1. 都知事からの「告知書」  (2001/10/05記入)
  
     
いい人は介護する(?)――障害者として、介護者としての雑感  (その1)

都知事からの告知書

 先日、私たち夫婦の住む西東京市の市役所障害福祉課から封筒が郵送されてきました。宛名は連れ合い宛です。中を開くと1枚の紙だけ(左図)。
 それには右下の図のように書いてありました。都知事のハンコは縦横3センチもある大きな印でした。各字の大きさも大体比例して記しました。封筒の差出人は市役所なのですが、中は都知事からの通知書だけでした。


第8号様式(第11条関係)

○障マーク心  身  障  害  者  医  療  費
助 成  事 由  消 滅 通 知 書


13福保助第39号の333
平成13年8月24日

吉 川 祐 子 様
                       東京都知
事 (大きな知事印)

下記のとおり、心身障害者医療費助成制度の助成事由の
消滅について通知します。

            記

1 消滅年月日         平成13年9月1日
2 消滅理由
  老人健康保険法による医療を受けることができ、また住民税課税者でもあるため、心身障害者の医療費の助成に関する条例第2条第2項第4号の規定に該当し、対象者でなくなったため。
  将来住民税非課税になった場合は再度「○障」受給者証を取得することができますので、この助成事由消滅通知書を保管してください。


 この決定に異議がある場合は、この通知書を受けとった日の翌日から起算して60日以内に、書面で東京都知事に対してその旨申し出ることができます。

 

 これを読んで、すぐに何のことかお判りでしょうか。私にはよくわかりませんでした。連れ合いの医療費のなんらかの助成が打ち切られたらしい、ということは表題から判断できましたが、具体的にはどういう場合に、いくらの助成費が打ち切られ、その結果、こちらの負担はどれだけ増えるのか、そして、その打ち切りの根拠とされている「条例第2条第2項第4号」とはどんなものなのか、まったくわかりませんでした。

 それがある程度までわかったのは、つぎの定期の診察のために、9月のはじめ、連れ合いを病院へ連れて行ったときでした。
 検査や診察を終え、処方箋をもらい、いざ、会計窓口へ行って、書類や保険証を出したところ、(この保険証なるものの仕組みも、実にわかりにくい構造です。彼女の名義で支給されている保険証は、(1)老人保健法医療受給者証〔西東京市長発行〕、(2) ○のなかに「障」の字のマークのあとに 「受給者証」とあり、そのあとに○の中に「食」の字のあるもの〔都知事発行〕、(3)介護保険被保険者証〔西東京市発行〕の3種があり、しかもそれだけではたらず、(4)所帯主とされている私名義の「国民健康保険被保険者証〔西東京市発行〕」を出さねばならないのです。この問題については、いずれ改めて書こうと思います。) (2)の「○障 受給者証○食」の有効期限が8月31日になっているのに気づきました。
 「これは期限が過ぎてますが、」と言うと、病院の窓口の人は「新しいものが来ているはずですよ」と言う。いいえ、来ていません…… 最近、つぎつぎといろいろなものが打ち切られているから、この制度もなくなっちゃったんじゃないですか、と私。「そんなことはありません。ほかの人は、新しいものを出してます。とにかく、一度、市役所に聞いてみた方がいいですよ。そうでないと、治療費が高くなりますから。今日は、これがないものとして計算しますが、新しいものが来たら、次回に見せてくださればその分はお返しできますから」と窓口の女性。
 それまでは、連れ合いの治療費も、検査料も、処方箋代も、そして薬代も全部、無料でした。ところが、この日は、治療費1,500円、調剤費1,120円を請求されることになりました。これが、先の「助成事由消滅通知書」なるものの具体的結果だったのです。これから、月に2回ずつ通院するたびに、これだけの費用がかかるとすると、1年では4万円近い出費増となる計算です! 10月からは介護保険料も倍額になるというのに、これはとても痛い話です。

 市役所に電話で聞いてみました。その結果、どうやらわかったことは、昨年8月に都条例が変更され、住民税が課税されている者に対しては、重度の障害者であっても、「○障」の助成は打ち切られることになり、私の連れ合いは、昨年度分の年金支給額に住民税がかかったため、この9月からは、「心身障害者の医療費助成に関する条例」による医療費の助成が打ち切られたのだという ことでした。「条例第2条第2項第4号」とは、その打ち切りの条件を規定したものとのことです。
 そのほか、いろいろ、聞いているうちに、まだわかったことは、来年の春の所得税申告の結果、もし、住民税が課税されないことになったら、また9月からは、この「○障受給」は復活するが、しかし、それは本人申請の結果なので、自動的には復活しない、8月末以前に 障害者本人の方から市役所へ届けなければならない、ということでした。

 さて、事情の説明をくどくどとしましたが、言いたいことはこれからです。以下、都と市役所、そして自治体議員への文句、苦情です。

(1) 都知事の通知書を市役所の障害者福祉課が代わって送ってくるのだったら、市の障害者福祉課は、都知事の発行した1通の「告知書」なる官僚的文書だけを送りつけるのではなく、せめて、それが何であるかの説明ぐらい同封すべきではないでしょうか。「条例第2条第2項第4号の規定に該当し」などとだけ言われてわかる人は住民の中でまずいません。その条例を引用して、それがどういう規定であるかの説明ぐらい「福祉」課を名乗るのだったやるべきではないでしょうか。ただ仕事を片付けているだけで、障害者の福祉を障害者の身になって考えているとは到底思えません。

(2) 「助成事由」が「消滅」して助成を打ち切る際には、都だか市だかの方で、きちんと調べて、打ち切りの手続きをとり(「受給者証」を発行しない)、対象者に「告知書」を送り つけて来るのに、ふたたび障害者の側に「助成事由」が発生し、「受給」の対象となっても、それは都でも市でも調べず、通知もせず、本人が自分で申請しない限りはそのまま、というのは、あまりにも一方的です。要するに、心身障害者への医療費助成に関する制度はあっても、なるべくそれを適用しないように、助成費が少なくすむようにさせているわけで、これも到底、障害者の福祉のためなど考えているとは言えない、逆の立場です。

(3) 住民税が課税されたら資格が消失することになる、という昨年の東京都条例改定も、今度あらためて知らされて、ひどい措置だと思います。そもそも連れ合いの収入は厚生年金の支給だけです。この年金は、以前労働していたときに、勤務先の会社と自分の給料とから支払われていたものによって支給されているので、決してお恵みを受けているのではありません。その年金収入に対して住民税を課税して税を取り立て、その上、そうした住民税が課税されているからということを「事由」(何という官僚的な言い回しか!)にして、障害者助成を打ち切るというのは、2重の弱者圧迫です。

(4) 自治体の議員は、この昨年8月の都条例改悪の結果、実際に都や市の福祉課によって行なわれている具体的手続きがこのような状況になっている、ということを知っているのでしょうか。少なくとも、福祉課のやることを、もうすこし障害者や高齢者にわかりやすく改善させるような努力をすべきではないでしょうか。

(5) 都や市、そして市役所の福祉課などの窓口に言いたいことは、まだまだたくさんあります。連れ合いが障害者手帳をもらってからのこの1年に経験したことは、驚くようなことの連続でした。それは、おいおいこの欄に書いてゆくことにします。今回はまず、都知事から来た1通の「告知書」をめぐることだけに留めます。(以上)