12)ケープタウンからヨハネスバーグへ

 8月13日、私の南ア旅行は4日目になりました。朝6時にいろいろ事件があったホテルをチェックアウトして、また片桐君に送られてケープタウン空港へ。ふたりで朝食を食べながら日本での再会を約束しました。彼は『南アはもう飽きた』を連発しました。彼にいわせると、治安が悪いこの町では自分が運転する車しか移動手段がなく、ちょっと息ぬきにお酒を飲みに行く、なんてことができないそうです。飲む場所も外国人が入れるような店は旅行者向きの高級店ばかりで、しかたなく商社マンや船員ばかりが集まる日本料理店(ケープタウンに3軒もある)に行くことになるようです。それも悲しいものがあります。1月に日本に帰ったらみさと屋に日本酒を飲みに行きますよ、絶対にね。そういう彼と別れて南アフリカ航空にチェックイン。チケットに鉛筆で書いてくれた番号のゲートに行き、そろそろ搭乗できるだろうと思ったのですが、なかなか手続きが始まりません。できるはずの行列もありません。さて、どうしたものかとゲートにあるモニターを見たり、ロビーをうろうろしてみたりしたのですが、わけがわかりません。こんな時はほんとうに情けない。もう一組いた日本人らしい親子がやはり心配そうにそわそわしていました。出発予定時間を過ぎたので、これはやはりおかしい、と思ってチェックインカウンターに戻って聞いてみると、私の乗る便は1時間遅れるとのこと。それならなんでモニターに表示しないのか、と腹が立ってくるところですが、実は私があの聞き取りにくい独特の空港アナウンスを理解できなかったのが原因らしいので、怒るのはやめました。ラジオ英会話で空港や機内のアナウンスのリスニング特訓をやっていたのに、実践で役に立たないなんて残念です。すぐにヨハネスバーグ空港で落ち合う予定のNGOの事務所に電話をしましたが、誰もいなかったので、思い切って代表の津山直子さんの自宅に電話をしてみると、運良くご本人が出たので予定変更がスムーズにできました。
 南ア航空の国内線に乗るのは2度目です。行きにのった時と同じ25才くらいの黒人のパーサーが乗っていて、この人がとても感じがいいので楽しいフライトになりました。彼の胸には国旗のバッジ。これを見るたびにこちらも胸が熱くなってしまいます。ソーセージとスクランブルエッグ、焼いたトマトの機内食を食べているうちにヨハネスバーグに近づきました。
 窓から景色を見ていた私は、はっとしました。4日前に香港からの夜ばかりの飛行を終えてヨハネスバーグへの着陸直前に見た、放射状に伸びたり、6角形に並んだりした広大な夜景の海は何だったのか。それが朝の日ざしの中に見えたのです。原野の中にとても人工的に作られた町並みで、全体が茶色くくすんでいます。ここが南ア最大の黒人居住区(ホームランドという、アパルトヘイト時代に黒人たちが押し込められて暮らしていた地域)ソウェトだったのです。
 翌日には、私は自分の足でこの地を歩くことになります。

ソウェトの女性たちの縫製工場

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