Notes

インティファーダ:
(民衆蜂起)1987年12月にガザ地区と西岸地区でパレスチナ住民がいっせいに抗議行動を開始し、世界の注目を浴びた。若年層を中心に自然発生的に起こったこの運動は、中東和平を求める国際世論を喚起する一方でイスラエルの占領コストを高め、イスラエルに和平の必要性を認識させた。

1948年に難民化:
第二次大戦後、英国がパレスチナ帰属問題の解決を放棄し、国連の解決に委ねたことを受け、1947年11月29日、国連パレスチナ分割案が可決された。しかし、この決定はアラブ側には承服し難いものであった。48年5月、英国の委任統治終了を受けてイスラエルが建国を宣言すると、ヨルダン勢を中心とするアラブ連盟軍がパレスチナに進攻、一挙に戦争状態となった(第一次中東戦争)。49年の休戦協定によってイスラエルは国連分割案で提示された以上の土地を支配下に入れた。その一方でヨルダン川西岸はヨルダンに、ガザ地区はエジプトに併合され、いわばイスラエルとアラブによるパレスチナ分割という結末となった。この混乱のなかで、多くのパレスチナ住民が戦火を逃れて一時的に周辺アラブ諸国に非難していたが、戦後イスラエルは彼らの帰還を拒否したため、70万から100万人と推定される大量のパレスチナ難民が発生した。故郷に帰れないまま、多くの難民たちがヨルダン川西岸、ガザ地区、シリア、レバノン、ヨルダンなどの仮設テントに詰め込まれて暮らし続けることになった。

ナセル主義:
エジプトの政治家カマル・アブデ・ル=ナセルは、1952年自由将校団を率いてファルーク王制を倒し(7月革命)、56年エジプト大統領となった。55年バンドン会議に出席しスエズ゙運河の国有化を宣言したことにより第二次中東戦争を引き起こし、アラブナショナリズムの旗手となる。しかし、67年の第三次中東戦争でイスラエルに大敗し、影響力を失う。70年急死

マフムード・ダルウィーシュ:
(1942-)ビルワ村出身のパレスチナの詩人。1948年のイスラエル建国により難民となる。イスラエルでラカハ(イスラエル共産党)の指導的メンバーとして活躍し、しばしば当局の迫害を受けた。ジャーナリストとして、71年以降ベイルート、82年以降はパリ、チュニスで活動。69年ロータス賞、82年レーニン平和賞受賞。『翼なき鳥』(1960)、『パレスチナの恋人』(1966)などの作品がある。

ガッサーン・カナファーニ:
(1936-72)アッカ出身の小説家・劇作家。1948年の難民。59年以降ベイルートを拠点にPFLPのスポークスマンを勤める。1972年、ベイルートで暗殺される。『太陽の男たち』(1963)『ハイファに戻って』(1969)、ともに黒田嘉郎・奴田原睦明訳「現代アラブ小説全集7」河出書房新社(1978)に収録されている。後者は71年に映画化された。

シオニズム:
ユダヤ人を独自の民族とみなし、民族国家の建設を通じてユダヤ人差別・迫害を克服しようとする思想・運動。19世紀末のヨーロッパにおいて、ロシアにおけるポグロム(ユダヤ人抹殺)やフランスのドレフュス事件などを契機に政治運動となった。シオンはエルサレムまたはパレスチナを意味し、そこに民族的郷土を建設しようとする帰還運動であり、初期は社会主義運動とも結びついていたが、旧約聖書を根拠にしたためユダヤ教の宗教意識も動員されることとなった。

『オリエンタリズム』:
Orientalism,1978、邦訳は平凡社ライブラリー1993年

ラジオ・カイロの避難勧告:
第一次中東戦争の混乱で大量のパレスチナ難民が発生した原因としてイスラエル側が主張する説は、当時エルサレムを追放されていたパレスチナ人指導者アミーン・フセイニが、アラブ軍の作戦活動が終わるまで自分の村を離れるようにとの「退避命令」をカイロからパレスチナ人に向けて放送したため、多くのパレスチナ人が自主的に村を出たというものである。しかし、1950年代にE・チャイルダーらが行った調査では、そのような放送のあった証拠はなく、逆にアラブ人に対して平静にパレスチナにとどまるようにとの放送が行われていたことが明らかにされている(富岡倍雄『パレスチナ問題の歴史と国民国家』)。パレスチナ人が大量に退避した原因は、むしろ、イスラエル側が威嚇やテロによって意図的にパニックを生じさせたことにある

リクード党:
1973年に誕生したイスラエルの右翼連合政党。領土問題での妥協を拒否し大イスラエル主義を掲げる。党の前身は故メナヘム・ベギンが率いたテロ組織イルグン(独立後はヘルート党)。77年の総選挙の結果、労働党に代わってベギン政権が誕生した。

安保理決議242:
1967年の中東戦争の処理原則で安保理決議338と並んで中東和平の大枠とされる。イスラエルに占領地の返還を求め、アラブ諸国にはイスラエルとの共存を求める。しかし、イスラエルが撤退すべき占領地の範囲が曖昧であり、パレスチナ人は難民として言及され、民族自決権を正当に認められていない

『怒りの日々』:
インティファーダを題材にしたテレビ・ドキュメンタリー。親イスラエル派からヒステリックな非難を浴びた。

イツハク・シャミル
(1915-)過激テロ組織シュテルンを率いた極右政治家。ベギン引退後、93年までリクード党首をつとめ、83-84年と90-92年の二度にわたりイスラエル首相。

シュテルン: 英国委任統治時代に、イルグンに飽き足らない超過激主義者たちによって結成されたユダヤ人テロ組織。

マドリード中東和平国際会議:
1991年10月に開始されたマドリッド交渉。イスラエルとその周辺のアラブ諸国、パレスチナ代表による多国間和平会議。

ヤセル・アラファト:
(1929-)パレスチナ抵抗運動の指導者。1958年低幸運同組織ファタハを結成。69年以降PLO議長。96年パレスチナ自治政府議長に就任。

PLO(パレスチナ解放機構):
パレスチナ人を代表する政治機構。1964年ナセル・エジプト大統領の傀儡として発足したが、67年の第三次中東戦争におけるアラブ側の敗北を契機に本格的な民族政府となった。

ジョルジュ・ハバシュ:
(1925-)パレスチナ解放人民戦線(PFLP)議長。ハイファ出身のキリスト教徒、外科医。アラブ民族革命にマルクス主義を導入。

ナイエフ・ハワートメー:
(1937-)パレスチナ解放民主戦線(DFLP)議長、PFLPから分かれた柔軟路線のマルクス主義者

エメ・セゼール:
(1913-)西インド諸島仏領マルチニックの詩人。サンゴール(セネガル)とともに1930年代のネグリチュード運動を代表する作家。元フランス共産党員。マルチニック人民党党首。著書に『帰郷ノート/植民地主義論』(砂野幸稔約、河出書房新社、1997)がある。

フランツ・ファノン:
(1926-61)西インド諸島仏領マルチニック島生まれの半植民地主義の革命家・思想家・医師。アルジェリア解放戦線に身を投じた。著書には『地に呪われたる者』The Wretched of the Earth (1961)の他、『黒い皮膚、白い仮面』(1952)がある。

『文化と帝国主義』:
Culture and Imperialism, Knopf/Random House, 1993 (近々翻訳がでると聞いています)

ジョセフ・コンラッド:
(1857-1924)ポーランド出身の英国の小説家。20年余の船員生活の後、英国に帰化し、ロシア語、ポーランド語に次ぐ第三の言語である英語で作家生活を始めた。

ライオネル・トリリング:
(1905-75)米国の批評家・小説家、評伝『E.M.フォースター』1943でフォースターをアメリカに紹介。

ピエ・ノワール:
黒い足の意味。アルジェリア生まれのフランス(ヨーロッパ)系移民の子孫をフランス本土で呼ぶ蔑称。農業従事者が多く、アルジェリア独立後は極端な反アラブ主義に走るものが多かった。

ベン・ベラ:
(1916-)アルジェリアの民族主義政治家・FLNの創設メンバー、1963ー65アルジェリア大統領。

ブーメディエン:
(1932-78)アルジェリアの政治家・軍人、ベン・ベラ政権を倒し政権に就く。

原則宣言文書:
オスロ合意では、94年3月に西岸地区のエリコとガザ地区でパレスチナ人の暫定的かつ限定的な自治を開始し、その後に暫定自治地域の拡大交渉を進め、5年以内に占領地の最終的地位を決定すると定めている。オスロ合意に基づき、9月13日に「ガザとエリコの暫定自治」を約束する原則宣言文書の調印式が行われた。PLO国際局長アッバースとイスラエル外相ペレスが署名し、ラビン・イスラエル首相とアラファトPLO議長の握手が交わされた。これにより10月13日オスロ合意が発行、ガザ・エリコの先行自治実施交渉が開始された。

秘密交渉:
暫定自治に関する原則宣言の正式調印を可能にしたノルウェーの仲介によるPLOとイスラエルの秘密交渉のこと。92年のイスラエル総選挙による労働党の政権復帰の前からイスラエル人とノルウェーの学者たちの私的なサークル内でパレスチナ側との対話の模索が始まっていた。93年初旬からPLO、イスラエル代表が参加して本格化し、1993年8月のオスロ合意成立となる。

イクバール・アフメド:
(1931-)インド出身のアメリカの政治学者、活動家。ハンプシャー大学教授。『ペンと剣』の序文を書いている。

イツハク・ラビン:
(1922-95)1992年2月よりイスラエル労働党党首、同年7月ラビン内閣を樹立。95年11月右派ユダヤ人学生によって暗殺される。本文中の後の下りで言及されるように、48年の建国当時はハガナの副司令官だった。
Home| Edward SaidNoam ChomskyOthers | LinksLyrics

Presented by RUR-55, Link free
(=^o^=)/ Contact: mailtomakiko@yahoo.com /Last modified: 25/01/2001