1) ヨハネスバーグ空港

 この夏休みを使って南アフリカ共和国をひとりで旅行してきました。苦しい歴史を乗り越えてきたこの国のひとびとはたいへん明るく、まぶしいくらいでした。いや、この国の歴史はこんな旅行者が一言でいえるような苦難の歴史ではないでしょう。アパルトヘイトが撤廃されて5年。全国民による初めての選挙でネルソン・マンデラが大統領に選ばれて2年。新しい国創りの熱気は十分に感じとれましたが、暗い過去の重さに耐えかねている国でもありました。そんな中でひとびとはほんとうに明るく、いきいきと暮らしながら私に接してくれました。
 香港からヨハネスバーグまでの12時間の空の旅は、まるで星空のように広々とした夜景の上に着陸して終りました。星座のように規則正しく並んだ夜景の海が、昼間はどのような風景なのかを私が知るのは4日後のことになります。夜明け前のヨハネスバーグに到着したのが午前5時。国内線の南アフリカ航空に乗り換えようと空港をうろうろしていたら、私を呼ぶ突然で意外な日本語。初めての海外旅行の私が頼りないと思ったのか、この町に住んでNGOの仕事をしている人と、出張で滞在中の友人が3人も顔を並べていました。東京事務所勤務のふたりは時々会うこともあるのですが、こちらに住んでNGOの南ア代表を務めている方とはとてもなつかしい再会でした。この方こそ、今回の私の旅の重要な影のパートナーとなった津山直子さんなのです。それにしても朝の5時に空港に来てくれるなんて(それも乗り換えだけなのに)、みんなは家を4時前には出ているはずで、なんとも熱い友情を感じたのでした。再会のコーヒーを飲んでいる間に夜が明けました。
 ひとりでケープタウンへ。飛行機は景色がまったく見えなくなるような水煙をあげて着陸しました。天気は快晴。まるで私の訪問が雨を押し退けたかのようでした。真冬のこの町は前日まで激しい雨続きだったそうです。そして、やっと20時間の旅を終えて南アフリカ共和国での一歩を踏むことができたのです。
 ひとり旅のつもりが、到着の瞬間から多くの友人やこの国のひとびとのお世話になりっぱなしの旅はこうして始まったのでした。 

ケープタウンのフリーマーケット

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