米州軍事学校と拷問

フレッド・モリス
ZZNet原文
2004年9月11日


拷問は、「内政問題だ」とか一過的なものだとしてそれを無視しようとする人々も、非人間化する。そのような無関心は人間の共感や思いやりの泉を枯渇させ、人類家族の全員に関する世界コミュニティとの社会契約を破ることになる。文明と自由は、無関心な態度をあたりまえとする人々により育まれたのではないし、そうした人々によって維持されることもない。


米軍が拷問を用いていることが最近明らかにされたため、私は苦い記憶を再び想起している----1974年に私を拷問した者たちが、スクール・オブ・ジ・アメリカズ(米州軍事学校・SOA:当時パナマにあり現在は米国ジョージア州フォート・ベニングにある)での訓練について私に自慢していたため、とりわけ。

1974年9月30日、私はブラジルのレシフェに住んでいた。11年近く当地で統一メソジスト教会の使節として働いていたのである。私はブラジル軍の治安部隊により自宅から誘拐され、続く17日間、拷問部屋に押し込められ、その後、「国益に有害」として国外追放処分となった(『タイム』誌1974年11月18日号および『ハーパー』誌1975年10月号を参照)。1974年に私に加えられた拷問技術は、イラクで米軍兵士が用いている技術とほとんど同じだった。顔にかぶせるフード、ケーブル、屈辱を与えるための残忍な手法。

私たちの政府が直接・間接にあまりに長きにわたって関与してきたこの拷問というものを、私たちアメリカ合州国人は道徳的問題として問題視するときが来ていると思う。米国議会(下院海外問題委員会におけるドン・フレーザー議員を委員長とする国際組織・運動に関する委員会)で1974年12月11日に私が行なった次のような証言は、私たちの歴史における今このときにも大切だと思う。

拷問は、拷問を受けた者だけでなく拷問者にも、そして他の人々が拷問を受けたことで脅迫を受ける人にも、そして拷問が存在するという事実を無視しようとする人々にも、残忍な仕打ちを与え非人間化する。

拷問は、人間以下の扱いを加え、多くの場合人間以下の感情を持つよう強制し、しばしば人間以下の行いをするよう強制することで、拷問を受ける人々を非人間化する。拷問によりある人にむりやり友人や仲間、家族を裏切らせるならば、拷問の結果しばしばもたらされる永続的な肉体的ダメージとは別に、心理的・精神的ダメージは修復不可能かも知れない。

拷問は、拷問を行う者も非人間化する。拷問を実行する者の中で誘発され展開される精神病理に加え、どのような理由であれ拷問に訴える個人や政府は、同胞の人間との間で交わされた社会契約を裏切り、結果として人間社会から離脱することになる。

拷問は、それにより脅迫を受ける人々も非人間化する。恐怖から福音を全的に謳わない教会聖職者、恐怖から真理の探究を止める学生、報復を恐れて真実を人々に伝えないジャーナリスト、報復を恐れて自らの利益を守るために組織化できない労働者、独立した良心に基づく行為が導く結果を恐れ独裁政権の抑圧的提案に印鑑を押すだけの政治家。これらすべて、そして人類のコミュニティ全体が拷問により引き起こされた非人間化を被る。

拷問は、「内政問題だ」とか一過的なものだとしてそれを無視しようとする人々も、非人間化する。そのような無関心は人間の共感や思いやりの泉を枯渇させ、人類家族の全員に関する世界コミュニティとの社会契約を破ることになる。文明と自由は、無関心な態度をあたりまえとする人々により育まれたのではないし、そうした人々によって維持されることもない。

不幸にして、30年の時を経た今日、私たちはいまだに同じ状況にいる。けれども、現在、私たちの政府は、ブラジルで(そしてチリで、エルサルバドルで、グアテマラで、コロンビアで、その他の多くの国で)拷問を行う政権を支持する代わりに、私たちは、民主主義を防衛し広めるという口実のもとで、直接この拷問という恐るべき行為を行なっていることがわかっている。アメリカ合州国の人々が「もうたくさんだ!」と声を上げるときがきている。目的は手段を正当化しない。とりわけ、手段が、公言される目的を、完全に、全面的に汚し違反しているような場合には。

少なくとも、私たちは、私たちの行為を清算するために、スクール・オブ・ジ・アメリカズの閉鎖を求める運動に精力的に参加しなくてはならない。米州全域で、スクール・オブ・ジ・アメリカズは、「暗殺者養成学校」として知られており、あらゆる国で、スクールの卒業生が帰国すると、人権レコードは悪化するのである。今日、最大のスクール卒業生を擁するコロンビアが、西半球で最も恐ろしい人権破滅状態にあることははっきりしている。

フレッド・モリス牧師はフロリダ教会委員会の委員長で、米国キリスト教会全国委員会のラテンアメリカ・カリブ関係局代表。


拷問は、「内政問題だ」とか一過的なものだとしてそれを無視しようとする人々も、非人間化する。そのような無関心は人間の共感や思いやりの泉を枯渇させ、人類家族の全員に関する世界コミュニティとの社会契約を破ることになる。文明と自由は、無関心な態度をあたりまえとする人々により育まれたのではないし、そうした人々によって維持されることもない。
拷問は被害者だけでなく加害者も非人間化し、傷つける、という言葉はよく聞きますが、傍観しつつ無視する人々をも非人間化する、とうい言葉は、そんなにたくさんは耳にしません。この言葉は、単なる感傷論ではない、冷静に考えれば考えるほど妥当な真理を述べた言葉だと思います。

もう一つ、スクール・オブ・ジ・アメリカズをめぐる記事(米国議会がスクールの継続を承認)を紹介します。



議会はスクール・オブ・ジ・アメリカズを継続
ダグ・アイルランド
ZNet原文

米国議員たちが、通路のどちらの側に座っているかにかかわらず、アブグレイブでの被拘束者に対する拷問を「非アメリカ的」として遺憾を表明したことを覚えているだろうか? 先月、下院はひっそりと、米国で最も悪名高い「スクール・オブ・ジ・アメリカズ」(SOA)として知られる拷問指導学校を維持するための予算を改めて採択した。SOAでは、永年にわたり、アブグレイブで世界が非難したような、被拘束者への不法な身体的・心理的虐待、そしてもっと悪しきことが、教えられていた。

SOAは冷戦の遺物のようなもので、もともと、ワシントンが「共産主義者」とレッテルを貼った反対勢力と戦うために、米国国境の南側にある米国の同盟国の軍と警察、諜報を訓練するために創設された。実際には、SOAの卒業生は、政治的弾圧のショック部隊であり、ペンタゴンお好みの一連の独裁弾圧政権を生み続けてきた。

SOAで長い間使われてきた尋問マニュアルが5月、バルチモア・サン紙などの情報公開法に基づく公開要求で機密解除されたのち、独立調査機関である国家安全保障アーカイブで公開され、ウェブページに掲載された。国家安全保障アーカイブは、これらのマニュアルは「アブグレイブに拘束されていた人々を虐待するために用いられたような、『強制技術』について記述している」と指摘している。

アブグレイブで使われた拷問技術は、SOAの卒業生が実地試験を重ねてきたものである。米軍の尋問マニュアルのうち7点がスペイン語に翻訳され、SOAでの訓練に用いられ、米国の同盟国に配布され、拷問と殴打、暗殺の技術を提供している。「拷問被害者のためのカナダ・センター」の医師マイルス・シューマン博士----彼は相談をしてきた犠牲者の拷問ケースを記録している----が5月14日、トロント・グローブ・アンド・メール紙に「アブグレイブ:例外ではなく慣例規則」という見出しのもとで生々しく書いているように:
アブグレイブで裸にされた被拘束者の顔を覆う黒いフードは、グアテマラエルサルバドルの拷問所で「ラ・カプチャ」として知られていたものである。アブグレイブで、十字架の施政で裸にされフードを被せられた被拘束者が縛り付けられる金属製のベッド・フレームは、「ラ・カマ」と言う。米国が据え付けたチリのアウグスト・ピノチェト将軍の独裁政権を生き延びた元チリ人被拘留者にちなんで名付けられたものである。彼女の場合には、腕と足、性器に電極が取り付けられていた。ちょうど箱の上で姿勢を保つよう強制されたイラク人被拘束者に取り付けられ、落ちたら電気ショックが襲うと脅されたように。
米国により訓練を受けた中南米のギャングたちがSOA卒業生の司令下で行なってきた拷問の長い歴史については、また、アムネスティ・インターナショナル(2002年の「比類ない力と守られない原則」と題する報告)のような人権団体や、A・J・ラングッスの「Hidden Terrors」、ウィリアム・ブルムの「Rogue State」(『アメリカの国家犯罪全書』)、ローレンス・ウェシュラーの「A Miracle, A Universe」といった本に、丁寧に記録されている。ラテンアメリカにおける人権侵害のほとんどすべての報告で、SOAの卒業生の名が目立って見られる。エルサルバドルの国連真実委員会報告は、人権侵害で名を挙げたエルサルバドル軍人の3分の2はSOAの卒業生であると述べている。血塗られたグアテマラ独裁政権下の閣僚の40%はSOAの卒業生だった。こうしたリストは延々と続く。

2000年、ペンタゴンは、「改革」計画の一環として、SOAを西半球治安協力機構(Western Hemispheric Institute for Security Cooperation:WHINSEC)と改名することでイメージアップを図り誤魔化しを行おうと試みた。けれども、共和党上院議員だったジョージア州(SOA/WHINSECがある)の故ポル・カバーデールがそのとき述べたように、スクールの変化は「基本的に見かけだけのもの」だった。

SOA/WHINSEC閉鎖を求めるロビー活動を率いているのはスクール・オブ・ジ・アメリカズ・ウォッチである。この組織は、1990年代に4人の米国籍修道女が、エルサルバドルの「死の部隊」に殺されたことを契機に宗教活動家により設置された。この「死の部隊」を率いていたのは、SOA卒業生の中でも最も悪名の高いロベルト・ダビッソン大佐だった。SOAと残虐行為の関係はすべて遙か昔のことであると考えないように指摘しておくと、スクール・オブ・ジ・アメリカズ・ウォッチは、ペンタゴンの粉飾「改革」移行に起きた最近のスキャンダルを多数記録している。二つだけ、紹介しよう。

2001年6月、グアテマラの血にまみれたD−2諜報部の長官でありSOA卒業生でもあるビロン・リマ・エストラダ大佐が、棍棒でグアテマラのヘラルディ司教を撲殺したとして有罪判決を受けた----内戦下で殺された20万人のうち大多数をグアテマラ軍が殺害したと結論付ける報告を司教が公開してから2日後のことだった。

2002年4月、2名のSOA卒業生(エフライン・バスケス軍総司令官とラミレス・ポヴェダ将軍)がベネスエラでクーデター未遂を幇助した。悪名高いオットー・レイチ(ライヒ)----ブッシュ政権で指名されそこねたWHINSECのゲストボードに名を連ねる人物----が、クーデター前の数カ月に、将軍たちと会っていた。

ジム・マッガバン下院議員(マサチューセッツ州選出・民主党)は、下院でSOA/WHINSEC反対の先陣を切っていたが、彼が提案した、スクール(スクールには128もの共同出資者がいる)への資金を停止する海外作戦予算修正案は、7月15日の11時に、共和・民主両党合意により下院に提出される修正案の数を制限することにされ、撤回された。

今年のうちにスクールの資金を停止する最後の機会は上院に委ねられている。けれども、これまでSOAを批判していたボクサー上院議員とファインシュタイン上院議員に電話をして計画を尋ねたところ、両者の事務所から返ってきたのは沈黙の返事だけだった。スクール・オブ・ジ・アメリカズ・ウォッチが行なってきた包括的なロビー活動に照らして考えるならば、私たちが選んだ議員たちは、スクールの拷問記録について知らなかったと主張することはできない。


拷問については、ほかに、拷問生存者の回想および拷問についてもご覧下さい。

イラクの最新情報は、いけだよしこさんが中心に益岡もお手伝いしている『ファルージャ2004年4月』ブログで紹介しています。バグダードのハイファ通りでの空爆虐殺等について、様々な情報を提供しています。

国内では、沖縄でのヘリ墜落、ミサイル防衛予算の拡大、日の丸君が代の強制、東京都の「つくる会」教科書採択強行の動き、クルド人難民をめぐる政府の対応問題、辺野古基地建設のためのボーリング調査開始強行など、非人間的な動きが並列して進められています。以前、「順次、リンク・アクション等も紹介できればと思っています」と書きましたが、一つだけ。

法務省入国管理局が「不法滞在外国人」のメール通報制度を始めていますが、これに反対する行動案内のページが、STOP Cyber-Xenophobiaにあります。「ヤツはユダヤ人だ」、「ヤツはアカだ」、「ヤツはアヤシイ」、「ヤツはガイジンだ、不法に違いない」などなど・・・・・・

秘密警察社会にふさわしい、こうした病んだシステムは、放置すると自分も含め社会のたくさんのところに跳ね返ってくるでしょう。

2004年9月17日

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