が、日米両政府の間では整っていないということを5・15メモは明らかにしております。これは、ある意味では自然なあり方だと思います。日本政府が必要があれば、いつでもアメリカ政府に対して提供施設の返還を申し出ることができるということになるはずであります。

 本件のように使用権原を失ったときには、日本政府は5・15メモの合意に拘束されないで、使用権原を失った土地についての返還を日米合同委員会の場で、アメリカ合衆国政府に対して求めることができる。こういうことになるはずでありますので、ぜひ、この「使用期間定めず」という政府のほうの見解を披露していただきたいというふうに思います。

 まとめてお答えいただければ、幸いであります。

○当山会長代理

 施設局、どうぞ。

○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)

 求釈明事項にないことでございますが、全体として、われわれといたしましては、施設区域の使用方法は日米合意に基づくものでありますが、5・15メモにつきまして議論することは、平成9年3月26日付で、貴収用委員会に対して本審理になじまない旨、回答しております。

○当山会長代理

 それでは、何か前進しないようですので、次に、総括的反論に移っていただきましょうか。房前三男さん、お願いします。


 出典:沖縄県収用委員会 公開審理議事録
    違憲共闘会議提供、テキスト化は仲田

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