沖縄県収用委員会 第11回審理記録

 阿波根昌秀(地主側代理人・弁護士)


 阿波根昌秀(地主側代理人・弁護士):

 キャンプシールズの島袋善祐ほかの地主の代理人の阿波根であります。公開審理も、きょうも含めて第11回を数えるわけです。これまでの公開審理を振り返ってみて、本当の意味での実質審理が遂げられてきたかどうかについて、私は私なりの感想なり意見なりを申し上げたいと思っております。

 ご存じのように、公開審理の場は単に意見を一方的に述べる場ではありません。まさに審理を尽くす場であります。そして、意見を述べ、反論し、求釈明を求めてそれに対して釈明をすると、そして証拠申立てをして証拠調べを行うと、そういう場であります。そういう場でありますけれども、これまでの今回の強制収用の事件は、沖縄県に存する米軍の強制使用の過去の手続きとは多少異なったところがありました。

 これまで行われた二つの強制使用事件を見ますと、私は第1回公開審理でその特徴を申し上げましたが、かいつまんで申し上げますと、1981年8月4日から開始された第1次のいわゆる強制使用事件においては、6回公開審理がもたれました。そして、意見陳述を申し出をした地主さんが98名おりました。公開審理で実質的な意見陳述が認められたのは、わずか8名の地主さんでありました。そして、残りの90名の地主さんには、公開審理の場で の意見陳述が認められなかったということであります。そして、その第6回の最終の公開 審理の場において、二人の地主さんから、対象土地の位置景観が違うから、現場調査をしてくれという申し出をしましたが、それも認められませんでした。このような状況でありました。

 また、1985年2月6日から審理が開始されました2回目の第2次のいわゆる強制使用事件については、11回公開審理がもたれました。対象地主の数は、数千人にのぼりました。しかし、その中で実質的な意見や陳述が許されたのは、わずか30名にすぎませんでした。そして、まさにその収用委員会としても起業者としても当然審理を尽くすべき、損失の補償に関する事項についてまでも、意見陳述が行われないままに審理が打ち切られるという、全く不合理なものでありました。

 ところが、今回の公開審理は、ご存じのように1997年2月21日に開始されております。 この公開審理の冒頭におきまして、亡くなった兼城賢二前会長は「収用委員会は独立した準司法的な行政委員会である。公正・中立な立場で実質審理を行う」と審理に際しての基本的な姿勢を明らかにしました。今回の強制使用事件の手続きが、実質審理の原則の下にのっとって行うことを宣言されたわけであります。前会長は、審理の半ばでご逝去されましたが、同会長の意思はその後の審理においても、基本的に承継されることになったと、私は理解しています。

 しかし、これまでの公開審理を振り返ってみた場合、本当に実質審理が行われてきたかどうか、意見陳述のほとんどが、地主側からのものであります。施設局からの陳述は、申請理由の説明と地籍不明地域内の対象土地の位置境界の特定に関する主張であります。それに留まっております。審理の上で当然明らかにすべき事項に関する求釈明が残されたまま、十分に釈明をしないまま、残されたままであります。このため、実質的な審理を遂げようとした収用委員会の意思は貫徹されなかったと私は思っております。このことは、全くその責任は起業者側にあるんであって、その責任を当然負うべきだと考えております。

 ところで、またもう一つ、本当に実質審理を行うためには現地の立入調査が必要であります。この点に関して申し上げますと、収用委員会は去る1月6日、7日、9日の3日間にわ たって、対象土地のうちの82筆の現場調査を実施したということであります。しかし、その対象土地の中に地権者と一緒になって調査した土地は1筆もありません。これは、法律に基づく正当な調査であるということを、私たちは認めることはできません。対象土地の現地調査は、強制使用事件の手続きとして重要な意義をもつものであることは言うまでもありません。中でも、関係当事者が現地において、現地に即して意見を述べる、このことは地権者の権利を守る上でも、また審理の公平性、正確性を期する上からも、不可欠なものであります。

 収用委員会もこの手続きの重要性を当然認識していると私は考えています。地権者立ち会いでの現地調査を行うことを正式に収用委員会は二度にわたって決定して、防衛施設局を通して在沖米軍に基地立入要請をしていましたが、いずれも地権者らの立ち入りが認められるに至りませんでした。米軍の地権者らの立ち入りを認めないとする理由は、いずれも施設の管理運用上の理由ということでございましたけれども、そのようなことは到底合理的理由とは言えません。

 この二度にわたって実施が予定された地権者立ち会いでの現地立入調査は、収用委員会が土地収用法第65条に基づいて、審理に必要なものとして公正かつ独立した立場で、厳正に決定したものであります。特に、第2回目の現地調査の決定は、地権者らに対して直接現地への出頭を求める通知を発する手続きがなされたことからも推察できるように、地権者ら立ち会いでの現地調査の実現を期す収用委員会の強い意思があらわれていたと、私は考えています。地権者立ち会いでの現地立入が不可能になった責任は、すべて立入要請を拒否し続けた米軍当局と、これに追従した起業者が負うべきことは理の当然であります。

 収用委員会が1月6、7、9日に行った現地調査は、対立当事者を欠いたままでの半端なものであります。公正中立のものではありません。われわれはこの調査が土地収用法第65条による正当な調査であることは認めません。この調査によって得た資料や証拠を価値あるものと認めることはできません。地権者ら抜きで実施されたこの調査、しかも起業者那覇防衛施設局職員によって先導されたこの調査は、違法・不当な調査であります。地権者らの立ち会いでの現地調査の実現を追求してきた同じ収用委員会が、このような調査をなぜ行ったのか、全く理解ができません。このような不法調査をあえて行った収用委員会に対し、強く遺憾の意を表明するものであります。

 どのような調査が行われたかどうか、例えば、キャンプシールズの島袋さんの土地については、本当に川との位置関係を調べたのかどうか。それから、嘉手納弾薬庫の比嘉良子さんの土地については、道路との位置関係を本当に測量して調べたのかどうか。平安さんの土地については、道路までの位置関係を本当に調べたのかどうか。私たちは、現地において地権者としての立場の意見を述べる予定でありました。そのような機会がすべて奪われたということは、絶対に許すことはできません。

 ところで、本件強制使用事件はその対象土地の一部について、使用手続きの一環として、土地調書、物件調書への沖縄県知事の署名代行を求める職務執行命令訴訟や、裁決申請書等の公告・縦覧を求める訴訟が提起されたことも伴って、全国的に広い関心が寄せられました。

 職務執行命令訴訟における知事の主張は、憲法や地方自治法の精神に沿ったものであり、全国の75%もの米軍基地をその住民意思に反して置かれている県の首長として、土地物件調書への署名や裁決書への公告・縦覧を拒否したことは当然なことであります。知事の主張には十分な理由がありました。残念なことに、この知事の主張は反動化した司法当局によって退けられましたが、この反動的な判決においてすら、「異義がある地権者は収用委員会における手続きにおいて異議主張が可能であります」ということを指摘しております。地権者の主張、反論の場としての収用委員会の存在の役割は、まさに大きいものであります。

 この公開審理における実質審理は、この不当な判決を乗り越えるための手続きそのものであります。11回にわたってこれまで展開されてきましたが、地主の意見陳述を中心とする今回の公開審理は、この職務執行命令訴訟判決を覆し、究極においてはすべての裁決申請の却下を求めるものであります。

 収用委員会の賢明なご判断をお願いします。

 当山会長:

 続きまして、土地所有者の3名の意見をお聞きしたいんですが、その前に一言おわびが ございます。先ほど事務当局からの報告によりますと、駐車場の利用の関係で一部地権者の方からの苦情があったようです。駐車場の誘導について一部手違いが生じてご迷惑をおかけしたようです。この場を借りておわび申し上げます。

 では、続きまして有銘政夫さん。


  出典:第11回公開審理(テープ起こしとテキスト化は仲田、協力:違憲共闘会議)


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