Hajarna
ウエストバンクにおけるイスラエルの軍令:1967-1992年
軍令152 〜 軍令 175
今回から、軍令の内容について研究会で話題になった内容も、できるだけ記録していこうということになりました。 そこで、Hajarnaのコメントを ☆印と赤字で入れてみました。
軍令 152 1967.10.22
外出禁止時間に関する軍令 (ヨルダン渓谷)
午後5時から午前6時までの夜間の外出禁止を定めたもの。
以下によって修正
1.軍令168 - 1967.11.15
2. 軍令195 - 1968.1.1
3. 軍令233 - 1968.3.24
1968.6.30付の軍令262によって廃棄された後、1972.10.1付の軍令488によってふたたび廃棄された。
軍令 153 1967.10.29
宿泊台帳に関する軍令
すべてのホテル滞在者は登録を義務付けられる。本令によって、登録内容のうち保管義務のある項目が定められる。ホテル所有者は毎週、宿泊記録を報告しなければならない。違反者には2年以下の懲役あるいは3千イスラエルリラの罰金、またはその両方が科される。
以下によって修正
1.軍令244 - 1968.4.10
2. 軍令320 - 1969.3.28
軍令 154 1967.10.30
刑法犯罪の裁判に関する軍令
軍令30への修正2
第3条項から「しかし」の語を削除。
軍令 155 1967.10.24
農産物の輸送に関する軍令
軍令47への修正
関係当局は農産物の輸出経路を指定する権限、あらゆる運搬手段や運搬物を停止させ、検査し、押収する権限を持つ捜査官を任命する権限、商品に関する記録を没収する権限を有する。所有者の有罪が法的に確定しているかどうかに関わらず、捜査官は上記の権限のすべてを行使することができる。
軍令156 1967.10.25
敵性出所からの収賄の禁止に関する軍令
「敵対する筋や当局から賄賂を受け取ることは禁じられている。またそのような敵性の機関から第三者への報酬の支払いを要求することも禁じられる。親族の行なった収賄行為については、それに関わりのないことを自ら証明しない限り、罪に連座するものとする。」
軍令 157 1967.11.1
拘留期間の延長に関する軍令(暫定措置)
「安全規定に明記されていることに反し、警察の高官は、手もとの証拠によって必要と判断された場合、囚人の拘留期間をさらに7日間延長することができる。」
以下によって修正
1.軍令213 - 1968.1.25
軍令261 - 1968.6.20
軍令294 - 1969.1.2
1970.4.30日付の軍令378によって廃棄された。
軍令 158 1967.11.19
水利法の監視についての修正に関する軍令
1953年の水利法への修正
「新たな当局の許可なくして、なんびとも水施設(地上および地下の水源からの水の採取のための施設、あるいは水処理工場)の設立、所有、運営を行なってはならない。申請の却下や許可の取り消し、あるいは許可の変更には、とくに説明を要しない。」関係当局は、許可のない水資源については、所有者の罪状が確定していなくとも、これを捜索、没収することができる。
☆ 水資源の利用についての権限がすべてイスラエル軍当局に移行したということ
軍令159 967.11.1
ヨルダンの電力行政に関する軍令
1967年のヨルダン法21への修正
本法に基づいてヨルダン政府および関係機関が行なった任命、または権限の付与は、イスラエルの担当官に移管される。そのうえで、これらの任命は取り消され、イスラエルの担当官は代わりの者を任命することができる。
以下によって修正
軍令357 - 1970.2.13
軍令 427 - 1971.5.16
☆ 電力行政の実権も占領軍へ…
軍令160 1967.11.5
解釈に関する軍令(追加指令 1)
本令は、「潜在法」(未発表法と呼ばれることもある)が法的効力を持たず、これまでも持ったことはないと定めている。「潜在法」とは、その内容いかんにかかわらず、1947年11月29日から1948年5月15日までのあいだに制定された法律で、当該期間中に官報に公示されることが必要だった(必然的に、あるいは慣習的に)にもかかわらず、公示されなかったものと規定する。
☆ 47―48年というと、イスラエル建国の直前ですが、すでにシオニストたちは武装組織によるテロ行為によってアラブ系住民の追い出しを進めていた。この時期に正式に公示されなかった法律の中には、アラブ系住民追い立てに関連したものも入っていたと思われる。
軍令161 1967.11.5
解釈に関する軍令(追加指令 2)
本令は、ある法律が官報に公示されたかどうかにかかわらず、軍司令官がみとめた場合には当該者への合法適用が可能であると定めている。
☆ 官報に公示されていない法律でもOKということになれば、司令官がよいと言えばなんでもいいことになってしまいます。同一番号のついた次の軍令とも合わせて考えるべきでしょう。
軍令161 1967.11.8
解釈に関する軍令(追加指令 2)
本令は、官報を通じた公示に代えて、ラジオによる放送、地域司令官のオフィスでの公示、ムフタール(村長)を通じた伝達などでも充分であるとみなされると定めている。
以下により修正
無番号軍令 - 1970.7.27
2. 無番号軍令 - 1972.5.3
☆ ここでのポイントは、記録に残らない形の命令であっても合法であり、拘束力を持つということが確認されたことです。イスラエルはしばしば記録に残したくないような命令を「ラジオ放送」や「ムフタールによる伝達」というかたちで通達する。たまたまそれを聞き逃したとしても、知らなかった側が悪いということになるらしいです。
軍令162 1967.11.1
拘留所の指定に関する軍令
軍令43の修正1
ジェニーン刑務所が拘留所のリストに加えられた。
軍令163 1967.11.5
負傷者の情報に関する軍令
銃器、手榴弾、爆発物などによる負傷を負った者に治療を施した医者や看護婦は、治療完了時に、もよりの警察署にその旨を届け出なければならない。病院の受けつけや責任者も同様に、このような負傷者を扱ったことを報告しなければならない。
以下によって修正された
軍令1332 - 1991.3.20
☆ 複数の人間に報告責任を負わせているので、担当者の一存で報告を控えることはできない仕組み。
軍令164 1967.11.3
現地裁判に関する軍令(イスラエル軍当局の権限の代行)
占領地の現地裁判所は、軍当局の特別の許可を得ない限りは、イスラエル国家およびその職員、イスラエル軍および軍の設置した官庁を相手取った事件を審議することも、それらに命令を出すこともできないと、本令は定めている。「イスラエル軍の司令官は、イスラエル人職員による証言、書類提出、尋問への回答などを許可し、地域裁判所による当該職員への告発を許可することができる。」イスラエル軍司令官への上訴は許されている。
以下によって修正された
軍令384 - 1970.5.12
無番号軍令 - 1975. 12.31
3.軍令1161 -1983.11.8
☆ 現地のアラブ系の裁判所がイスラエル人を裁けたのかという問題になります。この条文を読む限りでは、軍当局の許可があれば裁くことができると言っているようですが、実際にはありそうもない話です。形式だけ整えているということなのでしょうか?
軍令165
公布されなかった。
軍令 166 1967.11.10
自然保護区に関する軍令
「自然保護区に指定された地域においては、自然保護当局の事前の許可がないかぎり、動植物に損傷を加えたり、移動したりすることは禁止される。ヨルダン政府および関連機関の所有になる車輌はすべてイスラエル軍の管理下に移される。輸送手段の使用は指定された地域だけに許される。ゴミを捨てることは禁じられる。」
以下によって修正された
軍令277 - 1968.8.27
2. 軍令308 - 1969.2.11
3. 軍令342 − 1969.10.8
☆ 自然保護区の名前の下に、アラブ系住民による利用が制限される広大な土地が確保されるとも言える。
軍令167 1967.11.8
署名の認証に関する軍令
「判事や公証人などが自己の権限を超える案件に署名している場合には、当局者はその署名を受けつけないことができる。
1968.7.11付け軍令264により廃棄
☆ 公証人制度は日本には存在しないのでわかりにくいが、アラブ社会では個人と行政機関をつなぐものとして、なくてはならない存在。 官民をとわず、すべての契約や手続きは公証人の署名があってはじめて有効となる。おそらく日本では、そのような役割は市役所の住民サービス窓口が行なっていると思われる。 この軍令は、そのような公証人や判事の権限を制限し、イスラエル軍当局の権限の下に置くものと思われる。
軍令168 1967.11.15
外出禁止時間に関する軍令(ヨルダン渓谷)
軍令152への修正1
外出禁止時間は午後四時からに繰り上げられる。
☆ 冬場なので日が短くなっているからでしょう。
軍令169 1967.11.22
保安条項に関する軍令
軍布告3への修正10
本令は、幾つかの条項を修正して「減刑」の語句を再定義し、「本条項のいずれの規定も、本条項に挙げられた犯罪についての軍事法廷の管轄権を制限するものと理解されてはならない」と定めている。
軍令170 1967.11.21
外出禁止時間に関する軍令
軍令77への修正
本令は、ラマダーン期間中の外出禁止時間を短縮する。
1967年11月30日から1968年1月1日までの期間、外出禁止は午後10.30からとなる。
以下により修正
軍令179 - 1967.11.30
軍令172 1967.11.22
不服申立委員会に関する軍令
本令は、不在者財産(民間資産)(軍令58)および政府資金(軍令59)の扱いに関する不服の申立てを処理するための不服申立委員会の設置について詳述している。本令によって、納税者が納税要求に対する不服を不服申立委員会に上訴する権利が確立された。
以下によって修正
軍令303 - 1969.1.16
2.軍令353 - 1969.12.7
3.軍令410 - 1970. 9.6
4.運令473 - 1972. 8.21
5.軍令476 - 1972.7.26
6.軍令521 - 1973.9.16
8.運令800 - 1979.8.28
9.軍令832 - 1980.3.21
10.軍令1013 - 1982.8.22
11.運令1019 - 1982.9.3
12.軍令1173 - 1986.7.9
13.軍令1212 - 1987.11.19
14.運令1303 - 1990. 7.30
15.軍令1310 - 1990.7.30
16.軍令1310 - 1991.1.13
無番号軍令 - 1991.4.16
17.運令1357 - 1991.11.17
無番号軍令 ‐1991.11.26
☆ 不服申し立ての窓口が出来たということだが、不在者財産の取り扱い一般についての不服申し立てを受け付けたかどうかは不明。この文章で見る限り、不在者財産について現在税金を払っている者が課税額についての不服を申し立てるという話のようです。
軍令173 1967.11.28
旅行代理店とイスラエルの観光案内人に関する軍令
「占領地においては、いかなる旅行代理店も観光案内人も許可なくして営業してはならない。ただし、イスラエル経由で入国した観光客についてはこの限りではない。」
☆ 当時は、まだ多くの国がイスラエル国家を承認しておらず、占領地へのルートもイスラエル経由ではなくヨルダンなど周辺アラブ諸国を経由するのがふつうだった。テルアビブ空港を使うことはイスラエルの存在を認めることになるからである。この軍令はイスラエルを経由するように、反イスラエル派に圧力をかけたものらしいです。
軍令174 1967.11.28
解釈に関する軍令
軍令130への修正
本令は、年齢の数え方を規定している。
☆ さまざまな年齢の数え方が混在していたということですね。たとえば、アラブの伝統的な年齢の数え方には、誕生したときから一歳と数えるものがあるそうです。
軍令 175 1967.11.29
通関(アレンビー橋)に関する軍令
「内務大臣およびイスラエル警察は、ヨルダン側東岸と行き来しようとする人々に対し、許可証のチェックと身体検査を行なうための検問所を設けることができる。警察官は、軍令52の下に与えられた検査や押収などのあらゆる権限を行使することができる。
以下によって修正
1.軍令466 - 1972.4.14
2. 軍令1253 - 1988.9.1
☆ アレンビー橋は、トランス・ヨルダン王国と西岸地区のあいだの主要(唯一の?)出入国ポイントです。
担当: 中野真紀子
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